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第二部
二十七話 色異なる六人の乙女の話 前②
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「我が君、祖国を滅ぼすなどと、そんなことをおっしゃらないでください」
お爺さんが片手で顔を覆って嘆いている。
老いた大臣を冷たく見下ろしたアシュラフ皇帝は、はっと乾いた笑みを浮かべた。
「だったら早く始めろ。私が手始めに六女典礼の候補者たちを殺す前にな」
そう言われて、お爺さんは渋々頷いた。
「それでは、すぐに六人の候補者を決めて参ります」
「いや、待て。候補者は私が決める。今すぐこの場に女達を集めろ」
大臣の言葉を遮り、皇帝は頬杖をついたままそう命じた。
老臣の顔が引き攣る。青白い顔でことの成り行きを見守っていた人々もその言葉にざわめいた。
「陛下、確かに現在国中から候補者となる女性を王宮に集めておりますが、今こちらに向かっている者達もおります。全員をすぐに集めるのは時間が足りません」
「どのくらいだ」
「少なくとも半日以上は必要かと」
「長すぎる。二時間でやれ」
無情にそう言い捨てた年若い皇帝は、退屈そうに周りを見回すと「それまで外す。私が戻ったら候補者の選定を始める」と言って次の瞬間にはその姿は掻き消えていた。多分またどこかに転移したんだろう。
なんだか、よく分からない展開になってきたな。
状況は分からないが、全く楽しそうな雰囲気ではないということだけはわかる。
マスルールに詳細を尋ねたいが、皇帝が消えた後、彼も大臣達と一緒に慌ただしく広間から出て行ってしまった。
残された俺はぽつんと玉座の隅に立って周りを見回す。
六女典礼という儀式が執り行われていたんだろうか。話を聞いた感じでは皇帝の妃を選ぶ儀式みたいだったな。でもお爺さん達は始めるのを渋っていたようだけど。
広間にいた色とりどりの民族衣装を着た人々は、気がつくともういなくなっていた。代わりにぱらぱらと年若い女の子達が広間に入ってくる。どの子も質の良い光沢のあるゆったりした長さの長袖のワンピースのような民族衣装を着ていた。まだ十代後半くらいで、恐る恐るといった様子で侍女らしき女性達と共に広間に足を踏み入れてくる。中には二十代半ばくらいの女性や逆にもっと若い女の子もいるように見えた。
候補者を六人選ぶと言っていたから、そのために女の子達が早速集められているんだろうか。
えっと、それで俺はどうすればいいんだ?
今がチャンスだと逃げ出せばいいんだろうか。
今ならアシュラフ皇帝もマスルールもいない。さっきまで不死鳥の卵が景品です、なんて話をしていたとは信じられないくらい誰も俺に注目していないように見える。そっと広間から出てもバレないんじゃないか?
不死鳥の卵を取り戻すのが俺の目的だ。
……いや違う。
俺じゃなくて、オズワルドの目的だった。
夜までどこかに隠れて彼と合流すれば、卵と一緒にデルトフィアに帰れる。
思いついたら良いアイディアな気がして、俺は片手で卵を服の上から支えながらそろそろと足を動かし広間の出入り口を目指した。広い広間の隅に立つ円柱の陰に隠れながらそーっと扉を目指して足を進めて行く。
大きく開かれた両開きの扉に近付いて、次々に入ってくる女の子たちとすれ違って行ったとき、広間の入り口に立った一人の少女に気がついた。彼女が視界に入った途端、足が止まってその場に棒立ちになる。
菫色の髪の、印象的な青い瞳で広間の中をきょろきょろと見回す可愛らしい顔立ちの女の子。
「ルシア……?」
俺の口から漏れた呟きを拾って、彼女が真っ直ぐに俺の方へ視線を向けた。
その懐かしい顔と目と目が合った。
「レイナルド様?」
まだ距離はあったが、ぱちくりと目を丸くした彼女の口がそう動いたのを見た瞬間、俺は走り出していた。
「ルシア! ルシアー!」
なりふり構わずルシアに抱きついた。卵は片手で支えたままだから変な抱擁になってしまったが、彼女は驚きつつも俺の背中に手を回してくれる。
「え? なんでレイナルド様がここに?」
「ルシアどうしよう! 俺なんかまたおかしなことに巻き込まれてる!!」
そう叫ぶと、ルシアは目を見開いたまま俺をまじまじと見つめた。彼女は髪の色と同じ淡い紫色の丈の長いワンピースを着て、その上に白い総レースのスカーフを品よく巻いていた。紫色の髪が編み込まれて右肩に一つに纏められ、ビーズの飾りで覆われている。全身異国スタイルになっているが、相変わらず文句なく可愛らしい。
まさかこんなところでルシアに会えるなんて。
知らない国で知り合いを見つけた喜びに俺はちょっと泣きそうになった。
驚きと喜びが今までの不安や心細さを凌駕して俺の中でエキサイトしている。
ここでルシアに会えるなんて天の助け。自分の巡り合わせが良いのか悪いのか、もう訳がわからないがとにかく嬉しい。
「こんなところでお会いするなんて、びっくりしました。でもまたお会いできて嬉しいです」
ルシアは旅立った時と変わらない笑顔でふわりと明るく微笑んだ。
その笑顔を見て俺はまたじんわりしてしまった。訳の分からない状況下でこの世界の主人公に出会えた心強さといったらない。
「でもなんでまた、ラムル神聖帝国にいて、それも六女典礼の会場にいらっしゃるんですか?」
ルシアは俺から手を離し、俺が服の上から支えている腹の膨らみを見下ろした。
「それに、なんですか。それ」
首を傾げるルシアに説明しようと口を開きかけた時、彼女の後ろから一人の女性が声をかけてきた。
「リリー様、周りに見られておりますので、ひとまず中にお入りください」
「あ、そうですね。わかりました」
茶色の長い髪を後ろで結んだ生真面目そうな顔をした二十代半ばくらいの白い民族衣装を着た女性がルシアを促す。
ルシアはその言葉に頷いて、俺を見て広間の中を指差した。
「レイナルド様、とりあえず中に入りましょう。隅の方でお話すれば目立たないです、きっと」
さっきまでは広間から脱出しようとしていたが、ルシアと出会った偶然を逃すわけにもいかない。彼女には聞きたいことがある。
もう一度広間の中に戻り、円柱の陰に身を寄せて二人でひそひそと話をした。
さっき入り口で騒いでしまって注目を集めたが、俺たちには知り合いもいないのですぐに好奇な目は向けられなくなる。代わりにどんどん広間に入ってくる少女達に周りの視線は移っていった。
「ルシアはなんでここに? ミラード卿は?」
ルシアとミラード卿にも何かあったんだろうか。
不安になって聞いてみると、ルシアは俺の顔を見て微笑んだ。
「私は、六女典礼の候補者選びのために来ました。最近私とお兄ちゃんはラムルの郊外の街に滞在していたんですけど、そこでお世話になった教会の司祭様が国に要請された候補者を出せなくて困ってたんです。少しでも魔力か精霊力がある子を出さなくちゃいけないのに、該当する子がいなくて焦っていたので、私が手を上げました。といっても、ただの数合わせに来ただけです。まさか身元不明の外国人が選ばれることもないでしょうし、候補者選びが終わったらすぐに帰ります。お兄ちゃんは王都までついて来てくれたんですけど、王宮には入れなかったので城壁の外で待ってます」
そう説明したルシアの言葉を聞いて無理矢理連れて来られた訳ではないと知り、俺はひとまず胸を撫で下ろした。
「彼女は、教会から私に付き添ってついて来てくれたシスターです。サラさんと言います」
少し離れたところで俺たちを見守っている先程の生真面目そうな女性をルシアはそう紹介した。女性にしては背が高く、厳格そうな顔をした人だ。教会の中でも規律に厳しい人なんだろうか。見られると少し緊張する。
俺は頷いてから、ルシアにもう一度視線を戻す。
「俺、全然わかってないんだけど、六女典礼って何? 皇帝が妃を選ぶ儀式ってこと?」
「えっと、私も教会の司祭様に簡単にお聞きしただけなんですけど、そうみたいです。皇帝が妃を選ぶ時のラムルのしきたりみたいですね。妃を選ぶ時は、必ず六人の候補者を立てて、その中から最も優れた者を一人選ぶっていう決まりになってるみたいです。色々試験をして試すみたいなんですけど、その辺は私も関係ないかなと思って詳しく聞いてきませんでした」
俺がさっきの皇帝とお爺さんの会話の流れでなんとなく把握したことと大体大差なかった。
問題なのは、妃として選ばれた人に不死鳥の卵を褒美に与えるって皇帝が言っちゃったことなんだよな。
また新たに生じ始めた訳の分からない展開に内心で焦りを感じた。ルシアは俺を見上げて、服の膨らみと俺の顔を見比べながら首を傾げた。
「それで、レイナルド様はどうしてお一人でここに? 魔力封じの首輪までつけて」
俺は首輪のことを言われてオズワルドのことを思い出し、王宮で拉致されてラムル神聖帝国に連れて来られてから今に至るまでの経緯をざっくり説明した。二日も経っていないはずなのに、話し始めると内容が濃すぎて少し時間がかかる。
オズワルドを殴った時の顛末を話すと無駄にややこしくなりそうだから一旦そこは触れずに省略した。
俺の話を真面目な顔で聞いていたルシアは、オークション会場でのクライマックスを聞いて吹き出し、口元を両手の指先で覆いながら声を震わせて俺を見上げた。
「ごめんなさい。笑い事じゃないってわかってるんですけど。レイナルド様ったら、ほんとにすごい。ほんとに巻き込まれ体質なんですね。私の代わりに第二王子と闇オークションに潜入して、そこでラムルの皇帝陛下に買われて……? 普通そんなことあります?」
ふふふと笑うルシアを俺はなんとも言えない表情で見下ろした。俺も、夢であってくれと何度も思ったよ。
でもちょっと待て。
今ルシアは私の代わりって言った?
お爺さんが片手で顔を覆って嘆いている。
老いた大臣を冷たく見下ろしたアシュラフ皇帝は、はっと乾いた笑みを浮かべた。
「だったら早く始めろ。私が手始めに六女典礼の候補者たちを殺す前にな」
そう言われて、お爺さんは渋々頷いた。
「それでは、すぐに六人の候補者を決めて参ります」
「いや、待て。候補者は私が決める。今すぐこの場に女達を集めろ」
大臣の言葉を遮り、皇帝は頬杖をついたままそう命じた。
老臣の顔が引き攣る。青白い顔でことの成り行きを見守っていた人々もその言葉にざわめいた。
「陛下、確かに現在国中から候補者となる女性を王宮に集めておりますが、今こちらに向かっている者達もおります。全員をすぐに集めるのは時間が足りません」
「どのくらいだ」
「少なくとも半日以上は必要かと」
「長すぎる。二時間でやれ」
無情にそう言い捨てた年若い皇帝は、退屈そうに周りを見回すと「それまで外す。私が戻ったら候補者の選定を始める」と言って次の瞬間にはその姿は掻き消えていた。多分またどこかに転移したんだろう。
なんだか、よく分からない展開になってきたな。
状況は分からないが、全く楽しそうな雰囲気ではないということだけはわかる。
マスルールに詳細を尋ねたいが、皇帝が消えた後、彼も大臣達と一緒に慌ただしく広間から出て行ってしまった。
残された俺はぽつんと玉座の隅に立って周りを見回す。
六女典礼という儀式が執り行われていたんだろうか。話を聞いた感じでは皇帝の妃を選ぶ儀式みたいだったな。でもお爺さん達は始めるのを渋っていたようだけど。
広間にいた色とりどりの民族衣装を着た人々は、気がつくともういなくなっていた。代わりにぱらぱらと年若い女の子達が広間に入ってくる。どの子も質の良い光沢のあるゆったりした長さの長袖のワンピースのような民族衣装を着ていた。まだ十代後半くらいで、恐る恐るといった様子で侍女らしき女性達と共に広間に足を踏み入れてくる。中には二十代半ばくらいの女性や逆にもっと若い女の子もいるように見えた。
候補者を六人選ぶと言っていたから、そのために女の子達が早速集められているんだろうか。
えっと、それで俺はどうすればいいんだ?
今がチャンスだと逃げ出せばいいんだろうか。
今ならアシュラフ皇帝もマスルールもいない。さっきまで不死鳥の卵が景品です、なんて話をしていたとは信じられないくらい誰も俺に注目していないように見える。そっと広間から出てもバレないんじゃないか?
不死鳥の卵を取り戻すのが俺の目的だ。
……いや違う。
俺じゃなくて、オズワルドの目的だった。
夜までどこかに隠れて彼と合流すれば、卵と一緒にデルトフィアに帰れる。
思いついたら良いアイディアな気がして、俺は片手で卵を服の上から支えながらそろそろと足を動かし広間の出入り口を目指した。広い広間の隅に立つ円柱の陰に隠れながらそーっと扉を目指して足を進めて行く。
大きく開かれた両開きの扉に近付いて、次々に入ってくる女の子たちとすれ違って行ったとき、広間の入り口に立った一人の少女に気がついた。彼女が視界に入った途端、足が止まってその場に棒立ちになる。
菫色の髪の、印象的な青い瞳で広間の中をきょろきょろと見回す可愛らしい顔立ちの女の子。
「ルシア……?」
俺の口から漏れた呟きを拾って、彼女が真っ直ぐに俺の方へ視線を向けた。
その懐かしい顔と目と目が合った。
「レイナルド様?」
まだ距離はあったが、ぱちくりと目を丸くした彼女の口がそう動いたのを見た瞬間、俺は走り出していた。
「ルシア! ルシアー!」
なりふり構わずルシアに抱きついた。卵は片手で支えたままだから変な抱擁になってしまったが、彼女は驚きつつも俺の背中に手を回してくれる。
「え? なんでレイナルド様がここに?」
「ルシアどうしよう! 俺なんかまたおかしなことに巻き込まれてる!!」
そう叫ぶと、ルシアは目を見開いたまま俺をまじまじと見つめた。彼女は髪の色と同じ淡い紫色の丈の長いワンピースを着て、その上に白い総レースのスカーフを品よく巻いていた。紫色の髪が編み込まれて右肩に一つに纏められ、ビーズの飾りで覆われている。全身異国スタイルになっているが、相変わらず文句なく可愛らしい。
まさかこんなところでルシアに会えるなんて。
知らない国で知り合いを見つけた喜びに俺はちょっと泣きそうになった。
驚きと喜びが今までの不安や心細さを凌駕して俺の中でエキサイトしている。
ここでルシアに会えるなんて天の助け。自分の巡り合わせが良いのか悪いのか、もう訳がわからないがとにかく嬉しい。
「こんなところでお会いするなんて、びっくりしました。でもまたお会いできて嬉しいです」
ルシアは旅立った時と変わらない笑顔でふわりと明るく微笑んだ。
その笑顔を見て俺はまたじんわりしてしまった。訳の分からない状況下でこの世界の主人公に出会えた心強さといったらない。
「でもなんでまた、ラムル神聖帝国にいて、それも六女典礼の会場にいらっしゃるんですか?」
ルシアは俺から手を離し、俺が服の上から支えている腹の膨らみを見下ろした。
「それに、なんですか。それ」
首を傾げるルシアに説明しようと口を開きかけた時、彼女の後ろから一人の女性が声をかけてきた。
「リリー様、周りに見られておりますので、ひとまず中にお入りください」
「あ、そうですね。わかりました」
茶色の長い髪を後ろで結んだ生真面目そうな顔をした二十代半ばくらいの白い民族衣装を着た女性がルシアを促す。
ルシアはその言葉に頷いて、俺を見て広間の中を指差した。
「レイナルド様、とりあえず中に入りましょう。隅の方でお話すれば目立たないです、きっと」
さっきまでは広間から脱出しようとしていたが、ルシアと出会った偶然を逃すわけにもいかない。彼女には聞きたいことがある。
もう一度広間の中に戻り、円柱の陰に身を寄せて二人でひそひそと話をした。
さっき入り口で騒いでしまって注目を集めたが、俺たちには知り合いもいないのですぐに好奇な目は向けられなくなる。代わりにどんどん広間に入ってくる少女達に周りの視線は移っていった。
「ルシアはなんでここに? ミラード卿は?」
ルシアとミラード卿にも何かあったんだろうか。
不安になって聞いてみると、ルシアは俺の顔を見て微笑んだ。
「私は、六女典礼の候補者選びのために来ました。最近私とお兄ちゃんはラムルの郊外の街に滞在していたんですけど、そこでお世話になった教会の司祭様が国に要請された候補者を出せなくて困ってたんです。少しでも魔力か精霊力がある子を出さなくちゃいけないのに、該当する子がいなくて焦っていたので、私が手を上げました。といっても、ただの数合わせに来ただけです。まさか身元不明の外国人が選ばれることもないでしょうし、候補者選びが終わったらすぐに帰ります。お兄ちゃんは王都までついて来てくれたんですけど、王宮には入れなかったので城壁の外で待ってます」
そう説明したルシアの言葉を聞いて無理矢理連れて来られた訳ではないと知り、俺はひとまず胸を撫で下ろした。
「彼女は、教会から私に付き添ってついて来てくれたシスターです。サラさんと言います」
少し離れたところで俺たちを見守っている先程の生真面目そうな女性をルシアはそう紹介した。女性にしては背が高く、厳格そうな顔をした人だ。教会の中でも規律に厳しい人なんだろうか。見られると少し緊張する。
俺は頷いてから、ルシアにもう一度視線を戻す。
「俺、全然わかってないんだけど、六女典礼って何? 皇帝が妃を選ぶ儀式ってこと?」
「えっと、私も教会の司祭様に簡単にお聞きしただけなんですけど、そうみたいです。皇帝が妃を選ぶ時のラムルのしきたりみたいですね。妃を選ぶ時は、必ず六人の候補者を立てて、その中から最も優れた者を一人選ぶっていう決まりになってるみたいです。色々試験をして試すみたいなんですけど、その辺は私も関係ないかなと思って詳しく聞いてきませんでした」
俺がさっきの皇帝とお爺さんの会話の流れでなんとなく把握したことと大体大差なかった。
問題なのは、妃として選ばれた人に不死鳥の卵を褒美に与えるって皇帝が言っちゃったことなんだよな。
また新たに生じ始めた訳の分からない展開に内心で焦りを感じた。ルシアは俺を見上げて、服の膨らみと俺の顔を見比べながら首を傾げた。
「それで、レイナルド様はどうしてお一人でここに? 魔力封じの首輪までつけて」
俺は首輪のことを言われてオズワルドのことを思い出し、王宮で拉致されてラムル神聖帝国に連れて来られてから今に至るまでの経緯をざっくり説明した。二日も経っていないはずなのに、話し始めると内容が濃すぎて少し時間がかかる。
オズワルドを殴った時の顛末を話すと無駄にややこしくなりそうだから一旦そこは触れずに省略した。
俺の話を真面目な顔で聞いていたルシアは、オークション会場でのクライマックスを聞いて吹き出し、口元を両手の指先で覆いながら声を震わせて俺を見上げた。
「ごめんなさい。笑い事じゃないってわかってるんですけど。レイナルド様ったら、ほんとにすごい。ほんとに巻き込まれ体質なんですね。私の代わりに第二王子と闇オークションに潜入して、そこでラムルの皇帝陛下に買われて……? 普通そんなことあります?」
ふふふと笑うルシアを俺はなんとも言えない表情で見下ろした。俺も、夢であってくれと何度も思ったよ。
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