簡易版、徳川家康

金ヶ崎とあずき

　家康は、渋々ながら織田信長の命で朝倉義景を討伐に向かいます。信長軍は総勢四万くらいですが、これは織田方の公式発表なので、実数はよく把握していません。なお、織田方の発表では、朝倉軍は、四分の一くらいを想定していました。単純に、四人で一人を倒せば良い計算です。しかも、後から浅井長政も駆けつけ、織田軍は戦力が増量する予定です。

　もう、家康たち三河衆は勝ったも同然の騒ぎです。金ヶ崎を取り、蟹食って酒飲んで踊ります。

　そこへ、ボロボロになった女が駆け込みます。まるで、走れメロスみたいな有り様です。または、マラソンの語源になった、マラトンの戦いをギリシャ軍に報告して息絶えた使者の女版です。

　その女は、阿月と言って、織田信長の妹、お市の方の侍女でした。そして、お市の方は浅井長政の妻でもあったのです。彼女は、浅井長政が織田信長を裏切り、後ろから織田軍を襲い、前方の朝倉義景と連携して挟み撃ちにする計画だと告げます。

　これは大変な事です。蟹食って踊っている場合ではありません。すぐに織田信長に報告します。
　ところが織田信長は浅井長政を信頼しており、家康の言葉を信じません。ところが朝倉義景が出陣したと聞き、確かに挟み撃ちが成立すると悟ります。

　さて、信長が撤退する時間を稼ぐのは、羽柴秀吉と徳川家康に決まり、退却が始まります。