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第二部

二話 蕾の薔薇と世の喜び《開演》 前②*

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 ※ぬるいですけど、R18なので苦手な方は回避してください。








 月明かりに照らされたベッドの上に肌が擦れる音が響く。

 あの後埃だらけになっていた俺は風呂に入って、部屋に戻ると本当に怪我がないか身体中を丹念に調べられてからグウェンに抱かれた。

 四ヶ月で慣らされた俺の身体は、もうなんというか、非常に不本意でもあるのだが中を擦られるだけでしっかり快感を拾う。この前の魔力暴走の時うっかり致していたせいで散々な目にあったが、恐らくあれのせいで俺の身体はおかしくなった。未だにグウェンに前から抱かれて顔を見られると居た堪れないくらい恥ずかしいのに、身体の方はその緊張をもろともせず反応するのだ。

 どうなってるんだ一体。
 俺の身体が作り替えられてる。
 これは雄として健全な反応なのか。
 男の身でこんな強烈な経験値を着実に積んでいる俺は本当に大丈夫なのか?
 このまま抱かれ続けたら、身体の奥に与えられるこのどうしようもない快感からもう一生逃れられないんじゃないかとちょっと怖いんだが。

 そう文句を言ったら嬉々として「責任を取る」と言い放たれそうだから言わないが、本当にこんなことになってしまうとは思わなかった。色々想定外なんだ。抱かれる側でこんなに感じてしまうなんて。

 それでも実際のところ、俺はそれを心の底では嫌だと思っていないんだから、順調にグウェンとの恋愛に嵌っていっている。底がない沼にずぶずぶに沼ってる。沼から出る気はさらさらないけど、偶に俺の身体はこのまま開発されて大丈夫なんだろうか? と若干自分の将来が心配になる。
 自分でもまさかこんなふうに後ろに挿入れられて気持ち良くなるなんて、最初に抱かれた頃には夢にも思ってもいなかったのに。

「んっ、ん、あっ、ちょっ、それやめて」

 グウェンが緩く腰を突き入れながら、たくし上げた寝室着の下に手を差し入れて乳首をいじくって触ってくる。
 軽く爪で引っ掻かれるとむずむずするような感覚が腰にきて、動きに合わせて中を突かれるとびりっとした快感が背筋を走る。
 口を覆っていた手で寝衣の裾を掴み、捲り上がっていた服を引っ張って胸の下まで引き戻そうとした。
 そうするとグウェンが俺の腕を掴んでそれを邪魔してくる。攻防の末、気がついたら逆にずり下がらないように自分で裾を持たされていた。

「君が持って」
「は? もっ、なんで、んあっ」

 抵抗しようとしたら有無を言わさない力で強く中を突き上げられたので、びくっと震えた。大人しく両手で裾を握ると突き上げが緩くなったので、恥ずかしさに耐えて裾をぎゅっと握る。自分から胸元を晒しているような格好に気付いてしまい、すぐに顔がかっと熱くなって目を伏せた。
 顔を見下ろされているのが居た堪れなくて、手で握った裾をぐいっと伸ばして目の上まで引っ張った。
 胸は無防備になったが、顔の上に布がきて少し安心する。
 乳首をかりかり引っ掻いてくる指の動きに背中を浮かせて悶えていたら、そのうちまた強めに腰を入れられた。

「あっ、んっ、なに」
「顔が見たい」
「んっ……あっ、あ、わかったからっ」

 言外に顔を隠していた裾を下ろすように言われ、俺は渋々顔まで引っ張っていた服を口元まで下ろした。俺を舐めるようにじっと見下ろすグウェンの黒い瞳と目が合う。
 普段は俺が顔を隠していてもキスで促してくる以外は放っておいてくれるのに、今日はそのつもりがないらしい。

 でもその理由はわかっている。

 こいつは、俺のことで気に入らないことがあった日は、こうやって俺に自分の言うことを聞かせてきてさりげなく腹いせをしてくるのだ。ちょっと性格が悪い。
 お前のその地味な嫌がらせ、とっくに気付いてるんだからな。

 俺の顔を見下ろすグウェンを涙目で軽く睨む。四ヶ月で少し伸びた彼の髪が、首元でまとまらずに動きに合わせてゆらゆら揺れた。
 目が合うと、彼は胸元から手を離して俺の腰を掴んだ。そして中の浅い場所にある俺の敏感な部分に昂った熱の塊を押し当てて、予備動作なしに最初から強めに擦ってくる。

「んんっ、あっ、あっ、だから、お前はっ、そうやって、俺でうさを晴らすの、やめろっ、ぅんっ」
「……晴らしていない。無意識だ」

 なおタチが悪いんだよ。

 涙目のまま抗議の目を向けると、グウェンは覆いかぶさってきて唇にキスをしてきた。
 同じタイミングで浅いところを擦っていた熱が奥まで差し込まれる。

「んっ」

 思わず上向いて口を開くと舌が入ってきて、そのまま深く口付けられた。俺も捲った服から手を離して腕を伸ばし、グウェンの剥き出しの肩にしがみついた。
 意地悪なことをしている最中でも彼のキスは優しい。偶に腰が抜けるくらい強烈なのをかまされるが、普段はゆったり俺の口蓋や歯列を舐めてきて、俺が舌を合わせるとそれに応えて優しく舌先で撫でてくれる。それから舌を絡めてきて軽く吸ったり舌全体で擦り合わせたり、強めになぞったりして俺の反応を見ながら段階を踏んでくれる。だからグウェンのキスはずっと気持ちが良くて、つい頭の中がくたっとしてしてしまう。
 しばらくキスをしながらゆっくり奥を突かれていたら、息継ぎのタイミングで唇を離したグウェンが至近距離で俺を見てきた。
 真面目な色を宿す墨色の瞳と目が合う。

「レイナルド。目の前の人を見過ごせない君のその性分は理解しているが、頼むからもう少し自分を大切にしてほしい」
「んっ……うん。ごめん」

 宝石のような濁りのない黒い瞳に見つめられて、俺は素直に頷いた。

「私は、君のその本質を愛しいと思っている。だが、それと同時にとても心配になる」

 好きだ、ということが真っ直ぐに伝わる目から嗜められて、心の中にふわふわと暖かいものが生まれた。

「ん……わかった、ごめん」
「いい。もう謝るな」

 そう言われて優しくキスされると、色々文句を言いたかった俺の心はふやけていく。
 グウェンが唇同士が触れるくらいの距離でじっと俺の目を見つめてくる。

「愛してる」
「んっ、うん…、俺も」

 彼の声が耳から入ってきて脳まで達すると、その幸せな響きで頭の奥が甘く痺れる。
 もうこれ以上はくっつく余地がないのに、俺はそれでも彼の首に腕を回してぎゅっと引き寄せた。

「愛してる」
「ん、うん。うんっ……俺も、すきっ」

 緩く突かれてそう何度も囁かれると全身がふにゃふにゃになって、もうさっきまでの些細な意地悪なんかどうでも良くなる。
 なんだかんだこうやってとろとろに愛されることに慣らされてしまうから、グウェンが偶に嫌がらせのようなことをしてきても、俺は結局彼を許してしまうのだ。
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