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1章
3話:桜川千歳の話①
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私は小さい頃から、正義のヒーローに憧れていた。
それと同時に、ヒーローは現実にいないことも知っていた。
私が憧れていたのは、そのヒーローの志である。
助けを求められれば駆けつける。
悪を許さない。
そんな志に私は惹かれていたのだ。
これは、そんな私が高校生に入り、初めての夏休みまで一か月を切ったあの日の話だ。
____________________________________________________________________
「ちーとせっ!夏休みひま?ひまでしょ!」
「暇…と言えば暇かなぁー」
私の幼馴染の桃花は、いつものように私の背後に肩を掴んでくる。
小さい頃から私は、夏休みの大半を桃花と一緒に過ごしている。
……そう言えるくらい、いつも一緒だ。
「どこ行く?どこ行く?海?山?」
「今年は」
私が応えようとすると、後ろの方が騒がしくなり、そちらに身体を向ける。
そこでは、いつものようにターゲットとされた女の子が、金を巻き上げられていた。
いつ見ても慣れない光景だ。
「お願いだから、お財布は返してください……」
「うん、私たちのジュース代もらったら返すわ……ってこんだけしかないの?」
「…昨日も取られたから」
「取った?人聞きの悪いこと言わないでよ~。フォロワー少ないあなたからもらってあげてるだけだし~」
私は、なぜか胸が苦しくなった。
何も出来ずに見ているだけの自分が許せなかった。
何も無かったかのようにふるまってきたいままでの自分に苛立ちをも覚えた。
「見ちゃダメだよ、千歳。触らぬ…なんとかに災い無しだよ!」
「触らぬ神に祟り無し?」
「そう、それ!」
確かに。
このまま見ないふりを続ければ、私がターゲットにされる心配は無い。
私のフォロワー数は若干ではあるが、彼女達よりも多いからだ。
そうだ。
見ないふりをすればいいんだ。
……自分にそう言い聞かせていた時、ふと思い出した。
ヒーローは悪を許さない。
そして。
「もう嫌だ!…ねぇ!みんな見ないふりしないで……誰か助けてよ」
助けを求められたら駆けつける。
「嫌がっているじゃないですか。お財布とお金、返してあげてください」
この一言で、私の平凡な学園生活は突然、終わりを遂げた。
それと同時に、ヒーローは現実にいないことも知っていた。
私が憧れていたのは、そのヒーローの志である。
助けを求められれば駆けつける。
悪を許さない。
そんな志に私は惹かれていたのだ。
これは、そんな私が高校生に入り、初めての夏休みまで一か月を切ったあの日の話だ。
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「ちーとせっ!夏休みひま?ひまでしょ!」
「暇…と言えば暇かなぁー」
私の幼馴染の桃花は、いつものように私の背後に肩を掴んでくる。
小さい頃から私は、夏休みの大半を桃花と一緒に過ごしている。
……そう言えるくらい、いつも一緒だ。
「どこ行く?どこ行く?海?山?」
「今年は」
私が応えようとすると、後ろの方が騒がしくなり、そちらに身体を向ける。
そこでは、いつものようにターゲットとされた女の子が、金を巻き上げられていた。
いつ見ても慣れない光景だ。
「お願いだから、お財布は返してください……」
「うん、私たちのジュース代もらったら返すわ……ってこんだけしかないの?」
「…昨日も取られたから」
「取った?人聞きの悪いこと言わないでよ~。フォロワー少ないあなたからもらってあげてるだけだし~」
私は、なぜか胸が苦しくなった。
何も出来ずに見ているだけの自分が許せなかった。
何も無かったかのようにふるまってきたいままでの自分に苛立ちをも覚えた。
「見ちゃダメだよ、千歳。触らぬ…なんとかに災い無しだよ!」
「触らぬ神に祟り無し?」
「そう、それ!」
確かに。
このまま見ないふりを続ければ、私がターゲットにされる心配は無い。
私のフォロワー数は若干ではあるが、彼女達よりも多いからだ。
そうだ。
見ないふりをすればいいんだ。
……自分にそう言い聞かせていた時、ふと思い出した。
ヒーローは悪を許さない。
そして。
「もう嫌だ!…ねぇ!みんな見ないふりしないで……誰か助けてよ」
助けを求められたら駆けつける。
「嫌がっているじゃないですか。お財布とお金、返してあげてください」
この一言で、私の平凡な学園生活は突然、終わりを遂げた。
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