完璧ブラコン番長と町の謎

佐賀ロン

文字の大きさ
上 下
11 / 33
あかり、完璧ブラコン番長とデートする?

第10話 テーマパークは心霊スポット?

しおりを挟む
 テーマパーク『グリーンワールド』。
 平たい入口から、大きな観覧車が回っているのが見えた。

「大丈夫? 冬夜くん」
「大丈夫……」

 人が並ぶ朝十時。私の隣には、顔色がすこぶる悪い冬夜くんがいる。朝一で電車に乗ったから、しんどいんだろうな。
 なんでこうなっているかというと――事の発端は、冬夜くんの相談事だ。


 ■

『え! 夏樹くん、遠足でテーマパーク行くの!?』

 私の言葉に、ああ、と冬夜くんはうなずく。
 冬夜くんの『相談事』とは、夏樹くんが一週間後に行く遠足のことだった。しかも、この地方でも有名なテーマパークだ。
 すご。私が小学校の時、近所の公園まで歩くぐらいだったよ。

『相談というのは、そのテーマパークに、怪異の噂があることなんだ』

 その言葉に、なるほど、と理解する。
 テーマパークは心霊現象が起きやすい。というのも、テーマパークとは、「非日常」を演出することが目的だからだ。
 え、それだけ? と思われるかもしれないけど、これはある種の結界になっている。おまけに、テーマパークみたいに町と空間を区切るのは、『境』の概念だ。
 異界へ通じる道は、主に『合』『穴』『境』の三つに分けられていて、そのうち『境』タイプは禁忌の地に迷いやすく、二度と帰れないこともあるのだ。

『俺には、その噂が本当なのかはわからない。けど、危険ばかりを恐れて、ナツが楽しむ機会を奪うこともしたくない。……過剰な判断かもしれないけど、』
『オッケー。私が事前調査をすればいいんだね』

 私がそう言うと、『必要経費は俺が出すよ』と冬夜くんが言う。

『いらないいらない。店長から貰うし』
『いや……でも……』

 冬夜くんの表情が暗い。
 まあ確かに、テーマパークって入場するだけでお金取られるし、アトラクションを全部チェックするとなると、それなりにお金を使うだろうな。冬夜くんはそこを心配しているんだろう。
 私は少し考えて、こう返した。

『あー、でももしかしたら店長、何か知ってるかも。先に店長に聞いてみよっか』
 
 で、『妖怪食堂』に戻って、店長に聞いてみたところ。
 店長は、机に両肘をついて、真面目な顔でこう言った。

『冬夜くんと。一緒に行きなさい』
『……なんで?』
『店長命令です。冬夜くんと。一緒に行きなさい』
『いや、店長。これ、遊びに行く相談じゃないんですよ?』

 そもそも冬夜くんは、妖怪や幽霊が視えない。『境』になった場所なら視えるかもしれないけど、視えたとしても、対怪異の訓練を受けていない彼を巻き込むわけにはいかない。
 なんて言ったら、店長は元気よく『大丈夫!』と返した。
 
『ここに、「かくりよの眼鏡」を用意してるから! これ付けたら冬夜くんでも妖怪が視える!』

 私は思わず、飲んでいたお茶を吹き出す。

『それウン十万するやつですよね!? 私にくれた衣といい、中学生にほいほい高価なアイテム渡さないでください!!』
『あ、冬夜くんのお金もこっちで用意するから、気にしないでって言ってね! あと、夏樹くんのごはんはこっちで用意するとも言っておいて!』
『余計気を遣わせませんか!?』


 ■
 
「本当にごめんね……店長のゴリ押しで、冬夜くんまで巻き込んでしまって……」
「いや、頼んだのは俺だ」

 それに、と冬夜くんは言う。

「俺は足でまといになるからと思って言わなかったけど、本当は自分の目で確かめたかったんだ」

 そう言って、観覧車を見上げる冬夜くんは、『かくりよの眼鏡』を掛けていた。

「ナツと小野は、こういう世界をずっと見てたんだな」
「大丈夫? 酔わない?」

 テーマパークの入口には、人間だけじゃなく、妖怪や幽霊もちらほら見える。どれも無害な存在だけど、普段視えないものを視ると、慣れない人は気持ち悪くなると聞いていた。

「大丈夫だ。と言っても、フレームがあるのは何となく慣れないな。落ちてきそうだ」
「そっか。でも、気分が悪いなって思ったら、すぐに言ってね」

 私の言葉に、ああ、と冬夜くんがうなずく。
 それと同時に、前の人が去っていき、私たちの番になった。
 学生割引でチケットを買ったあと、私たちはいよいよ入園する。置いてあったパンフレットを開きながら、私は尋ねた。

「まずはどこから調べようか。できたら、危険性の低そうなところから始めたいんだけど」

 ちなみに、一番危険そうなのは『お化け屋敷』の噂だ。本物の幽霊が出るという噂で、インターネットでよく取り上げられる。そこは最後の方がいいだろう。

「それじゃあ、ここ、調べてみないか」

 冬夜くんが指さしたのは……。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【総集編】日本昔話 パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。  今まで発表した 日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。 朝ドラの総集編のような物です笑 読みやすくなっているので、 ⭐️して、何度もお読み下さい。 読んだ方も、読んでない方も、 新しい発見があるはず! 是非お楽しみ下さい😄 ⭐︎登録、コメント待ってます。

鳥の詩

恋下うらら
児童書・童話
小学生、名探偵ソラくん、クラスで起こった事件を次々と解決していくお話。

鎌倉西小学校ミステリー倶楽部

澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】 https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230 【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】 市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。 学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。 案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。 ……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。 ※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。 ※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。 ※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。 ※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)

児童絵本館のオオカミ

火隆丸
児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。

【総集編】童話パロディ短編集

Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。童話パロディ短編集

児童小説をどうぞ

小木田十(おぎたみつる)
児童書・童話
児童小説のコーナーです。大人も楽しめるよ。 / 小木田十(おぎたみつる)フリーライター。映画ノベライズ『ALWAIS 続・三丁目の夕日 完全ノベライズ版』『小説 土竜の唄』『小説 土竜の唄 チャイニーズマフィア編』『闇金ウシジマくん』などを担当。2023年、掌編『限界集落の引きこもり』で第4回引きこもり文学大賞 三席入選。2024年、掌編『鳥もつ煮』で山梨日日新聞新春文芸 一席入選(元旦紙面に掲載)。

忠犬ハジッコ

SoftCareer
児童書・童話
もうすぐ天寿を全うするはずだった老犬ハジッコでしたが、飼い主である高校生・澄子の魂が、偶然出会った付喪神(つくもがみ)の「夜桜」に抜き去られてしまいます。 「夜桜」と戦い力尽きたハジッコの魂は、犬の転生神によって、抜け殻になってしまった澄子の身体に転生し、奪われた澄子の魂を取り戻すべく、仲間達の力を借りながら奮闘努力する……というお話です。 ※今まで、オトナ向けの小説ばかり書いておりましたが、  今回は中学生位を読者対象と想定してチャレンジしてみました。  お楽しみいただければうれしいです。

山姥(やまんば)

野松 彦秋
児童書・童話
小学校5年生の仲良し3人組の、テッカ(佐上哲也)、カッチ(野田克彦)、ナオケン(犬塚直哉)。 実は3人とも、同じクラスの女委員長の松本いずみに片思いをしている。 小学校の宿泊研修を楽しみにしていた4人。ある日、宿泊研修の目的地が3枚の御札の昔話が生まれた山である事が分かる。 しかも、10年前自分達の学校の先輩がその山で失踪していた事実がわかる。 行方不明者3名のうち、一人だけ帰って来た先輩がいるという事を知り、興味本位でその人に会いに行く事を思いつく3人。 3人の意中の女の子、委員長松本いずみもその計画に興味を持ち、4人はその先輩に会いに行く事にする。 それが、恐怖の夏休みの始まりであった。 山姥が実在し、4人に危険が迫る。 4人は、信頼する大人達に助けを求めるが、その結果大事な人を失う事に、状況はどんどん悪くなる。 山姥の執拗な追跡に、彼らは生き残る事が出来るのか!

処理中です...