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新説、斎藤一
◯その九
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斎藤は、道場仲間を当たって浪士組を調べてみる。すると、どうも怪しい連中が混じっているらしかった。その中でも清河八郎は、幕府の金で浪士を集め、幕府の金で京都まで来て、討幕を目論んでいるとの噂があった。盛んに討幕派の志士と密会し、過激な攘夷思想の公家とも会っている。そんな話を仕入れると、やそに伝え、やそは、会津藩の三太夫に報告する。巷の噂話を収集するのに、斎藤は最適だった。口数が少ないので、妙に信用されるし、警戒もされにくい。剣の腕が立って頼りになるので、味方に引き入れようとする者も多かった。だから、秘密の一部を漏らして興味を引こうとする。
斎藤は、やそが会津藩の密偵だと察しているので、協力していた。
そんな斎藤の身にも、転機が訪れる。京都の会津藩邸に、やそと一緒に呼ばれた。道すがら、やそは三歩下がってついて来る。駒下駄を鳴らして歩くやそを、斎藤は可愛らしく思っていた。彼女の兄の最期を見届けた身として、代わりに庇護するのが自分の義務だと思っていた。刀にかけても守る覚悟があった。当時の京都は、不逞浪士が幅を利かせ、無法地帯だった。侍の格好であれば、いつ刀を抜いてもおかしくない。その場合、寄り添っていられると抜刀しずらい。だから、三歩下がって歩くように頼んでいた。
さて、斎藤とやそは、会津藩邸で三太夫と面談した。
「斎藤殿、やそへの協力、当藩からも感謝しておりますぞ」
三太夫の労いの言葉から、話は始まった。
「もともと、篠田家は、会津藩お抱えの忍の家系でしてな、やそもその末裔なのです」
斎藤は、忍と言われ、頭の中で、やそにくノ一の格好をさせてみる。どうも腑に落ちない。
斎藤の妄想を他所に、三太夫の話は進む。
「実は、江戸から来た浪士組なのですが、肝入り役の清河八郎が不穏な動きをしまして、江戸に帰る事になりました」
斎藤は、試衛館の連中に同情した。これでは、京都に物見遊山に来たのと変わらない。だが、次の三太夫の話が、それが勘違いだと教えてくれた。
「ところが、江戸へ帰るのを断固拒否した連中が居るのです。芹沢鴨と近藤勇の、両派合わせて十三名が、壬生浪士組を名乗り、京に留まるそうです」
斎藤は、やそが会津藩の密偵だと察しているので、協力していた。
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さて、斎藤とやそは、会津藩邸で三太夫と面談した。
「斎藤殿、やそへの協力、当藩からも感謝しておりますぞ」
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