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第一章【王殺し】
1―6
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ヨミと対峙してから五日後。
イーストタウン地方の町や村へ赴いたが、これといった成果はなかった。
どこへ行っても、シックスギアに関する似たような話や、新たな王、ソートゥが世界の秩序を壊そうとしているーーなんて、そんな話題ばかり。
煮え切らない思いを抱えたまま、エクス達は‥‥
「どうでありますかエクス殿!イノリの手料理は最高でありましょう!!」
レイリルの町にある酒場で、レンジロウは酒を煽りながら声高く言った。
ーーウエストタウン地方。
それは、昔から変わらずこの大地に留まる場所。かつて、人間達が暮らした大地。
「もうっ!お父さんったら飲み過ぎよ!」
肩まで伸びる緑の髪。紅色のウェイトレスの制服を着た少女が頬を膨らませながら言う。
「いやぁー‥‥娘が酒場で働き出すと言った時は反対だったのですが、マスターも店員も皆さん女性で、よくして頂いているようで‥‥」
イノリという少女は、先日レンジロウが話していた、十五歳になる娘だった。
宛のないエクスとシーカーは、レンジロウに自分の故郷に来てみませんかと誘われ、現在ここにいる。
「‥‥これはこのまま食べるのか?」
串に刺さった焼いたイカや野菜を見て、エクスは怪訝そうな顔をしたが、
「食わず嫌いはダメですよー、ほらっ」
シーカーがイカの丸焼きをエクスの口に突っ込んだ。
「むぐぅっ‥‥!‥‥んっ、うまいな、これ」
「そうでしょうとも!愛娘が作ったのはなんでも」
「それ、私が焼いたんじゃないからね?」
昼下がりの賑わいのない酒場で、時間が過ぎていき、
「お二人はこれからどうするか決まりましたかな?」
「いえ、しかし、せっかくウエストタウン地方に来ましたし、この辺りを散策してみようと思います」
「ほう!考古学の生業がどのようなものか、実は詳しくはないのですが、なかなか大変ですなー」
と、レンジロウとシーカーが話し、エクスは物珍しい食事に興味津々だった。
すると、店の入り口のベルが鳴り、客が一人入ってくる。
「女将さーん。依頼金、貰いに来ましたよー」
そう言ったのは、黒髪、黒服に身を包んだ若者だった。
背中には、布でぐるぐる巻いた先の折れた剣を背負い、大袋をずるずると引きずっている。
「依頼金?」
エクスが首を傾げると、
「ここは酒場とギルドを併設してるんです。賞金首とか、魔物討伐とか、困ってる人が依頼を持って来て、それを請け負ったりとか‥‥」
イノリが説明する。
すると、店の奥からドスドスという足音と共に、大柄な女が現れた。化粧は濃く、真っ赤な口紅、ウェイトレス達と同じ色をした、体格にマッチした紅色のロングスカートを着こなしていた。
「またあんたかい、アリア。流石は金にがめつい奴だ」
女将は呆れるように言い、
「だって、世の中、金ですから!はい、ドラゴンの爪を二本」
と、鼻唄を歌うように明るく言い、引きずっていた重そうな大袋を指差す。女将が袋の中を確認すると、十センチ程の大きさがある爪が二本出て来た。
「はいはい確かに。じゃあ、依頼主に渡しておくよ。額は、三万ルビーだったね」
「ちえっ。死に物狂いでドラゴンから貰ったのに、三万か。まあ、塵も積もればなんとやら」
アリアはそう言いながら、酒場に先客がいることに気づく。しかし、エクス達を見て、一瞬固まった。
「?」
変わらずフードを被り、顔を隠したままのエクスは首を傾げる。アリアは慌てるように女将に視線を戻し、用意された三万ルビーを受け取った。
「あーあー、ありがとうございます!じゃあ、次の依頼を探そうかなー」
そう言って、カウンターにある冊子を手に取り、ページをめくる。
「そんなに金が欲しいなら、シックスギアの首でも持って来たらいいじゃないか。特に、何十年も捕まらない賞金首、リダなんて、捕まえりゃ一生遊んで暮らせる額だよ」
女将が言うが、
「簡単に言わないで下さーい。それに、何度も言うけど私はシックスギアなんて気狂い集団には関わりたくないんです」
「はっはっは。冗談だよ。シックスギア関連の依頼を受ける物好きなんてだーれもいやしないさ。いたら、こんな日々になっちゃいないからね」
アリアと女将の会話を聞き、
「シックスギア関連の依頼とは、どのようなものがあるのです?」
シーカーが口を挟んだ。
「ん?そうだねぇ。言ったように、賞金首リダ。新たに、幽閉されていたマジャが世に繰り出て、彼女も賞金首。あとは、シックスギアの誰か一人でも倒した奴には報酬金が出る。金はギルドを取り締まるギルド長が出してくれるからね、たんまり出るはずだよ。まあ、無理な話だけどね」
女将が笑いながら言うと、
「いやはやしかし!五日前、白銀のヨミと対峙したのですが、エクス殿が互角に戦っていたのですよ!」
なんて、酒に酔ったレンジロウが言い、
「おい‥‥あれは互角なんかじゃない。なんとか凌いだだけだ‥‥勝てるはずがないだろう」
と、エクスは肩を竦める。
「おやまあ、何があってそんなことになったかは知らないが、気を付けなよ。生きたいんなら、シックスギアは絶対に敵に回しちゃいけない。それよりもまず、出会っちゃいけない」
「わかってる。ところで、俺はヨミとリダ、マジャとマータ、ルヴィリという名しか知らないんだが、あと一人は誰なんだ?」
エクスが女将に聞くと、
「そうだね。力量の知れないパンプキンという呼び名の少年なんだけど、呼び名の通り、詳しい情報はないんだ」
「パンプキン‥‥カボチャ?」
エクスは目を丸くした。
「髪の色が派手なオレンジ頭らしくてね。それでパンプキンと呼ばれているのか、自ら名乗っているのかは謎だねえ‥‥」
「名前はかわいいのにね!」
イノリがそう言う。
「さてと。じゃあ次は、墓場掃除でもしようかなー」
次なる依頼を見つけ、アリアは言った。それに、
「墓場‥‥この辺りで言うと、もしや銅鉱山ですか?」
「えっ?ああ。そうですね」
急にシーカーに話しかけられ、アリアは不思議そうに頷く。
「墓場掃除は必要ありませんよ」
「えっ?でも、大昔のらしくて、誰も足を踏み入れてないからって書いてますけど」
アリアは依頼の書かれたページをシーカーに見せた。
「私はあそこに住んでいるので、手入れはちゃんとしています」
「へ!?」
「なんと、シーカー殿とエクス殿は銅鉱山にお住まいで!?」
アリアとレンジロウは驚き、エクスはため息を吐いた。
シーカーが隠れ家と言い、エクスを治療した場所。そこは紛れもなく銅鉱山の遥か底だった。なぜかそこには実験室のような場所や、人が暮らすような部屋もあったのだ。
遥か昔、英雄と呼ばれた者がそこに暮らしていたーーという伝承があるが、真実はわからない。
当然アリアは半信半疑だが、シーカーの話にあまり首を突っ込まないでおこうと思ったのか、
「えーっと‥‥じゃあ、どうしようかな?無能な私に出来る依頼は‥‥」
「貴方、ドラゴンを倒したんでしょう?」
シーカーに聞かれ、
「まさか!ドラゴンが寝てる間に巣に入らせてもらって、ゴロゴロ折れた爪をこっそり拝借して来たんですー。もうほんと、死に物狂いでしたよ!」
「そっ、その無謀‥‥いや、勇気が凄いですな。下手したら喰われますよ‥‥」
アリアに対し、レンジロウは呆れ混じりに言った。
「アリアはすごいんだよね!お金の為ならなんでもできる!」
「あっはは。それ褒めてるのかな、イノリさん」
仲良さげな二人を見て、
「なっ、なんだイノリ!その子とやけに親しいじゃないか!?」
酒の手を止め、レンジロウはわなわなと腕を震わせる。
「そりゃ、アリアはギルドの常連さんだもの。たまにお茶にだって行くし、私達、友達だよね」
「まあ、そうなるのかなー」
「ああああああああああああああ」
微笑み合う二人を見て、レンジロウは残りの酒を一気に飲み干し、テーブルに突っ伏した。
「レンジロウはどうしたんだ?」
「親心ってやつですよ」
不思議そうに言うエクスに、やれやれとシーカーは答える。アリアとイノリも目を丸くしながら、
「まあ、他でも仕事請け負ってるし、また今度決めに来るよ」
と、アリアは言い、酒場から出て行った。
酔い潰れたレンジロウはイノリが見ておくと言い、エクスとシーカーも酒場から出る。
すると、シーカーがニヤニヤとこちらを見ながら、
「エクス。まだまだ問題だらけだというのに、随分と楽しそうな顔をしていますよ。イカの丸焼きを追加注文し、挙げ句イチゴミルクにハマるという‥‥」
なんて言われて、
「ばっ‥‥!なんというか、食べ物も‥‥賑やかなのも、新鮮なだけだ!」
顔を真っ赤にするエクスを見て、シーカーはニヤニヤ笑った。
世界では今日も誰かが死んでいるかもしれないのに、ここは、今は平和だ。
わからないが、親というのはこんな気持ちになるのかもしれない。このまま、エクスはウィシェに戻らず、このまま生きてもいいんじゃないか、なんてシーカーは思ってしまう。
別に、ウィシェ王子がいなくても、世界は回るのだから。
「なんだよ、ニヤニヤして気持ち悪いな」
「ふふ。気持ち悪いは私の代名詞ですから」
「!?」
エクスは横目でシーカーを睨み、静かに思い出す。
家族四人で食事をした日を。
見送ることすら出来なかった父母と、
「ウィシェお兄さま!」
今尚、国に取り残された年若い妹のこと。
そして、
(名を変え、姿を隠し、このままじゃ駄目だとわかっているのに‥‥情報を集めたところで、何が出来ると言うんだ‥‥)
今の自分の無力さを。
イーストタウン地方の町や村へ赴いたが、これといった成果はなかった。
どこへ行っても、シックスギアに関する似たような話や、新たな王、ソートゥが世界の秩序を壊そうとしているーーなんて、そんな話題ばかり。
煮え切らない思いを抱えたまま、エクス達は‥‥
「どうでありますかエクス殿!イノリの手料理は最高でありましょう!!」
レイリルの町にある酒場で、レンジロウは酒を煽りながら声高く言った。
ーーウエストタウン地方。
それは、昔から変わらずこの大地に留まる場所。かつて、人間達が暮らした大地。
「もうっ!お父さんったら飲み過ぎよ!」
肩まで伸びる緑の髪。紅色のウェイトレスの制服を着た少女が頬を膨らませながら言う。
「いやぁー‥‥娘が酒場で働き出すと言った時は反対だったのですが、マスターも店員も皆さん女性で、よくして頂いているようで‥‥」
イノリという少女は、先日レンジロウが話していた、十五歳になる娘だった。
宛のないエクスとシーカーは、レンジロウに自分の故郷に来てみませんかと誘われ、現在ここにいる。
「‥‥これはこのまま食べるのか?」
串に刺さった焼いたイカや野菜を見て、エクスは怪訝そうな顔をしたが、
「食わず嫌いはダメですよー、ほらっ」
シーカーがイカの丸焼きをエクスの口に突っ込んだ。
「むぐぅっ‥‥!‥‥んっ、うまいな、これ」
「そうでしょうとも!愛娘が作ったのはなんでも」
「それ、私が焼いたんじゃないからね?」
昼下がりの賑わいのない酒場で、時間が過ぎていき、
「お二人はこれからどうするか決まりましたかな?」
「いえ、しかし、せっかくウエストタウン地方に来ましたし、この辺りを散策してみようと思います」
「ほう!考古学の生業がどのようなものか、実は詳しくはないのですが、なかなか大変ですなー」
と、レンジロウとシーカーが話し、エクスは物珍しい食事に興味津々だった。
すると、店の入り口のベルが鳴り、客が一人入ってくる。
「女将さーん。依頼金、貰いに来ましたよー」
そう言ったのは、黒髪、黒服に身を包んだ若者だった。
背中には、布でぐるぐる巻いた先の折れた剣を背負い、大袋をずるずると引きずっている。
「依頼金?」
エクスが首を傾げると、
「ここは酒場とギルドを併設してるんです。賞金首とか、魔物討伐とか、困ってる人が依頼を持って来て、それを請け負ったりとか‥‥」
イノリが説明する。
すると、店の奥からドスドスという足音と共に、大柄な女が現れた。化粧は濃く、真っ赤な口紅、ウェイトレス達と同じ色をした、体格にマッチした紅色のロングスカートを着こなしていた。
「またあんたかい、アリア。流石は金にがめつい奴だ」
女将は呆れるように言い、
「だって、世の中、金ですから!はい、ドラゴンの爪を二本」
と、鼻唄を歌うように明るく言い、引きずっていた重そうな大袋を指差す。女将が袋の中を確認すると、十センチ程の大きさがある爪が二本出て来た。
「はいはい確かに。じゃあ、依頼主に渡しておくよ。額は、三万ルビーだったね」
「ちえっ。死に物狂いでドラゴンから貰ったのに、三万か。まあ、塵も積もればなんとやら」
アリアはそう言いながら、酒場に先客がいることに気づく。しかし、エクス達を見て、一瞬固まった。
「?」
変わらずフードを被り、顔を隠したままのエクスは首を傾げる。アリアは慌てるように女将に視線を戻し、用意された三万ルビーを受け取った。
「あーあー、ありがとうございます!じゃあ、次の依頼を探そうかなー」
そう言って、カウンターにある冊子を手に取り、ページをめくる。
「そんなに金が欲しいなら、シックスギアの首でも持って来たらいいじゃないか。特に、何十年も捕まらない賞金首、リダなんて、捕まえりゃ一生遊んで暮らせる額だよ」
女将が言うが、
「簡単に言わないで下さーい。それに、何度も言うけど私はシックスギアなんて気狂い集団には関わりたくないんです」
「はっはっは。冗談だよ。シックスギア関連の依頼を受ける物好きなんてだーれもいやしないさ。いたら、こんな日々になっちゃいないからね」
アリアと女将の会話を聞き、
「シックスギア関連の依頼とは、どのようなものがあるのです?」
シーカーが口を挟んだ。
「ん?そうだねぇ。言ったように、賞金首リダ。新たに、幽閉されていたマジャが世に繰り出て、彼女も賞金首。あとは、シックスギアの誰か一人でも倒した奴には報酬金が出る。金はギルドを取り締まるギルド長が出してくれるからね、たんまり出るはずだよ。まあ、無理な話だけどね」
女将が笑いながら言うと、
「いやはやしかし!五日前、白銀のヨミと対峙したのですが、エクス殿が互角に戦っていたのですよ!」
なんて、酒に酔ったレンジロウが言い、
「おい‥‥あれは互角なんかじゃない。なんとか凌いだだけだ‥‥勝てるはずがないだろう」
と、エクスは肩を竦める。
「おやまあ、何があってそんなことになったかは知らないが、気を付けなよ。生きたいんなら、シックスギアは絶対に敵に回しちゃいけない。それよりもまず、出会っちゃいけない」
「わかってる。ところで、俺はヨミとリダ、マジャとマータ、ルヴィリという名しか知らないんだが、あと一人は誰なんだ?」
エクスが女将に聞くと、
「そうだね。力量の知れないパンプキンという呼び名の少年なんだけど、呼び名の通り、詳しい情報はないんだ」
「パンプキン‥‥カボチャ?」
エクスは目を丸くした。
「髪の色が派手なオレンジ頭らしくてね。それでパンプキンと呼ばれているのか、自ら名乗っているのかは謎だねえ‥‥」
「名前はかわいいのにね!」
イノリがそう言う。
「さてと。じゃあ次は、墓場掃除でもしようかなー」
次なる依頼を見つけ、アリアは言った。それに、
「墓場‥‥この辺りで言うと、もしや銅鉱山ですか?」
「えっ?ああ。そうですね」
急にシーカーに話しかけられ、アリアは不思議そうに頷く。
「墓場掃除は必要ありませんよ」
「えっ?でも、大昔のらしくて、誰も足を踏み入れてないからって書いてますけど」
アリアは依頼の書かれたページをシーカーに見せた。
「私はあそこに住んでいるので、手入れはちゃんとしています」
「へ!?」
「なんと、シーカー殿とエクス殿は銅鉱山にお住まいで!?」
アリアとレンジロウは驚き、エクスはため息を吐いた。
シーカーが隠れ家と言い、エクスを治療した場所。そこは紛れもなく銅鉱山の遥か底だった。なぜかそこには実験室のような場所や、人が暮らすような部屋もあったのだ。
遥か昔、英雄と呼ばれた者がそこに暮らしていたーーという伝承があるが、真実はわからない。
当然アリアは半信半疑だが、シーカーの話にあまり首を突っ込まないでおこうと思ったのか、
「えーっと‥‥じゃあ、どうしようかな?無能な私に出来る依頼は‥‥」
「貴方、ドラゴンを倒したんでしょう?」
シーカーに聞かれ、
「まさか!ドラゴンが寝てる間に巣に入らせてもらって、ゴロゴロ折れた爪をこっそり拝借して来たんですー。もうほんと、死に物狂いでしたよ!」
「そっ、その無謀‥‥いや、勇気が凄いですな。下手したら喰われますよ‥‥」
アリアに対し、レンジロウは呆れ混じりに言った。
「アリアはすごいんだよね!お金の為ならなんでもできる!」
「あっはは。それ褒めてるのかな、イノリさん」
仲良さげな二人を見て、
「なっ、なんだイノリ!その子とやけに親しいじゃないか!?」
酒の手を止め、レンジロウはわなわなと腕を震わせる。
「そりゃ、アリアはギルドの常連さんだもの。たまにお茶にだって行くし、私達、友達だよね」
「まあ、そうなるのかなー」
「ああああああああああああああ」
微笑み合う二人を見て、レンジロウは残りの酒を一気に飲み干し、テーブルに突っ伏した。
「レンジロウはどうしたんだ?」
「親心ってやつですよ」
不思議そうに言うエクスに、やれやれとシーカーは答える。アリアとイノリも目を丸くしながら、
「まあ、他でも仕事請け負ってるし、また今度決めに来るよ」
と、アリアは言い、酒場から出て行った。
酔い潰れたレンジロウはイノリが見ておくと言い、エクスとシーカーも酒場から出る。
すると、シーカーがニヤニヤとこちらを見ながら、
「エクス。まだまだ問題だらけだというのに、随分と楽しそうな顔をしていますよ。イカの丸焼きを追加注文し、挙げ句イチゴミルクにハマるという‥‥」
なんて言われて、
「ばっ‥‥!なんというか、食べ物も‥‥賑やかなのも、新鮮なだけだ!」
顔を真っ赤にするエクスを見て、シーカーはニヤニヤ笑った。
世界では今日も誰かが死んでいるかもしれないのに、ここは、今は平和だ。
わからないが、親というのはこんな気持ちになるのかもしれない。このまま、エクスはウィシェに戻らず、このまま生きてもいいんじゃないか、なんてシーカーは思ってしまう。
別に、ウィシェ王子がいなくても、世界は回るのだから。
「なんだよ、ニヤニヤして気持ち悪いな」
「ふふ。気持ち悪いは私の代名詞ですから」
「!?」
エクスは横目でシーカーを睨み、静かに思い出す。
家族四人で食事をした日を。
見送ることすら出来なかった父母と、
「ウィシェお兄さま!」
今尚、国に取り残された年若い妹のこと。
そして、
(名を変え、姿を隠し、このままじゃ駄目だとわかっているのに‥‥情報を集めたところで、何が出来ると言うんだ‥‥)
今の自分の無力さを。
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