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61、キレる

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「では、納得出来るかどうかは分かりませんが、入れた理由を説明させてもらいますね。私達は貴方には幼い頃城にやってきた時に一度会っただけでしたよね。しかし、私達は貴方がその後どのようにしていたのか情報だけですが知ってたんです。私と弟二人は貴方のその優秀さにぜひ入学したら生徒会に入ってほしいと考えたんです。残念ながら、申し訳ないことに妹二人は完全に私情だけですが…。ですが、私達もあなたの気持ちを考えずこのような形で入らせてしまったことに今は深く反省しております 」

 申し訳なさそうに話す紳士王子。

(うん、利害的には全員一致してたんだから反対をしなかったのもわかる。でもさ、私、思うんだ。君みたいな聡明な王子様ならお姫様のワガママを親バカ王が聞かないわけないじゃん?それこそ、ずっとそれを見て育ってきたんだから気づかないわけないよね…?)

 私が黙って考えていると…

「あら、お兄様が謝ることはないのではなくて?」
「そうですわ、普通なら泣いて喜ぶことですのよ。だいたい平民が王族の側に近寄ることはほとんどないのですから。……下賎な民が」

 お姫様がボソッと呟いた言葉を耳に拾った私はすっと、浮かべていた笑顔を消した。

「へぇー…そういうこと、言っちゃうんだ?」

 思わず、低い声が出る。

「ナ、ナナキさん?」

 戸惑った様子の紳士王子。その瞳は不安げに揺れている。

「あはは、あはははっ!」

 私は段々と可笑しくなって笑いがこぼれてしまった。

「な、なんだ何だ!?」
「……!?」
「なんですか!?」

 あー、笑ったわ。すごく久しぶりに。楽しくて笑ったのではなく、心から呆れて怒りを感じて笑った。
 王子達やヤヒコは驚いている。当たり前だろう、大人しく礼儀正しかった(美)少年がいきなり言葉を崩し、笑いだしたのだから。
 しかも、それだけではなかった。

「あぁ、成程成程。シルフィ様や、サーシャ様…そうでした私は民なのでお名前を呼ぶのもおこがましい。王女殿下様方はそんな可哀想な私にこのような特別な恩恵をくださったのですね」
「「そうですわ」」

 得意気に同意する迷惑姉妹。こちらが怒っていることに気づいていない。ある意味大物だ。将来はさぞかし立派な権力を持つ金持ちな女性になることだろう。これでは他国に嫁ぎ王妃にはなれない。というか、あの王がさせないだろう。アレは子どもには甘いが馬鹿ではないのだから。
 冷めた目で王女達を見つめる。

「そうですか、ですが私は騎士団の人間でございます。勿論、学生の身分ですので学業をおろそかにすることはございませんが、それでもここに顔を出すことは少ないでしょう。それでもいいとお考えで私を入れたのですよね?王女殿下様方なら」

 わざと聡明の部分を強調して言った。
 これを彼女たちが否定しなければ、私はまだ怒らずに済んだのかもしれない。

「そんなわけがないでしょう。なぜ騎士団ごときが王族をないがしろにするのですか。だいたい、騎士団は王族を守る為にあるのでしょう?」
「そうですわ、ですからそちらを優先する必要はございませんことよ?代わりなんて吐いて捨てるほどいることですし」

 プチッ……
 おそらく、それは私の中の何かが切れる音だっただろう。

 ブワッ

「わっ!」
「うぉっ!」
「にゃっ!」
「ひえぇっ!」
「きゃぁぁっ!」
「なっ、なんですの!?」 

 私の中に溜め込まれていた魔力が一気に放たれる。
 途端に皆一様に驚いた声を出した。
 そして彼らはその魔力量に驚き恐れをいだいていた。当たり前だ、私の魔力はおそらく規格外の化け物級なのだから。だいたい放ったといっても五分の一くらいだ。それでこの怯えよう、無意識だが抑えてよかったと思う。
 後ろでずっと黙っていたヒライ達は流石に声こそ出さなかったが内心驚いていた。なぜなら、どう考えても反逆罪にされてもおかしくないことを今の私はしているし、これだけ怒ったことは今までで一度もなかったのだから。

「勘違いしてほしくないのですが、王族が私に何をしてくれたのですか?なぜ私があなた達を守るために頑張るのです?私は、街にいる人たちを守りたいだけなのですよ。暖かくどこの誰かもわからない私を受け入れてくれたあの人達を」
「そっ、それなら私達だって受け入れられるわ」

 この期に及んでそんなことばが出てくるシルフィ王女に呆れる。

「それは、私という人間をですか?私に学業の才も魔法の才もなければ目をつけなかったのでは?」
「そんなことはありませんわ」

 否定しつつもサーシャ王女のその目はその通りだと物語っていた。

「本当に?髪色がこんな銀髪じゃなくても?普通の茶色でも?人目を引く容姿をしていなければ見向きもしなかったのでは?」

「「 …… 」」

 言い返してきた王女達も流石に黙る。返す言葉もないだろう、図星なのだから。

「所詮はそんなものなのですよ。街の人達や騎士団の人達は私の見た目だけでなく中身を見てくれます。だから守るのです。王族は自分に都合のいいようになんでもしようとなさいます。六歳のとき王城に行った時のように。私は、王族直属の騎士団ではありません。王国騎士団なのです。それに、騎士団には代わりはおりません。一人一人がかけがえのない人なのです。そうですね、王女様風に言うならば王族なんて代わりはいくらでもいるのだからと重要な役割についている王族もしくは貴族が仕事を投げ出したらどうなさいます?責任、取れますか?」

 無表情から威圧的な表情に変える。

「世の中の厳しさも知らないあなた達二人には到底無理でしょう?」

 そして、皮肉げに笑って

「力を持ちすぎ、誰かから狙われてもおかしくないから自分の力を六年間磨いてきて十二歳で正式団員にまでなれた私と違って守られるだけの存在のあなた達には」

 そう吐き捨て踵を返す。

「下賎な身でありながら失礼なことを行い大変申し訳ありませんでした。ですが私は後悔はしておりません。罰するならば罰しなさい。私は権力には屈しない。生徒会には王命だから入りましょう。あなた達が抜けろと言うならすぐに抜けます。では、失礼します」

 生徒会室から出る時、そう言い深く礼をしながら退出したのだった。
 はー、スッキリした。
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