ハズレ者の国造り

黒炎 瑠懿

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後悔 2

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 「マズイかもね」
 ミユが言った。多分時間切れだと言うことだ。足音がこちらに近づいて来てくる。扉は完全に閉まりきって入るが、男性数人でかかれば嫌でも開くだろう。
 まぁ、一応鍵の掛かった部屋はこの部屋よりも広い為もう少し掛かるだろうが、それでも油断出来ない。それにこちらには妊婦もいる。下手なことは出来ない。主を見上げる何かを覚悟した目を向けた。
「親友を守ってほしい。君にしか頼めない事だ」
 ミユがそう言って僕を穴に落とすと床を戻したのだった。


 主たちは家の中の構造を熟知しているが家の内部分は熟知していない。
 要するに排気口や配線等の狭く細かい配置は知らない。僕は猫なので色んな場所を行き来していた。なので秘密の抜け穴の換気口は熟知している。
 秘密の抜け穴の換気口から外に通じる換気口に出て隣の換気口に入り込み、今度はお祖母ちゃんの部屋の飾り棚を目指し右に左に曲がって行く。
 元々僕の子がみんなで大運動会を始め運悪く換気口に入って迷子になってしまった事があった。その際、何箇所か壊れていたのを偶然見つけ内部構造を知り、これは使えると思い何度かお世話になった入口だった。


 主たちのいる所まで走って行き無事着くと扉がガタガタ、ドンドンと音を鳴らしながら開きかけていた。息を潜ませ臨戦状態で待機する。

 バンッと扉が開き全身黒の上下にフードを目深に被りバールや鉄パイプなどを持ち如何にもな人物が入って来た。
「◯△▶◆☓!!」
「#◉□◀!!」
「「「「「「「 ⁠ꈍ⁠▽⁠☆⁠ಡ⁠!?」」」」」」」
 あまりの激昂に何を言ってるのか解りかねるし、そもそも常人なら殴り込みに来ない。
 多分もう判断が付いていないのだろう。先頭の1人がは主に鉄パイプを振り上げ殴りかかって来た。
 そのタイミングで僕は戸棚から飛び出て、そいつの手首の腱を切ってやった。そいつは振り上げた鉄パイプを頭に落とし気絶させた。単純な奴だ。
 気絶し前のめりで倒れる瞬間、奴の後頭部に移り思いっ切り足蹴にして次の奴らに飛びかかった。
 ある奴は両目を引っ掻き目を見えなくした後同じく後頭部に蹴りを入れて気絶させ。ある奴はサバイバリルナイフを持っていたので左右にフェインを入れ、わざと相手側の味方の後ろに回り込み同士討ちさせた。
 家猫になったが僕は獣。鋭い爪もあるし牙もある。いつでも人ぐらい殺せる。だけどいつもは手加減しているのだ。じゃないと主たちと一緒に居れないから仕方なくだ。
 戦闘は兄に叩き込まれいつの日か兄がいない時、主たちを守る剣と盾になれる様に日々精進していた。兄も「出来ればこんな日が来ないのが良いのだけど」と言っていた。
 主たち(主にミユ)もゴルフクラブを持つ男を護身術の背負投て倒して行く。

 人数が2人しかいなくなった時、少しだけ正気に戻ったらしい。2人は主にサバイバルナイフを向け襲い掛かったのだ。
 先頭の奴に飛びかかり、同じく手の健を切り後ろ脚で奴の脚の筋を痛め付けてやった。しばらくは動けないだろう。
 だけど、2人目は避け切れず刺されてしまった。最期の悪足掻きで奴の両目を切り裂いてやった。いい気味だ。


 意識が遠のき始めて来た。主達がいる場所を見る。すると、主たちは先程の足を痛め付けてやった奴に刺されていた。どうやら浅かったらしい。
 主たちが崩れ落ち掛けて兄が最後の主たちをやった奴に飛びかかり無力化させた。兄は僕を見て鼻を寄せて来た。兄とっての挨拶だ。そして1言だけ言ってくれた。
「お前は俺の自慢の弟だ。誇りに思う」
 口下手な兄が僕を褒めてくれた。とても嬉しいけどこちらも言いたいことがある。
「遅い……けど来てくれると……思ってた」
 思った以上に声が出ない事に驚いた。なんだかやたらとねむたくなってきた。
 兄は頬ずりしながら「お休み。主たちは俺が見ているから」と言っていた。
「お休みなさい……大好きだよ……ラルにー




 僕は眠りに落ちながら思った。
 次の人生(猫生?)があるなら主たち2人と兄であるラルフともう一度一緒に暮らしたい。出来れば僕と兄は本当の兄弟になって人間に姿が変わる事が出来て、主たちはそれぞれ体があったらとても素敵だ。

 神様がいるならばこの願い叶いますように……
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