ハズレ者の国造り

名の無い彼女（神様）と世界の仕組みの一端

　説教していた神様にお礼を言った後、そういえば彼女の名前を聞いていなかった。これから住む世界の神様なのだから知らないのは失礼ではないかと思い聞いてみた。

「私に名はありませんよ」
　あっけらかんと言う彼女に少しだけ悲しい思いが込み上げて来た。
　それに気付いたのか、神様は優しいほほ笑みを浮かべながら言った。
「正確には、私を創り出した主神様が名前を付ける前に墜神が現れこの世界の主導権を取り上げたせいで、私の名前がない状態になっているだけです。何も気にすることはないのです」
「もし気になるなら、お前さんたちが付けてあげればよいと思うぞ」
　それに続く様に大神様が提案して来た。


　大神様曰く、異世界他の神に名を戴くことはその神の眷神にり自身の生まれた元の世界には戻れなくなる為、緊急時以外ではほぼ禁忌に近い行為らしい。それこそ、何らかの理由で主神が消えた眷神に仮名を与え、保護を目的とした救済措置が施される。主神が見付かれば本来の名を返して元の世界に返される。
　名の無い場合は主神が見つかるまで、あるいは創造神様や破壊神様の最終捜索の後、最終的には二柱から2～3つの選択肢を与えられる。
　基本の選択肢は、保護してくれた世界に籍を置くか、他の世界の神様の下で籍を置くかの2択しかないし、元いた世界は消滅してしまうらしい。
　それと特定の条件下で元の世界の新たな主神になる事が許される。
　1つ主神自身が作り出した眷神であること。
　1つ主神と同等又は半分の権利を有していること。
　1つ自身の世界を正しく導いている者であること

　以上の上記の条件下で創造神様と破壊神様に認められた眷神が主神に繰り上がりそうだ。


　今回の件は主神がいるのだが見つからず、条件の揃った眷神がいるのに名が無く、名付けに最適な創造神様と破壊神様は件の元凶である墜神の対処で手が離せない状況。かと言って、他の神が名付けする訳にも行かないため手を拱いているのが今の状況らしい。それに伴い転生先世界は崩壊の一途を辿っているそう。
　まだ中年が、主神なため崩壊には至らないが、刑が執行次第崩壊待った無しなため、今は主神が見付かるまで執行猶予状態で、尚且つ二柱がかりで取り押さえないと、また直ぐ逃げるため目が離せないという負のループ状態でもあるらしい。
　伊達に長く生きていないらしいぞ中年。