61 / 113
Four-leaf Cross〔Ogata〕
◆第六十一話◆
しおりを挟む
「さっきからずっと考え事してるね」
後ろから包まれるように抱かれ、不意に耳元で囁かれた。中にあった河南のものがグリッと角度を変える。
「あっ・・んん、もう駄目って言った」
「んー、でもまだ出来そう」
甘えた声を出す彼につい許してしまいそうになるが、心を鬼にして「駄目」と諌めた。河南は不満げにしばらく緒方の首筋に鼻を擦り付けた後、諦めてずるりと自身を引き抜いた。興奮状態の河南のペニスを長時間咥え込んでいた尻は痺れて感覚が無く、腰も力が入らないせいで、立ち上がったまでは良かったけれど、一歩が踏み出せない。
「ほらぁ、こうなるから嫌だったのに! 俺は君と違ってもうおじさんなんだから、ちょっとは加減して!」
「ふはは、抱っこしてあげようか?」
河南は涼しい顔でベッドに寝転びながら肘をつき、四十一歳の小鹿を鑑賞している。
「うるさいよ! 龍弥」
途端に河南の顔が耳まで真っ赤になった。初めて名前呼びをしてから何ヵ月も経つのに、彼は未だに初々しい反応を返してくれる。とても可愛い。可愛くて勿体ないので、たまにしか名前では呼ばない。
「ふふ、ごめん今のは意地悪だったね。やっぱり抱っこしてくれる? 河南くん」
「うん」
河南は立ち上がり、ふわりと緒方を抱き上げた。
「さっき何考えてたの?」
河南からの質問にどきりとする。素直に答えようか迷っていたら、「教えて」と髪を撫でられる。
「・・祥太のこと」
躊躇いがちに白状すると、河南は「ああ」と目を伏せた。言わない方が良かったか・・、セックス中に考え事をする自体が最低な上に、考えてた事が最悪すぎる。「ごめんね」と謝ろうとして、彼の喋り出しと衝突した。
「あ、ごめんね、なんて言おうとしたの?」
「うん、どんな事を考えてたのかなって」
どうやら怒ってはなさそうだ。ここまで言ったら隠す必要もないので、緒方は素直に口を開く。
「祥太の住んでいる場所が分かった・・かもしれない」
河南の喉仏がごくりと動いた。
「それで? 会いに行きたいの?」
「・・・・いや」
「正直に言って」
河南の優しい声に押され、コクンと頷く。
「でもね、会ってどうしたいのかはなんとも言えなくて。普通に生活してる祥太を見て、ただ自分が安心したいだけなのかもしれないし・・」
曖昧な答えに河南はふぅとため息をついた。
「まだ裕臣さんの事が好きでボロボロになってたらどうする?」
何も言えない。緒方は目を泳がせ、小さな声で「分からない」と呟いた。
「そんなの最低だよね・・ごめんなさい」
抱き締める河南の腕に力が込もったと思ったら、もにゅっと尻を鷲掴みにされる。
「ひっ」
「謝りすぎ、いつかそう言ってくる日が来るんじゃないかってずっと思ってたんだ。いいよ、俺の気持ちはあんたに告白した時と変わってないから、好きにやんなよ」
「河南くんっ、俺は」
不意にシャワーのお湯が肌に広がり、緒方はびくりと身体を震わせた。夢中で話していて、浴室に入ったのにも気が付かなかった。
「あ、びっくりした? 寝る前に綺麗にするでしょ?」
「うん」
辛い辛いと言いながらも、自分は幸せを手に入れた。自分だけが幸せになった。温かく包まれる身体に古傷がチクンと疼く。それはまるで「忘れないで」と自分に訴えているように思えてならなかった。
後ろから包まれるように抱かれ、不意に耳元で囁かれた。中にあった河南のものがグリッと角度を変える。
「あっ・・んん、もう駄目って言った」
「んー、でもまだ出来そう」
甘えた声を出す彼につい許してしまいそうになるが、心を鬼にして「駄目」と諌めた。河南は不満げにしばらく緒方の首筋に鼻を擦り付けた後、諦めてずるりと自身を引き抜いた。興奮状態の河南のペニスを長時間咥え込んでいた尻は痺れて感覚が無く、腰も力が入らないせいで、立ち上がったまでは良かったけれど、一歩が踏み出せない。
「ほらぁ、こうなるから嫌だったのに! 俺は君と違ってもうおじさんなんだから、ちょっとは加減して!」
「ふはは、抱っこしてあげようか?」
河南は涼しい顔でベッドに寝転びながら肘をつき、四十一歳の小鹿を鑑賞している。
「うるさいよ! 龍弥」
途端に河南の顔が耳まで真っ赤になった。初めて名前呼びをしてから何ヵ月も経つのに、彼は未だに初々しい反応を返してくれる。とても可愛い。可愛くて勿体ないので、たまにしか名前では呼ばない。
「ふふ、ごめん今のは意地悪だったね。やっぱり抱っこしてくれる? 河南くん」
「うん」
河南は立ち上がり、ふわりと緒方を抱き上げた。
「さっき何考えてたの?」
河南からの質問にどきりとする。素直に答えようか迷っていたら、「教えて」と髪を撫でられる。
「・・祥太のこと」
躊躇いがちに白状すると、河南は「ああ」と目を伏せた。言わない方が良かったか・・、セックス中に考え事をする自体が最低な上に、考えてた事が最悪すぎる。「ごめんね」と謝ろうとして、彼の喋り出しと衝突した。
「あ、ごめんね、なんて言おうとしたの?」
「うん、どんな事を考えてたのかなって」
どうやら怒ってはなさそうだ。ここまで言ったら隠す必要もないので、緒方は素直に口を開く。
「祥太の住んでいる場所が分かった・・かもしれない」
河南の喉仏がごくりと動いた。
「それで? 会いに行きたいの?」
「・・・・いや」
「正直に言って」
河南の優しい声に押され、コクンと頷く。
「でもね、会ってどうしたいのかはなんとも言えなくて。普通に生活してる祥太を見て、ただ自分が安心したいだけなのかもしれないし・・」
曖昧な答えに河南はふぅとため息をついた。
「まだ裕臣さんの事が好きでボロボロになってたらどうする?」
何も言えない。緒方は目を泳がせ、小さな声で「分からない」と呟いた。
「そんなの最低だよね・・ごめんなさい」
抱き締める河南の腕に力が込もったと思ったら、もにゅっと尻を鷲掴みにされる。
「ひっ」
「謝りすぎ、いつかそう言ってくる日が来るんじゃないかってずっと思ってたんだ。いいよ、俺の気持ちはあんたに告白した時と変わってないから、好きにやんなよ」
「河南くんっ、俺は」
不意にシャワーのお湯が肌に広がり、緒方はびくりと身体を震わせた。夢中で話していて、浴室に入ったのにも気が付かなかった。
「あ、びっくりした? 寝る前に綺麗にするでしょ?」
「うん」
辛い辛いと言いながらも、自分は幸せを手に入れた。自分だけが幸せになった。温かく包まれる身体に古傷がチクンと疼く。それはまるで「忘れないで」と自分に訴えているように思えてならなかった。
0
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?
春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。
しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。
美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……?
2021.08.13
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる