推しのファンアートを見ていたはずが、いつの間にか腐男子になっていました。

ばりお

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オマケ

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(ユキちゃんのシャワー中の紅)

 ユキの後ろ姿がシャワールームに消えた事を確認すると、紅はひらひらと振っていた手を下ろした。
「さーてと……」
 そして視線を寄越したのは、ソファの上に無造作に置かれているユキのスクールバッグ。
「んじゃま、ユキちゃんの浮気調査と洒落込みましょうかね~」
 言いながらジッパーを開いた紅は、何のためらいもなく中身を漁り始めた。
 ここの所ユキの態度がおかしい。どうも自分を前にすると、視線を逸らしたり赤面したり場合によっては逃げ腰になったりと、とにかくソワソワと落ち着きがない様子を見せているのだ。最初は単に照れているだけかと思っていたが、付き合い出してそれなりに時間が経った今になって初々しいリアクションをぶり返しているのはいささか不自然。そう考えた時に浮気の二文字が頭を過った。
 自分と恋人関係でありながらそんなナメくさった真似が許されるはずもない。もし本当に不貞を働いているのだとすれば、クソガキに証拠を突きつけてきつーいお灸を据えてやらなければならない。二度とそんな気が起きないようにギャンギャンに締め上げて、「浮気」という字面を見ただけでちんこが縮み上がるような体にしてやる。
「お、スマホはっけーん♡」
 まずは一番の情報源スマートフォンを探し当てる。見ればアイドル時代の自分の画像が壁紙にされていて、可愛い事をするじゃないかとついうっかり気分がよくなった。ただそれはそれとして浮気調査はさせて貰う。どうやらロックがかかっているらしいが、まぁこんなものは誕生日を始めとしたそれらしい数字を入れておけば大抵開く。
(他には……)
 とりあえずスマホを確保した紅は、他に目ぼしいものが無いかと教科書を掻き分けた。すると勉強道具に混ざり、少し厚みのある茶封筒が存在を主張している事に気付く。取り出してみると配送物のようで、差出人は見覚えのない企業名。品名は「書籍」と書かれている。
 差出人が個人ではない時点であやしさは薄いのだが、普通に中身が気になったのでこちらも開封させて頂く事に。べりべりと糊付けを剥がして手を突っ込み、一般的な書籍よりも薄く感じる紙束を引っ張り出してみると……
「…………」
 現れた本の表紙を前にして、さすがに、いくら紅であっても、目が点になった。
「……えーっと……?」
 状況を整理しようとすると、やはり人間はこめかみに指を当ててしまうのだろうか。重くじっとりとした色使い。前後左右から湯気が立つ程怒張したペニスに取り囲まれ、中心に描かれている人物の身体的特徴は、他でもない自分自身に見える。そう、それこそ過去に着た覚えのある衣装も含めて何もかも全部。そしてタイトルはといえば「一●紅裏ファンミーティング、感謝の膣奥百本ノック」って……いくら伏字した所でそんなの一色紅しか居ないだろうが!! なんだそのセンスがあるのか無いのか分からない失笑を誘うタイトルは!! もはや俺が滑ったみたいになってるじゃねぇかやめろ!!
(中身は……)
 表紙の時点で中身の想像はつきまくるのだが、とりあえずかるーく紙束を捌いて流し見してみる。うん。もう最初から最後まで期待を一切裏切らず、どっからどう見ても完膚なきまでにエロ漫画だ。
「ふ~ん……あっ、ふ~ん……そういうコト~……何か分かっちゃったかも~……」
 徐々に紅の頭の中で答え合わせがされ始める。確かにユキが隠し事をしていたまでは読み通りだったが、現実は予想の遥か斜め上を言っていた。ここの所お熱だった相手はまさかの二次元の紅さん。しかもこんなに過激なエロ本をコソコソ買い込んで楽しんでいやがったとは。なんて可愛いムッツリスケベ具合なんだろうか。堪らん今すぐ頭からかぶりついてゴリゴリ咀嚼してやりたい。
(つーか絵上手いなコイツ。登場人物自分だとしても普通にシコれるわ)
 エロ方面に造詣が深い紅なので、こういうジャンルがある事は当然知っていたし、自分が描かれている事も存じ上げていた。だがこちとらエロコンテンツは圧倒的三次元派。二次元には全く興味が湧かないため、ノールックノータッチでお好きにどうぞの完全放任主義だった。だからまともにモノを見たのは初めてに近いのだが、普通にめちゃくちゃ絵が上手くて現実感がある。セックス描写の熱量も凄まじく、イラストは勿論セリフ回しや擬音も含めて興奮を煽る事に余念がない。うーん中々のセンス。これならユキが読みたくなる気持ちも分かる。まして紅さん大好き思春期エロガキの事、ひょんな事からこの手のものを見つけてしまい、「やった~紅さんのエロ本いっぱいあるじゃ~ん!」なんてドハマりしても何ら不思議はない。そのくせリアルで顔を合わせると、申し訳ないやら恥ずかしいやらでモジモジオドオドしていたという所だろう。なるほど全て理解した。つまり俺の恋人可愛いって事でQ.E.D.証明完了。
「いやぁ~これは突っつき回し甲斐がありますなぁ~♡」
 ただそれはそれとして、こちとらこんなに面白いブツを見つけてしまって黙っていられる程出来た人間ではない。この本を嗜んでいる事は、ユキにとって紅さんにだけは絶対に知られてはいけない秘密なのだろう。ここ最近の態度から見てもその気持ちはありありと伝わってくる。じゃあ万が一にでもそれが本人に見られたら? 読まれたら? バレちゃったらどんな反応をする? きっと顔を真っ赤にしてチワワみたいにキャンキャンわめいて、お目目うるっうるで誤魔化そうと必死になるんじゃないだろうか。その表情と仕草を想像しただけで嗜虐心が疼いてゾクゾクする。
 暇つぶしがてら内容を検していると、水音が止まり、シャワーから出て来る気配があった。うっかり紅の口角が持ち上がり、だがそれをすぐにニュートラルな位置に戻す。生意気にも今から自分の事を抱く気満々で、こーんな本を読みながらシコシコイメージトレーニングまでしていた可愛い可愛い子ウサギちゃん。
 さーて、どうやっていじめてやろうかな。
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