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第三章【破滅へと至る者】
3―2
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レンジロウ、シーカー、ノルマルは教会の子供達を連れて外へと逃げた。
「はあ、はあ‥‥ここまで来たら、大丈夫でしょうか」
レンジロウは言い、泣き喚く十三人の子供達を見る。
「大丈夫、大丈夫よ。あたし達が守ってあげるからね」
ノルマルはその場にしゃがみ、子供達に優しく言った。そんな彼女に、
「おや。意外です。子供に優しいんですね」
と、シーカーが言えば、ノルマルは「ふん」と鼻を鳴らす。
「子供なんてウルサイだけじゃない。何がカワイイのかサッパリだわー」
「ーー!?」
突如、三人の頭上からそんな声がした。慌てて見上げれば、翼を羽ばたかせるマジャの姿があった。
「ーー逃げるわよ!」
ノルマルは言い、ナイフを取り出し、マジャに向かって火の玉を放つ。
「ノルマル殿は魔術が使えるのですか!」
走りながらレンジロウが聞けば、
「珍しいことでもないよ!ちなみに、あたしは下位魔術しか使えないから期待しないで!ほらっ」
走りながら横目に上を見上げれば、
「キャハハ!何よそのちっぽけな術!あーっ、これだから人間は弱いのよ!アタシを地下牢なんて埃っぽい部屋に封印してからなぁぁぁぁぁんにも変わってない!」
高笑いしながらマジャは余裕気に宙を飛んでいる。
「ロンギング国の地下牢に厳重に幽閉されていた極悪人‥‥!それが何故、今は自由なのでありますか!?」
少しでも逃げる時間を稼ごうとレンジロウが聞けば、
「アタシの力が必要だって言って、封印を解いたバカがいるのよ。せっかく三代目ロンギング王がアタシを封印したのにねえ!?全く。でも、三代目のアイツはもう死んでるとか、せっかく生きたまま喰ってやろうと思ってたのに!」
悔しげな表情で笑いながらマジャは言った。
「貴女は無差別に、種族関係なく人を殺しては、人の肉を食べて生きて来たらしいですね。殺した数は千人以上‥‥でしたか?」
シーカーの問いにマジャはうんうんと頷き、
「だって、人ってゴロゴロ増えるじゃないの。ああもう、おいしそうな肉が食べ放題!でも、若い男、カッコいい男しか食べないわよ。汚い奴等は目障りだから目の前から消してやるだけ!そうーーアンタ達みたいな奴等は肉塊にしてゴミ箱行きね!」
ギラッーーと、彼女の鋭く長い爪が伸び、ノルマルの喉元を狙う。「危ない!」と、レンジロウは槍を構え、マジャの爪を弾いた。
「なによぉ、前にリダに一撃でやられてたおじさんじゃない。そんなに死に急いでるわけ?」
「鎧も槍も新調したであります!あなたのような小さな女性に負ける気はしません!」
「あらっ」
マジャは瞬きを数回し、
「おじさん、わかってるじゃん!そう、アタシは小さくてカワイイ女の子!でもね、とーっても強いんだから!」
「ーーっ!」
悦ぶように言いながら、からかうようにマジャはレンジロウの眼前に爪を振り回す。レンジロウはシーカーとノルマルに、ここは自分に任せてくれと目配せした。しかし、レンジロウがマジャに勝てるはずがない。見殺しにしてしまうだけだ。
「馬鹿ね!あたしも加勢するわよ!シーカー!戦えないあんたが子供達を安全なとこに連れて行きなさい!」
ナイフを構え直し、ノルマルが言う。シーカーは肩を竦め、子供達を連れて再び走った。
「あっ!逃がすわけないじゃん!男の子一人必要なんだからーー!?」
マジャはシーカーを追おうとしたが、ノルマルの放つ火の玉に邪魔される。
「あんたの相手はあたし達よ、年増女」
敢えて挑発し、マジャの気をこちらに引き寄せた。思惑通り、マジャは眉間に皺を寄せ、ノルマルを睨み付ける。
「アンタみたいな地味な女に言われたくないわね!キャハハハハハハハ!!」
マジャの笑い声が辺り一面に響き、彼女の両手に黒い光が集まってきた。
「引き裂いてやろうと思ったけど、やめよやめ!塵も残さず潰してやるわ!アンタ達は食料にもならないしねぇ!?」
「ノルマル殿!ここから離れねば!」
レンジロウが言うが、広範囲に集まる光を避けきるにはマジャとの距離が近すぎる。だが、ノルマルはナイフを構えて逃げようとはしない。
「逃げれるわけ、ないじゃない!あたしはもう、逃げたくない!何かを見捨てて、罪を、重ねたくないーー!」
「!?」
彼女が何を言っているのかはわからない。しかし、青の目いっぱいに涙が溢れていた。今まさに放たれようとするマジャの魔術。
レンジロウはノルマルを庇うように、ギュッと目を閉じて彼女に覆い被さった。
「弱い奴等はこの世界に生きてる価値なんかないのよーー!」
マジャは両手一杯に溜めた魔術を二人に向けて放った。
「レンジロウ!退きなさい!」
自分に覆い被さる彼に言うが、彼は離れない。爆発音と共に、激しい爆風が吹き荒れる。
「うっ‥‥ううっ‥‥」
仰向けに倒れ、全身の重みにノルマルは呻き、ゆっくりと目を開けた。自分の上には、レンジロウが覆い被さっている。彼の胸を押し退け、
「れっ、レンジロウ?」
ゆっくりと起き上がった。ぐらりと、押し退けた彼の体は地面に倒れる。
「え?」
ノルマルは目を見開かせた。鎧は砕け、彼の背中が剥き出しになっている。背中の肉が抉れ、骨が突き出ていた。しかし、まだ、息はしている‥‥
「レンジロウ!?うそっ、嘘でしょ!?」
ボロボロと涙を溢し、ノルマルは彼の肩を揺する。返事はなく、ヒューヒューと、喘鳴しか返ってこない。
ザクッ‥‥土を踏み締める音が近づいた。マジャが二人の前に立っている。
「クスクス。凄いじゃない、おじさん。アタシの力によく耐えたわね?女諸共、灰にしてやろうと思ったのにーー‥‥って、わざと手加減してあげたんだけどねぇっ!?だって、この方が死ぬより苦しいでしょ?痛いでしょ?キャハ、キャハハ、キャハハハハハハーー」
「このっ‥‥悪魔ーー!」
ノルマルはレンジロウの体を抱き寄せ、マジャを睨み付けた。
「あらぁ、泣きながら威勢だけはいいわね。安心しなさい、アンタも今から痛い目に合わせてあげる!アタシを侮辱したお礼にねぇ!!」
「‥‥」
マジャの爪が夕陽に照らされて輝く。ノルマルは目を閉じることなく、ただ彼女を睨むことをやめなかった。その手が振り下ろされようとした時、
「ギャアアアアアアアーー!!!?」
ーーザシュッ!!と、斬り付ける音と共に、マジャが急に悲鳴を上げる。
「ノルマル‥‥レンジロウーー!」
「あっ‥‥」
駆け付けたエクスが、魔剣の欠片で打たれた剣でマジャの背中を斬り付けたのだ。マジャは背中からダラダラと血を流し、ギロリとエクスを睨み付ける。
「このっ‥‥餓鬼がぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「くっ‥‥!」
振り翳された爪を、剣で受け止めた。
「リダは何してんだ!!!あの男だけしか眼中に無いってか!?あの役立たずめ!!!!!」
マジャの口調が荒くなり、滅茶苦茶に爪を振り回している。
(リダは戦いに隙を見せなかった。だが、この女は頭に血が上り、動きに隙があるーー!)
幼い頃から剣術を学んで来た。実戦はヨミとの対峙が初めてであったが、動きを制御出来ていないマジャ。それを、今なら斬れるーー。エクスはそう感じ、剣を低く構え、マジャの脇腹に剣を突き刺した。突きが甘かったのか、深くは刺さっていない。しかし、
「あああああああああああああああああ」
狂った機械のようにマジャは叫び、翼を広げ、エクス達を置き去りにして前方へと飛んで行く。彼女の行動がエクスにはわからなかったが、
「エクス!シーカーが子供達を連れて向こうに行ったの!!」
ノルマルの言葉を聞き、エクスは走った。恐らくマジャはこの戦いを捨て、本来の目的である男児一人を連れて行くことを優先したのだろう。
シスター‥‥シェリーがどんな女性だったのかは知らない。だが、半年以上前も、先刻も、その身を張って守ろうとした子達。
リダを足止めし、自分に子供達の安全を託したアリア。
(間に合え、間に合えーー!!!!)
エクスはひたすらに走る。戦場の臭いがどんなものかは知らない。だが、何かが燃えるような臭いが近付いて来た。
「ハハッ、アッハハ。コイツでいいわ」
言葉とは裏腹に、無表情で気を失った一人の少年を抱えるマジャの姿が見える。
「遅かったわね、フードの男。まあ、人間の足で追い付くわけがないけど、そのしつこさと、アタシに傷を負わせたことは褒めてあげるわ!キャハハ!次はお前ら全員‥‥ぶっ殺してやるからナァ?!」
「くそっ!!」
空を飛ばれては、もう追うことは出来なかった。エクスは悔しげに空を見上げ、目の前に視線を戻す。
辺りはマジャの魔術だろう。炎で囲まれていて‥‥
「エクス!無事、でしたか」
シーカーがそう言い、しかし‥‥
「あっ、ああ‥‥」
エクスはその場に崩れ落ちた。
十三人いた子供達。一人は連れ去られ、十人の子供達は腕をもがれ、首をはねられ、心臓を抉り出され‥‥
シーカーの腕の中で、たった二人の少女だけが無事だった。
「すみません‥‥二人しか、守れませんでした」
しかし、そう言ったシーカーも腹部からダラダラと血を流している。マジャの爪にやられたのだろう。
エクスは歯を食い縛り、声を殺して泣いた。
しばらくして、少女二人を連れ、ノルマルとレンジロウが居た場所に戻る。だが、そこには‥‥
「きっ、君は‥‥」
エクスは目を見開かせた。
「まったく!このおじ様は!あたくしが二度も助けてあげてるんだから!何かお礼してもらわないといけないわね!!」
白い翼が大きく開かれ、倒れるレンジロウの背中に治癒術をかけるウェザの姿があったのだ。
「ウェザ‥‥!どうして、ここに!?」
エクスが聞けば、
「久し振りね、王子様!詳しい話は後で!皮膚の再生にあと三時間は掛かるわ!何かすることがあるならそっちを優先して!」
話をする暇はないと、彼女は治癒に専念する。傍では、ぼろぼろに泣いたノルマルが光景を見守っていた。
「エクス‥‥アリアさんとシスターは?」
不意に、シーカーに聞かれ、エクスは俯く。シスターがリダに殺され、アリアが足止めをしてくれていると話した。シーカーは目を閉じ、ノルマルは悔しそうな表情をする。
「俺‥‥教会に行って来る。アリアが心配だ。シーカー‥‥お前も傷を負っているが、ノルマル達を頼む」
エクスに言われ、シーカーは頷いた。
◆◆◆◆◆◆
すっかりと静まり返った天使の村ーー教会。
惨事が起きた場所にエクスが戻ると、倒れたシスターの亡骸の側に座り込み、項垂れるアリアの姿があった。
「‥‥エクスさん」
彼女は顔を上げ、疲れたような顔で彼を見る。
「はは。あなた達に関わったばかりに、こんな‥‥こんな‥‥」
アリアはゆっくりと立ち上がり、エクスの頬を殴った。
「あんた達なんか助けなけりゃ、シェリーは死ななかった!!死ななかったんだーー!!!!くそっ、くそぉっ‥‥!!!」
涙も枯れ果てたのか、アリアはエクスの胸を何度も何度も叩く。エクスは何も言わず、ただそれを受け止めた。
アリアがリダに目をつけられなければ、シスターは死ななかっただろう。再び、肉体を弄ばれたかもしれないが、命までは、奪われなかっただろう。そう思うと、
「ごめん‥‥ごめんな、アリア‥‥」
エクスも涙を流し、ただ、謝るしかなくて。
「子供達を、二人しか、救えなかった。俺が、俺が強ければ‥‥強かったら、シスターのことも、守れたのに‥‥」
「‥‥っ」
それを聞き、アリアはヘナヘナとその場に崩れ落ち、
「なんであなたが泣くんですか。泣きたいのは、私ですよ‥‥私の方が‥‥ううっ‥‥うあああっ‥‥」
声を出して、泣いた。それをエクスは、声を掛けず、静かに聞いてやることしか出来ない。
何も守れず、奪われただけの時間。
エクスはシスターの転がる首の側へ行き、初めて彼女の顔を見た。大きく見開かれた漆黒の瞳。恐怖に開いたままの口。
「君の恐怖が、苦しみが‥‥どうか、昇華され、子供達と共に、平穏へと行けますよう」
そっと、彼女の頭に触れ、祈るように言った。アリアはそんな彼を見つめ、額に手を当てる。
教会の庭にシスターの亡骸を葬り、子供達の亡骸もここに連れて来ようとエクスは言った。道中、アリアは静かに口を開く。
「彼女はシェリーと言って、元は天使の村の孤児の一人だったんです。経営していた孤児院の先生が高齢で亡くなって、最年長の彼女が皆のマザーになってあげた。実は、私も孤児院出身で、彼女とは家族のように育ったんです」
それを聞き、エクスは静かに頷いた。
「でね、もっと皮肉な話があるんですよ。聞きたいですか?」
ずいっと、アリアがエクスの眼前に人差し指を持ってきたので「なっ、なんだ?」と、エクスは不思議そうにする。
「私が孤児になった理由です。私が幼い頃、私の両親はあいつーーリダに殺されたんですって!笑えるでしょう?」
アリアはおかしそうに笑って言うが、それを聞いたエクスは絶句するしかなかった。
「だから関わりたくなかった。半年以上前にシェリーがあんな目に合わされても、リダには関わりたくなかった。でも、もしかしたら、顔も覚えてない両親が、私に復讐しろと言ってるのかもしれませんね。自分達の仇を討て‥‥と」
やれやれとアリアは首を横に振る。それから、申し訳なさそうにエクスを見て、
「あなたは以前、シェリーを助けてくれた。それに‥‥私があなた達を助けていようがいまいが、私がリダに目をつけられようがられまいが‥‥シェリーは頑なに子供達を守ったはず。いずれ、こんな結末になっていたかもしれない。だから、さっきはすみませんでした‥‥私が弱いからダメだった。迷いなく剣を振れたら良かった‥‥ってか、あなたはウィシェ王子でしたよね!!!すっ、すみません、なんか、ほんと、失礼なことばっかり!!!」
王子の頃とは全く外見の違う彼を、どうしても別人に捉えてしまい、アリアは慌てて頭を下げた。
「いや、構わない。俺のことは王子ではなく、ただのエクスだと思ってくれ。それに、君の言う通り、巻き込んだのは俺達だ。だから、恨んでくれて構わない。君のことも、シスターのことも、子供達のことも‥‥本当にすまなかった」
「‥‥」
「それより、リダとの戦いは大丈夫だったか?よく、無事だったな」
「あっ、あはっ、はははは‥‥」
先刻の事を思い出し、アリアは苦笑いをする。
「どうした?顔色が悪いぞ。まさか、何かあったのか!?怪我でも‥‥」
「なっ、なんでも!なんでもありません!何もされてません!!!!!」
「本当か?だが、まだ目をつけられているんじゃないのか?」
「うっ‥‥たぶん」
そうこう話している内に、二人はシーカー達の元に戻った。ウェザはまだ、レンジロウを治癒している。
「はあ‥‥本当に、無茶する人達ですね」
未だ、背中から剥き出たレンジロウの骨を目を細めて見つめ、アリアはため息を吐いた。それから、気を失ったままの、二人の少女を見つめ、
「‥‥シェリー」
友人の名前を静かに呟く。
「‥‥エクス」
すると、レンジロウの傍で目を腫らしたノルマルが立ち上がり、
「レンジロウ、あたしを庇って‥‥なんでなの?あたし達は出会ってまだ、数週間なのに、なんで命を張ったの?」
「レンジロウはそういう男なんだよ。目の前で誰かが傷つけられるのを、黙って見てられないんだ」
「あたし、負けた‥‥マジャに勝てなかった‥‥」
「仕方ないさ。あいつらは‥‥バケモノだ」
無惨に殺されたシスターと子供達。あれは、人のすることではない。
だが、それでも、奴等もこの世界に生きる、同じ種族なのだ。今は勝てない。けれど、奴等だって無敵なわけではない。マジャが取り乱し、隙だらけの姿になった時、エクスにはそれがわかった。
ふと前を見ると、ノルマルは拳を握り、肩を震わせている。それから前へと駆け出し、エクスの胸に飛び込んだ。
「あたし‥‥悔しい!今のあたしは、弱い!何も出来ない!!悔しい、悔しい!!!」
そう泣き叫ぶノルマルの頭をエクスは撫で、
「君だけじゃない。皆、同じだ。俺だって、悔しい‥‥悔しいよ」
左目から、涙が溢れる。
「もうっ!あたくしが今がんばってるのに外野がうるさーい!!」
ウェザは思わずそう叫び、
「本当になんなのかしら!白銀のヨミがあたくしを訪ねて来て、あなた達を助けに行けなんて言って来て、もう意味不明!!!」
それに、エクス達は当然、驚くしかなかった。
なぜ、白銀のヨミがーー‥‥と。
「はあ、はあ‥‥ここまで来たら、大丈夫でしょうか」
レンジロウは言い、泣き喚く十三人の子供達を見る。
「大丈夫、大丈夫よ。あたし達が守ってあげるからね」
ノルマルはその場にしゃがみ、子供達に優しく言った。そんな彼女に、
「おや。意外です。子供に優しいんですね」
と、シーカーが言えば、ノルマルは「ふん」と鼻を鳴らす。
「子供なんてウルサイだけじゃない。何がカワイイのかサッパリだわー」
「ーー!?」
突如、三人の頭上からそんな声がした。慌てて見上げれば、翼を羽ばたかせるマジャの姿があった。
「ーー逃げるわよ!」
ノルマルは言い、ナイフを取り出し、マジャに向かって火の玉を放つ。
「ノルマル殿は魔術が使えるのですか!」
走りながらレンジロウが聞けば、
「珍しいことでもないよ!ちなみに、あたしは下位魔術しか使えないから期待しないで!ほらっ」
走りながら横目に上を見上げれば、
「キャハハ!何よそのちっぽけな術!あーっ、これだから人間は弱いのよ!アタシを地下牢なんて埃っぽい部屋に封印してからなぁぁぁぁぁんにも変わってない!」
高笑いしながらマジャは余裕気に宙を飛んでいる。
「ロンギング国の地下牢に厳重に幽閉されていた極悪人‥‥!それが何故、今は自由なのでありますか!?」
少しでも逃げる時間を稼ごうとレンジロウが聞けば、
「アタシの力が必要だって言って、封印を解いたバカがいるのよ。せっかく三代目ロンギング王がアタシを封印したのにねえ!?全く。でも、三代目のアイツはもう死んでるとか、せっかく生きたまま喰ってやろうと思ってたのに!」
悔しげな表情で笑いながらマジャは言った。
「貴女は無差別に、種族関係なく人を殺しては、人の肉を食べて生きて来たらしいですね。殺した数は千人以上‥‥でしたか?」
シーカーの問いにマジャはうんうんと頷き、
「だって、人ってゴロゴロ増えるじゃないの。ああもう、おいしそうな肉が食べ放題!でも、若い男、カッコいい男しか食べないわよ。汚い奴等は目障りだから目の前から消してやるだけ!そうーーアンタ達みたいな奴等は肉塊にしてゴミ箱行きね!」
ギラッーーと、彼女の鋭く長い爪が伸び、ノルマルの喉元を狙う。「危ない!」と、レンジロウは槍を構え、マジャの爪を弾いた。
「なによぉ、前にリダに一撃でやられてたおじさんじゃない。そんなに死に急いでるわけ?」
「鎧も槍も新調したであります!あなたのような小さな女性に負ける気はしません!」
「あらっ」
マジャは瞬きを数回し、
「おじさん、わかってるじゃん!そう、アタシは小さくてカワイイ女の子!でもね、とーっても強いんだから!」
「ーーっ!」
悦ぶように言いながら、からかうようにマジャはレンジロウの眼前に爪を振り回す。レンジロウはシーカーとノルマルに、ここは自分に任せてくれと目配せした。しかし、レンジロウがマジャに勝てるはずがない。見殺しにしてしまうだけだ。
「馬鹿ね!あたしも加勢するわよ!シーカー!戦えないあんたが子供達を安全なとこに連れて行きなさい!」
ナイフを構え直し、ノルマルが言う。シーカーは肩を竦め、子供達を連れて再び走った。
「あっ!逃がすわけないじゃん!男の子一人必要なんだからーー!?」
マジャはシーカーを追おうとしたが、ノルマルの放つ火の玉に邪魔される。
「あんたの相手はあたし達よ、年増女」
敢えて挑発し、マジャの気をこちらに引き寄せた。思惑通り、マジャは眉間に皺を寄せ、ノルマルを睨み付ける。
「アンタみたいな地味な女に言われたくないわね!キャハハハハハハハ!!」
マジャの笑い声が辺り一面に響き、彼女の両手に黒い光が集まってきた。
「引き裂いてやろうと思ったけど、やめよやめ!塵も残さず潰してやるわ!アンタ達は食料にもならないしねぇ!?」
「ノルマル殿!ここから離れねば!」
レンジロウが言うが、広範囲に集まる光を避けきるにはマジャとの距離が近すぎる。だが、ノルマルはナイフを構えて逃げようとはしない。
「逃げれるわけ、ないじゃない!あたしはもう、逃げたくない!何かを見捨てて、罪を、重ねたくないーー!」
「!?」
彼女が何を言っているのかはわからない。しかし、青の目いっぱいに涙が溢れていた。今まさに放たれようとするマジャの魔術。
レンジロウはノルマルを庇うように、ギュッと目を閉じて彼女に覆い被さった。
「弱い奴等はこの世界に生きてる価値なんかないのよーー!」
マジャは両手一杯に溜めた魔術を二人に向けて放った。
「レンジロウ!退きなさい!」
自分に覆い被さる彼に言うが、彼は離れない。爆発音と共に、激しい爆風が吹き荒れる。
「うっ‥‥ううっ‥‥」
仰向けに倒れ、全身の重みにノルマルは呻き、ゆっくりと目を開けた。自分の上には、レンジロウが覆い被さっている。彼の胸を押し退け、
「れっ、レンジロウ?」
ゆっくりと起き上がった。ぐらりと、押し退けた彼の体は地面に倒れる。
「え?」
ノルマルは目を見開かせた。鎧は砕け、彼の背中が剥き出しになっている。背中の肉が抉れ、骨が突き出ていた。しかし、まだ、息はしている‥‥
「レンジロウ!?うそっ、嘘でしょ!?」
ボロボロと涙を溢し、ノルマルは彼の肩を揺する。返事はなく、ヒューヒューと、喘鳴しか返ってこない。
ザクッ‥‥土を踏み締める音が近づいた。マジャが二人の前に立っている。
「クスクス。凄いじゃない、おじさん。アタシの力によく耐えたわね?女諸共、灰にしてやろうと思ったのにーー‥‥って、わざと手加減してあげたんだけどねぇっ!?だって、この方が死ぬより苦しいでしょ?痛いでしょ?キャハ、キャハハ、キャハハハハハハーー」
「このっ‥‥悪魔ーー!」
ノルマルはレンジロウの体を抱き寄せ、マジャを睨み付けた。
「あらぁ、泣きながら威勢だけはいいわね。安心しなさい、アンタも今から痛い目に合わせてあげる!アタシを侮辱したお礼にねぇ!!」
「‥‥」
マジャの爪が夕陽に照らされて輝く。ノルマルは目を閉じることなく、ただ彼女を睨むことをやめなかった。その手が振り下ろされようとした時、
「ギャアアアアアアアーー!!!?」
ーーザシュッ!!と、斬り付ける音と共に、マジャが急に悲鳴を上げる。
「ノルマル‥‥レンジロウーー!」
「あっ‥‥」
駆け付けたエクスが、魔剣の欠片で打たれた剣でマジャの背中を斬り付けたのだ。マジャは背中からダラダラと血を流し、ギロリとエクスを睨み付ける。
「このっ‥‥餓鬼がぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「くっ‥‥!」
振り翳された爪を、剣で受け止めた。
「リダは何してんだ!!!あの男だけしか眼中に無いってか!?あの役立たずめ!!!!!」
マジャの口調が荒くなり、滅茶苦茶に爪を振り回している。
(リダは戦いに隙を見せなかった。だが、この女は頭に血が上り、動きに隙があるーー!)
幼い頃から剣術を学んで来た。実戦はヨミとの対峙が初めてであったが、動きを制御出来ていないマジャ。それを、今なら斬れるーー。エクスはそう感じ、剣を低く構え、マジャの脇腹に剣を突き刺した。突きが甘かったのか、深くは刺さっていない。しかし、
「あああああああああああああああああ」
狂った機械のようにマジャは叫び、翼を広げ、エクス達を置き去りにして前方へと飛んで行く。彼女の行動がエクスにはわからなかったが、
「エクス!シーカーが子供達を連れて向こうに行ったの!!」
ノルマルの言葉を聞き、エクスは走った。恐らくマジャはこの戦いを捨て、本来の目的である男児一人を連れて行くことを優先したのだろう。
シスター‥‥シェリーがどんな女性だったのかは知らない。だが、半年以上前も、先刻も、その身を張って守ろうとした子達。
リダを足止めし、自分に子供達の安全を託したアリア。
(間に合え、間に合えーー!!!!)
エクスはひたすらに走る。戦場の臭いがどんなものかは知らない。だが、何かが燃えるような臭いが近付いて来た。
「ハハッ、アッハハ。コイツでいいわ」
言葉とは裏腹に、無表情で気を失った一人の少年を抱えるマジャの姿が見える。
「遅かったわね、フードの男。まあ、人間の足で追い付くわけがないけど、そのしつこさと、アタシに傷を負わせたことは褒めてあげるわ!キャハハ!次はお前ら全員‥‥ぶっ殺してやるからナァ?!」
「くそっ!!」
空を飛ばれては、もう追うことは出来なかった。エクスは悔しげに空を見上げ、目の前に視線を戻す。
辺りはマジャの魔術だろう。炎で囲まれていて‥‥
「エクス!無事、でしたか」
シーカーがそう言い、しかし‥‥
「あっ、ああ‥‥」
エクスはその場に崩れ落ちた。
十三人いた子供達。一人は連れ去られ、十人の子供達は腕をもがれ、首をはねられ、心臓を抉り出され‥‥
シーカーの腕の中で、たった二人の少女だけが無事だった。
「すみません‥‥二人しか、守れませんでした」
しかし、そう言ったシーカーも腹部からダラダラと血を流している。マジャの爪にやられたのだろう。
エクスは歯を食い縛り、声を殺して泣いた。
しばらくして、少女二人を連れ、ノルマルとレンジロウが居た場所に戻る。だが、そこには‥‥
「きっ、君は‥‥」
エクスは目を見開かせた。
「まったく!このおじ様は!あたくしが二度も助けてあげてるんだから!何かお礼してもらわないといけないわね!!」
白い翼が大きく開かれ、倒れるレンジロウの背中に治癒術をかけるウェザの姿があったのだ。
「ウェザ‥‥!どうして、ここに!?」
エクスが聞けば、
「久し振りね、王子様!詳しい話は後で!皮膚の再生にあと三時間は掛かるわ!何かすることがあるならそっちを優先して!」
話をする暇はないと、彼女は治癒に専念する。傍では、ぼろぼろに泣いたノルマルが光景を見守っていた。
「エクス‥‥アリアさんとシスターは?」
不意に、シーカーに聞かれ、エクスは俯く。シスターがリダに殺され、アリアが足止めをしてくれていると話した。シーカーは目を閉じ、ノルマルは悔しそうな表情をする。
「俺‥‥教会に行って来る。アリアが心配だ。シーカー‥‥お前も傷を負っているが、ノルマル達を頼む」
エクスに言われ、シーカーは頷いた。
◆◆◆◆◆◆
すっかりと静まり返った天使の村ーー教会。
惨事が起きた場所にエクスが戻ると、倒れたシスターの亡骸の側に座り込み、項垂れるアリアの姿があった。
「‥‥エクスさん」
彼女は顔を上げ、疲れたような顔で彼を見る。
「はは。あなた達に関わったばかりに、こんな‥‥こんな‥‥」
アリアはゆっくりと立ち上がり、エクスの頬を殴った。
「あんた達なんか助けなけりゃ、シェリーは死ななかった!!死ななかったんだーー!!!!くそっ、くそぉっ‥‥!!!」
涙も枯れ果てたのか、アリアはエクスの胸を何度も何度も叩く。エクスは何も言わず、ただそれを受け止めた。
アリアがリダに目をつけられなければ、シスターは死ななかっただろう。再び、肉体を弄ばれたかもしれないが、命までは、奪われなかっただろう。そう思うと、
「ごめん‥‥ごめんな、アリア‥‥」
エクスも涙を流し、ただ、謝るしかなくて。
「子供達を、二人しか、救えなかった。俺が、俺が強ければ‥‥強かったら、シスターのことも、守れたのに‥‥」
「‥‥っ」
それを聞き、アリアはヘナヘナとその場に崩れ落ち、
「なんであなたが泣くんですか。泣きたいのは、私ですよ‥‥私の方が‥‥ううっ‥‥うあああっ‥‥」
声を出して、泣いた。それをエクスは、声を掛けず、静かに聞いてやることしか出来ない。
何も守れず、奪われただけの時間。
エクスはシスターの転がる首の側へ行き、初めて彼女の顔を見た。大きく見開かれた漆黒の瞳。恐怖に開いたままの口。
「君の恐怖が、苦しみが‥‥どうか、昇華され、子供達と共に、平穏へと行けますよう」
そっと、彼女の頭に触れ、祈るように言った。アリアはそんな彼を見つめ、額に手を当てる。
教会の庭にシスターの亡骸を葬り、子供達の亡骸もここに連れて来ようとエクスは言った。道中、アリアは静かに口を開く。
「彼女はシェリーと言って、元は天使の村の孤児の一人だったんです。経営していた孤児院の先生が高齢で亡くなって、最年長の彼女が皆のマザーになってあげた。実は、私も孤児院出身で、彼女とは家族のように育ったんです」
それを聞き、エクスは静かに頷いた。
「でね、もっと皮肉な話があるんですよ。聞きたいですか?」
ずいっと、アリアがエクスの眼前に人差し指を持ってきたので「なっ、なんだ?」と、エクスは不思議そうにする。
「私が孤児になった理由です。私が幼い頃、私の両親はあいつーーリダに殺されたんですって!笑えるでしょう?」
アリアはおかしそうに笑って言うが、それを聞いたエクスは絶句するしかなかった。
「だから関わりたくなかった。半年以上前にシェリーがあんな目に合わされても、リダには関わりたくなかった。でも、もしかしたら、顔も覚えてない両親が、私に復讐しろと言ってるのかもしれませんね。自分達の仇を討て‥‥と」
やれやれとアリアは首を横に振る。それから、申し訳なさそうにエクスを見て、
「あなたは以前、シェリーを助けてくれた。それに‥‥私があなた達を助けていようがいまいが、私がリダに目をつけられようがられまいが‥‥シェリーは頑なに子供達を守ったはず。いずれ、こんな結末になっていたかもしれない。だから、さっきはすみませんでした‥‥私が弱いからダメだった。迷いなく剣を振れたら良かった‥‥ってか、あなたはウィシェ王子でしたよね!!!すっ、すみません、なんか、ほんと、失礼なことばっかり!!!」
王子の頃とは全く外見の違う彼を、どうしても別人に捉えてしまい、アリアは慌てて頭を下げた。
「いや、構わない。俺のことは王子ではなく、ただのエクスだと思ってくれ。それに、君の言う通り、巻き込んだのは俺達だ。だから、恨んでくれて構わない。君のことも、シスターのことも、子供達のことも‥‥本当にすまなかった」
「‥‥」
「それより、リダとの戦いは大丈夫だったか?よく、無事だったな」
「あっ、あはっ、はははは‥‥」
先刻の事を思い出し、アリアは苦笑いをする。
「どうした?顔色が悪いぞ。まさか、何かあったのか!?怪我でも‥‥」
「なっ、なんでも!なんでもありません!何もされてません!!!!!」
「本当か?だが、まだ目をつけられているんじゃないのか?」
「うっ‥‥たぶん」
そうこう話している内に、二人はシーカー達の元に戻った。ウェザはまだ、レンジロウを治癒している。
「はあ‥‥本当に、無茶する人達ですね」
未だ、背中から剥き出たレンジロウの骨を目を細めて見つめ、アリアはため息を吐いた。それから、気を失ったままの、二人の少女を見つめ、
「‥‥シェリー」
友人の名前を静かに呟く。
「‥‥エクス」
すると、レンジロウの傍で目を腫らしたノルマルが立ち上がり、
「レンジロウ、あたしを庇って‥‥なんでなの?あたし達は出会ってまだ、数週間なのに、なんで命を張ったの?」
「レンジロウはそういう男なんだよ。目の前で誰かが傷つけられるのを、黙って見てられないんだ」
「あたし、負けた‥‥マジャに勝てなかった‥‥」
「仕方ないさ。あいつらは‥‥バケモノだ」
無惨に殺されたシスターと子供達。あれは、人のすることではない。
だが、それでも、奴等もこの世界に生きる、同じ種族なのだ。今は勝てない。けれど、奴等だって無敵なわけではない。マジャが取り乱し、隙だらけの姿になった時、エクスにはそれがわかった。
ふと前を見ると、ノルマルは拳を握り、肩を震わせている。それから前へと駆け出し、エクスの胸に飛び込んだ。
「あたし‥‥悔しい!今のあたしは、弱い!何も出来ない!!悔しい、悔しい!!!」
そう泣き叫ぶノルマルの頭をエクスは撫で、
「君だけじゃない。皆、同じだ。俺だって、悔しい‥‥悔しいよ」
左目から、涙が溢れる。
「もうっ!あたくしが今がんばってるのに外野がうるさーい!!」
ウェザは思わずそう叫び、
「本当になんなのかしら!白銀のヨミがあたくしを訪ねて来て、あなた達を助けに行けなんて言って来て、もう意味不明!!!」
それに、エクス達は当然、驚くしかなかった。
なぜ、白銀のヨミがーー‥‥と。
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