私の転生先を神様(竜神様)が"勝手に"決めました ~ドラゴンテイマーになりました~

黒炎 瑠懿

文字の大きさ
上 下
29 / 158
1章 前編

迷いの森にて (野宿です。ドレイクの本当の姿)

しおりを挟む
 温泉大陸で最近「今日も元気だねぇ」と言われている我が子に、少しばかり手を焼き始めている。
お買い物にコハルを連れて出たら、お店の前でチューリップに籠ってしまったコハルにどうしたものかと、腰に手を当てる。
 場所はお団子屋さんの前、そう、コハルの興味を引いてしまったのはお団子屋さんで、コハルにはまだ食べれないと言い聞かせているのに、ピンクと白と緑色と黄色の四色団子を食べると言って聞かず、癇癪かんしゃくを起したのである。

「大女将、立派な花が今日も咲いてるねぇ」
「咲いてないですよ。蕾状態ですから。お店の前を占領してごめんなさいね。直ぐに退けますから。コハル! 出てきなさい!」
「やああぁぁーっ!」
「嫌じゃないでしょ! ケイト、ケルチャ、コハルを回収!」

 花竜ケイト木竜ケルチャに命令を出して回収するのも、最近の日課でお買い物は二人に付き合ってもらわないと、なかなか上手くいかなくなってきた。

「仕方がないわね。ケイト、上のチューリップをお願いね」
「はい。兄さん。コハルちゃん、もいじゃうからねー」
「やあぁぁぁ!」

 ケイトがチューリップの花弁部分を上に持ち上げて、下の茎部分をケルチャが枯らして足で地面を慣らす。
チューリップの中のコハルが、ぶっすり顔でケイトに花から出されて、私の腕に戻ってくる。

「コハル、お買い物の時は我が儘をいってはいけません。わかった?」
「やいなー!」
「知らないじゃないでしょ! 母上の言う事を聞かないと、お尻を叩きますよ?」
「やっ!」

 プイッと顔を背けるコハルの反抗的態度……うちの子に一歳でここまで主張する子は居ただろうか?
スクルードは甘えてばかりな感じの子だったから、コハルの主張の激しさが余計に目に余る感じだ。

 白と黒に別れた髪に黒と金の目、着物も白と黒の縦じまに赤いサクランボの絵柄、帯は赤い帯で、後ろが金魚のヒレになっていて、なかなかに目立つ上、チューリップを生やしたりするから、余計に目立つ。
着物に関しては髪の色が色なので、濃い目の配色でないと似合わないから、目立っちゃうんだよね。

 温泉街の旅行客や常連さんには、ウケているみたいだけど、見世物では無いし、コハルの回収は結構手を焼くのだ。

「コハル、父上にも怒ってもらいますよ?」
「やっ!」
「じゃあ、ハガネに怒ってもらおうかしら?」
「やあぁぁぁ!!」
「嫌なら、お外でチューリップ出すのを止めなさい」

 流石にハガネは怖いようで、コハルも全力で拒否して、大人しくなる。
ハガネは何だかんだで、説得力があるから、コハルもよく言い聞かされて言い負かされちゃうんだよね。

 我が家の親指姫ちゃんはすくれたまま、私の胸に顔を埋める。
多分、少し早いイヤイヤ期なのだと思うけど、スクルードはもう少し可愛いイヤイヤ期だった様な? いや、ルーファスが散々イヤイヤされて困っていたから、どちらも似たようなものかな?

 コハルを連れてケイトとケルチャと買い物の続きをしていると、我が家のお嫁さんフィリアちゃんと孫のルビスちゃんが手を繋いで歩いていた。

「フィリアちゃん、ルビスちゃん、お買い物?」
「あ、お義母様、こんにちは。お夕飯のお買い物です」
「おばあさま。こんにちはー」
「ふふっ、ルビスちゃんしっかりお姉さんらしくなったわね」
「あたし、おねえさんだもん!」 

 フィリアちゃんが第二子の妊娠で、最近はルビスちゃんが我が儘を言わずに、フィリアちゃんのお手伝いを進んでする様になったと、シュトラールが嬉しそうに話していたけど、やっぱり下の子が出来ると、小さくてもお姉さんの自覚がでてしっかりするみたいで、微笑ましい成長だ。
スクルードもお兄さんをしているから、コハルも下にも弟か妹が出来たら大人しくなるだろうか……いや、その為だけに、子供を作るのもね。

「コハルちゃん、こんにちはー」
「ぬぬあ!」
「ルビスお姉ちゃんでしょ? 呼び捨てはダーメ」

 挨拶をしてくれたルビスちゃんに、コハルは「私、名前知ってますよ! 凄いでしょ!」と、言わんばかりのエッヘンとした得意顔をする。
これもコハルの成長ぶりで、人の名前はキチンと発音しては言えないけど、顔と名前を言い当てる凄いところである。

「お義母様って、赤ちゃんの言葉よく理解できますよね」
「なんとなくよ。これでも九人のお母さんだもの」

 ほぼニュアンスで聞き取っているようなものだから、話が通じない時も多々ある。
フィリアちゃんとルビスちゃんに「折角だから、何か食べていく?」と誘うと、コハルが先程のお団子屋さんを指さす。
耳ざとい子である……そして、諦めの悪い子でもある。

「コハルがお団子屋さんが良いみたいなんだけど、一緒に行く?」
「はい。ご一緒させてください」
「わぁーい。おだんごー」
「あいあーい!」
「コハルはアンコ玉だからね?」
「あんあ!」

 お団子屋さんに入って、お店の人にコッソリと「赤ちゃん用に小さいアンコを串に刺したお団子に見立てたの作ってもらえます?」と聞いて、コハル用に作ってもらった。
こし餡の練りきりで色とりどりの串団子にしてもらい、コハルが手づかみでワシワシと口に入れても、これなら大丈夫である。
 コハルはお口いっぱいに頬張るのが好きな、小さい頃の私に似てしまって、証拠写真がある為に私も「そんなに頬張るんじゃありません!」と、怒りきれないでいる。
ルーファスは「可愛い」とコハルの食事写真をよく撮っているから、コハルが大きくなったら恥ずかしがりそう。

「フィリアちゃんは、今回は悪阻つわりはどう?」
「今回はそれ程ないですね。むしろ色々食べ過ぎちゃって、シューが心配するくらいですし」
「シューちゃんが? なら、いっぱい食べているのね。ふふっ」
「健診の時に、体重増加し過ぎても怒られるので、気を付けなきゃいけないんですけどね」
「それは分かるわ。スクルードの時に食べ過ぎて、私も怒られたもの」

 お腹の赤ちゃんの為にいっぱい食べたい気持ちもあるし、周りの皆も気をつかって色々食べ物を持って来てくれたりで、つい食べ過ぎちゃうのも妊婦の悩みだよねえ。
お団子屋さんでフィリアちゃんとルビスちゃんと別れて、満足そうなコハルを連れて帰っていると、ケイトとケルチャが「ねぇ、花が飛んでるわよ」と教えてくれた。

 私が歩いた後に花が地面に落ちていて、コハルを見ればコハルは笑顔で、笑う度に花がふわふわ飛んでいた。
これはまた、『温泉大陸の花咲か赤ちゃん』とか言われちゃいそうだ。
まぁ、このぐらいなら夜にでも、温泉鳥達がゴミ箱に咥えて捨ててくれるから大丈夫なんだけどね。
コハルも早めにハガネか誰か魔法をコントロール出来る人に教わらなきゃいけないかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

ここは貴方の国ではありませんよ

水姫
ファンタジー
傲慢な王子は自分の置かれている状況も理解出来ませんでした。 厄介ごとが多いですね。 裏を司る一族は見極めてから調整に働くようです。…まぁ、手遅れでしたけど。 ※過去に投稿したモノを手直し後再度投稿しています。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

3回目巻き戻り令嬢ですが、今回はなんだか様子がおかしい

エヌ
恋愛
婚約破棄されて、断罪されて、処刑される。を繰り返して人生3回目。 だけどこの3回目、なんだか様子がおかしい 一部残酷な表現がございますので苦手な方はご注意下さい。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

辺境の街で雑貨店を営む錬金術士少女ノヴァ ~魔力0の捨てられ少女はかわいいモフモフ聖獣とともにこの地では珍しい錬金術で幸せをつかみ取ります~

あきさけ
ファンタジー
とある平民の少女は四歳のときに受けた魔力検査で魔力なしと判定されてしまう。 その結果、森の奥深くに捨てられてしまった少女だが、獣に襲われる寸前、聖獣フラッシュリンクスに助けられ一命を取り留める。 その後、フラッシュリンクスに引き取られた少女はノヴァと名付けられた。 さらに、幼いフラッシュリンクスの子と従魔契約を果たし、その眠っていた才能を開花させた。 様々な属性の魔法が使えるようになったノヴァだったが、その中でもとりわけ珍しかったのが、素材の声を聞き取り、それに応えて別のものに作り替える〝錬金術〟の素養。 ノヴァを助けたフラッシュリンクスは母となり、その才能を育て上げ、人の社会でも一人前になれるようノヴァを導きともに暮らしていく。 そして、旅立ちの日。 母フラッシュリンクスから一人前と見なされたノヴァは、姉妹のように育った末っ子のフラッシュリンクス『シシ』とともに新米錬金術士として辺境の街へと足を踏み入れることとなる。 まだ六歳という幼さで。 ※この小説はカクヨム様、アルファポリス様で連載中です。  上記サイト以外では連載しておりません。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

処理中です...