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54、過剰な救出部隊登場 2

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「馬鹿じゃないんですか?」

 私の口から出たのはその一言。
 それに心外だと言わんばかりの表情を浮かべ、口々に自分たちの思いを告げる面々。

「あ?俺たちはナナキを助けに来たんだぞ?」
「そうですよ。なんでそんなこと言うんですか?私としては昨日すぐに助けに来たかったのに…」
「そうよ?変態になにかされたんじゃないかと心配で心配で…でもすぐに離れられるほど仕事が終わってなくて…」

 うっすらと涙をうかべ言い募る姿に、軽く罪悪感を覚えながらも、叱咤する。

「言い訳ばっか言わないでください。私は別にヒライさえ来てくれればいいと思ってたんです。こんな大所帯は望んでません。そ、れ、に、王都を守護する騎士団の偉い人たちがなんでこんなに来ちゃってるんですか。頭、大丈夫ですか?仕事が残ってたから昨日来れなかったとか言ってましたけど、別に助けに来てくれとは言ってません。帰ろうと思えば自力で帰れたんですよ?」

 私が畳み掛けるように(過剰な)救出部隊員達に少し攻めるような言葉を浴びせると、一歩後ろに下がっていたハデスが前に出てきた。そのまま私に近づいてきたかと思うと、ペシっと軽く頭を叩かれた。
 …へ?思わずぽかんとしてしまう。私だけでなくその場にいた全員がハデスの行動に呆気に取られていた。

「…なんで?」

 意識せず口からこぼれた疑問。しかし、そう言ってしまうほど私にとってハデスの行動が意外すぎたのだ。そして、叩かれる心当たりがない。警戒心が足りなかったからだろうか、それとももっと他に理由が?
ハデスが次に何をするのか黙って目で追っていると、私の前に膝をつき、目線を合わせていつもは小さな声を大きくして言い聞かせるように静かに話し始めた。

『オレがナナに加護を与えていなければ、ナナはこの外道に奴隷にされていた』
「ド…レイ…?」

 初めハデスが何を言っているのか分からなかったが後に続いた言葉でようやく理解出来た。

『今この外道がつけている首輪を見ろ。これには奴隷魔術が使われている。闇魔法の一種だ。大抵は、奴隷商から奴隷を買った時に付けるものだが何故かこいつはナナに付けようとした』
「でも実際には付けられてないよ?」

 むしろその付けようとした変態が付けている。

『当たり前だ。最初に言ったようにオレがナナに加護を与えたからこそ助かったこと。…その顔は事の重さをわかっていないようだな。まずオレの加護を簡単に話すが、オレの加護は闇魔法を弾くというものだ。勿論、全てを跳ね返すことは出来ない。今回のように相手を意のままに操ろうとするもの、それからナナの意識が失われている時行使されたものだけだ。この世界の理に深く関わることは出来ないからな。大したことではないとオレは思っていたが、今回ばかりはそのおかげで助かった。これが闇魔法の使い手とかだったらどうなったか…』

 ハデスの話を最後まで聞いて私は戦慄した。加護がなければ私は今頃、変態に侍るあの何人もいた女性のひとりに…。
 恐怖に震えていると

『だから、本当によかった。ナナを失うようなことにならなくて…』

 絞り出すように吐き出したその言葉は私の胸にすごく突き刺さった。

「ごめんね…」

 ポロポロと涙が出てきて、それが見られたくなくてハデスの胸元に飛び込み顔を押し付けしがみついた。一瞬ビクッとハデスの体が揺れたのを感じたが、おずおずと背中に手を回した後、私の好きなようにさせてくれた。

(もう迷惑をかけないように、鍛えよう…)

 泣きながら心の中で私は決意した。
 しばらくして泣き止んだ後、変態を裁くために王都へヒライの転移魔法で帰還した。変態は幸か不幸か処刑されることはなかったが、女達を何人か無理やり奴隷にしていたこともあって犯罪奴隷になった。
 それから私は騎士団のみんなに支えられながら魔法の訓練と剣の訓練をした。王が訪ねてくることもあったが、団長さんが追い払ってくれて深く関わることはなく、騎士団の人達の中で大切に育てられた。
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