息をするように、

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微妙

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暑い。真夏だ。雨が降らない。
こんな暑いのにうるさい友達もどきがでかい声でベタベタ近づいて来た。

「かき氷食いてー!」

かき氷か。小さい頃に食べたな。最近は食べない。
だってただの氷にシロップだ果物だ振り掛けるだけだろ?ならもっとうまいものを食うね。

友達もどきがまたあの飲食店に行くと言っている。一人で行けばいいものを、わざわざ一緒に行こうとか意味不明。

しかし行くことにした。
なぜなら、かき氷。
あの飲食店のことだ。普通のかき氷ではないだろう。
ただ、シロップの代わりに血を掛けましたー。なんていう捻りのないかき氷だったら‥‥
あの老夫婦をバラバラにしてかき氷の材料にしてやろう。

店に行くまでの間、友達もどきが何か話していたが適当に頷いて応対した。

そして店に着けば、店内は相変わらず賑わっている。
仲睦まじそうな老夫婦がせっせと接客をしている。

客達がかき氷を食べているが、もう食べ終えた奴らばかりだ。どんなものかはわからない。
ただ、おいしかっただとか、新鮮だったとか、普通な感想。

席に座り、友達もどきがメニュー表を開けば、なんとかき氷は一種類しかないんだと!

しかもメニューの名前はただの【かき氷】!
メニュー説明には、冷たい氷の上に特製シロップと日替わり特製具材を乗せたお楽しみメニュー!

値段は五百円。
高いのか安いのかよくわからない。

友達もどきは勝手に二つ注文した。
また奢りらしい。貧乏なのによくやるぜ。

数分してかき氷が運ばれてきた。
透明なグラスに赤いシロップがかけられていて、パラパラと肌色の粉みたいなのが振り掛かっている。
老婆がテーブルにそれを置いた時、思わずクスッと笑ってしまった。
友達もどきと老婆が不思議そうにこっちを見たが、気にしない。

老婆が接客に戻り、友達もどきは、

「なんか見た目は普通だなー。イチゴシロップ?この粉はなんだ?」

言いながらスプーンで拾い上げ、パクリと口にした。

「うまっ!!!なにこれうまっ!!!ちょっ、はやく食ってみろよ!これイチゴ味じゃないな、甘いけど。この粉みたいなのはカリカリして‥‥ってか氷もカリっとしてる!とにかくうま」

興奮して話す友達もどきの言葉の途中で席から立ち上がり、急遽仕事が入ったと店から出て行った。背後から、

「お前いっつも食わねーで帰る!!」

なんて声がしたが、無視。

いやはや、あまりに微妙過ぎて言葉にならない。

だって本当にシロップじゃなくてただの血だったからさ。
振り掛かってるカリカリする粉とやらは、ただ人間の皮膚を細かく刻んで焼いただけ。
氷は異様に白かった。カリカリしてるのは、恐らく人骨を凍らせただけだろう。

‥‥微妙。とにかく微妙。
食わなくてもわかる、微妙。
五百円‥‥ぼったくりだなぁ。

しょせん、老夫婦だから発想はあんなもんかねー。
次行った時に微妙だったら店ごと丸焼きにしよう。
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