6 / 40
第一章【王殺し】
1―4
しおりを挟む
美しい金の髪と目をした天使の女性がこちらに微笑んでいる。
「おや‥‥そこは、止めてやる、とかではないの?」
女性は目を丸くし、
「‥‥それは‥‥興味深いプロポーズだね」
それから、クスクスと笑う。
だが、すぐに女性の顔は紅に塗り潰された。
「ーー!!?」
女性は、誰かの名前を悲痛な声で叫ぶ。だが、紅で、見えない。
「私はっ!ーーさんが好きです!初めて会った時から好きでした!!だから、あなたのことをまだまだ全然知らないから、もっと話も沢山したいから!!ーーさんと一緒に居るーーさんはもっと大好きだから!!だから、私は絶対に諦めません!!」
人間の少女が、諦めないと何度も叫んでいる。
「この世界に、悪い奴なんかいない。ただ‥‥生きることに必死な奴らが居るだけさ。あんただって憎悪だなんだ言うけど、それを頼りに、今まで必死に生きてたんだろ?」
人間の少年が、微笑む。
「オレは言ったぜ。もし、どんなことがあろうとも、オレだけはあんたの前に何度でも立ってやる。何回でもオレの意思を伝えてやる。あんたに届くまで、絶対に」
まるで、ヒーローのような少年だ。
「‥‥わかった。頼まれてあげる。ボクは‥‥ずっと信じて待つから。だから、行ってらっしゃい、ーー」
まるで、普通の女の子みたいに笑った魔族の少女。
守りたい人。愛しい人。誰よりも、かけがえのない大切な、人。
満点の星と月の光が輝く空の下、ずっと、傍らにいてくれた。
だから、『これまで見守ってくれて、本当にありがとう』
ーー沈む、沈む。温かく美しい光景が、黒く染まる。
「‥‥僕にはーーみたいに魔術の才も無い。だから人間達は天使や魔族からなんとか奪った四肢やら‥‥目やらを、僕に移植したのさ。わざわざ僕自身のそれを切り離して、抉り取って‥‥ね。ねえ、ネクロマンサーくん。君の記憶にあるんじゃないの?血みどろの記憶がさぁ‥‥」
問い掛ける。長身の男に。
瞼を開け、ぼんやりする視界の中、
「おや、起きましたか、エクス」
やんわりと微笑むシーカーの姿と重なった。
「‥‥ネクロ、マンサー‥‥」
「え?」
エクスはその名を紡ぎ、再び眠りに落ちる。
布団の中、規則正しい寝息を立てて眠るエクスの左目に触れ、
「‥‥成る程。その目の効果、ですかね。ふふふ、まだまだ使い道はありそうですねぇ」
シーカーは一人、静かに笑った。
数分して、ガチャリと部屋の扉が開く。
「あらあら。王子様はまだ寝てるの」
呆れるような声で、ノルマルが部屋に入った。しかし、シーカーはそれをスルーし、
「それで、どうでした?」
「とりあえず、リダとマジャは村から去ったみたい。皆、怯えてなかなか話してくれなかったけど、マジャは食事の為にこの村に立ち寄っただけらしい。いや、ある意味リダもか‥‥」
ノルマルは深く息を吐く。
「ノルマルさん。貴女はシックスギアに敵いそうですか?」
「正直無理。あたしは普通のか弱い女なんでね。時間稼ぎはできても、捕まって食われて終わりかも」
「おやおや‥‥期待外れですね」
シーカーは肩を竦めた。
「でも、あたしには守らなきゃいけないものがある。強大な力に逃げたりはしないよ」
「成る程」
「あんたは実際はどうなの?築き上げられた平和を崩すことは許せないみたいに言ってたけど、本当はこの王子様を使って何をするつもり?こんな風に生き長らえさせて」
ウィシェ王子の目は青い。けれど金の目をしている。腕や足から聞こえる軋むような音。
崩れた肉体を弄ったことはなんとなく理解できる。
それは、ノルマルがシーカーの正体を知っているから、であるが。
「残念ながら、私は何も考えていませんよ。それはもう、昔から」
シーカーはそう言い、人差し指を自身の口元に当て、黙るよう促す。今度こそ、エクスが目を覚ましたようだ。
「ううっ‥‥」
額に手を当て、気分の悪そうな顔をしながらエクスは体を起こす。
「大丈夫ですか、エクス」
シーカーに聞かれ、
「なんだか夢を見た気がするが‥‥いや、そんなことよりも、人が、死んだ‥‥」
先程の光景を思い出し、再び嘔気に襲われる。
「ちょっと王子様!吐くのはもう止してよ」
ゲッ‥‥と、嫌な顔をしてノルマルが言った。
「‥‥あれが、シックスギア。いっ、いったい、どうなって‥‥」
「考えても仕方ありません。貴方は奴等を避けながらソートゥ王女を救うのみです」
「‥‥」
俯き、沈黙してしまう彼にノルマルはため息を吐く。
「所詮は温室育ちの王子様か。ちょっと外に出て、今の民の声でも聞いてみたら?それで、怖いんなら王子は死んだままにしな。あたしは別の方法を一人で考えるまでさ」
「‥‥」
エクスは立ち上がり、フラフラする足取りで歩き出した。扉を開き、夕暮れの村へと踏み出す。
風に乗って、鉄のような臭いが鼻を掠めた。先程、少年の首から吹き出していた血が、地面に黒くこびりついている。少年の遺体は、どうなったのだろう。
聞いたことがある。遠い昔、魔族は同族を食っていたと。まさか、全て‥‥
村の中はしんと静まり返っていた。恐怖した村人達は皆、家の中に避難しているのだろう。
平和だった、本当に。ついこの間まで、平和だったんだ。
昔々、争いの時代を生きた者達。そんなの、知らない。
沈み行く夕陽を、ぼんやりと見つめた。
(あのまま‥‥死んでいたら良かった。父上と母上の元に、逝っていれば良かった。だが、妹が‥‥いや、ソートゥだって、生きているのかわからない。わからないことの為に、俺は、何をするつもりなんだ‥‥)
ギリッと、歯を軋め、涙がこぼれ落ちる。
「なんということでありますか!自分が不在だったばかりに、こんなことが!」
「‥‥?」
誰かの悔しそうな叫び声に、エクスは顔を上げた。
「いや‥‥巡回兵のあんたがいたところで、何も変わらなかったさ‥‥」
村人の男が諦めに似た声で言い、
「そうでありますが、それでも許せません‥‥!道徳を無視したこんな行為!!」
鎧を着た男が悔いるように叫んでいる。しかし、
「‥‥今は、そっとしといてくれ」
村人の男はそう言い、肩を落としながら家の中へと入った。
鎧を着た男は俯き、それからこちらに振り向く。振り向けば、フードを深く被った怪しげな男ーーエクスの姿を見て目を丸くする。
「この村の人ではありませんね?」
「‥‥あ、ああ、偶然来て‥‥そこの、宿に」
エクスは顔を隠しながら小さな声で言った。
「なるほど。それで、惨状を目にしましたか‥‥本当に、惨いことです。少年一人の尊い命と、女人に恐怖を植え付けて‥‥」
「女人に‥‥?」
「‥‥見てはいませんでしたか?いえ、見ていないのであれば、あなたのような若き少年が知る必要はないでしょうな」
鎧の男はそう言うが、
「教えてくれ‥‥何が、あったんだ。俺は、宿の窓から光景を見ただけだった。少年が、死ぬ現場だけ、見た。シックスギアのことも、詳しく知らない」
「‥‥うーむ‥‥」
鎧の男はしばらく考え込み、
「魔族のマジャは、ロンギング国の地下牢に極秘に、厳重に幽閉されていた極悪人であります。奴の食事は、『ヒト』なのです」
ヒトーー人間、魔族、天使を示しているのだろう。
だが、ロンギング国に住まうエクスは地下牢へ行ったことはなかったし、幽閉されていた者達の存在も知らなかった。
皮肉にも、視界を奪われた状態で数日、自分が幽閉されることとなったが‥‥
「それから、人間と天使の血を持つリダ。しかし所業は悪魔に近い。奴はトップクラスの賞金首。強い男を好み、弱ければ瞬時に殺害。女性のことは快楽を満たす道具としか思っておらず‥‥この村の女人も被害に遭われました‥‥」
「ーーッ!?」
耳を疑うような話に、エクスは足をふらつかせる。
「‥‥失敬。子供にするような話ではありませんな。しかし、自分は赦せない。このように変わり果てた国を、暴君ソートゥを‥‥」
「暴君‥‥?」
「シックスギアを束ねるのは彼女だと言われています」
「ーー!?」
一気に、頭に血が上る。
「そんなはずはない!ソートゥ‥‥王女は、そんな人物ではない!それにまだ、子供だぞ!?」
エクスは思わず鎧の男の両腕を掴んだ。
「知っておりますとも。ソートゥ王女は幼く、民からすれば愛らしい存在です。しかし、聡明であったウィシェ王子ですら王殺し、残った妹君までも、犯罪者を野に放ち、世界を変えてしまった!」
「ぐっ‥‥!?」
エクスは押し黙る。これは、罠だ。誰かが自分たち兄妹を陥れた、罠だと。
王子には王殺し、王女には暴君の汚名を与え、いったい何が目的なのか。
鎧の男はエクスの手を優しく掴んで振りほどき、
「無理もない。あなたもこんな現実、受け入れられないでしょうな。今は、どこも危険であります。無闇に出歩かないよう、安全な場所にいて下さい」
そう言って微笑み、鎧の男は村を巡回し始めた。
エクスは自分の汚名と、妹までもが中傷されている事実に胸を痛める。
だが、痛むだけ。憎いだけ。苛立つだけ。困惑するだけ。絶望するだけ。
ーー思うだけしか、出来ない。
陽は落ち、闇が無力な王子を追い詰めるように見下ろしていた。
「おや‥‥そこは、止めてやる、とかではないの?」
女性は目を丸くし、
「‥‥それは‥‥興味深いプロポーズだね」
それから、クスクスと笑う。
だが、すぐに女性の顔は紅に塗り潰された。
「ーー!!?」
女性は、誰かの名前を悲痛な声で叫ぶ。だが、紅で、見えない。
「私はっ!ーーさんが好きです!初めて会った時から好きでした!!だから、あなたのことをまだまだ全然知らないから、もっと話も沢山したいから!!ーーさんと一緒に居るーーさんはもっと大好きだから!!だから、私は絶対に諦めません!!」
人間の少女が、諦めないと何度も叫んでいる。
「この世界に、悪い奴なんかいない。ただ‥‥生きることに必死な奴らが居るだけさ。あんただって憎悪だなんだ言うけど、それを頼りに、今まで必死に生きてたんだろ?」
人間の少年が、微笑む。
「オレは言ったぜ。もし、どんなことがあろうとも、オレだけはあんたの前に何度でも立ってやる。何回でもオレの意思を伝えてやる。あんたに届くまで、絶対に」
まるで、ヒーローのような少年だ。
「‥‥わかった。頼まれてあげる。ボクは‥‥ずっと信じて待つから。だから、行ってらっしゃい、ーー」
まるで、普通の女の子みたいに笑った魔族の少女。
守りたい人。愛しい人。誰よりも、かけがえのない大切な、人。
満点の星と月の光が輝く空の下、ずっと、傍らにいてくれた。
だから、『これまで見守ってくれて、本当にありがとう』
ーー沈む、沈む。温かく美しい光景が、黒く染まる。
「‥‥僕にはーーみたいに魔術の才も無い。だから人間達は天使や魔族からなんとか奪った四肢やら‥‥目やらを、僕に移植したのさ。わざわざ僕自身のそれを切り離して、抉り取って‥‥ね。ねえ、ネクロマンサーくん。君の記憶にあるんじゃないの?血みどろの記憶がさぁ‥‥」
問い掛ける。長身の男に。
瞼を開け、ぼんやりする視界の中、
「おや、起きましたか、エクス」
やんわりと微笑むシーカーの姿と重なった。
「‥‥ネクロ、マンサー‥‥」
「え?」
エクスはその名を紡ぎ、再び眠りに落ちる。
布団の中、規則正しい寝息を立てて眠るエクスの左目に触れ、
「‥‥成る程。その目の効果、ですかね。ふふふ、まだまだ使い道はありそうですねぇ」
シーカーは一人、静かに笑った。
数分して、ガチャリと部屋の扉が開く。
「あらあら。王子様はまだ寝てるの」
呆れるような声で、ノルマルが部屋に入った。しかし、シーカーはそれをスルーし、
「それで、どうでした?」
「とりあえず、リダとマジャは村から去ったみたい。皆、怯えてなかなか話してくれなかったけど、マジャは食事の為にこの村に立ち寄っただけらしい。いや、ある意味リダもか‥‥」
ノルマルは深く息を吐く。
「ノルマルさん。貴女はシックスギアに敵いそうですか?」
「正直無理。あたしは普通のか弱い女なんでね。時間稼ぎはできても、捕まって食われて終わりかも」
「おやおや‥‥期待外れですね」
シーカーは肩を竦めた。
「でも、あたしには守らなきゃいけないものがある。強大な力に逃げたりはしないよ」
「成る程」
「あんたは実際はどうなの?築き上げられた平和を崩すことは許せないみたいに言ってたけど、本当はこの王子様を使って何をするつもり?こんな風に生き長らえさせて」
ウィシェ王子の目は青い。けれど金の目をしている。腕や足から聞こえる軋むような音。
崩れた肉体を弄ったことはなんとなく理解できる。
それは、ノルマルがシーカーの正体を知っているから、であるが。
「残念ながら、私は何も考えていませんよ。それはもう、昔から」
シーカーはそう言い、人差し指を自身の口元に当て、黙るよう促す。今度こそ、エクスが目を覚ましたようだ。
「ううっ‥‥」
額に手を当て、気分の悪そうな顔をしながらエクスは体を起こす。
「大丈夫ですか、エクス」
シーカーに聞かれ、
「なんだか夢を見た気がするが‥‥いや、そんなことよりも、人が、死んだ‥‥」
先程の光景を思い出し、再び嘔気に襲われる。
「ちょっと王子様!吐くのはもう止してよ」
ゲッ‥‥と、嫌な顔をしてノルマルが言った。
「‥‥あれが、シックスギア。いっ、いったい、どうなって‥‥」
「考えても仕方ありません。貴方は奴等を避けながらソートゥ王女を救うのみです」
「‥‥」
俯き、沈黙してしまう彼にノルマルはため息を吐く。
「所詮は温室育ちの王子様か。ちょっと外に出て、今の民の声でも聞いてみたら?それで、怖いんなら王子は死んだままにしな。あたしは別の方法を一人で考えるまでさ」
「‥‥」
エクスは立ち上がり、フラフラする足取りで歩き出した。扉を開き、夕暮れの村へと踏み出す。
風に乗って、鉄のような臭いが鼻を掠めた。先程、少年の首から吹き出していた血が、地面に黒くこびりついている。少年の遺体は、どうなったのだろう。
聞いたことがある。遠い昔、魔族は同族を食っていたと。まさか、全て‥‥
村の中はしんと静まり返っていた。恐怖した村人達は皆、家の中に避難しているのだろう。
平和だった、本当に。ついこの間まで、平和だったんだ。
昔々、争いの時代を生きた者達。そんなの、知らない。
沈み行く夕陽を、ぼんやりと見つめた。
(あのまま‥‥死んでいたら良かった。父上と母上の元に、逝っていれば良かった。だが、妹が‥‥いや、ソートゥだって、生きているのかわからない。わからないことの為に、俺は、何をするつもりなんだ‥‥)
ギリッと、歯を軋め、涙がこぼれ落ちる。
「なんということでありますか!自分が不在だったばかりに、こんなことが!」
「‥‥?」
誰かの悔しそうな叫び声に、エクスは顔を上げた。
「いや‥‥巡回兵のあんたがいたところで、何も変わらなかったさ‥‥」
村人の男が諦めに似た声で言い、
「そうでありますが、それでも許せません‥‥!道徳を無視したこんな行為!!」
鎧を着た男が悔いるように叫んでいる。しかし、
「‥‥今は、そっとしといてくれ」
村人の男はそう言い、肩を落としながら家の中へと入った。
鎧を着た男は俯き、それからこちらに振り向く。振り向けば、フードを深く被った怪しげな男ーーエクスの姿を見て目を丸くする。
「この村の人ではありませんね?」
「‥‥あ、ああ、偶然来て‥‥そこの、宿に」
エクスは顔を隠しながら小さな声で言った。
「なるほど。それで、惨状を目にしましたか‥‥本当に、惨いことです。少年一人の尊い命と、女人に恐怖を植え付けて‥‥」
「女人に‥‥?」
「‥‥見てはいませんでしたか?いえ、見ていないのであれば、あなたのような若き少年が知る必要はないでしょうな」
鎧の男はそう言うが、
「教えてくれ‥‥何が、あったんだ。俺は、宿の窓から光景を見ただけだった。少年が、死ぬ現場だけ、見た。シックスギアのことも、詳しく知らない」
「‥‥うーむ‥‥」
鎧の男はしばらく考え込み、
「魔族のマジャは、ロンギング国の地下牢に極秘に、厳重に幽閉されていた極悪人であります。奴の食事は、『ヒト』なのです」
ヒトーー人間、魔族、天使を示しているのだろう。
だが、ロンギング国に住まうエクスは地下牢へ行ったことはなかったし、幽閉されていた者達の存在も知らなかった。
皮肉にも、視界を奪われた状態で数日、自分が幽閉されることとなったが‥‥
「それから、人間と天使の血を持つリダ。しかし所業は悪魔に近い。奴はトップクラスの賞金首。強い男を好み、弱ければ瞬時に殺害。女性のことは快楽を満たす道具としか思っておらず‥‥この村の女人も被害に遭われました‥‥」
「ーーッ!?」
耳を疑うような話に、エクスは足をふらつかせる。
「‥‥失敬。子供にするような話ではありませんな。しかし、自分は赦せない。このように変わり果てた国を、暴君ソートゥを‥‥」
「暴君‥‥?」
「シックスギアを束ねるのは彼女だと言われています」
「ーー!?」
一気に、頭に血が上る。
「そんなはずはない!ソートゥ‥‥王女は、そんな人物ではない!それにまだ、子供だぞ!?」
エクスは思わず鎧の男の両腕を掴んだ。
「知っておりますとも。ソートゥ王女は幼く、民からすれば愛らしい存在です。しかし、聡明であったウィシェ王子ですら王殺し、残った妹君までも、犯罪者を野に放ち、世界を変えてしまった!」
「ぐっ‥‥!?」
エクスは押し黙る。これは、罠だ。誰かが自分たち兄妹を陥れた、罠だと。
王子には王殺し、王女には暴君の汚名を与え、いったい何が目的なのか。
鎧の男はエクスの手を優しく掴んで振りほどき、
「無理もない。あなたもこんな現実、受け入れられないでしょうな。今は、どこも危険であります。無闇に出歩かないよう、安全な場所にいて下さい」
そう言って微笑み、鎧の男は村を巡回し始めた。
エクスは自分の汚名と、妹までもが中傷されている事実に胸を痛める。
だが、痛むだけ。憎いだけ。苛立つだけ。困惑するだけ。絶望するだけ。
ーー思うだけしか、出来ない。
陽は落ち、闇が無力な王子を追い詰めるように見下ろしていた。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
[恥辱]りみの強制おむつ生活
rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。
保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。
性的イジメ
ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。
作品説明:いじめの性的部分を取り上げて現代風にアレンジして作成。
全二話 毎週日曜日正午にUPされます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる