雨の日に君が踊れば

星本きらり

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熱情

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(なんて厚い胸板かしら)

 優しくベッドに倒され、ベージュの薄い絹に手を這わせると、筋肉質なその腕と胸板に、今まで溜めてきた彼への欲望がふつふつと体の奥から沸く様だった。

「ルビー、美しい私のお姫様」

 シドはそう言ってルビーの髪を撫でた。銀色のウエーブがかった長い髪が胸元まで流れている。

「ああシド、愛しいシド。私の初めてをあなたに捧げられるなんて……」

 そう言ってルビーもシドの垂れ下がる前髪を指先で撫でた。紫の輝く瞳に見つめられると、疼き濡れた。
 実は、シドが初体験なわけではない。一度若い貴族の男に体を許した事がある。性に対する興味に背徳感がエッセンスになって何度か密かに体を重ね燃え上がっていた。しかし、それはひと夏で終わりを告げ、それ以来は男に抱かれることはなく、一人で火照った体を慰めていたのだった。幼き頃から頼れるお兄様のような存在だったシドが、幾つもの戦場を潜り抜けその冷静で冷徹な知性と豪腕な剣術で王の気に召され、やがて王族専属の騎士団長を勤めるようになり、女達に見初められ始めると、ルビーはシドをどうしても自分のものとしたくなったのだ。鳥籠の戸を開けるように父上にその話をすると、父上は喜んで結婚を勧めて下さった―。美しい孤高の鳥は、ルビーの鳥籠に入る事となったのだ。
 世の女達が憧れるこの紫の瞳と彫刻のような美しい体……これに抱かれる事を考えると、それだけで蜜が溢れ出てくる。

「ん……」

 シドは口づけをしながらネグリジェの前ボタンを外していった。
 大きな白い乳房とピンク色の小さな突起が露になる。それを指で摘んだ。

「あっ……っ」

 摘み、優しくくりくりと動かすと、ルビーの体に快感が走った。

「はぁ……っあん……っ」

 いつも自分で摘んでいる感覚とは全く違う。シドの指使いは優しく、胸だけでイってしまいそうな
ほどだ。膣の奥がひくひくなった。体をくねらせると、乳房が揺れた。その乳房を大きく揉みながら、唇から離れ下に下がったシドの唇はその敏感になった乳首を口に含み、舌でこねくりまわす。

「あんっきもち……いぃ……」

 ルビーは顔を赤らめ身悶えした。右の乳を揉まれながら左の乳を吸われ、足をくねらせその快感に呑まれていた。蜜壷からはついに蜜がたらりと垂れた。
 今度はシドの右手が徐々に下へ下がり、その充分に濡れた陰部へと指を這わせていった。くちゅくちゅと音を立てながらその液で指を湿らすと、突起したクリトリスを指先で掴んだ。

「ああんっっ!!」

 感じた事のないような快感が体を走った。
 シドがやさしくその突起をこねくり指で弾くと、口に含んでいる乳首が更に硬くなり、体を揺れ動かすと乳房は波打った。
 待ち望んでいた、シドの指と口……それが今自分を苛めていると思うとますます感じてしまう。

「や、やめてください、お恥ずかしいです……っはうっっ」

 そしてシドの顔は陰部へと流れた。
 その桃色の蜜部を指で開き、ぺろりと舐める。それから、唇を這わせ音を立て舐め上げた。

「あっああっ!!はあん、ああっなんて、気持ち良いので……しょう……っ」

 びちゃびちゃぐちょぐちょと厭らしい音が響き、その音がルビーを辱めた。
 徐々にその快楽が昇り詰めていく。
 シドは長い指先を、その膣の中へ入れた。クリトリスを舐めながら、その力強く長い指先を動かし出し入れする。まるで性の機械を取り付けたかのように正確に感じる部分を突いてくるのだ。こんなに感じたのは初めてだった。あの夏の夜とは比べ物にならない。流石は数々の女を泣かせてきただけの事がある。

「ああ、欲しい、欲しいわ、あなたのものが欲しい……っ!」

 気がつけばルビーは恥ずかしげもなくそう叫んでいた。欲しい、欲しくてたまらない、彼の熱い肉棒が。

「……ルビー、イっていいんですよ」

 シドはそう言って、より激しく舌と指を動かした。

「ああ、だめ、ダメですシド……ああ、本当にイってしまう、い、い、……っっ」

 やがてきゅうと膣がシドの指を締め上げた。
 ルビーは腰を浮かせ、大きな乳房がぶるんと揺れ、

「いくぅっ」

 ルビーは絶頂に達してしまった。

「はぁはぁ……」

 息を上げ余韻に浸っているルビーの横に、シドも横になった。

 シドはなんの反応もしていない自分のペニスに、内心驚いていた。
 女を愛して抱いた事がないにしろ流石に今までは反応しいきり立っていた……筈なのに。

 すると、ルビーが体を起こしてシドのペニスを触り始めた。

「いいのですよ、ルビー。汚いですから」
「汚いことなどありませんわ。あなたのことも喜ばせたいのです。それにまだ私達一つになっていないわ」

 そう言って、シドのペニスを口に含んだ。

「う……」

 徐々に、むくむくと大きくなっていき、それは立派な肉棒になって、ルビーの奥はまた疼いた。
 (ああ、欲しい。この肉棒が……)
 涎を垂らしながら、ルビーは喉の奥まで口に含み上下に動かした。早く欲しい、そう思いながら。

(まずい……)

 しかし、そんなルビーの心とは裏腹に、シドは萎えそうになり焦っていた。はっきり言って、気持ちよくないのだ。慣れないフェラのせいではない。口が下手な女など今まで山ほど居た。そんな時は、すぐに膣に突き立てればいいのだ。それで役目は果たせていた、筈なのに。
 不覚にも、レインの顔を思い出してしまった。

「……」

 その瞬間、大きくなっていたシドのペニスは徐々に萎んでしまったのだ。
 レイン、レインがしゃぶっているのではない―。
 そう思ったら一気に萎えてしまった。

「……ごめん、ルビー……疲れてしまったようだ……」

「……仕方ありませんわ……今日はもう、やめにしましょう」

 疲れているのね……。
 そう思い、ルビーは残念そうに微笑んで、服を手に取った。


 二人の初夜は結ばれる事なく、終わりを告げたのだ―。





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