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あかり、完璧ブラコン番長とデートする?
第14話 お化け屋敷にて①
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『グリーンワールド』のお化け屋敷、『あなのなか』。
ストーリーは、『大切なものを落として、穴の中に迷い込んだあなたたち。追いかけると、そこには奇妙な世界が広がっていた。果たしてあなたたちは、大切なものを取り戻し、無事現世に帰ることはできるだろうか』というもの。
そしてこのお化け屋敷は、なんと本物の幽霊が出ることで有名だった。おまけにこのお化け屋敷、異界へ通じる道の一つである『穴』がテーマだ。
古今東西、『穴』や『地下』に落ちて、異界に行く話は多い。
例えば、しゃべる白いウサギを追いかけて『穴』に落ちる『不思議の国のアリス』。
日本だと、おむすびを穴に落としてしまって、ネズミたちの世界に迷い込む『おむすびころりん』が有名だろう。
他にも、小野篁が井戸を通して地獄と現世を行き来していた話もある。
だから私は、このお化け屋敷が一番危険だと判断したのだけど……もしかしたら、発想が逆だったのかもしれない。
それはまた後ほど。
受付を済ませた私たちは、目隠ししたままエレベーターに乗せられる。
そして、チーンという音が鳴ったあと、スタッフさんに手を引っ張られ、目隠しを外された。
その後スタッフさんから説明を受け、ブザーを渡された。リタイアしたい時、これを引っ張ると、スタッフさんが来て、お化け屋敷から出られるらしい。なお、ミッションをクリアすると、景品がもらえるとか。
どこからか、ジジジ……という、ざらついた機械音が聞こえる。真っ直ぐ伸びる廊下の奥には、両開きの扉があった。
案内するように床に埋め込まれたライトが、暗闇を割くように眩しい。
そのライトを頼りに、私たちは真っ直ぐ進む。
その時だった。
私より前に歩いていた冬夜くんが、私の右手を掴んだのだ。
「ひゃあ!?」
「え!?」
思わず叫んでしまい、つられて冬夜くんも声を上げる。
「どうした!? 何かいたのか!?」
眼鏡を掛けた冬夜くんが、辺りを見渡す。
私も、まさか自分の口からこんな悲鳴が出てくるとは思わなくて、説明しようにも声にならず、口をパクパク動かすだけだった。
やがて、冬夜くんが「俺には視えないんだが」と言って私を見て、私の視線をたどる。
繋がれた手を見たとたん、ものすごい勢いで手が離なれた。
「ごめんごめんごめん!」
いつもよりワントーン高い声で、冬夜くんが謝り倒してきた。
「こういう暗いところに行くと、ナツの手を繋がないと神隠しに遭うんじゃないかって、だからいつものくせで、」
暗くてもわかるぐらい顔を赤くする冬夜くん。つられて、思わず私も早口でまくし立てた。
「そ、そうだよね!? やっぱり、安全性を考えたら手を繋いだ方がいいよね!? 手繋ごっか!」
――私は一体何を言っているの?
勝手に動く口にとまどいつつ、頭の中で何かが「そうかもしれない」とささやいてくる。というか、丸みこんでくる。
冬夜くんも、私の勢いに押されて、「そ、そうだな」と改めて私の手を繋いだ。
しっとりとして、私より大きな手だった。
「……ごめん、左でお願い。利き手が封じられてると、何かあった時に対応できない」
「あ、悪い……」
中々しまらなかった。
ストーリーは、『大切なものを落として、穴の中に迷い込んだあなたたち。追いかけると、そこには奇妙な世界が広がっていた。果たしてあなたたちは、大切なものを取り戻し、無事現世に帰ることはできるだろうか』というもの。
そしてこのお化け屋敷は、なんと本物の幽霊が出ることで有名だった。おまけにこのお化け屋敷、異界へ通じる道の一つである『穴』がテーマだ。
古今東西、『穴』や『地下』に落ちて、異界に行く話は多い。
例えば、しゃべる白いウサギを追いかけて『穴』に落ちる『不思議の国のアリス』。
日本だと、おむすびを穴に落としてしまって、ネズミたちの世界に迷い込む『おむすびころりん』が有名だろう。
他にも、小野篁が井戸を通して地獄と現世を行き来していた話もある。
だから私は、このお化け屋敷が一番危険だと判断したのだけど……もしかしたら、発想が逆だったのかもしれない。
それはまた後ほど。
受付を済ませた私たちは、目隠ししたままエレベーターに乗せられる。
そして、チーンという音が鳴ったあと、スタッフさんに手を引っ張られ、目隠しを外された。
その後スタッフさんから説明を受け、ブザーを渡された。リタイアしたい時、これを引っ張ると、スタッフさんが来て、お化け屋敷から出られるらしい。なお、ミッションをクリアすると、景品がもらえるとか。
どこからか、ジジジ……という、ざらついた機械音が聞こえる。真っ直ぐ伸びる廊下の奥には、両開きの扉があった。
案内するように床に埋め込まれたライトが、暗闇を割くように眩しい。
そのライトを頼りに、私たちは真っ直ぐ進む。
その時だった。
私より前に歩いていた冬夜くんが、私の右手を掴んだのだ。
「ひゃあ!?」
「え!?」
思わず叫んでしまい、つられて冬夜くんも声を上げる。
「どうした!? 何かいたのか!?」
眼鏡を掛けた冬夜くんが、辺りを見渡す。
私も、まさか自分の口からこんな悲鳴が出てくるとは思わなくて、説明しようにも声にならず、口をパクパク動かすだけだった。
やがて、冬夜くんが「俺には視えないんだが」と言って私を見て、私の視線をたどる。
繋がれた手を見たとたん、ものすごい勢いで手が離なれた。
「ごめんごめんごめん!」
いつもよりワントーン高い声で、冬夜くんが謝り倒してきた。
「こういう暗いところに行くと、ナツの手を繋がないと神隠しに遭うんじゃないかって、だからいつものくせで、」
暗くてもわかるぐらい顔を赤くする冬夜くん。つられて、思わず私も早口でまくし立てた。
「そ、そうだよね!? やっぱり、安全性を考えたら手を繋いだ方がいいよね!? 手繋ごっか!」
――私は一体何を言っているの?
勝手に動く口にとまどいつつ、頭の中で何かが「そうかもしれない」とささやいてくる。というか、丸みこんでくる。
冬夜くんも、私の勢いに押されて、「そ、そうだな」と改めて私の手を繋いだ。
しっとりとして、私より大きな手だった。
「……ごめん、左でお願い。利き手が封じられてると、何かあった時に対応できない」
「あ、悪い……」
中々しまらなかった。
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