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16、読書をしよう

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 凪がダグにほっこりしていると初老の男性が本を片手に動揺をした様子で戻ってきた。

「あの、その方は…」
「あれ、知りませんでしたっけ?この人は…人…なのかな?まぁ、とりあえずこの人は、私の契約獣で、元魔王様のダグです」
「へっ?」

 紳士的で柔和な様子を崩さなかった男性が、目と口を開けて「ビックリ」を体現したかのような表情をした。

「あの?」
「あっ、いえ、失礼しました」

 凪が声をかけると元に戻っていたが、本人にも相手にも衝撃が大きい出来事だった。

『おや、そこの御仁。何の本を持ってきたのだ?』

 凪の横からダグが身を乗り出して、初老の男性に声をかけた。

「あぁ、これですか?これはですね…この国にまつわる物語と、いくつか魔力操作について簡単にまとめられたものをナギ様に数冊選んできました」
「もしかして、数日前の騒ぎですか?」
「ふふっ、えぇ。私もあのようなことが実際に起きるのかと国王の話を聞いて疑ったものです。魔法の使用禁止令が出てるんですよね?差し出がましいようで申し訳ありませんが、少しでも力になれたらと思いまして…」
「うわぁ、ありがとうございます!」

 本を受け取ってニッコリと笑顔になる凪。その反応を見て、初老の男性も笑顔になった。

『うぅむ。我輩の、吾輩の本はどうだった?』

 二人のほっこりとした雰囲気を見て、ダグが何を思ったのかそう言って凪の服の裾を引っ張りながら聞いてきた。

(えぇ?それ、聞く?) 

 「比べるべくもなく…」と言いかけ、不安そうに眉を下げるダグを見て思いとどまって。

「ダグの本も嬉しかったよ?」

 と答えた。

『そ、そうか』

 何やら照れたようで、ポンッと音を立て煙に包まれたかと思うと獣の姿になっていた。

「ふふっ」
「ふふふっ、お可愛らしいですね」

 初老の男性も微笑ましそうに凪とダグのやり取りを眺めていた。

「じゃあ、早速読んでみますね」
「はい。私は向こうの方で書類整理をしておりますので、何かありましたらこのベルを鳴らしてください」

 凪に手のひらサイズのベルを渡して、本棚の奥に消えていった男性。

「最初に魔力操作についての本を読んでみようかな」

 何冊かある本の中から魔力操作についての本を選び、開く。

 ――魔力は、人の体や自然そのものに絶え間なく流れているものである。人間が魔法を使う際は、本人の素質が大きく作用される。本人の魔法の素質が高ければ、勿論、強力な魔法を扱うことが出来る。しかし、これには注意が必要だ。誤った使い方をすれば、逆に魔法を行使したものに反動が返ってくる。これは、体内の魔力だけを使い魔力が枯渇する現象や、自身の魔法で被害にあった人間がいることがそのいい例だ――

 前置きを読んで、パタンとその本を閉じた凪。

(うん、ちょっと難しいかな)

 説明文のようなダラダラとした書き方に読みたくないと思ったようだ。
 それなら……と、今度は絵本をとった。

「〝はじめよう!まりょくそうさ〟……うん。これなら大丈夫かな」

 明らかに子供向けなので、今度は大丈夫だとページをめくる。
 まず最初に目に飛び込んできたのは、デフォルメされた妖精のようなもの。内容は、その妖精が説明していた。物語のようになっていて、読みやすい。
 ペラペラとページをめくって、最後まで読んだ凪は本のとおりに自身に体に流れるものを感じとる練習を始めた。

(流れるもの…血液…みたいな感じかな?うーん……)

 集中力を高めた凪の周りを、いつの間にか淡い光が包んでいたのだった。
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