ダークイースター

仲神舜一の場合

☆22

　次の日の朝、やはり伯父は戻らなかった。こうなると、幾ら成人男子で職業が刑事でも、何か手を打つ必要を感じる。

　伯父は、無事なら何らかの方法で連絡をしてくる筈で、トラブルに巻き込まれたか？ 事故に逢ったか？ どちらかになる。
　僕は、伯父の行動を整理してみる。

　伯父は、十五年前に担当した未解決事件を調べ直していた。その事件の被害者は、綾香の両親だった。綾香は、勇治と共に杉川町を訪れている。
　伯父は、僕からの依頼で、事件の関係者にはパズダンの経験の有無を聞いた。
　伯父は、僕らが去った後に郷土資料館を訪れている。
　伯父は、僕らより先にホテルにチェックインしてから、何処かへ出かけた。

　整理してみたが、何も浮かんで来ない。そんな時、伯父の携帯が気になった。
　当初はただの忘れ物だと思っていたが、よくよく考えると、何か意味がある気がしてきた。郷土資料館のチケットが挟んで有るのも、偶然ではなくメッセージかも知れない。伯父は、何を伝えようとしたのだろう？

　僕は、資料館の当日チケットに刻印された時間に注目し、伯父の携帯の発信履歴を調べた。
　伯父の携帯には、資料館を訪れた五分後に電話を掛けている記録がある。僕は、その番号に掛けてみた。

　数回の呼び出し音の後、相手が応答する。

「はい、太田ですが？ カニさん、どうした？」

　通話相手は伯父の知り合いらしい。声の感じからすると、三十代から四十代の男性に思えた。

「もしもし、突然のお電話で失礼します。仲神舜一と申します。実は、伯父の蟹江敬三の事でお伺いしたいのですが？」

「カニさんに何かあった？」

「昨日から行方不明なんです。それで、昨日の発信履歴に掛けてみたのですが、差し支えなければ会話内容を教えて貰えますか？」