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13、王に呼び出されたが…?

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 魔法訓練から数日後。
 凪は国王から呼び出された。呼び出されたわけは一切説明されていない。
 ちなみに、あれから数日間は特にすることもなく元魔王という名のもふもふと戯れたり昼寝したりまったり過ごしていた。

「やっぱり、この前の魔法の件ですか?」
「恐らくは」
「何やろな?」
「そうですね。何を言われるんでしょうか」

  前を歩くサルージャ達に尋ねる。

「まぁ、行ってみてのお楽しみってことでさっさと行こうぜ」

 ヴィルムが仕切って全員を急かす。早く終わらせたいという思いが伝わってくる。
 そうして急ぎながらも到着した場所は、前回呼び出された時とは違うところだった。凪はどういうことだろうと首を傾げる。しかし、それとは反対にサルージャ達はその扉を開け、中に入っていった。

(えっ、え?入っていいの?)

 よく分からずにその場にとどまっていると、ロルフに手招きされ緊張しながらも部屋に入った凪は、その部屋の様子を見て息を飲んだ。

「「「ナギ様、ようこそいらっしゃいました」」」

 執事服に身を包んだ三人の男性が、一矢乱れぬ動きで凪を迎えたのだ。
 サルージャ達は特に驚いた様子はなかった。普段から見慣れているのだろう。坊ちゃん共め。
 さて、三人の男性達を前にして凪は戸惑っている。

「えっと、私は国王様に呼ばれたのですが…?」
「えぇ、わかっておりますとも。私共は国王陛下に命令されここに来ました」
「どうしてですか?」

 意味がわからない。
 
「ふぅん。陛下はナギちゃんを貴族の前に出ても平気なようにしたいんやろなぁ」
「恐らくそうでしょう。礼儀をかいて罰せられることがないようにすることと馬鹿にされないようにすること……と、多分ですがまだ、王子の嫁にすることを諦めてないんでしょうけど」

 最後の方は聞き取れなかった凪。首をかしげてなんて言ったのかイージスに尋ねたが答えてはくれなかった。
 そして、ろくな説明を受けないまま、凪のマナーレッスンが開始された。

「いいですか?貴族は恐らく貴方に目をつけるでしょう。例え女でなくとも子は産めるのですから」
「貴方は基本的に成人するまでは常に護衛、もしくは魔法師団長たちの誰かと行動した方がいいと思います」
「容姿は既に知れ渡っているのですから、下手に隠すよりも堂々としていた方がいいかもしれませんね」

 三人の男性達の意見を聞いて、前に、ある男性が教えてくれたことを凪は思い出す。この世界には女性は少なく、男性同士で結婚することも少なくないということを。
 ぶるっと身体を震わせ、凪は自分に「大丈夫、大丈夫。いざとなったら元魔王もいるし大丈夫」と言い聞かせる。

「ではまず、言葉遣いです。基本的には今のままで問題はないと思われますが、成金……ゴホンッ、失礼。金銭や親の跡を継いで貴族になったような者は難癖をつけてくるかも知れません。ですが、まぁ、少し控えめに相手をたてるように話すと良いと思われます」
「幸い、ナギ様は小柄で華奢でいらっしゃいます。いざとなったら、体調を崩したと嘘をついて逃げるのも一つの手だと思われます」

(ううん。何だか、これだけ聞くとマナーレッスンと言うより、身を守るすべを教えて貰っているような……)

 凪の思うことはもっともだった。実際にこれはマナーレッスンの前置きでしかなかった。食事のマナーや、この国の歴史、基本的な読み書きや、計算をしなければいけないのだが、その前に最低限自身を守るすべを教えておこうという男性達なりの気遣いだった。

「では、本日は図書館に行って文字の読み書きとともにこの国の歴史をお教えしたいと思います」

 白髪混じりの五十代ほどの黒髪の男性が、そう言って凪達を図書館へと先導した。
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