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第二章【切望の国】
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「天魔歴1207年、か」
部屋の中でソファーに寝転がり、パラパラと歴史書を捲る。
「こっち側の歴史はまだわからないことが多い。英雄‥‥全く、真逆だな」
英雄は、世界を救う存在。
命を懸けて、大切なものを守る存在。
『命を救うだけが、救いじゃない』
遥か遠い昔に自分が言った言葉を思い出す。嗚呼、本当に、真逆だ。
ーーこんなもの、読んだところで仕方がないと本を放り投げた。
「はあ‥‥しんどい。なんで僕がこんな目に。大体さぁ、幸せに生きてる奴らがいるじゃないか。なんで僕はダメなわけさ」
一人になると、どうしても愚痴ばかり出てしまう。
「僕より酷い罪人ですら全てを忘れて生きてるってのに‥‥何がダメなんだよ。全て終わったはずだ。何万もの時を経て、壊れた魂はようやく赦されて、なのに‥‥君はあの時すでに‥‥駄目だったのか?」
頭の中に、一人の男の姿が浮かんだ。ソートゥの兄の姿。
「ウィシェ・ロンギング‥‥お前の存在が、邪魔だ。お前がいなくなれば‥‥彼女は幸せになれるはずだ。いや、もう、遅いのか?」
ため息を吐くことしか出来ない。
何が正しいかなんてわかっている。悪が何かなんてわかっている。
シックスギアなんて好き放題している連中。王が死んだだけで簡単に崩壊する秩序。
「でも僕はこの立ち位置から動くわけにはいかない‥‥いや、ははっ、何を正常振ってるんだか」
ソファーから立ち上がり、派手なオレンジ色の髪が揺れる。
「僕は元から悪役だったな!ははは、切望の国ならば、何を熱心に望んでもいいんだろう?なら、僕は僕の望みを叶えるまでさ!」
この立ち位置に、迷いなどない。
自分の望みだけを考え、パンプキンは立ち上がり、窓の外から雨空を見上げた。
第二章・完
部屋の中でソファーに寝転がり、パラパラと歴史書を捲る。
「こっち側の歴史はまだわからないことが多い。英雄‥‥全く、真逆だな」
英雄は、世界を救う存在。
命を懸けて、大切なものを守る存在。
『命を救うだけが、救いじゃない』
遥か遠い昔に自分が言った言葉を思い出す。嗚呼、本当に、真逆だ。
ーーこんなもの、読んだところで仕方がないと本を放り投げた。
「はあ‥‥しんどい。なんで僕がこんな目に。大体さぁ、幸せに生きてる奴らがいるじゃないか。なんで僕はダメなわけさ」
一人になると、どうしても愚痴ばかり出てしまう。
「僕より酷い罪人ですら全てを忘れて生きてるってのに‥‥何がダメなんだよ。全て終わったはずだ。何万もの時を経て、壊れた魂はようやく赦されて、なのに‥‥君はあの時すでに‥‥駄目だったのか?」
頭の中に、一人の男の姿が浮かんだ。ソートゥの兄の姿。
「ウィシェ・ロンギング‥‥お前の存在が、邪魔だ。お前がいなくなれば‥‥彼女は幸せになれるはずだ。いや、もう、遅いのか?」
ため息を吐くことしか出来ない。
何が正しいかなんてわかっている。悪が何かなんてわかっている。
シックスギアなんて好き放題している連中。王が死んだだけで簡単に崩壊する秩序。
「でも僕はこの立ち位置から動くわけにはいかない‥‥いや、ははっ、何を正常振ってるんだか」
ソファーから立ち上がり、派手なオレンジ色の髪が揺れる。
「僕は元から悪役だったな!ははは、切望の国ならば、何を熱心に望んでもいいんだろう?なら、僕は僕の望みを叶えるまでさ!」
この立ち位置に、迷いなどない。
自分の望みだけを考え、パンプキンは立ち上がり、窓の外から雨空を見上げた。
第二章・完
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