私の転生先を神様(竜神様)が"勝手に"決めました ~ドラゴンテイマーになりました~

黒炎 瑠懿

文字の大きさ
上 下
113 / 158
2章 前編

動き出した世界( 3 ~中央皇帝の皇帝の中庭にて~)

しおりを挟む
 別の視点


 ある晴れ渡る日、帝国の中庭にて小さな茶会が開かれた。今日は東以外の王達と前中央皇帝両陛下の毎年の恒例茶会の日だ。王達は両陛下の実子でそれぞれ北、西、南、中央の王にして国を蛮族から守っている。
 近年東の公国にて人族が、攻略に向け進軍しているとの話が聞こえている。
 しかし、東を守るはずであった末の子は、19年前にある有能な近衛兵に託して以来会っていない。
 それどころか、その者は先の惡魔との大戦の最中この帝国に帰り身を挺して、息を引き取る間際に「安息の地にて、私の番に託した」と伝え散った。
 その後、安息の地とされる場所は人族と惡魔達により滅亡し消息を断った。

 今は亡きを最期に看ることもなく、妻は「絶対に生きている」と心を病み、悲しみに暮れながらようやく立ち直ったが、その時からが産まれなくなってしまい今に至る。春の柱が亡くなった事により、多くの者が子や卵が産めなくなってしまったのだと気付いた時には、すでに手遅れ。今では我が孫も望めないのだと諦めるしかない。
 そして、東を守ることも出来ず、只見守ることしか出来ない我が身を呪った。



 しかし半年前、神の導きにより安息の地に赴き人化の儀を久々にした。
 今回の子はオスのドラゴンで分厚い大きな布を眼部下に被りながら歩いてくる。少し違和感があったが、多分【スカルドラゴン】だからなのだろう。嫌われることの多い種族なので、彼なりに配慮したのだろう。
 そして彼の血縁者席に小さな少女が座っていた。沢山のドラゴンに囲まれた少女が、眼を輝かせながらこちらを見た時、ある予感が脳裏を駆け巡った。
【彼女は春の柱だ。しかも、"誕生"と"生命"を司る竜の1人だ】と。
 そして気付いた。血縁者の席にいる少女が柱の竜であるならば、目の前のドラゴンは何者なのか?
 身体付きからして、【スカルドラゴン】であることは窺えるが、もし彼が春の柱ならば今の状態でも特徴があるはずだ。確認したいが儀式中なので後にすることにした。

 神に祈りながら人化の儀を行う。
 光に包まれドラゴンは完璧に少年の姿なった。最初にしてはなかなか筋が良いと感心した。
 白銀の髪に日焼けした健康的な肌、そして宝石の様な濃いアメジストの瞳に精悍な顔立ちの少年。
 そして、席に座っていた少女が見惚れていた。しかし、こんな時間なので当たり前なのだが、少女は途中で眠ってしまった。傾いた彼女は椅子から転げ落ちそうなる。
 すると慌て様に彼は途中で彼女に近寄った。かなり慌てていたのだろう。人化が解けその姿を見て皆言葉を失った。
 その姿は先代の春の柱その者だったのだ。
 黒色の骨の鎧に筋肉質な身体はうっすらと鱗が生えている。胸の中心にはアメジストの魔石が嵌め込まれており、方翼に2枚の大鳥の様な翼ともう方翼の2枚は骨バネになっていた。尻尾も骨で出来ており、鞭のように靱やかでいながら無機質。手足は甲冑の小手の様に骨で覆われている。
 戦闘中の先代の"平穏"と"安らかな眠り"を司る竜に、酷使していた。


 やっと終わるのだ。終わり無き地獄が......そしてやっと始まるのだ。幸福て新たなの未来明日が......

 涙を流す者もいる中、気が付いたドラゴンは罰が悪そうに渋い顔をし人化し少年の姿になる。その腕にはスヤスヤと少女が眠っている。
「お帰りなさいませ、柱の竜様方。あなた方の帰還をお待ちもうしました」

 私は代表として言い、跪き神戸を垂れた。皆それに習い皆が傅く。
「頭を上げて下さい!俺はまだ、柱になっていないし、この事は神が定めた時まで待って下さい。その時も傅くの止めて下さい。この子にもしないで下さいね?」
 慌てて少年は話す。そしてこれからのことも話終え皆解散する。

 皆晴れ渡る様な清々しい顔をしていた。新たな時代が来たと皆思い未来明日に想いを馳せ、過去に別れを告げたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

3回目巻き戻り令嬢ですが、今回はなんだか様子がおかしい

エヌ
恋愛
婚約破棄されて、断罪されて、処刑される。を繰り返して人生3回目。 だけどこの3回目、なんだか様子がおかしい 一部残酷な表現がございますので苦手な方はご注意下さい。

婚約破棄された私と、仲の良い友人達のお茶会

もふっとしたクリームパン
ファンタジー
国名や主人公たちの名前も決まってないふわっとした世界観です。書きたいとこだけ書きました。一応、ざまぁものですが、厳しいざまぁではないです。誰も不幸にはなりませんのであしからず。本編は女主人公視点です。*前編+中編+後編の三話と、メモ書き+おまけ、で完結。*カクヨム様にも投稿してます。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

元捨て子の新米王子様、今日もお仕事頑張ります!

藤なごみ
ファンタジー
簡易説明 転生前も転生後も捨て子として育てられた少年が、大きく成長する物語です 詳細説明 生まれた直後に病院に遺棄されるという運命を背負った少年は、様々な境遇の子どもが集まった孤児院で成長していった。 そして孤児院を退寮後に働いていたのだが、本人が気が付かないうちに就寝中に病気で亡くなってしまいす。 そして再び少年が目を覚ますと、前世の記憶を持ったまま全く別の世界で新たな生を受ける事に。 しかし、ここでも再び少年は生後直ぐに遺棄される運命を辿って行く事になります。 赤ん坊となった少年は、果たして家族と再会する事が出来るのか。 色々な視点が出てきて読みにくいと思いますがご了承ください。 家族の絆、血のつながりのある絆、血のつながらない絆とかを書いて行く予定です。 ※小説家になろう様でも投稿しております

処理中です...