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第一部

七十八話 暗黒ファイナル その後②*

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 ※結構がっつりやってるので、苦手な方は回避してください。飛ばしても話は繋がります。




 幸運にも、その日ベルは家に置いてきていた。さすがにこの状況でベルと一緒の部屋にいられるほど俺は鉄のメンタルを持っていない。本当に幸いだった。
 ベッドでグウェンと向かい合って、最初に今まで通りキスをして、お互いのものを触り合って性感を高めた。軽く立ち上がってきたら、「先に出すと後が辛いだろうから」とグウェンが言ったので素直に頷いて服を脱ぎ、後ろの穴を拡げる過程に移行することになった。
 後ろからの方が楽だと思う、と言われるがまま後ろを向いた俺は、これ幸いとシーツに突っ伏してクッションに顔を埋めた。
 顔を見られなくてすむから少し気が楽になった。
 その代わり、俺は今上半身はシーツに伏せたまま、腰だけ上げてグウェンに尻を晒しているというとんでもない体勢をしている。

 なんだこの辱めは。死にたい。

 部屋は薄暗いし、グウェンドルフがやりたいようにさせてやりたいという思いがあるからまだ持ち堪えているが、顔を埋めるクッションが無ければ多分今頃憤死している。

「レイナルド、触るぞ」

 俺の背中と腰をゆっくり撫でていたグウェンがそう言って、缶の蓋を開ける音がする。
 そんなに時間をおかず後ろの穴にぬるりとした感触がして、グウェンの指が触れた。

「っ」

 そっと押し込むようにして指の先が入ってくる。ぴくっと肩に力が入った。

「痛くないか」

 俺の顔を確かめるようにのぞきこんでくる気配がするが、俺はクッションを抱きしめたまま顔を見せずに首だけ動かした。

「んっ、うん。大丈夫」

 小さな声でそう言うと、ほっとした気配がして彼がもう少し指を進めてくる。

「んっ、ん、……んん」

 少しずつ隘路を通る指が自分でも触ったことのない場所に入ってくる。
 軟膏を塗り広げるようにほぐされると痛くはないけど、内壁を引っ張られるような、妙な感覚がした。

「んん、…ん」

 クッションに顔を埋めてその違和感に耐えた。
 軟膏を塗った場所が僅かにすっとするような気もする。浄化作用が働いているんだろうか。慎重に動く指がゆっくりすぎるほど時間をかけて中を押し広げていく。
 「痛くないか」としつこいくらい何度も確認してくるグウェンに、俺も何度も頷いた。緊張で強張った背中に唇を落としながら、グウェンの指が俺の中を拡げる。その指が二本に増えて、さらに軟膏を足しながら出し入れされるようになる頃には、あまりに時間が経ちすぎて緊張を持続するのも難しいくらいだった。
 内心では俺は現実についていくのがやっとで、中が確実に拡がっているという事実に動揺を隠せない。

 本当にそんなに拡がるものなのか?
 グウェンの指が二本も入るくらい?

 自分では確認出来ないけど、出来たとしてもとても直視する勇気はない。

「んっ、ん……ふ」

 軟膏で十分に解された中からは、指が出入りするたびに濡れた音が聞こえる。ゆっくり傷ひとつつけないようにと慎重に動くグウェンの指が中を擦るとなんとなく背中がぞわぞわするようになってきた。

「レイナルド、大丈夫か」

 しばらくして、グウェンが指を引き抜いた。十分解れたんだろう。抜かれる時に軽い違和感があって俺は小さく震えた。

「ん、大丈夫」

 クッションに顔を押し付けながらそう言うと、ほっと息を吐いたグウェンが俺の背中にまた口付けた。

「解れたとは思うが、いいだろうか」

 挿入れてもいいかどうか、グウェンが俺の様子をうかがってくる。

「え……?」
「無理だったら止めても」
「いや、良いよ。あ、待って。ちょっと待って。心の準備が。いや、違う。やっぱり待たなくて良い」

 もう自分でも何を言ってるのかわからなくなりながら俺はクッションに顔を埋めた。

「もうひと思いにやって。好きにして」

 俺に判断を委ねられると困る。
 いつまでもゴーサインなんか出せるか。
 ここまでやっておいて止めるなんてそっちの方が恥ずかしいわ。
 でも俺からはとても挿れろなんて言えない。もうグウェンのタイミングでひと思いにやってほしい。

「わかった」
 
 考えるような間があってから、グウェンがそう言った。
 後ろに指ではない面積のものが触れる感覚がしたあと、つぷ、と先端が挿入ってきた。

「んっ……!」

 いや、痛いわ!

 やっぱり痛いって!

 衝撃と痛みで眉がぎゅっと寄る。

 え、裂けない?
 これメリっていかない?
 大丈夫?

 痛みで身体に力が入る。グウェンが息を詰める気配がした。グウェンも痛いかも。でも力の抜き方がわからない。
 クッションに頭を押し付けて肩をすくめていると、グウェンが俺のうなじに口付けた。宥めるように何度も口付けて、肩の方まで優しく唇を落としてくる。

 これを無意識でやってるんだとしたら、こいつの感覚はすごすぎる。

 時おり軽く舌でうなじを舐められ、背中から腰にかけて優しい手つきで撫でられると動揺が静まってきた。
 俺の前に手を回したグウェンが半立ちだった性器をそっと握って軽く擦る。

「んっ」

 ぴくっと震えた俺の腰をもう片方の手で撫でながら、力が抜けたところを見計らって少し腰を進めてきた。

「んんっ」

 くぷ、と先端の張り出した部分が入ったらしい。そこが一番キツかったのか、あとはゆっくりスムーズに挿入ってくる。

「ん、ん」

 俺はクッションに頭を押しつけて初めての言いようのない感覚に耐えた。身体の中にせり上がってくるような充溢感。指で解したけどまだ狭い。内壁が限界まで拡がっている気がする。苦しい。
 俺が必死に息を殺していると、途中で腰を止めたグウェンが俺のものから手を離して、顔の横に手をついた。もう一度俺のうなじに口付けてくる。

「大丈夫か」

 心配するようなトーンで聞かれたので、俺はクッションに顔を埋めたままこくこくと頷いた。
 ほっと息を吐いたグウェンが俺の髪を撫でる。

「レイナルド、ありがとう」

 そう言った彼につむじの辺りにキスされた。俺は恥ずかしさを押し殺してクッションから顔をずらして少し後ろを向く。

「キスして」

 すぐ近くにあったグウェンの顔を上手く見れなかったがそう言うと、彼はすぐに唇を寄せてきた。触れるだけの優しいキスを何度もしてくれる。俺は息を吐くと肩の強張りを解いてグウェンの顔を今度はちゃんと見た。

「まだ全部入ってないよな」

 そう聞くと、彼は頷いてまた俺に触れるだけのキスをしてきた。

「今日はここまででいい。君がつらいだろう」

 優しい口調で言われてキュンとした。
 この大事にされてますという感じがたまらなくむず痒くて、俺も愛しい気持ちが溢れてしまう。

 もう進まないと言われて正直ほっとしたので、俺は小さく頷いてグウェンを見上げた。

「キツくなければ動いてみていいよ? どうせなら俺もお前に気持ちよくなってほしいし」

 恥ずかしさに耐えてそう言うと、グウェンは少しの間息を止めた。
 そしてもう一度俺のうなじに口付けると、彼は上体を起こして俺の腰をそっと掴む。

「痛かったら止めていい」

 と言ってグウェンがゆっくり腰を引いた。少し引いた後でまた戻ってくる。

「んっ、ん」

 身体の中を撫でられる感覚に、俺はまたクッションに顔を埋めてその下でシーツをぎゅっと握った。狭い中をゆっくり突いてくる硬い熱を感じて、今更ながら本当にグウェンに抱かれていることを思い知る。そう思ったら羞恥で身体が熱くなった。恥ずかしさに耐えようと目を硬く閉じると中を擦られる感覚が一層増して背中が粟立つ。
 俺の様子をうかがいながら慎重に動いてくるグウェンが、もう一度前に手を回して片手で俺のものを握った。動きに合わせて擦ってくる。

「んっ、ん、ん、ふっ」

 既に立ち上がっていたものを擦られると気持ちが良くて、緊張で強張った中が徐々に緩んでくる。滑りが良くなった隘路にグウェンのものが擦れると、身体はだんだん違和感以外の感覚を拾い始めた。

 なんだろうこれは。
 中の浅いところを擦られると腰の奥がピリピリしてくる気がする。
 捉えどころのなかったその感覚が、次第に甘い痺れに変換されていく。

「んっ、えっ、ん、ん」

 扱かれている前も気持ちいい。でもそれと同時に中を擦られても快感が増す。
 俺の戸惑いを感じ取ったグウェンが動きを弱めた。

「大丈夫か」
「んっ、大丈夫。大丈夫だから、やめないでっ」

 自分でも思いもしない言葉が勝手に出ていた。
 彼も何か感じ取ったのか動きを再開して、今度は少し強めに腰を入れてきた。

「んんっ、あっ、ふ、んっ、んっ」

 中を擦られて感じている。嘘だろうと思いながらも入り口から奥に挿し入れられると腰が震える。
 クッションに突っ伏していると呼吸が苦しくて、俺はそれを横に投げた。顔の横でシーツをぎゅっと握りしめて中を擦られる快感に耐える。
 こんな感覚は初めてで、でも腰の奥から生まれるその甘い痺れがたまらなく気持ちいい。

「んっ、んっ、待って、どうしよう、気持ちいいかもっ」

 俺の混乱した声にまた息を詰めたグウェンが、俺の性器を強めに擦る。

「あっ、ん、まって、だめ、イキそうっ」

 俺が頭をシーツに擦り付けると、グウェンは更に俺のものを強めに扱いて、腰を少し奥まで突き入れた。

「やっ、あっ、ん、んんっ、まって、んんんっ」

 背中を震わせて、耐える間も無く俺は熱を吐き出した。
 微かに息を殺したグウェンが、まだ腰を送ってくる。

「あっ、えっ? んっ、グウェ、んんっ」

 一度絶頂した身体に中への刺激が続く。敏感になった内壁が硬い熱に擦られて腰が溶けそうなくらい気持ち良い。

「あっ、まって、も、イってる、からっ、ああっ」

 腰骨を突かれるような甘い痺れが断続的に湧き上がり、高い声が漏れる。当惑した俺に「すまない、もう少し」と掠れたグウェンの声が聞こえる。その声にもびりびり感じてしまう。

「あっ、ああっ、ふっ、あっ」

 声を殺すことができなくなって耳を塞ぎたくなるような声が部屋に響く。
 少しして、くっと息を詰めたグウェンが俺の中から熱を引き抜いた。すぐにぱたたとシーツに液体が落ちる音が聞こえる。

「はっ、あ、」

 突然苦しいほどの快感と圧迫感から解放されて、俺は大きく息を吸った。全力で走った後のような脱力感を感じる。
 支えを失った腰がくたっと潰れた。まだ中に何か入ってるような違和感。

「大丈夫か」

 グウェンが脱力している俺の身体をひっくり返して仰向けにした。彼と目が合いそうになって俺は慌てて両手で顔を覆う。

「大丈夫。大丈夫だから」

 彼はほっと息を吐いて、俺の髪を撫でた。
 優しく髪をなぞる手付きに居た堪れなくなるような羞恥を覚える。
 なんだか、色々想定していたことと違った。最後の方は確かに中を擦られて快感を拾ってしまっていたような。

 まさか、俺にはそっちの才能があったんだろうか。

 今更ながら猛烈な羞恥がやってきて顔に熱が集まってくる。
 グウェンが俺の額や髪に何度もキスをする。
 手をどけろとは言わないが、俺が顔を見せるまで続けるという意思を感じてそろそろと手を下ろした。

 少し眉尻が下がった、俺を心配する表情。
 汗で張り付いた髪とか、少し強張ったグウェンの口元を見て、俺は色っぽいとか、カッコいいというよりも俺を案じるその表情を見てかわいいなと思ってしまうんだから我ながら毒されている。
 自分の顔を見せるのは恥ずかしいが、やってる時のグウェンがどういう顔をしているのか見えないの
は、なんだかもったい無い気がした。

 俺は手を伸ばしてグウェンの肩を引き寄せる。
 彼の耳元にそっと口を近づけた。

「……今度やるときは、前からしよう」

 そんなことを口に出すのは壁に頭を打ち付けたくなるくらい恥ずかしいが、いつまでもグウェンに不安そうな顔をさせておくのも俺の意に反するのだから、仕方がない。
 照れながらグウェンの顔を見ると、彼はしばらく瞬きもせず固まった。
 そして顔の強張りを解いて、安心したように小さく笑うと俺に口付けた。
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