13 / 13
竹尾安五郎
十三
しおりを挟む
甲斐の博徒と駿河の博徒は、富士川を挟んで対峙した。主だった親分衆が集まったが、前田栄五郎と祐天善之助は参加しなかった。竹尾安五郎たち甲州勢は五百人、仲と寿郎長が集めた駿河勢が三百人で、数の上では甲州勢が勝っていた。正午前、それぞれの対岸から掛け声が掛かると、両勢力が激突した。川の浅瀬を渡り、戦いが始まる。
寿郎長一家は、真っ先に斬り込む。一家の内でも競争が始まる。森市松は、急ぐあまりに敵陣を突き抜け、大将の前まで出てしまう。つまり、竹尾安五郎の前まで走り抜けた。敵味方、市松の突き抜けたバカぶりに呆れる。
「この野郎、子分と戦ってから来やがれ!」
安五郎が怒鳴る。それと同時に、安五郎の子分が四方八方から市松に襲い掛かる。その時、二匹の犬が駆け寄り、市松の敵に咬みついた。
「わっワンちゃん、恩にきるぜぇ」
市松も刀を振り回し、敵の囲みを破る。
「待ちやがれドサンピン!」
市松を追う子分の顔が砕けた。法院大五郎が鉄数珠を喰らわせたからだ。
「これは、『難舞打』と言う技だぁ、成仏したって」
痙攣する相手に説明する。
その他、寿郎長一家の、足が速い順に到着する。
坂東綱太郎は、腰刀を使って戦うが、更に強力なのは、犬による攻撃だった。紅と白は、敵の背後から手足を咬む。綱太郎は、留めを刺すだけでいい。
追分参五郎は、敵の刃に合羽を搦めて無力化し、脇差で突きを入れる。
桶屋中吉は、槍で次々と敵を仕留める。
出刃政は、敵の急所に出刃を当てる。
江沢大熊は、敵を豪快に吹き飛ばす。
そして、寿郎長はやる事が無かった。殺到する敵は、仲が全て始末した。
仲の得物は鉄砲だった。しかも、六連発の拳銃だった。撃鉄を起こし、狙いをつけ、引金を引く。これで死体の山を築く。ただし、六発撃ったら弾の再装填が必要になる。ところが、銃はもう一丁有った。しかも、玉次郎と言う、弾込めだけする子分が居て、再装填が異様に早い。
さて、甲州勢は四半刻も待たずに崩壊した。後に残ったのは、竹尾安五郎だけだった。
「くそ、寿郎長、勝負しやがれ!」
安五郎が叫ぶ。
「望むところだ」
両者は、刀で勝負する。金属音が響き、刃がぶつかり合う。火花散る激闘。刃毀れ同士が噛み合い、刀を固定する。寿郎長の顔と安五郎の顔が間近に迫った。力で押し合う。
刃と刃が噛み合った場合、刀の角度を変える事で外れ、再び刀が動かせる。その瞬間が勝負の分かれ目だった。両者の刀が自由になる。
寿郎長は、安五郎の刀を脇に流し、そのまま首を狙った。刃がざっくり入った。
安五郎も寿郎長の太腿を斬るが、傷は浅い。
勝負は、安五郎が息絶え、寿郎長が勝利した。
富士川に勝ち鬨が響く。
寿郎長一家は、真っ先に斬り込む。一家の内でも競争が始まる。森市松は、急ぐあまりに敵陣を突き抜け、大将の前まで出てしまう。つまり、竹尾安五郎の前まで走り抜けた。敵味方、市松の突き抜けたバカぶりに呆れる。
「この野郎、子分と戦ってから来やがれ!」
安五郎が怒鳴る。それと同時に、安五郎の子分が四方八方から市松に襲い掛かる。その時、二匹の犬が駆け寄り、市松の敵に咬みついた。
「わっワンちゃん、恩にきるぜぇ」
市松も刀を振り回し、敵の囲みを破る。
「待ちやがれドサンピン!」
市松を追う子分の顔が砕けた。法院大五郎が鉄数珠を喰らわせたからだ。
「これは、『難舞打』と言う技だぁ、成仏したって」
痙攣する相手に説明する。
その他、寿郎長一家の、足が速い順に到着する。
坂東綱太郎は、腰刀を使って戦うが、更に強力なのは、犬による攻撃だった。紅と白は、敵の背後から手足を咬む。綱太郎は、留めを刺すだけでいい。
追分参五郎は、敵の刃に合羽を搦めて無力化し、脇差で突きを入れる。
桶屋中吉は、槍で次々と敵を仕留める。
出刃政は、敵の急所に出刃を当てる。
江沢大熊は、敵を豪快に吹き飛ばす。
そして、寿郎長はやる事が無かった。殺到する敵は、仲が全て始末した。
仲の得物は鉄砲だった。しかも、六連発の拳銃だった。撃鉄を起こし、狙いをつけ、引金を引く。これで死体の山を築く。ただし、六発撃ったら弾の再装填が必要になる。ところが、銃はもう一丁有った。しかも、玉次郎と言う、弾込めだけする子分が居て、再装填が異様に早い。
さて、甲州勢は四半刻も待たずに崩壊した。後に残ったのは、竹尾安五郎だけだった。
「くそ、寿郎長、勝負しやがれ!」
安五郎が叫ぶ。
「望むところだ」
両者は、刀で勝負する。金属音が響き、刃がぶつかり合う。火花散る激闘。刃毀れ同士が噛み合い、刀を固定する。寿郎長の顔と安五郎の顔が間近に迫った。力で押し合う。
刃と刃が噛み合った場合、刀の角度を変える事で外れ、再び刀が動かせる。その瞬間が勝負の分かれ目だった。両者の刀が自由になる。
寿郎長は、安五郎の刀を脇に流し、そのまま首を狙った。刃がざっくり入った。
安五郎も寿郎長の太腿を斬るが、傷は浅い。
勝負は、安五郎が息絶え、寿郎長が勝利した。
富士川に勝ち鬨が響く。
0
お気に入りに追加
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
梅すだれ
木花薫
歴史・時代
江戸時代の女の子、お千代の一生の物語。恋に仕事に頑張るお千代は悲しいことも多いけど充実した女の人生を生き抜きます。が、現在お千代の物語から逸れて、九州の隠れキリシタンの話になっています。島原の乱の前後、農民たちがどのように生きていたのか、仏教やキリスト教の世界観も組み込んで書いています。
登場人物の繋がりで主人公がバトンタッチして物語が次々と移っていきます隠れキリシタンの次は戦国時代の姉妹のストーリーとなっていきます。
時代背景は戦国時代から江戸時代初期の歴史とリンクさせてあります。長編時代小説。長々と続きます。
獅子の末裔
卯花月影
歴史・時代
未だ戦乱続く近江の国に生まれた蒲生氏郷。主家・六角氏を揺るがした六角家騒動がようやく落ち着いてきたころ、目の前に現れたのは天下を狙う織田信長だった。
和歌をこよなく愛する温厚で無力な少年は、信長にその非凡な才を見いだされ、戦国武将として成長し、開花していく。
前作「滝川家の人びと」の続編です。途中、エピソードの被りがありますが、蒲生氏郷視点で描かれます。
独裁者・武田信玄
いずもカリーシ
歴史・時代
歴史の本とは別の視点で武田信玄という人間を描きます!
平和な時代に、戦争の素人が娯楽[エンターテイメント]の一貫で歴史の本を書いたことで、歴史はただ暗記するだけの詰まらないものと化してしまいました。
『事実は小説よりも奇なり』
この言葉の通り、事実の方が好奇心をそそるものであるのに……
歴史の本が単純で薄い内容であるせいで、フィクションの方が面白く、深い内容になっていることが残念でなりません。
過去の出来事ではありますが、独裁国家が民主国家を数で上回り、戦争が相次いで起こる『現代』だからこそ、この歴史物語はどこかに通じるものがあるかもしれません。
【第壱章 独裁者への階段】 国を一つにできない弱く愚かな支配者は、必ず滅ぶのが戦国乱世の習い
【第弐章 川中島合戦】 戦争の勝利に必要な条件は第一に補給、第二に地形
【第参章 戦いの黒幕】 人の持つ欲を煽って争いの種を撒き、愚かな者を操って戦争へと発展させる武器商人
【第肆章 織田信長の愛娘】 人間の生きる価値は、誰かの役に立つ生き方のみにこそある
【最終章 西上作戦】 人々を一つにするには、敵が絶対に必要である
この小説は『大罪人の娘』を補完するものでもあります。
(前編が執筆終了していますが、後編の執筆に向けて修正中です)

本能のままに
揚羽
歴史・時代
1582年本能寺にて織田信長は明智光秀の謀反により亡くなる…はずだった
もし信長が生きていたらどうなっていたのだろうか…というifストーリーです!もしよかったら見ていってください!
※更新は不定期になると思います。
剣客居酒屋 草間の陰
松 勇
歴史・時代
酒と肴と剣と闇
江戸情緒を添えて
江戸は本所にある居酒屋『草間』。
美味い肴が食えるということで有名なこの店の主人は、絶世の色男にして、無双の剣客でもある。
自分のことをほとんど話さないこの男、冬吉には実は隠された壮絶な過去があった。
多くの江戸の人々と関わり、その舌を満足させながら、剣の腕でも人々を救う。
その慌し日々の中で、己の過去と江戸の闇に巣食う者たちとの浅からぬ因縁に気付いていく。
店の奉公人や常連客と共に江戸を救う、包丁人にして剣客、冬吉の物語。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

奇妙丸
0002
歴史・時代
信忠が本能寺の変から甲州征伐の前に戻り歴史を変えていく。登場人物の名前は通称、時には新しい名前、また年月日は現代のものに。if満載、本能寺の変は黒幕説、作者のご都合主義のお話。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる