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76、病欠の後の教室って入りづらいよね?
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身体が元の大きさに戻ってから、一週間が経っていた。
「じゃあ、学園に行ってくるね?」
「あぁ、行ってらっしゃい」
結局、婚約することになった私と団長さんだが、別に関係性が変わることはなかった。…まぁ、まだ成人前だし変わったら困るけど。
体調も悪くなることはなかったので、今日から学園に復学することになった。
『まだ安静にしててもええんやないか?』
「大丈夫だよ」
隣を歩くヘファイストスに笑顔を向ける。
彼が心配しているのは体調ではないことを私は知っている。学園に復学するということは、姫様達に会うことになる。つまり、心を心配しているのだ。
「まぁ、耐えきれなくなったら何とかするよ」
『うーん…耐えきれなくなる前に助けを乞うてな?』
真面目に言ったのに、ヘファイストスに苦笑されてしまった。
(なにか違った?)
軽く頭を撫でて学園への道を進み出す彼を不思議に思いつつ、その後に続くのだった。
♦♦♦♦
教室前。
「ねぇ、普通に入っていいのかな?変に思われないかな?」
『だ、大丈夫やさかい落ち着いてな?頼むから胸ぐら掴んで揺すらんといて…』
「ご、ごめん…」
廊下を歩いている辺りから不安を感じていた。
前世の中学生の時を思い出す。あれは冬にかかる感染症によって一週間以上学校を休んだ時だった。なぜか教室に入るのが不安になって、十分ほどトイレに引きこもっていた…。
(確か、私のバッグがあることに気づいた友達が教室に一緒に入ってくれたんだっけな)
「懐かしい」と場違いな感想を思い浮かべながら、ドアを見つめる。
中からは微かに生徒達が楽しげに談笑している声が漏れていた。
『こういうのは勢いが大事やと思うんやけど…、ナナキが無理ってんならワイがやるしかないな!』
そう言ったヘファイストスを止めるまもなく、彼はドアを勢いよく横にスライドさせた。
スパーンッ
(マジか)
勢いよく音を立てて開いたドアは、教室中の視線を集めるのには十分だった。
静かになった教室。全員が私に視線を向けているのが分かる。
(ここからどうしろってんだよ!)
表情には出さず内心あわあわしていると一人の生徒が私の元へとやってきた。
「ナナキさんって言ったわよね?入学式の次の日から学校を休んでいたからとても心配してたの…。もう体は大丈夫なの?」
「え…」
(何この子、天使?)
目の前に天使が現れたのかと一瞬思った。
まさか自分の名前を覚えててくれたとは…。
まぁ、何人もイケメンを連れていたら嫌でも印象深くもなるかもしれない。いい印象であることを願うばかりだ。
「えぇ、学園生活が始まることに興奮したのか…熱が出てしまいまして…」
「ふふっ…それは大変ね。実は座学の授業はもう始まってしまっているの。だから、授業で分からないことがあったらいつでも聞いてね。私、貴方の隣の席なのよ」
何と、私の隣の席の方だった。ピンクゴールドの長いストレートヘアを高い位置でポニーテールで結び、全体的にスラッとしたモデル体型の女の子。涼し気な面差しは男子を差し置いて女子にもてること間違いなしと言いたくなるほど整っている。
(はぁ…、私って美形ホイホイなのかな?)
自然と顔の整った人達ばかりが周囲に集まってくるので、自分が惨めに思えてくる。
…私が一番可愛いって?……ありがとう。君のその言葉が嬉しいよ。…でも、自分の顔くらい自分でわかってるさ。
自分に関してはとことん無自覚なナナキ。
隣の席の女の子に色々と質問をして、その日を過ごしたのだった。
「じゃあ、学園に行ってくるね?」
「あぁ、行ってらっしゃい」
結局、婚約することになった私と団長さんだが、別に関係性が変わることはなかった。…まぁ、まだ成人前だし変わったら困るけど。
体調も悪くなることはなかったので、今日から学園に復学することになった。
『まだ安静にしててもええんやないか?』
「大丈夫だよ」
隣を歩くヘファイストスに笑顔を向ける。
彼が心配しているのは体調ではないことを私は知っている。学園に復学するということは、姫様達に会うことになる。つまり、心を心配しているのだ。
「まぁ、耐えきれなくなったら何とかするよ」
『うーん…耐えきれなくなる前に助けを乞うてな?』
真面目に言ったのに、ヘファイストスに苦笑されてしまった。
(なにか違った?)
軽く頭を撫でて学園への道を進み出す彼を不思議に思いつつ、その後に続くのだった。
♦♦♦♦
教室前。
「ねぇ、普通に入っていいのかな?変に思われないかな?」
『だ、大丈夫やさかい落ち着いてな?頼むから胸ぐら掴んで揺すらんといて…』
「ご、ごめん…」
廊下を歩いている辺りから不安を感じていた。
前世の中学生の時を思い出す。あれは冬にかかる感染症によって一週間以上学校を休んだ時だった。なぜか教室に入るのが不安になって、十分ほどトイレに引きこもっていた…。
(確か、私のバッグがあることに気づいた友達が教室に一緒に入ってくれたんだっけな)
「懐かしい」と場違いな感想を思い浮かべながら、ドアを見つめる。
中からは微かに生徒達が楽しげに談笑している声が漏れていた。
『こういうのは勢いが大事やと思うんやけど…、ナナキが無理ってんならワイがやるしかないな!』
そう言ったヘファイストスを止めるまもなく、彼はドアを勢いよく横にスライドさせた。
スパーンッ
(マジか)
勢いよく音を立てて開いたドアは、教室中の視線を集めるのには十分だった。
静かになった教室。全員が私に視線を向けているのが分かる。
(ここからどうしろってんだよ!)
表情には出さず内心あわあわしていると一人の生徒が私の元へとやってきた。
「ナナキさんって言ったわよね?入学式の次の日から学校を休んでいたからとても心配してたの…。もう体は大丈夫なの?」
「え…」
(何この子、天使?)
目の前に天使が現れたのかと一瞬思った。
まさか自分の名前を覚えててくれたとは…。
まぁ、何人もイケメンを連れていたら嫌でも印象深くもなるかもしれない。いい印象であることを願うばかりだ。
「えぇ、学園生活が始まることに興奮したのか…熱が出てしまいまして…」
「ふふっ…それは大変ね。実は座学の授業はもう始まってしまっているの。だから、授業で分からないことがあったらいつでも聞いてね。私、貴方の隣の席なのよ」
何と、私の隣の席の方だった。ピンクゴールドの長いストレートヘアを高い位置でポニーテールで結び、全体的にスラッとしたモデル体型の女の子。涼し気な面差しは男子を差し置いて女子にもてること間違いなしと言いたくなるほど整っている。
(はぁ…、私って美形ホイホイなのかな?)
自然と顔の整った人達ばかりが周囲に集まってくるので、自分が惨めに思えてくる。
…私が一番可愛いって?……ありがとう。君のその言葉が嬉しいよ。…でも、自分の顔くらい自分でわかってるさ。
自分に関してはとことん無自覚なナナキ。
隣の席の女の子に色々と質問をして、その日を過ごしたのだった。
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