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仲神舜一の場合
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ここからは、伯父とは別れて行動する。
僕と綾香は、澤地豊雄に関する情報を集め、伯父は、十五年前の事件を洗い直す。
とは言え、伯父は休暇を利用して此所にいるだけなので、関係者への聞き込みだけだろう。
「伯父さん、パズダンの事を聞き忘れないでね」
僕が念を押すと、伯父は五月蝿そうにした。
「解ってる」
僕が知る限り、バットマンはパズダンを介してのみ呼び出せる。
勇治にバットマンを差し向けたのは、パズダンをしている人に違いないから、伯父には調べて欲しかった。
だが、肝心の伯父本人は、あまり重要視していない。
それもその筈で、僕は、勇気を出して成政への罪や勇治の事を話したのに、鼻で笑われた。
やはり、勇治が自殺する前に伯父に連絡を取っても同じ事だっただろう。
さて、伯父は駅の西口へ向かい、僕たちは東口へ向かう。
東口は、まだ開発が進んでいないようで、更地や建設中の建物が目立った。
駅から歩くこと十分、僕らの前に郷土資料館が在った。
建物は、それほど大きくは無く、更に凝った物でも無かった。
入場料は二百円で、この手の施設としては妥当だろう。
「杉川町の事が良く解る施設だね」
この地の特産品や、町村の成り立ち、昔の暮らしぶりや、昔の道具が展示してあり、ショーケースの向こうに町の歴史が詰まっていた。
僕は、もの珍しそうに覗いている綾香に質問した。
「姫岡は、来たこと無いんだ…」
「資料館は初めてなの。何だか足が向かなくて」
僕は、彼女が大きな目で興味深く見つめている姿に見とれていた。
「あっ、お客さん発見!」
綾香が、奥のブースが賑わっているのを見てはしゃいだ。僕は、その姿が子供みたいで苦笑いする。
「可笑しいかな?」
「大丈夫、でも、迷子にはならないで」
「手でも繋ぐ?」
「そだな」
僕は、綾香の手を優しく包んだ。
皮膚を通して、緊張感と想いが伝わるような気がしたが、それと同時に、勇治への後ろめたさも甦る。親友が死を選んだ事で、自分が得する事が有ってはいけない気がした。この旅は、一種の巡礼であり、浮かれる事は許されない。
さて、奥のブースに入ると、綾香の僕の手を握る力が強くなった。
僕は、彼女が青ざめて行くのを、心配そうに見守っていた。
奥のブースに展示して在ったのは、“杉川村事件”の資料だった。
僕と綾香は、澤地豊雄に関する情報を集め、伯父は、十五年前の事件を洗い直す。
とは言え、伯父は休暇を利用して此所にいるだけなので、関係者への聞き込みだけだろう。
「伯父さん、パズダンの事を聞き忘れないでね」
僕が念を押すと、伯父は五月蝿そうにした。
「解ってる」
僕が知る限り、バットマンはパズダンを介してのみ呼び出せる。
勇治にバットマンを差し向けたのは、パズダンをしている人に違いないから、伯父には調べて欲しかった。
だが、肝心の伯父本人は、あまり重要視していない。
それもその筈で、僕は、勇気を出して成政への罪や勇治の事を話したのに、鼻で笑われた。
やはり、勇治が自殺する前に伯父に連絡を取っても同じ事だっただろう。
さて、伯父は駅の西口へ向かい、僕たちは東口へ向かう。
東口は、まだ開発が進んでいないようで、更地や建設中の建物が目立った。
駅から歩くこと十分、僕らの前に郷土資料館が在った。
建物は、それほど大きくは無く、更に凝った物でも無かった。
入場料は二百円で、この手の施設としては妥当だろう。
「杉川町の事が良く解る施設だね」
この地の特産品や、町村の成り立ち、昔の暮らしぶりや、昔の道具が展示してあり、ショーケースの向こうに町の歴史が詰まっていた。
僕は、もの珍しそうに覗いている綾香に質問した。
「姫岡は、来たこと無いんだ…」
「資料館は初めてなの。何だか足が向かなくて」
僕は、彼女が大きな目で興味深く見つめている姿に見とれていた。
「あっ、お客さん発見!」
綾香が、奥のブースが賑わっているのを見てはしゃいだ。僕は、その姿が子供みたいで苦笑いする。
「可笑しいかな?」
「大丈夫、でも、迷子にはならないで」
「手でも繋ぐ?」
「そだな」
僕は、綾香の手を優しく包んだ。
皮膚を通して、緊張感と想いが伝わるような気がしたが、それと同時に、勇治への後ろめたさも甦る。親友が死を選んだ事で、自分が得する事が有ってはいけない気がした。この旅は、一種の巡礼であり、浮かれる事は許されない。
さて、奥のブースに入ると、綾香の僕の手を握る力が強くなった。
僕は、彼女が青ざめて行くのを、心配そうに見守っていた。
奥のブースに展示して在ったのは、“杉川村事件”の資料だった。
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