一緒に銀行強盗に捕まったおじさんがドMすぎて、縛られて勃起しているのを見つけてしまった話

倉藤

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セフレ編

珈琲屋さんで紅茶を注文するときって、ちょっと緊張するよね。

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 昼時のカフェテリアは混雑し、近場の会社の女性社員や学生で賑わっている。

 そんな人気の洒落た店で、俺はテラス席にて優雅に足を組み直し、紅茶をすする。ふふ、なんかいいな。イギリスの貴族みたいで気分があがる。ドキドキしながら、頼んだ甲斐があったもんだ。

「おつかれさーん」

 トレーの上に甘ったるそうな生クリームたっぷりのチョコレートドリンクを載せて、湯門がきらきら笑顔でやってきた。

 呼び出したのは俺から。

 銀行の職員たちには、ずぇーーーったいに聞かれたくないので、すこし遠めのカフェテリアへ来ている。

「そんで、そんで?」

 ワクワク、ワクワク。

 声に出してるわけじゃないのに、「気になって気になって仕方がない」と顔面から聞こえてくる。

「・・・・・・昨晩、送ったとおりですよ」

 呟くようにこぼし、俺はちみちみと紅茶に口をつけた。

 俺の胃はストレスに弱いんだ。山盛りの生クリームを見ているだけで吐きそうになる。

「いやいやそれはわかったけど、それで、ナゼコマル?」

 宇宙人みたいな言い方をされ、イラッときた。

「考えてもみろよ。相手はおじさんだぞ?! いくら顔が良くても、俺はゲイじゃないんだ。受け入れられなくて当然だろうが・・・・・・」

 湯門はジトッとした目で見てくるが、無視して膝の上の拳を握り締める。

 俺は春太郎のことが好きだと思う。

 昨晩のセックスで思いきり自覚させられた。

 けど、衝撃がデカすぎる。

 こんな胸キュンな気持ちは初めてで、本来ならば心が弾むような恋。

 それなのに、どうしてその相手が可愛らしい女の子じゃないのかと・・・・・・戸惑いを感じるのは男として普通だ。

「好きどうしで付き合わない意味がわからない」

 分からずやの男は、ひたすらにジトっと見つめてくる。

「そんな簡単に言うな。それに、おっさんの気持ちを確認したわけじゃない」

 そうなのだ。

 俺が一人で悶々としているだけで、実際のところ春太郎の気持ちを聞いたわけではない。

 これで告白して振られたら、俺は・・・・・・やだもう、考えただけで恐ろしい。恥ずかしくて引きこもりになりそう。

 だが湯門は呆れたように肩をすくめた。

「わかるわかる、両片思いってやつね」

 聞き慣れない単語に、俺は眉を吊り上げる。

「両片思いぃ~?」
「そうそう。両思いなのにすれ違っちゃう、じれじれのやつだ」
「じれじれ??」

 言ってる意味が解らんが、湯門はすべてを察した目をして哀れんでくる。ムカつく。

 なんだお前は愛の伝道師か?

 いつから変愛マスターになったんだ?

 偉そうなことを言って、ずーーーっと恋人がいないのを知っているんだぞ! ははん!

「でもさ、結局どうしたいんだよ」
「は、え?」

 ふんぞりかえっていると、突然に聞かれ、俺は悩む。

 なんで悩まないといけないんだろうということにも、悩ましくなってきて、だんだんと頭がぐるぐるする。

 その後、ゆっくりと思いの丈を口にしてみると、自分の気持ちがよくわかった。

「・・・・・・セフレのままでいられたら一番楽だ。けど、軽い気持ちでは会いにいっちゃいけない気がする」

 まるで生まれたての綺麗な心をもった春太郎を、俺みたいな男が穢しちゃ駄目なのだ。

 ふぅーんと、湯門は肘をつき悪い顔をする。

「んじゃ、春太郎だっけ? 俺にも貸してよ。そんなに良いなら試してみたくなった。俺って逞しい雑食だからなんでも美味しく頂けるんだよねぇ」
「おいっ、なんでそうなる。春太郎をゲテモノ扱いするなんて許さん! 絶対にやらんぞっ」
「何言ってんだよ。自分のものにする気がないなら、誰に取られても文句はなしだろ?」

 ———ぐっ・・・・・・。

 言い返せなくて、悔しい。でも事実である。

「おいおい、そんな捨てられた子犬みたいな顔すんなよ。大丈夫、大丈夫、取らないから安心しろ。まあ、そうだな、少し離れてみるのはありだと思うぜ? そのあいだに自分の心と向き合ってみな?」

 湯門はそう言い、すちゃと指を額にあてるポーズをすると、トレイを持って立ち上がった。

 いつの間に特大サイズのアレを飲みきっていたんだ。

 ものすごい早さだ。

「昼休憩が終わるから行くよ、独りで慰める用のオモチャが欲しけりゃいつでも言え」
「・・・・・・いらないっすよ」

 不貞腐れてそっぽをむく。

「遠慮すんなよ。春太郎が恋しくて銀行でオナっちゃうくせにさぁ」

 俺は飲み掛けの紅茶を、ブフッと吐き出した。

「な・・・・・・ッ、んで知って!」
「うはははは、マジでやってんのか。ほどほどにしとけよ~」

 なんて奴だ! カマをかけてきたのかッッ!!

「う、うるさい! そんなことするわけないだろ!!」
「はいはい、そうですか。んじゃ、またな」

 湯門は最後に余計な一言を告げ、豪快に笑いながら職場に帰っていった。

 風のように来て、風のように去る。あれでも爽やか王子の異名をもつ爽快な男だ。

 春太郎に出逢うまでは俺だってそうだった。俺も風のように軽い男に戻りたい。

 胸に石ころがいっぱい詰まったみたいにズドーンと重たくて、あーあ、泣きたいよ。

 ———春太郎・・・・・・春太郎。

 会いたい。

 春太郎のお尻を吸いたい。

 乳首を舐めたい。キスしたい。

 ・・・・・・抱きしめたい。

 くそぉ、春太郎と距離を置いてみるだと?

 とてもじゃないが耐えられない。意地を張らないで湯門にオナニー用のオモチャを百個くらい頼んでおけばよかった。

 俺が会いに行かなければ、春太郎はどう思うのだろう。

 寂しいと思ってくれるのだろうか。

 俺を想っておくるみに抱かれ、アナルビーズを尻にずぼずぼと突っ込み、乳首をいじり、自分を慰めるのだろうか。

 うっ、しまった。想像してしまった。

 ・・・・・・・・・・・・。

 田舎の母さんへ———。

 あなたの息子のムスコはムクムクと今日も元気です。

 いやらしく淫らな春太郎の姿をめくるめく頭に思い浮かべ、俺はお手洗いに席を立った。
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