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長靴を履いた猫たち
長靴をはいた猫たち 後編
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前話までの話
十七世紀、ガスコーニュ地方から花の都パリへ上京したチャトラ猫のダルタニャンは、ちょっとしたきっかけから国王の精鋭部隊、近衞銃士隊の猛者、ベンガル種のアトス、メイン・クーン種のポルトス、ロシアンブルー種のアラミスと友達になる。ある日、ダルタニャンは、恋猫のコンスタンスの伝手でイギリスの猫、バッキンガム公爵と知り合う。
さて、そんな時に事件が起きた。フランス王妃のダイヤの首飾りが紛失したのだ。犯人をスコティッシュフォールド種のミレディだと当たりを付けたダルタニャンは、三銃士と共にイギリスへ渡り、無事に首飾りを取り戻すのだった。
三銃士を訪ねて
ダルタニャンは、初の任務を成功させ、有頂天だった。その上、報酬にダイヤの指輪と名馬を貰った。イギリスの宰相、バッキンガム公爵から貰った馬は、全部で四頭だった。カレーからパリまでの町々で乗り継いだ馬は、役目を終えた後は三銃士の元へ届ける様に託けた。三銃士の面々は、ダルタニャンをイギリス行きの船に乗せるため、途中の町で戦ってくれていた。
まずは、最初の宿場町で脱落したポルトスを訪ねる。
探すまでもなく、ポルトスは見つかった。大型種のメイン・クーンは、何処に居ても目立つ。ダルタニャンは、酒場の真ん中のテーブルに堂々と陣取るポルトスに近づいた。
「ポルトス、無事で良かった。心配したぞ」
ダルタニャンが声を掛けると、ポルトスはゆっくりと顔を向けた。
「おう、久しぶりだな。さぁ、座って食べてくれ」
テーブルに着いて居るのは、ポルトスだけではなかった。数種の猫が会食している。ニャアニャアと騒がしい。従者のムースクトンがダルタニャンに席を勧めた。
ダルタニャンは、ポルトスの羽振りの良さに驚いていた。若い兵隊は金離れがいい。特にポルトスは、衣装や装備品に凝る方だから、財布は空なはずだった。
「ところでポルトス、決闘はどうなったのさ」
ポルトスは、ダルタニャンの質問に沈黙する。長毛の巨猫は、本当におっとりしている。まさか此処での出来事を忘れたはずは無いだろうが、思い出すのに時間が掛かった。
「ポルトス、君はここで大型の猫と決闘しただろ。ほら、同じメイン・クーンのさ」
ダルタニャンがヒントを出すと、ポルトスは心外とばかりに眉をひそめた。
「いくら何でも覚えているよ。この場所で喧嘩を売られた話だろ」
「喧嘩の相手は枢機卿の手下だぜ。任務を妨害する目的で仕掛けて来たんだ」
ダルタニャンは、ポルトスに声を潜めて耳打ちする。
「え! なんだって! あいつは枢機卿の手下か」
ポルトスは、大声で触れ回る。
ダルタニャンは泣きたくなった。もう、こうなれば外聞など関係ない。
「それで、此処で何が起きたんだい?」
「それがさ、あいつが『枢機卿に乾杯しよう』なんて言うからさ、俺が、『国王陛下に乾杯するなら付き合おう』と言ったんだ。するとどうだ。あいつは『国王なんか枢機卿の操り人形だ』なんて言いやがった。それで揉めて、表で決闘する事になったのさ」
ダルタニャンは、ここまでの経緯は見聞きした範囲内なので知っていた。
「それで?」
「それで、外で決闘したさ。もう、激しいチャンチャンバラバラの末、俺は相手の突きを受け損なって負傷した」
ポルトスは、他人事の様に言う。ダルタニャンの方は、真剣な顔になる。
「それで?」
「うん、ヤツは止めまでは刺さずに行ってしまった。その後、ムースクトンが助けてくれたのさ」
「まぁ、命が有って良かったよ」
チャトラ猫の口角が上がる。
「うん、そうさ。それに、良い事もあった。ダルタニャンと言う猫から、馬をプレゼントされたんだ。きっと、俺に傷を負わせた詫びだろう」
ポルトスの言葉に、ダルタニャンは呆れていた。
「ダルタニャンは俺なんだけど……」
「そうか、なら、馬をくれたのは君かい?」
「そうさ、骨折りさせてただ働きでは申し訳ない」
「骨折り? 俺は脇腹を刺されたんだ」
ポルトスが真顔で言う。ダルタニャンは、リアクションに困ってしまう。
「まぁ、すっかり傷が癒えたようで何より」
その後は、愉快に談笑しながら話が弾んだ。
「ところで、俺が贈った名馬はどうだい?」
「う~ん」
ダルタニャンの質問に、ポルトスは言葉を濁す。ダルタニャンは、その態度で気が付いた。
「もしかして、いま食べているのが馬なのかい?」
ポルトスは、ダルタニャンの発言を笑った。
「おいおい、舌は大丈夫か? 肉の味が解らないようじゃ、何を食わせても一緒だな」
ダルタニャンは、ポルトスの察しの悪さに苦笑する。
「いや、馬を売った代金で料理を用意したのかい? と言う意味さ」
ポルトスは、ダルタニャンに指摘されて頭を掻いた。悪戯がバレた猫だった。
「傷の治療や宿泊費が嵩んでね。仕方がなかったんだよ。良い値で売れたよ」
「そりゃそうだろう」
ダルタニャンは、三銃士と一緒に名馬で戦場を駆ける夢が有ったが、その一画は崩れてしまった。
さて、ダルタニャンはポルトスの様子を確認すると、次はアラミスの所へ向かう。次の宿場町へと旅立った。
「アラミスは、きっと落ち込んでいるだろうな」
ダルタニャンが言う。もちろん、独り言ではない。従者の雑種、プランシェが居た。ダルタニャンは名馬に乗り、プランシェは騾馬に乗っていた。
「ええ、銃で撃たれましたからね。あの傷は酷く長引くものです」
アラミスは、街道で待ち伏せしていた敵に銃撃され、負傷していた。ダルタニャンは、プランシェに言い返す。
「いやいや、アラミスが負っているのは外傷だけじゃないんだよ。心の傷の方が重傷かも知れない」
ダルタニャンは、プランシェに意味深な台詞の答えを教えなかった。そうこうする内に、アラミスが居る宿屋に着いた。宿の前には名馬が居る。
ダルタニャンは、アラミスの部屋へ案内される。すると、複数の聖職者がベッドを囲んでいた。ダルタニャンの尻尾が止まる。ガスコーニュ訛りも飛び出た。
「ニャンたる事ニャ! アラミス、なぜ先に逝ったニャン!」
「おい、まだ死んじゃいないさ。僕を勝手に殺さないで欲しいね。もっとも、もう死んだも同然かも知れない」
アラミスは、聖職者の真ん中に居た。青灰色のロシアンブルー種が柔かに座っていた。
「ああ驚いた。心臓が止まるかと思ったぞ」
アラミスは、ダルタニャンの反応が嬉しかった。
「君がそんなに僕を心配してくれるのは嬉しいね。もう、誰からも忘れられたと思っていたからね。今さ、俗世を捨てて出家しようと思っていたのさ。聖ザビエルみたいにね」
ダルタニャンは、話が面白い展開になって来たとほくそ笑んだ。瞳孔が縦長になる。
「じゃあ、この手紙は要らないね。高貴な香りがして、蝋印がオリーブの葉の紋様なんだけどね。この手紙は、俺がパリを出発する時にラグドール種のレディから受け取ったのさ。『返事が遅れた事をアラミスに謝って欲しい』と頼まれた。旅に出ていたそうだ。だから、君の便りに返事ができなかった」
ロシアンブルー種の耳がピクピク動く。
「手紙だって? 読んで見ないとね」
「いやいや、世俗を捨てて神父になる猫には無用だよ。そうだ、破いて窓から捨てよう。風の妖精が何処かへ運んでくれる」
「ダルタニャン!」
アラミスが叫んだ。立ち上がり、聖職者を押し除け、ダルタニャンに詰め寄る。すっかり世俗にお戻りの様だ。ダルタニャンは、手紙を餌にアラミスを釣り上げた。
アラミスは、レディからの手紙を夢中で読む。読み終わると、生気を取り戻し、ロシアンブルーのスマイルが全開になる。
「あゝ、あの方は、僕を見捨てた訳じゃなかったんだ。危うく勘違いする所だった。あゝ、素晴らしい日だ」
アラミスは、すっかり自分の世界に入っていた。アラミスの為に集まった聖職者たちは、困惑していた。
「アラミス殿、神父になる儀式を進めますよ」
聖職者の一匹が声を掛けると、アラミスは返事をした。
「司祭さま、僕は神父にはなれません。俗世に未練があるのです」
聖職者の司祭は、アラミスを説得しようとする。
「それは気の迷いです。悪魔の誘惑に負けてはいけません」
アラミスは、司祭に口調を荒げた。
「うるさい! 気が変わったんだよ。さっさと帰りやがれ」
ダルタニャンは、アラミスの豹変ぶりが笑えた。聖職者の慌てぶりも面白い。なかなか愉快な寸劇を堪能した。
アラミスの癇癪に驚いた聖職者たちは、不満を口にしながら退室した。残ったのは、アラミスとダルタニャンと、アラミスの従者のバザンとダルタニャンの従者のプランシェの四匹だった。
「それじゃ、銃士のままで良いんだね」
ダルタニャンに念を押され、アラミスは頷いた。
「聖職者になるのは先の話さ」
「残念だなぁ、粋な坊主になったろうに」
三匹が笑う中、バザンだけが不服そうだった。
ダルタニャンは、アラミスへのご機嫌伺いを済ませ、今度はアトスの元へ向かう。
アトスは、贋金の嫌疑をかけられ、酷い目に遭っているかも知れなかった。騒動の有った宿屋を訪ねると、アトスは滞在していると言う。宿屋の主人が、事の経緯を説明した。それによると、事前に役人が来て、贋金を使う悪人を手配中だと言われたそうだ。役人は、そのまま宿屋に張り込む。そこへ、アトス、ダルタニャン主従が到着し、罠に嵌められた。
その後、アトスは役人たちと戦いながら宿屋の食糧庫に籠城し、今もそこに居ると言う。
「なんだって、まだ立て籠っているのか?」
ダルタニャンが驚く。宿屋の亭主は、泣きそうな顔で言う。
「そうなんですよ。通風口から銃を構えていて、近づく猫に発砲します。もう、酒も食糧も出せなくて、商売上がったりです。実は、贋金の情報を持って来たのは偽役人で、嘘だったのです。だから何度も謝ったのですが、出て来てくれません。お願いです。説得してください」
ダルタニャンは、アトスを説得する為に食糧庫へ向かう。
「アトス、俺だ、ダルタニャンだ」
ダルタニャンが呼ばわると、食糧庫の扉が開き、豹を思わせる精悍な猫が出て来た。ベンガル種のアトスだった。
「ダルタニャン、無事だったか。心配したぞ」
ダルタニャンとアトスは、抱擁を交わした。
さて、宿屋の亭主は、事件解決に気を良くして、大盤振る舞いをする。その内、ダルタニャンとアトスは、イギリス猫と知り合いになる。大いに呑んでカードで勝負を重ね、夜通し過ごした。そして朝には、ダルタニャンもアトスも、名馬を失っていた。
道々、アトスが説く。
「イギリスの馬は速いが、脚が細くて軟弱だぜ。やっぱり、フランス産の馬が一番だよ。脚ががっしりしている」
ダルタニャンは、すっかり落ち込んで応えた。
「あ~あ、残った名馬はアラミスのだけか」
アトスは、ニヤニヤしていた。
「どうかな?」
パリに帰る道すがら、アラミスが逗留していた宿屋に寄る。アラミスは、まだ泊まっていた。アトスとアラミスは、無事の再会を喜んだ。
「さて、アラミス、ダルタニャンが贈った馬は居るかい?」
アトスの問いに、アラミスが答える。
「居ないよ。パリの恋猫に贈ってしまった。あのエレガントな脚はレディ向きさ。僕はフランス産の馬が良い」
その後、ポルトスも合流し、主従八匹で賑やかにパリへ凱旋した。その数ヶ月後、ラロシェルで戦争が起きる。
ダルタニャンは、港町の要塞都市を包囲する軍の中に居た。今回は、三銃士は居ない。国王の親衛隊である銃士隊は、まだ到着していなかった。ダルタニャンが所属する小隊は、味方から逸れ、数名の兵隊で塹壕を守っていた。
「よし、俺が偵察してくる」
ダルタニャンは、塹壕から出る事を志願した。同じく、雑種の三毛猫も志願した。
ダルタニャンと三毛猫の偵察隊は、敵の要塞に近付いた。
さて、ダルタニャンは耳が良い。僅かな音にピクリと反応した。振り返ると、同じ偵察隊を志願した三毛猫がサーベルを抜いていた。
「血迷ったか!」
ダルタニャンの叫びに、裏切り者が応える。
「俺は正気さ。お前の命を貰い受ける」
ダルタニャンは、敵の城壁を前にして決闘を始めた。相手は剣捌きが達者で、鋼の響きが絶え間なく続く。ダルタニャンは、サーベルを隠す。関節の柔らかさを利用して、背中側まで回した腕から突きを繰り出す。ダルタニャンの剣先は、帽子の鍔を突き破って飛び出した。三毛猫からしたら、ふいにサーベルで攻撃される事になる。
「ブギャギャギャ」
三毛猫は、肩を刺されて悲鳴を上げた。
すると、城壁から狙撃され、鉛玉まで食らう。
ダルタニャンは、三毛猫を見捨てる事ができず、抱えて後退した。
その後、援護射撃の甲斐もあり、ダルタニャンが所属する小隊は、味方の陣地に戻れた。
ダルタニャンは、三毛猫の犯罪を黙っていた。恩を売って情報を聞き出せればラッキーだし、聞き出せなくても、どうせベッドから動けない状態だから、脅威にはならない。
「お前、名前は?」
「ブキャンと言います」
三毛猫は素直に喋った。これは幸先が良い。
「なぜ、俺を狙ったんだ?」
「へい、レディから金を貰ったんです」
「どんな猫だ?」
「スコティッシュフォールドで、白い毛並みに短い耳、トパーズ色の目の美猫でした」
ダルタニャンは、三毛猫の言う特徴から、ミレディを思い浮かべる。
「雌猫の命令は、俺を殺す事だけか?」
ダルタニャンの質問に、三毛猫は答えた。
「いえ、コンスタンスと言うマンチカンの雌猫も殺すように言われました」
ダルタニャンは、王妃の首飾り事件の後、コンスタンスが何処かの修道院に匿われている事を知っていた。
「コンスタンスの居場所を知らないだろう?」
「いえ、知ってますよ」
「なんだって!」
ダルタニャンが驚いて叫んだ時、王の部隊が参陣した事を告げるラッパが鳴り響く。
ダルタニャンは、銃士隊を探しに飛び出した。
「ダルタニャン、久しぶりだな」
アトスが腕を広げる。ダルタニャンと抱擁し、アラミス、ポルトスも続く。
ひとしきり再会を祝すと、お互いに話があった。
「アトス、相談したい事があるんだ」
「私も相談がある。何処か、猫が居ない場所がないかなぁ。そこら中にスパイが居そうで落ち着かん」
アトスが愚痴を言う。
「敵の城壁の西側は、砲撃したばかりだから死体しかないけどね」
ダルタニャンが冗談で提案する。その時、アトスの瞳孔が大きくなる。
「よし、そこにしよう」
「えっ、何処だって?」
ダルタニャンが驚いている間に、アトスが話を進める。
「兵隊諸君、私とダルタニャン、アラミス、ポルトスの四匹は、敵の城壁でランチを楽しもうと思う。時間は一時間だ。できるか否かを賭けようじゃないか。誰か乗るか」
兵隊仲間では、すぐに胴元が付き、賭けの相場が始まる。胴元は、アトスに告げる。
「成功した場合の報酬は、五割でどうだろう?」
「いいだろう」
全く話が見えないポルトスとアラミスは、アトスに訊ねる。
「何が始まるんだい?」
「うん、敵に昼飯を見せびらかしに行く」
「それだけじゃないんだろう?」
アラミスが乗って来た。
「まぁ、詳しくは秘密だ」
「秘密は大好きさ」
アラミスは納得したが、ポルトスは不服そうだった。
「アトス、敵陣で食事したら、良い事があるのか」
「ああ、皆んなが豪勢な晩飯を奢ってくれる」
「まぁ、良いだろう」
ポルトスも納得した。
さて、四匹は、意気揚々と城壁へ向かう。従者を合わせると八匹になる。従者は、フランスパンやワイン、チーズやハムを持って続く。
「アトス、鉄砲を忘れているぜ」
ダルタニャンが問いかけると、アトスは答えた。
「現場に転がっているさ」
八匹は城壁に登ると、鉄砲を集める。武器弾薬が揃うと、いよいよランチタイムに移る。同時に相談も始まる。
「ミレディが俺に刺客を差し向けた。しかも、その刺客はコンスタンスも狙っていた。コンスタンスの居場所まで知っていたんだぜ」
ダルタニャンが言うと、アラミスが反応する。
「それは心配だな。すぐに助けに行かなくては」
ダルタニャンとポルトスは頷く。だが、アトスは違う意見だった。
「いや、コンスタンスは当分の間は大丈夫だろう。ミレディは忙しくてそれ所じゃない」
「なぜ解るんだい?」
ダルタニャンの質問に、アトスは答えた。
「ミレディに会ったんだよ。あの雌猫は、リシュリュー枢機卿と密談していた。同じ宿屋に偶然入ってさ、うまい具合に隣の部屋が取れた。暖炉の排気は隣の部屋と共通だから、顔を突っ込むと会話が聴こえて来るんだよ」
「それで?」
「会話の内容から、ミレディをイギリスに派遣するそうだ。バッキンガムを暗殺して、ラロシェルへの援軍を取り止めにしたいらしい。それから、君とコンスタンスへの殺害許可証を貰っていた。私がこっそり待ち伏せして、ミレディから取り上げておいたよ」
アトスがダルタニャンに書面を手渡す。
「この者の成せる事は、国家の為である。 リシュリュー」書面にはこう書かれていた。
「具体的な事は何も書いていないな」
「それが政治家ってもんさ」
アラミスが澄まして意見する。
「それで、これからどうする?」
ポルトスが口を挟んだ。
「バッキンガム公爵を助けよう。ミレディの計略を報せるんだ」
ダルタニャンの意見に、アトスは難色を示す。
「バッキンガムは、ラロシェルに援軍を送ろうとしている敵だぜ。放っておけよ」
ダルタニャンは、アトスに反論する。
「いや、今度はミレディを罠に掛けよう。それに、バッキンガム公爵は良い猫だし、友達なんだ。見殺しにはできない」
「だが、今は従軍中だぜ。とてもイギリスへは行けないよ」
アトスがこう言った時、プランシェが警告を発する。
「敵襲!」
見ると、三十匹ほどの敵兵が、列を作って向かって来る。
「諸君、応戦しよう」
アトスの号令で、四匹は銃を構えた。敵からの弾丸は飛んで来ていて、城壁を削る。ダルタニャンと三銃士の方は、敵を充分に引きつけるまで撃たない。そして、一斉射撃。敵が四匹倒れた。従者が主人に銃を渡し、再び射撃。敵が更に四匹減る。激しい銃撃戦が始まった。
「火炎瓶だ!」
敵が火炎瓶を投げる。幸い城壁を燃やすだけだった。だが、再び投げられる。
「熱いプレゼントだが、貰う訳には行かないね」
アラミスは立ち上がると、フランスパンで打ち返す。パンの弾力のお陰で、火炎瓶は割れずに戻って行った。そして、敵を火達磨にする。
「よし、下に居る連中を押し潰そう」
アトスの提案で、砲撃で脆くなった壁を押す。八匹で力を合わせると、壁は落石となって敵に降り注ぐ。
土煙の中を、生き残った敵が逃げて行く。
「ランチタイムの邪魔はご遠慮願いたい!」
アトスが声を上げる。
さて、間違いなく今度は大部隊が攻めて来るから、急いで相談の続きをする。
「では、イギリスには従者を送ろう。バッキンガムにミレディの陰謀を警告させる」
ダルタニャンは、アトスに同意する。
「そうしよう。プランシェなら、一緒にイギリスへ行っているし、バッキンガム公爵とも面識がある」
「イギリスまでの旅費はどうする?」
「仕方がないから、王妃様から貰ったダイヤの指輪を売るよ」
ダルタニャンは悲しげに言うが、内心では算段があった。バッキンガム公爵は金持ちなので、命の恩人に褒美が無い訳がない。それを期待していた。
これで、バッキンガム公爵の方は解決した。次はコンスタンスになるが、これは戦争の合間に休暇を貰って助けに行く事になった。当時の戦争は悠長な物で、頻繁に停戦する。
相談が終わった頃、敵の大部隊が進んで来た。
「紳士諸君、撤収する。もう一時間は経ったからな」
アトスは、悠々と城壁を降りる。全員が後に続いた。
「急がなくていいのかい? 弾が飛んで来るぜ」
ポルトスが心配そうに言うが、アトスは落ち着いている。
「大丈夫さ」
その内、射撃が始まるが、八匹が撤退した後の城壁を撃っている。
「連中、何を撃っているんだろう?」
ポルトスの疑問に、アトスが答える。
「死猫だよ。従者たちにそれらしく見える様に並べて置いてもらった。それを生きていると勘違いして撃っているのさ」
四匹は、敵の間抜けさに高笑いしながら帰陣した。味方からは大歓迎を受け、賭け金も手に入れた。
それから数週間後、四銃士は修道院へ向かっていた。四銃士、そう、ダルタニャンは銃士になっていた。
暫く走ると、前方に馬車の一団が見えた。ダルタニャンは、馬車に見覚えがあった。
「あの馬車はミレディの物だ。前にマンの町で見た物と同じだ」
ダルタニャンが叫ぶ。あれからプランシェが戻って来ないので、イギリスの様子は判らなかったが、ミレディは脱出して来たようだ。
さて、ダルタニャンたちが必死に追うと、前を行く馬車も速度を上げた。どうやら銃士たちに気がついたらしい。そのまま、目的の修道院までレースは続く。
修道院に着いたのは、殆ど同じ位だった。すぐに双方が乱戦になる。ミレディ勢は、シャム猫が十匹ほど居た。初戦でポルトスがピストルをぶっ放し、二匹倒した。後はチャンチャンバラバラのサーベルでの斬り合いになる。喧騒の中、ダルタニャンはミレディの後を追う。
逃げ惑う修道女に邪魔されながら、ダルタニャンは進んだ。すると、開け放しの扉があった。嫌な予感がした。部屋の中には、雌猫が倒れていた。
「コンスタンス、しっかりしろ! 俺だ、ダルタニャンだ!」
ダルタニャンは、コンスタンスを抱き起こし、顔を近づける。コンスタンスは腹に銃弾を受け、血まみれだった。
「来てくれたのね……」
目を開け、それだけ呟くと息絶えた。ダルタニャンは号泣する。三銃士が駆けつけた後も泣いていた。
それから数日後、ダルタニャンたちはミレディを探し出し、罪を償わせる。町の首切り役人を呼び出し、村外れの一軒家で私刑を行なった。そして、戦争は、バッキンガム公爵が死去した事により、ラロシェルの町は降伏した。四銃士はパリに帰る。
パリに帰って早々、ダルタニャンはリシュリュー枢機卿から呼び出しを受けた。王宮内の枢機卿執務室で対峙する。サイベリアン種のリシュリューは、威圧感がハンパない。
「ダルタニャンくん、実は、私の部下のミレディが行方不明なのだが、君が何か知っていると言う情報が入ってね。身に覚えはないかね?」
聞き方は丁寧だが、眼光が鋭い。
「猊下、知っています。ミレディは処刑しました」
「何だって、殺猫をしたのか?」
「いえ、あの猫は罪を犯したのです。私の恋猫を殺害した上、イギリスの宰相も殺害しました。それに、処刑の許可証を持っています」
「ほう、誰の許可だ? 王妃様か」
「いいえ、違います」
「国王陛下か?」
「いいえ、違います」
「それでは誰が許可したと言うのだ!」
「リシュリュー枢機卿猊下です」
「何だって、私が?」
ダルタニャンは、リシュリューに書付けを渡した。
「この者の成せる事は、国家の為である。 リシュリュー」
リシュリューは、書面を読み、署名を確認した。考えれば、ミレディは有益な部下だが、バッキンガム公爵殺害の犯人でもある。後々面倒になる可能性も有ったので、ここで手を切れたのは幸いかも知れない。むしろ、四銃士に褒美を与えるべきだろう。そう考えると、表情を緩めた。
リシュリューは書付けを破くと言った。
「こんな物は子猫騙しだよ。だが、面白い。君には別の書類を上げよう。銃士隊副隊長の辞令だ。好きな名前を書くといい」
ダルタニャンは、書類を受け取ると、深くお辞儀した。
リシュリューは、手で追い払う仕草をする。
「行きたまえ、ムッシュダルタニャン」
ダルタニャンが執務室から出ると、三銃士が待ち受けていた。さっそく、副隊長の辞令を誰が受けるか相談になる。
アトスが言う。
「私は領地に帰って伯爵を継ぐよ。パリを離れる」
アラミスが言う。
「僕は出家して神父になるよ。パリを離れる」
ポルトスが言う。
「俺は高貴なレディと一緒に田舎へ引っ込む。パリを離れる」
三銃士の意見が纏まると、アトスは書類にダルタニャンの名前を書いた。
「お前が適任って事さ」
アトスの一言が、その場をしんみりさせた。それぞれが、新たな旅立ちの時だった。
概要 十七世紀、ガスコーニュの田舎から花の都パリに出て来たチャトラ猫のダルタニャンは、ベンガル種のアトス、メイン・クーン種のポルトス、ロシアンブルー種のアラミスと知り合う。リシュリュー枢機卿とミレディの陰謀に挑戦し、王妃のスキャンダルを防ぐべく行動する。フランス、イギリスを跨ぐ攻防の行方は如何に。チャンバラとニャンニャンが熱い冒険活劇。猫が擬人化した三銃士。
十七世紀、ガスコーニュ地方から花の都パリへ上京したチャトラ猫のダルタニャンは、ちょっとしたきっかけから国王の精鋭部隊、近衞銃士隊の猛者、ベンガル種のアトス、メイン・クーン種のポルトス、ロシアンブルー種のアラミスと友達になる。ある日、ダルタニャンは、恋猫のコンスタンスの伝手でイギリスの猫、バッキンガム公爵と知り合う。
さて、そんな時に事件が起きた。フランス王妃のダイヤの首飾りが紛失したのだ。犯人をスコティッシュフォールド種のミレディだと当たりを付けたダルタニャンは、三銃士と共にイギリスへ渡り、無事に首飾りを取り戻すのだった。
三銃士を訪ねて
ダルタニャンは、初の任務を成功させ、有頂天だった。その上、報酬にダイヤの指輪と名馬を貰った。イギリスの宰相、バッキンガム公爵から貰った馬は、全部で四頭だった。カレーからパリまでの町々で乗り継いだ馬は、役目を終えた後は三銃士の元へ届ける様に託けた。三銃士の面々は、ダルタニャンをイギリス行きの船に乗せるため、途中の町で戦ってくれていた。
まずは、最初の宿場町で脱落したポルトスを訪ねる。
探すまでもなく、ポルトスは見つかった。大型種のメイン・クーンは、何処に居ても目立つ。ダルタニャンは、酒場の真ん中のテーブルに堂々と陣取るポルトスに近づいた。
「ポルトス、無事で良かった。心配したぞ」
ダルタニャンが声を掛けると、ポルトスはゆっくりと顔を向けた。
「おう、久しぶりだな。さぁ、座って食べてくれ」
テーブルに着いて居るのは、ポルトスだけではなかった。数種の猫が会食している。ニャアニャアと騒がしい。従者のムースクトンがダルタニャンに席を勧めた。
ダルタニャンは、ポルトスの羽振りの良さに驚いていた。若い兵隊は金離れがいい。特にポルトスは、衣装や装備品に凝る方だから、財布は空なはずだった。
「ところでポルトス、決闘はどうなったのさ」
ポルトスは、ダルタニャンの質問に沈黙する。長毛の巨猫は、本当におっとりしている。まさか此処での出来事を忘れたはずは無いだろうが、思い出すのに時間が掛かった。
「ポルトス、君はここで大型の猫と決闘しただろ。ほら、同じメイン・クーンのさ」
ダルタニャンがヒントを出すと、ポルトスは心外とばかりに眉をひそめた。
「いくら何でも覚えているよ。この場所で喧嘩を売られた話だろ」
「喧嘩の相手は枢機卿の手下だぜ。任務を妨害する目的で仕掛けて来たんだ」
ダルタニャンは、ポルトスに声を潜めて耳打ちする。
「え! なんだって! あいつは枢機卿の手下か」
ポルトスは、大声で触れ回る。
ダルタニャンは泣きたくなった。もう、こうなれば外聞など関係ない。
「それで、此処で何が起きたんだい?」
「それがさ、あいつが『枢機卿に乾杯しよう』なんて言うからさ、俺が、『国王陛下に乾杯するなら付き合おう』と言ったんだ。するとどうだ。あいつは『国王なんか枢機卿の操り人形だ』なんて言いやがった。それで揉めて、表で決闘する事になったのさ」
ダルタニャンは、ここまでの経緯は見聞きした範囲内なので知っていた。
「それで?」
「それで、外で決闘したさ。もう、激しいチャンチャンバラバラの末、俺は相手の突きを受け損なって負傷した」
ポルトスは、他人事の様に言う。ダルタニャンの方は、真剣な顔になる。
「それで?」
「うん、ヤツは止めまでは刺さずに行ってしまった。その後、ムースクトンが助けてくれたのさ」
「まぁ、命が有って良かったよ」
チャトラ猫の口角が上がる。
「うん、そうさ。それに、良い事もあった。ダルタニャンと言う猫から、馬をプレゼントされたんだ。きっと、俺に傷を負わせた詫びだろう」
ポルトスの言葉に、ダルタニャンは呆れていた。
「ダルタニャンは俺なんだけど……」
「そうか、なら、馬をくれたのは君かい?」
「そうさ、骨折りさせてただ働きでは申し訳ない」
「骨折り? 俺は脇腹を刺されたんだ」
ポルトスが真顔で言う。ダルタニャンは、リアクションに困ってしまう。
「まぁ、すっかり傷が癒えたようで何より」
その後は、愉快に談笑しながら話が弾んだ。
「ところで、俺が贈った名馬はどうだい?」
「う~ん」
ダルタニャンの質問に、ポルトスは言葉を濁す。ダルタニャンは、その態度で気が付いた。
「もしかして、いま食べているのが馬なのかい?」
ポルトスは、ダルタニャンの発言を笑った。
「おいおい、舌は大丈夫か? 肉の味が解らないようじゃ、何を食わせても一緒だな」
ダルタニャンは、ポルトスの察しの悪さに苦笑する。
「いや、馬を売った代金で料理を用意したのかい? と言う意味さ」
ポルトスは、ダルタニャンに指摘されて頭を掻いた。悪戯がバレた猫だった。
「傷の治療や宿泊費が嵩んでね。仕方がなかったんだよ。良い値で売れたよ」
「そりゃそうだろう」
ダルタニャンは、三銃士と一緒に名馬で戦場を駆ける夢が有ったが、その一画は崩れてしまった。
さて、ダルタニャンはポルトスの様子を確認すると、次はアラミスの所へ向かう。次の宿場町へと旅立った。
「アラミスは、きっと落ち込んでいるだろうな」
ダルタニャンが言う。もちろん、独り言ではない。従者の雑種、プランシェが居た。ダルタニャンは名馬に乗り、プランシェは騾馬に乗っていた。
「ええ、銃で撃たれましたからね。あの傷は酷く長引くものです」
アラミスは、街道で待ち伏せしていた敵に銃撃され、負傷していた。ダルタニャンは、プランシェに言い返す。
「いやいや、アラミスが負っているのは外傷だけじゃないんだよ。心の傷の方が重傷かも知れない」
ダルタニャンは、プランシェに意味深な台詞の答えを教えなかった。そうこうする内に、アラミスが居る宿屋に着いた。宿の前には名馬が居る。
ダルタニャンは、アラミスの部屋へ案内される。すると、複数の聖職者がベッドを囲んでいた。ダルタニャンの尻尾が止まる。ガスコーニュ訛りも飛び出た。
「ニャンたる事ニャ! アラミス、なぜ先に逝ったニャン!」
「おい、まだ死んじゃいないさ。僕を勝手に殺さないで欲しいね。もっとも、もう死んだも同然かも知れない」
アラミスは、聖職者の真ん中に居た。青灰色のロシアンブルー種が柔かに座っていた。
「ああ驚いた。心臓が止まるかと思ったぞ」
アラミスは、ダルタニャンの反応が嬉しかった。
「君がそんなに僕を心配してくれるのは嬉しいね。もう、誰からも忘れられたと思っていたからね。今さ、俗世を捨てて出家しようと思っていたのさ。聖ザビエルみたいにね」
ダルタニャンは、話が面白い展開になって来たとほくそ笑んだ。瞳孔が縦長になる。
「じゃあ、この手紙は要らないね。高貴な香りがして、蝋印がオリーブの葉の紋様なんだけどね。この手紙は、俺がパリを出発する時にラグドール種のレディから受け取ったのさ。『返事が遅れた事をアラミスに謝って欲しい』と頼まれた。旅に出ていたそうだ。だから、君の便りに返事ができなかった」
ロシアンブルー種の耳がピクピク動く。
「手紙だって? 読んで見ないとね」
「いやいや、世俗を捨てて神父になる猫には無用だよ。そうだ、破いて窓から捨てよう。風の妖精が何処かへ運んでくれる」
「ダルタニャン!」
アラミスが叫んだ。立ち上がり、聖職者を押し除け、ダルタニャンに詰め寄る。すっかり世俗にお戻りの様だ。ダルタニャンは、手紙を餌にアラミスを釣り上げた。
アラミスは、レディからの手紙を夢中で読む。読み終わると、生気を取り戻し、ロシアンブルーのスマイルが全開になる。
「あゝ、あの方は、僕を見捨てた訳じゃなかったんだ。危うく勘違いする所だった。あゝ、素晴らしい日だ」
アラミスは、すっかり自分の世界に入っていた。アラミスの為に集まった聖職者たちは、困惑していた。
「アラミス殿、神父になる儀式を進めますよ」
聖職者の一匹が声を掛けると、アラミスは返事をした。
「司祭さま、僕は神父にはなれません。俗世に未練があるのです」
聖職者の司祭は、アラミスを説得しようとする。
「それは気の迷いです。悪魔の誘惑に負けてはいけません」
アラミスは、司祭に口調を荒げた。
「うるさい! 気が変わったんだよ。さっさと帰りやがれ」
ダルタニャンは、アラミスの豹変ぶりが笑えた。聖職者の慌てぶりも面白い。なかなか愉快な寸劇を堪能した。
アラミスの癇癪に驚いた聖職者たちは、不満を口にしながら退室した。残ったのは、アラミスとダルタニャンと、アラミスの従者のバザンとダルタニャンの従者のプランシェの四匹だった。
「それじゃ、銃士のままで良いんだね」
ダルタニャンに念を押され、アラミスは頷いた。
「聖職者になるのは先の話さ」
「残念だなぁ、粋な坊主になったろうに」
三匹が笑う中、バザンだけが不服そうだった。
ダルタニャンは、アラミスへのご機嫌伺いを済ませ、今度はアトスの元へ向かう。
アトスは、贋金の嫌疑をかけられ、酷い目に遭っているかも知れなかった。騒動の有った宿屋を訪ねると、アトスは滞在していると言う。宿屋の主人が、事の経緯を説明した。それによると、事前に役人が来て、贋金を使う悪人を手配中だと言われたそうだ。役人は、そのまま宿屋に張り込む。そこへ、アトス、ダルタニャン主従が到着し、罠に嵌められた。
その後、アトスは役人たちと戦いながら宿屋の食糧庫に籠城し、今もそこに居ると言う。
「なんだって、まだ立て籠っているのか?」
ダルタニャンが驚く。宿屋の亭主は、泣きそうな顔で言う。
「そうなんですよ。通風口から銃を構えていて、近づく猫に発砲します。もう、酒も食糧も出せなくて、商売上がったりです。実は、贋金の情報を持って来たのは偽役人で、嘘だったのです。だから何度も謝ったのですが、出て来てくれません。お願いです。説得してください」
ダルタニャンは、アトスを説得する為に食糧庫へ向かう。
「アトス、俺だ、ダルタニャンだ」
ダルタニャンが呼ばわると、食糧庫の扉が開き、豹を思わせる精悍な猫が出て来た。ベンガル種のアトスだった。
「ダルタニャン、無事だったか。心配したぞ」
ダルタニャンとアトスは、抱擁を交わした。
さて、宿屋の亭主は、事件解決に気を良くして、大盤振る舞いをする。その内、ダルタニャンとアトスは、イギリス猫と知り合いになる。大いに呑んでカードで勝負を重ね、夜通し過ごした。そして朝には、ダルタニャンもアトスも、名馬を失っていた。
道々、アトスが説く。
「イギリスの馬は速いが、脚が細くて軟弱だぜ。やっぱり、フランス産の馬が一番だよ。脚ががっしりしている」
ダルタニャンは、すっかり落ち込んで応えた。
「あ~あ、残った名馬はアラミスのだけか」
アトスは、ニヤニヤしていた。
「どうかな?」
パリに帰る道すがら、アラミスが逗留していた宿屋に寄る。アラミスは、まだ泊まっていた。アトスとアラミスは、無事の再会を喜んだ。
「さて、アラミス、ダルタニャンが贈った馬は居るかい?」
アトスの問いに、アラミスが答える。
「居ないよ。パリの恋猫に贈ってしまった。あのエレガントな脚はレディ向きさ。僕はフランス産の馬が良い」
その後、ポルトスも合流し、主従八匹で賑やかにパリへ凱旋した。その数ヶ月後、ラロシェルで戦争が起きる。
ダルタニャンは、港町の要塞都市を包囲する軍の中に居た。今回は、三銃士は居ない。国王の親衛隊である銃士隊は、まだ到着していなかった。ダルタニャンが所属する小隊は、味方から逸れ、数名の兵隊で塹壕を守っていた。
「よし、俺が偵察してくる」
ダルタニャンは、塹壕から出る事を志願した。同じく、雑種の三毛猫も志願した。
ダルタニャンと三毛猫の偵察隊は、敵の要塞に近付いた。
さて、ダルタニャンは耳が良い。僅かな音にピクリと反応した。振り返ると、同じ偵察隊を志願した三毛猫がサーベルを抜いていた。
「血迷ったか!」
ダルタニャンの叫びに、裏切り者が応える。
「俺は正気さ。お前の命を貰い受ける」
ダルタニャンは、敵の城壁を前にして決闘を始めた。相手は剣捌きが達者で、鋼の響きが絶え間なく続く。ダルタニャンは、サーベルを隠す。関節の柔らかさを利用して、背中側まで回した腕から突きを繰り出す。ダルタニャンの剣先は、帽子の鍔を突き破って飛び出した。三毛猫からしたら、ふいにサーベルで攻撃される事になる。
「ブギャギャギャ」
三毛猫は、肩を刺されて悲鳴を上げた。
すると、城壁から狙撃され、鉛玉まで食らう。
ダルタニャンは、三毛猫を見捨てる事ができず、抱えて後退した。
その後、援護射撃の甲斐もあり、ダルタニャンが所属する小隊は、味方の陣地に戻れた。
ダルタニャンは、三毛猫の犯罪を黙っていた。恩を売って情報を聞き出せればラッキーだし、聞き出せなくても、どうせベッドから動けない状態だから、脅威にはならない。
「お前、名前は?」
「ブキャンと言います」
三毛猫は素直に喋った。これは幸先が良い。
「なぜ、俺を狙ったんだ?」
「へい、レディから金を貰ったんです」
「どんな猫だ?」
「スコティッシュフォールドで、白い毛並みに短い耳、トパーズ色の目の美猫でした」
ダルタニャンは、三毛猫の言う特徴から、ミレディを思い浮かべる。
「雌猫の命令は、俺を殺す事だけか?」
ダルタニャンの質問に、三毛猫は答えた。
「いえ、コンスタンスと言うマンチカンの雌猫も殺すように言われました」
ダルタニャンは、王妃の首飾り事件の後、コンスタンスが何処かの修道院に匿われている事を知っていた。
「コンスタンスの居場所を知らないだろう?」
「いえ、知ってますよ」
「なんだって!」
ダルタニャンが驚いて叫んだ時、王の部隊が参陣した事を告げるラッパが鳴り響く。
ダルタニャンは、銃士隊を探しに飛び出した。
「ダルタニャン、久しぶりだな」
アトスが腕を広げる。ダルタニャンと抱擁し、アラミス、ポルトスも続く。
ひとしきり再会を祝すと、お互いに話があった。
「アトス、相談したい事があるんだ」
「私も相談がある。何処か、猫が居ない場所がないかなぁ。そこら中にスパイが居そうで落ち着かん」
アトスが愚痴を言う。
「敵の城壁の西側は、砲撃したばかりだから死体しかないけどね」
ダルタニャンが冗談で提案する。その時、アトスの瞳孔が大きくなる。
「よし、そこにしよう」
「えっ、何処だって?」
ダルタニャンが驚いている間に、アトスが話を進める。
「兵隊諸君、私とダルタニャン、アラミス、ポルトスの四匹は、敵の城壁でランチを楽しもうと思う。時間は一時間だ。できるか否かを賭けようじゃないか。誰か乗るか」
兵隊仲間では、すぐに胴元が付き、賭けの相場が始まる。胴元は、アトスに告げる。
「成功した場合の報酬は、五割でどうだろう?」
「いいだろう」
全く話が見えないポルトスとアラミスは、アトスに訊ねる。
「何が始まるんだい?」
「うん、敵に昼飯を見せびらかしに行く」
「それだけじゃないんだろう?」
アラミスが乗って来た。
「まぁ、詳しくは秘密だ」
「秘密は大好きさ」
アラミスは納得したが、ポルトスは不服そうだった。
「アトス、敵陣で食事したら、良い事があるのか」
「ああ、皆んなが豪勢な晩飯を奢ってくれる」
「まぁ、良いだろう」
ポルトスも納得した。
さて、四匹は、意気揚々と城壁へ向かう。従者を合わせると八匹になる。従者は、フランスパンやワイン、チーズやハムを持って続く。
「アトス、鉄砲を忘れているぜ」
ダルタニャンが問いかけると、アトスは答えた。
「現場に転がっているさ」
八匹は城壁に登ると、鉄砲を集める。武器弾薬が揃うと、いよいよランチタイムに移る。同時に相談も始まる。
「ミレディが俺に刺客を差し向けた。しかも、その刺客はコンスタンスも狙っていた。コンスタンスの居場所まで知っていたんだぜ」
ダルタニャンが言うと、アラミスが反応する。
「それは心配だな。すぐに助けに行かなくては」
ダルタニャンとポルトスは頷く。だが、アトスは違う意見だった。
「いや、コンスタンスは当分の間は大丈夫だろう。ミレディは忙しくてそれ所じゃない」
「なぜ解るんだい?」
ダルタニャンの質問に、アトスは答えた。
「ミレディに会ったんだよ。あの雌猫は、リシュリュー枢機卿と密談していた。同じ宿屋に偶然入ってさ、うまい具合に隣の部屋が取れた。暖炉の排気は隣の部屋と共通だから、顔を突っ込むと会話が聴こえて来るんだよ」
「それで?」
「会話の内容から、ミレディをイギリスに派遣するそうだ。バッキンガムを暗殺して、ラロシェルへの援軍を取り止めにしたいらしい。それから、君とコンスタンスへの殺害許可証を貰っていた。私がこっそり待ち伏せして、ミレディから取り上げておいたよ」
アトスがダルタニャンに書面を手渡す。
「この者の成せる事は、国家の為である。 リシュリュー」書面にはこう書かれていた。
「具体的な事は何も書いていないな」
「それが政治家ってもんさ」
アラミスが澄まして意見する。
「それで、これからどうする?」
ポルトスが口を挟んだ。
「バッキンガム公爵を助けよう。ミレディの計略を報せるんだ」
ダルタニャンの意見に、アトスは難色を示す。
「バッキンガムは、ラロシェルに援軍を送ろうとしている敵だぜ。放っておけよ」
ダルタニャンは、アトスに反論する。
「いや、今度はミレディを罠に掛けよう。それに、バッキンガム公爵は良い猫だし、友達なんだ。見殺しにはできない」
「だが、今は従軍中だぜ。とてもイギリスへは行けないよ」
アトスがこう言った時、プランシェが警告を発する。
「敵襲!」
見ると、三十匹ほどの敵兵が、列を作って向かって来る。
「諸君、応戦しよう」
アトスの号令で、四匹は銃を構えた。敵からの弾丸は飛んで来ていて、城壁を削る。ダルタニャンと三銃士の方は、敵を充分に引きつけるまで撃たない。そして、一斉射撃。敵が四匹倒れた。従者が主人に銃を渡し、再び射撃。敵が更に四匹減る。激しい銃撃戦が始まった。
「火炎瓶だ!」
敵が火炎瓶を投げる。幸い城壁を燃やすだけだった。だが、再び投げられる。
「熱いプレゼントだが、貰う訳には行かないね」
アラミスは立ち上がると、フランスパンで打ち返す。パンの弾力のお陰で、火炎瓶は割れずに戻って行った。そして、敵を火達磨にする。
「よし、下に居る連中を押し潰そう」
アトスの提案で、砲撃で脆くなった壁を押す。八匹で力を合わせると、壁は落石となって敵に降り注ぐ。
土煙の中を、生き残った敵が逃げて行く。
「ランチタイムの邪魔はご遠慮願いたい!」
アトスが声を上げる。
さて、間違いなく今度は大部隊が攻めて来るから、急いで相談の続きをする。
「では、イギリスには従者を送ろう。バッキンガムにミレディの陰謀を警告させる」
ダルタニャンは、アトスに同意する。
「そうしよう。プランシェなら、一緒にイギリスへ行っているし、バッキンガム公爵とも面識がある」
「イギリスまでの旅費はどうする?」
「仕方がないから、王妃様から貰ったダイヤの指輪を売るよ」
ダルタニャンは悲しげに言うが、内心では算段があった。バッキンガム公爵は金持ちなので、命の恩人に褒美が無い訳がない。それを期待していた。
これで、バッキンガム公爵の方は解決した。次はコンスタンスになるが、これは戦争の合間に休暇を貰って助けに行く事になった。当時の戦争は悠長な物で、頻繁に停戦する。
相談が終わった頃、敵の大部隊が進んで来た。
「紳士諸君、撤収する。もう一時間は経ったからな」
アトスは、悠々と城壁を降りる。全員が後に続いた。
「急がなくていいのかい? 弾が飛んで来るぜ」
ポルトスが心配そうに言うが、アトスは落ち着いている。
「大丈夫さ」
その内、射撃が始まるが、八匹が撤退した後の城壁を撃っている。
「連中、何を撃っているんだろう?」
ポルトスの疑問に、アトスが答える。
「死猫だよ。従者たちにそれらしく見える様に並べて置いてもらった。それを生きていると勘違いして撃っているのさ」
四匹は、敵の間抜けさに高笑いしながら帰陣した。味方からは大歓迎を受け、賭け金も手に入れた。
それから数週間後、四銃士は修道院へ向かっていた。四銃士、そう、ダルタニャンは銃士になっていた。
暫く走ると、前方に馬車の一団が見えた。ダルタニャンは、馬車に見覚えがあった。
「あの馬車はミレディの物だ。前にマンの町で見た物と同じだ」
ダルタニャンが叫ぶ。あれからプランシェが戻って来ないので、イギリスの様子は判らなかったが、ミレディは脱出して来たようだ。
さて、ダルタニャンたちが必死に追うと、前を行く馬車も速度を上げた。どうやら銃士たちに気がついたらしい。そのまま、目的の修道院までレースは続く。
修道院に着いたのは、殆ど同じ位だった。すぐに双方が乱戦になる。ミレディ勢は、シャム猫が十匹ほど居た。初戦でポルトスがピストルをぶっ放し、二匹倒した。後はチャンチャンバラバラのサーベルでの斬り合いになる。喧騒の中、ダルタニャンはミレディの後を追う。
逃げ惑う修道女に邪魔されながら、ダルタニャンは進んだ。すると、開け放しの扉があった。嫌な予感がした。部屋の中には、雌猫が倒れていた。
「コンスタンス、しっかりしろ! 俺だ、ダルタニャンだ!」
ダルタニャンは、コンスタンスを抱き起こし、顔を近づける。コンスタンスは腹に銃弾を受け、血まみれだった。
「来てくれたのね……」
目を開け、それだけ呟くと息絶えた。ダルタニャンは号泣する。三銃士が駆けつけた後も泣いていた。
それから数日後、ダルタニャンたちはミレディを探し出し、罪を償わせる。町の首切り役人を呼び出し、村外れの一軒家で私刑を行なった。そして、戦争は、バッキンガム公爵が死去した事により、ラロシェルの町は降伏した。四銃士はパリに帰る。
パリに帰って早々、ダルタニャンはリシュリュー枢機卿から呼び出しを受けた。王宮内の枢機卿執務室で対峙する。サイベリアン種のリシュリューは、威圧感がハンパない。
「ダルタニャンくん、実は、私の部下のミレディが行方不明なのだが、君が何か知っていると言う情報が入ってね。身に覚えはないかね?」
聞き方は丁寧だが、眼光が鋭い。
「猊下、知っています。ミレディは処刑しました」
「何だって、殺猫をしたのか?」
「いえ、あの猫は罪を犯したのです。私の恋猫を殺害した上、イギリスの宰相も殺害しました。それに、処刑の許可証を持っています」
「ほう、誰の許可だ? 王妃様か」
「いいえ、違います」
「国王陛下か?」
「いいえ、違います」
「それでは誰が許可したと言うのだ!」
「リシュリュー枢機卿猊下です」
「何だって、私が?」
ダルタニャンは、リシュリューに書付けを渡した。
「この者の成せる事は、国家の為である。 リシュリュー」
リシュリューは、書面を読み、署名を確認した。考えれば、ミレディは有益な部下だが、バッキンガム公爵殺害の犯人でもある。後々面倒になる可能性も有ったので、ここで手を切れたのは幸いかも知れない。むしろ、四銃士に褒美を与えるべきだろう。そう考えると、表情を緩めた。
リシュリューは書付けを破くと言った。
「こんな物は子猫騙しだよ。だが、面白い。君には別の書類を上げよう。銃士隊副隊長の辞令だ。好きな名前を書くといい」
ダルタニャンは、書類を受け取ると、深くお辞儀した。
リシュリューは、手で追い払う仕草をする。
「行きたまえ、ムッシュダルタニャン」
ダルタニャンが執務室から出ると、三銃士が待ち受けていた。さっそく、副隊長の辞令を誰が受けるか相談になる。
アトスが言う。
「私は領地に帰って伯爵を継ぐよ。パリを離れる」
アラミスが言う。
「僕は出家して神父になるよ。パリを離れる」
ポルトスが言う。
「俺は高貴なレディと一緒に田舎へ引っ込む。パリを離れる」
三銃士の意見が纏まると、アトスは書類にダルタニャンの名前を書いた。
「お前が適任って事さ」
アトスの一言が、その場をしんみりさせた。それぞれが、新たな旅立ちの時だった。
概要 十七世紀、ガスコーニュの田舎から花の都パリに出て来たチャトラ猫のダルタニャンは、ベンガル種のアトス、メイン・クーン種のポルトス、ロシアンブルー種のアラミスと知り合う。リシュリュー枢機卿とミレディの陰謀に挑戦し、王妃のスキャンダルを防ぐべく行動する。フランス、イギリスを跨ぐ攻防の行方は如何に。チャンバラとニャンニャンが熱い冒険活劇。猫が擬人化した三銃士。
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