ハズレ者の国造り

神々の箱庭

　ミリアビーネ様が主神を探している間、ラルフとオレルは大神様と一緒に神様たちの箱庭に来ていた。

　最初の何も無い白い部屋はミリアビーネ様の私室で、仮の主神になった瞬間に彼女の部屋は華やかに飾られていた。
　主神と一般神様の違いかと大神様に尋ねたところそんな事ないらいし。大神様も自分の私室は森や岩場などがあり時々眷属が来訪して、自由に走り回れるくらいには広いらしい。
　原因はお馴染みの墜神中年のせいで部屋に割く力が無かったのだろうとの事。堕神になった神は他の世界の中に干渉する事が出来るが、管理する事が出来ないそうだ。そもそも管理出来たとしてもしないだろうとのこと。元々の性格で堕落し、自分の世界を壊したのだから仕方無い。

　部屋から出た一同は大神様に導かれ庭に来た。
　庭には、黒ずんだ草木が生い茂りジャングルみたいに荒れていて、真ん中には緑色の池があり、少し腐敗した臭いが立ち込めていた。
　これも、堕神中年が来た影響らしい。大神様は顔を顰めながら教えてくれた。この庭が荒れるとその世界は、一時的な混乱の時代か、終末を迎えている可能性があるとのこと。
　今はまだ、最終段階まで逝ってはいないらしい。予断は許さない状態ではあるらしいが…………
　最終段階になると、黒い木々と池の縁だけ残し全て枯れ果て、そして最期には消滅するのだとか。

　そんな寂しい庭とは裏腹に、空を見上げると遥か上空には白く暖かな光とその中を青白い箱が、幾つも互いにぶつかること無く浮いていた。
「あれらは、他の主神の管理する箱庭たちだよ。上に在るほど繁栄や神の格が高く、下に行くほど滅亡の危機が近いかもしくは主神の異変ありと周りが気付き易くなる。今回の様に創造神様や破壊神様に報告が行き、原因になった輩を裁かれ解決なさる」
　指を差しながら大神様が教えてくれた。
　しかし、途中で顔を顰めながら次の言葉を紡いだ。
「今回は、名の無い主神の箱庭で行われた非道な仕打ち、多分だが創造神様と破壊神様と地球の神々とその対になる神しか、この箱庭の存在を知っている者がいない。我々が気付いたのは関わりが強かったのだ。私も箱庭造りを手伝い先輩として兄の様に色んな話をした。とても楽しい時間だったよ。彼が最初に創り出した庭は、とても美しく優しさに満ち溢れていた。地上に降り立ち世界を周った事もあった。その彼が今どこで何をしているかわからないのが悔しい」
　話をしている途中から寂しそうな顔をして、庭に思い馳せながら暫く昔話を聴き入っていた。