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28、第二小隊での一日 2

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 ……。
 …………夢を見た。
 私の前世の幼い頃の夢だ。
 私の家は三人の兄と両親、祖母の六人家族だった。あの頃は無邪気で、知らない人とも平気で話すことが出来た。
 しかし、ある日から自分より年上の人が苦手になり、怖いと感じるようになった。

「ふんふんふーん♪今日は何のお菓子を買おうかなー」

 呑気に鼻歌を歌う私。自分でおやつを買いに行く途中だった。突然、後ろから自転車に乗る中学生か高校生くらいの男子三人に追いかけられた。

「ぎゃはは!」
「早く逃げねぇとひいちまうぜ?」
「そら、逃げろ逃げろ~」

 私にとってそれは恐怖しか感じられなかった。しばらく街の中を走った頃、私は石の段差につまづいて転んでしまった。

(痛い……)

 足からは血が出ており、私は痛くて泣いてしまった。

「なんだ、もう終わりか?」
「なぁ、よくよく見たら可愛い顔してないか?」
「お前、幼女趣味か?」
「いや、違うけどよ…」

 そんな会話をしながら私に近づいてくる。

(来ないで!)

 ドガッ!

「大丈夫か、ガキ!」

 助けが来た。

「何をするんだ!」
「それはこっちのセリフだよっ!」

 ガツンッ!

 その人は金髪にピアス、学ランとまさしく不良と呼ぶにふさわしい人だった。
 不良さんは男達を殴り、私を救い出してくれた。

「大丈夫か?」

 ボコボコにした男達を置いて私を近くにあった公園に連れて行き、恐怖で泣いていたのを不器用な手つきで撫でて慰めてくれる不良さん。

「ありがとう、おにーちゃん」
「いや、俺ももう少し早く気づいてやるべきだった」
「そんなことないよ、助けてくれただけで嬉しい」

 そう、助けてくれただけでありがたかったのだ。責めることなどない。

「そうか…」

 そう言ってふにゃりと笑った不良さん。思い出したのだが、これが私の初恋だったような気がする。

「ねぇ、おにーちゃん」
「なんだ?」
「名前を教えて?」
「俺の名前なんて…」
「お願い!」
「ぅっ、仕方ないな…。俺の名前は…」

 あれっ、視界がぼやけてきた。まさか、起きる!?まだこれから名前を聞くところなのに。

(もうちょっと待ってよ)

 しかし、私の心とは裏腹にあっさりと意識が浮上した。

 ……パチリ。

「あーあ、目が覚めちゃった」

 本当に残念だ。
 ふと、起き上がる拍子に頬を冷たい何かが流れた。触れてみるとそれは涙だった。

(私、寝ながら泣いてたんだ……)

 さっきの夢を思い出す。あの時は本当に怖くて今、思い出すだけでも体が震える。大人になるにつれて、少しずつ平気になったと思ったんだけどなぁ。
 私が再び泣いていると……

《大丈夫か?うなされてたぞ》
『あぁ、泣くな。目が溶けてしまうぞ?』

 ヒライとアズマが現れ、私を抱きしめてくれた。

(温かい)

 しばらくそのまま抱きしめられていると…

 ………ドンドンドンドンドンッ……バンッ!

 大きな足音がして、扉が派手に吹き飛んだ。

「えっ」
(何事!?)

 吹き飛んだ扉の先にいたのは、

「ふはははっ、よう!迎えに来たぜ、ガキんちょ」

 ザンさんだった。

(いや、普通にノックしてから入ってよ)
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