上 下
11 / 19

11、筋肉ダルマは意外といい人? その2

しおりを挟む
 どどどっ、どうしましょう。
 目が覚めたらロートさんから筋肉ダルマにチェンジしてました。ドキドキです。胸が高鳴っています。生命の危機的な意味で。

「おら、どうした。寝たフリすんじゃねぇぞ?」
『起きてる!起きてるから揺らさないでー』

 大きなバスケットのような籠に毛布にくるんで入れられていました。そして、その籠をこの筋肉ダルマはガタガタと揺すってきたのです。普通の赤ちゃんだったらギャン泣きですよ?というか、泣いてもいいですか?
 遠い目をして筋肉ダルマを眺めていると、籠の中から取り出されました。

『なっ、何!』

 思わずばたつくと、やんわりと身動きを取れないように固定されました。

「ロートんとこ連れてってやっから大人しくしとけよ」
『え…』

 意外と優しい手つきで撫でられ呆然とします。…だ、誰ですかこの人。
 信じられなくて思わず目を見張ります。夢の続きでも見ているんでしょうか。
働かない頭を必死に働かせていると、ロートさんが部屋に戻ってきました。

「っ!!」

 筋肉ダルマの腕にだかれる私を見て、顎が外れるかってくらい口を開けて驚いています。
 そうでしょうともそうでしょうとも、だってこの筋肉ダルマ私を撫でながら優しく微笑んでいますから。初めにあった時とまるで違って私でも信じられないんですから。

「あ、ロート。丁度いいところに来たな。コイツさっき寝てた時うなされてたんだわ。俺じゃあ、安心できねぇみてーだし、後は頼んだぜ。大体、こんな広い部屋に一匹は赤ん坊にはキツいだろうよ。誰かに預けるにしろ一匹で居ることをあんまりしねぇようにな。こんくらいの奴にゃあ甘えさせてやんねぇとな。じゃあな」

 そんな私たちの心境も知らずに淡々と話して筋肉ダルマは私をロートさんに押し付けるように渡して部屋を出ていきました。
 筋肉ダルマが出ていったあと、この部屋には沈黙が訪れました。私もロートさんもどちらも声を発しません。

「……」
『……』

 思い沈黙に耐えかねていると、扉が壊される勢いで開きました。

「ブラッドちゃーん!お姉様と戯れましょう!」

 それは、沈黙を破るにはあまりにも激しい登場の仕方でした。現れたのは、薄ーく化粧を施し、軍服をいい感じに気崩していて、黙ってさえいれば綺麗なお姉さんか、美人な男性で通じるのにこの残念感……エドハルトさんです。

「こっちに寄ってくんな」

 両手を広げ、ジリジリと寄ってくるエドさん。ロートさんも私を心做しか先程よりも抱える力を強くして、後退します。
 この攻防戦に勝利したのは……、

 ……ぐー

「「えっ?」」
『お腹すいたー』

 私の腹の虫でした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

【完結】王女様の暇つぶしに私を巻き込まないでください

むとうみつき
ファンタジー
暇を持て余した王女殿下が、自らの婚約者候補達にゲームの提案。 「勉強しか興味のない、あのガリ勉女を恋に落としなさい!」 それって私のことだよね?! そんな王女様の話しをうっかり聞いてしまっていた、ガリ勉女シェリル。 でもシェリルには必死で勉強する理由があって…。 長編です。 よろしくお願いします。 カクヨムにも投稿しています。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

そっと推しを見守りたい

藤森フクロウ
ファンタジー
 綾瀬寧々子は気が付いたら、大好きな乙女ゲームの世界だった。  見習い神使として転生していた新生オタク『アヤネコ』爆誕である。  そしてそこには不遇ながらも必死に生きる推しこと『エルストン・ジル・ダルシア』がいた。  母を亡くし失意の底に居ながらも、双子の弟妹の為に必死に耐える推し。  今ここに、行き過ぎた愛が圧倒的な行動力を伴って推しを救う―――かもしれない。  転生したヤベー人外と、それにストーカーされている推しのハートフル(?)ストーリーです。  悪気はないが大惨事を引き起こす無駄にパワフルで行動派のお馬鹿さんと、そんなお馬鹿さんに見守られているのを知らずに過ごす推し。  恋愛要素薄目、ほぼコメディです。

冷宮の人形姫

りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。 幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。 ※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。 ※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので) そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。

処理中です...