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10、基本の魔術を習う その1
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先程国王との謁見が終わった凪だったが、部屋に戻ることなくどこか別の場所へとサルージャ達によって移動させられた。
「どこに行くんですか?もう話は終わったんじゃないんですか?」
「行けばわかる」
いくら聞いても、さっきから同じ返答しか返ってこない。行き場所を教えてもらえない。
「着いたで」
マルクがそう言って足を止めた。それは外に通じる扉のようだった。
ガチャリとドアノブをひねり外に出てみると、そこは訓練場のような場所で複数の男性たちが木製の剣を使ったり、魔法を使ったりして砂煙が舞っている。
軽く咳き込みながら、サルージャ達を見上げる。
「あの、ここで何をするんですか?」
「訓練だ」
当たり前のことをどうして尋ねるのかと言うふうな顔で答えるサルージャ。
自分は間違ったことを聞いてしまったのかと悩む凪。そして、それを見て笑うヴィルム達。
しばらくその状態が続いたが、木剣が近くに飛んできて地面に刺さったことにより、会話が再開する。
「あー、簡単に言えばな?君の魔法の力を試しておこうっちゅうねん」
「ええ、どの程度の力を貴女が持っているのかはかりたいのですよ」
「今後、どの隊に入るか決めるためにな」
「なるほど」
納得してうんうん頷く凪。サルージャはキョトンとしている。
「そんなわけで、あっちの的に向かって魔法を放ってもらってもええ?」
「はいっ!」
元気に返事して構えたあとに気づく。
「あの、どうやって魔法を使うのか教えて貰ってないんですが」
「あぁ、せやったなぁ。んー、こう、自分の中に流れているものを手のひらに集中させてな?どんなふうに使いたいのか、形とか、そういうんを考えて放つんよ。黙って魔法ぶっぱなせはするんやけど、ちゃんとした詠唱するとな、威力が上がるねん。君はまだ、どのくらいの力を持ってるかわからんからごめんけど無詠唱で魔法を行使してな?」
「はい、問題ないです」
「じゃあ、とりあえず初めはこんくらいの火の玉をあの的に当ててみて?」
マルクが手を使い、拳よりも大きな丸を作って大きさを示す。
それをみて、体中に流れるもの凪にとっては血液を手のひらに収集するイメージをして、理科で習ったガスバーナーのように、白に近い青い炎を生み出す。そして、先程のような大きさの玉にして、風によって消えないように周りを薄い膜で覆うイメージをする。すると、ゆらゆらと揺れていた炎の塊がなんの抵抗も受けずにピタリとその場に止まった。あとは炎を飛ばすだけだ。
しかし、凪はただそのまま飛ばすのではなく、風の抵抗のために張った膜の外側にさらに膜を張り純粋な酸素を閉じ込めるイメージをした。つまり、膜が破れると同時に小規模な爆発が起きるということだ。
そのまま、真っ直ぐに的に向かって魔法を放つと…
バアァァァンッ……
大きな破壊音が訓練場に響いた。
どれほどの音だったかと言うと、訓練していたほとんどの人達が振り返るほどだった。
パラパラと的の残骸が地面に落ちる音が虚しく聞こえてくる。
「て、てへっ」
舌を出して笑ってみたがサルージャ達はあんぐり口を開けたまま微動だにしない。
凪はどうしたらいいのか分からず、元魔王を呼び出す。
『どうしたのだ?』
クリクリと丸い目に凪を映しながらそう問うてくる元魔王。
黙って的の残骸を指さす。
『ほほう、やるのう。して、なんの魔法を使ったじゃ?中級かのう?それとも上級か?』
ふるふると首を振って、
「この位の火の玉飛ばしただけ」
と伝えると口を開けて笑いだした元魔王。
『ほっほっほっ、なるほどのう。それでこ奴らがこんな腑抜けた顔をしておるのか』
その笑い声を聞いてやっと意識が現実に戻ってきたサルージャ達は気まずげにしている。
「多分、イメージが具体的すぎたんだよね…」
失敗失敗、と苦笑する。
「いったい、どんなふうにイメージしたらそうなるんでしょう?」
「さあな、聞いてみたいもんだ」
「なら、聞いたらええやんか?」
「バカかっ、そんなことしてまた傷つけたらどうするんだよ」
「知らんがな」
「無責任だな、おいっ」
その視界の端では馬鹿な大人達の会話が繰りだされるのだった。
「どこに行くんですか?もう話は終わったんじゃないんですか?」
「行けばわかる」
いくら聞いても、さっきから同じ返答しか返ってこない。行き場所を教えてもらえない。
「着いたで」
マルクがそう言って足を止めた。それは外に通じる扉のようだった。
ガチャリとドアノブをひねり外に出てみると、そこは訓練場のような場所で複数の男性たちが木製の剣を使ったり、魔法を使ったりして砂煙が舞っている。
軽く咳き込みながら、サルージャ達を見上げる。
「あの、ここで何をするんですか?」
「訓練だ」
当たり前のことをどうして尋ねるのかと言うふうな顔で答えるサルージャ。
自分は間違ったことを聞いてしまったのかと悩む凪。そして、それを見て笑うヴィルム達。
しばらくその状態が続いたが、木剣が近くに飛んできて地面に刺さったことにより、会話が再開する。
「あー、簡単に言えばな?君の魔法の力を試しておこうっちゅうねん」
「ええ、どの程度の力を貴女が持っているのかはかりたいのですよ」
「今後、どの隊に入るか決めるためにな」
「なるほど」
納得してうんうん頷く凪。サルージャはキョトンとしている。
「そんなわけで、あっちの的に向かって魔法を放ってもらってもええ?」
「はいっ!」
元気に返事して構えたあとに気づく。
「あの、どうやって魔法を使うのか教えて貰ってないんですが」
「あぁ、せやったなぁ。んー、こう、自分の中に流れているものを手のひらに集中させてな?どんなふうに使いたいのか、形とか、そういうんを考えて放つんよ。黙って魔法ぶっぱなせはするんやけど、ちゃんとした詠唱するとな、威力が上がるねん。君はまだ、どのくらいの力を持ってるかわからんからごめんけど無詠唱で魔法を行使してな?」
「はい、問題ないです」
「じゃあ、とりあえず初めはこんくらいの火の玉をあの的に当ててみて?」
マルクが手を使い、拳よりも大きな丸を作って大きさを示す。
それをみて、体中に流れるもの凪にとっては血液を手のひらに収集するイメージをして、理科で習ったガスバーナーのように、白に近い青い炎を生み出す。そして、先程のような大きさの玉にして、風によって消えないように周りを薄い膜で覆うイメージをする。すると、ゆらゆらと揺れていた炎の塊がなんの抵抗も受けずにピタリとその場に止まった。あとは炎を飛ばすだけだ。
しかし、凪はただそのまま飛ばすのではなく、風の抵抗のために張った膜の外側にさらに膜を張り純粋な酸素を閉じ込めるイメージをした。つまり、膜が破れると同時に小規模な爆発が起きるということだ。
そのまま、真っ直ぐに的に向かって魔法を放つと…
バアァァァンッ……
大きな破壊音が訓練場に響いた。
どれほどの音だったかと言うと、訓練していたほとんどの人達が振り返るほどだった。
パラパラと的の残骸が地面に落ちる音が虚しく聞こえてくる。
「て、てへっ」
舌を出して笑ってみたがサルージャ達はあんぐり口を開けたまま微動だにしない。
凪はどうしたらいいのか分からず、元魔王を呼び出す。
『どうしたのだ?』
クリクリと丸い目に凪を映しながらそう問うてくる元魔王。
黙って的の残骸を指さす。
『ほほう、やるのう。して、なんの魔法を使ったじゃ?中級かのう?それとも上級か?』
ふるふると首を振って、
「この位の火の玉飛ばしただけ」
と伝えると口を開けて笑いだした元魔王。
『ほっほっほっ、なるほどのう。それでこ奴らがこんな腑抜けた顔をしておるのか』
その笑い声を聞いてやっと意識が現実に戻ってきたサルージャ達は気まずげにしている。
「多分、イメージが具体的すぎたんだよね…」
失敗失敗、と苦笑する。
「いったい、どんなふうにイメージしたらそうなるんでしょう?」
「さあな、聞いてみたいもんだ」
「なら、聞いたらええやんか?」
「バカかっ、そんなことしてまた傷つけたらどうするんだよ」
「知らんがな」
「無責任だな、おいっ」
その視界の端では馬鹿な大人達の会話が繰りだされるのだった。
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