一緒に銀行強盗に捕まったおじさんがドMすぎて、縛られて勃起しているのを見つけてしまった話

倉藤

文字の大きさ
上 下
12 / 18
セフレ編

珈琲屋さんで紅茶を注文するときって、ちょっと緊張するよね。

しおりを挟む
 昼時のカフェテリアは混雑し、近場の会社の女性社員や学生で賑わっている。

 そんな人気の洒落た店で、俺はテラス席にて優雅に足を組み直し、紅茶をすする。ふふ、なんかいいな。イギリスの貴族みたいで気分があがる。ドキドキしながら、頼んだ甲斐があったもんだ。

「おつかれさーん」

 トレーの上に甘ったるそうな生クリームたっぷりのチョコレートドリンクを載せて、湯門がきらきら笑顔でやってきた。

 呼び出したのは俺から。

 銀行の職員たちには、ずぇーーーったいに聞かれたくないので、すこし遠めのカフェテリアへ来ている。

「そんで、そんで?」

 ワクワク、ワクワク。

 声に出してるわけじゃないのに、「気になって気になって仕方がない」と顔面から聞こえてくる。

「・・・・・・昨晩、送ったとおりですよ」

 呟くようにこぼし、俺はちみちみと紅茶に口をつけた。

 俺の胃はストレスに弱いんだ。山盛りの生クリームを見ているだけで吐きそうになる。

「いやいやそれはわかったけど、それで、ナゼコマル?」

 宇宙人みたいな言い方をされ、イラッときた。

「考えてもみろよ。相手はおじさんだぞ?! いくら顔が良くても、俺はゲイじゃないんだ。受け入れられなくて当然だろうが・・・・・・」

 湯門はジトッとした目で見てくるが、無視して膝の上の拳を握り締める。

 俺は春太郎のことが好きだと思う。

 昨晩のセックスで思いきり自覚させられた。

 けど、衝撃がデカすぎる。

 こんな胸キュンな気持ちは初めてで、本来ならば心が弾むような恋。

 それなのに、どうしてその相手が可愛らしい女の子じゃないのかと・・・・・・戸惑いを感じるのは男として普通だ。

「好きどうしで付き合わない意味がわからない」

 分からずやの男は、ひたすらにジトっと見つめてくる。

「そんな簡単に言うな。それに、おっさんの気持ちを確認したわけじゃない」

 そうなのだ。

 俺が一人で悶々としているだけで、実際のところ春太郎の気持ちを聞いたわけではない。

 これで告白して振られたら、俺は・・・・・・やだもう、考えただけで恐ろしい。恥ずかしくて引きこもりになりそう。

 だが湯門は呆れたように肩をすくめた。

「わかるわかる、両片思いってやつね」

 聞き慣れない単語に、俺は眉を吊り上げる。

「両片思いぃ~?」
「そうそう。両思いなのにすれ違っちゃう、じれじれのやつだ」
「じれじれ??」

 言ってる意味が解らんが、湯門はすべてを察した目をして哀れんでくる。ムカつく。

 なんだお前は愛の伝道師か?

 いつから変愛マスターになったんだ?

 偉そうなことを言って、ずーーーっと恋人がいないのを知っているんだぞ! ははん!

「でもさ、結局どうしたいんだよ」
「は、え?」

 ふんぞりかえっていると、突然に聞かれ、俺は悩む。

 なんで悩まないといけないんだろうということにも、悩ましくなってきて、だんだんと頭がぐるぐるする。

 その後、ゆっくりと思いの丈を口にしてみると、自分の気持ちがよくわかった。

「・・・・・・セフレのままでいられたら一番楽だ。けど、軽い気持ちでは会いにいっちゃいけない気がする」

 まるで生まれたての綺麗な心をもった春太郎を、俺みたいな男が穢しちゃ駄目なのだ。

 ふぅーんと、湯門は肘をつき悪い顔をする。

「んじゃ、春太郎だっけ? 俺にも貸してよ。そんなに良いなら試してみたくなった。俺って逞しい雑食だからなんでも美味しく頂けるんだよねぇ」
「おいっ、なんでそうなる。春太郎をゲテモノ扱いするなんて許さん! 絶対にやらんぞっ」
「何言ってんだよ。自分のものにする気がないなら、誰に取られても文句はなしだろ?」

 ———ぐっ・・・・・・。

 言い返せなくて、悔しい。でも事実である。

「おいおい、そんな捨てられた子犬みたいな顔すんなよ。大丈夫、大丈夫、取らないから安心しろ。まあ、そうだな、少し離れてみるのはありだと思うぜ? そのあいだに自分の心と向き合ってみな?」

 湯門はそう言い、すちゃと指を額にあてるポーズをすると、トレイを持って立ち上がった。

 いつの間に特大サイズのアレを飲みきっていたんだ。

 ものすごい早さだ。

「昼休憩が終わるから行くよ、独りで慰める用のオモチャが欲しけりゃいつでも言え」
「・・・・・・いらないっすよ」

 不貞腐れてそっぽをむく。

「遠慮すんなよ。春太郎が恋しくて銀行でオナっちゃうくせにさぁ」

 俺は飲み掛けの紅茶を、ブフッと吐き出した。

「な・・・・・・ッ、んで知って!」
「うはははは、マジでやってんのか。ほどほどにしとけよ~」

 なんて奴だ! カマをかけてきたのかッッ!!

「う、うるさい! そんなことするわけないだろ!!」
「はいはい、そうですか。んじゃ、またな」

 湯門は最後に余計な一言を告げ、豪快に笑いながら職場に帰っていった。

 風のように来て、風のように去る。あれでも爽やか王子の異名をもつ爽快な男だ。

 春太郎に出逢うまでは俺だってそうだった。俺も風のように軽い男に戻りたい。

 胸に石ころがいっぱい詰まったみたいにズドーンと重たくて、あーあ、泣きたいよ。

 ———春太郎・・・・・・春太郎。

 会いたい。

 春太郎のお尻を吸いたい。

 乳首を舐めたい。キスしたい。

 ・・・・・・抱きしめたい。

 くそぉ、春太郎と距離を置いてみるだと?

 とてもじゃないが耐えられない。意地を張らないで湯門にオナニー用のオモチャを百個くらい頼んでおけばよかった。

 俺が会いに行かなければ、春太郎はどう思うのだろう。

 寂しいと思ってくれるのだろうか。

 俺を想っておくるみに抱かれ、アナルビーズを尻にずぼずぼと突っ込み、乳首をいじり、自分を慰めるのだろうか。

 うっ、しまった。想像してしまった。

 ・・・・・・・・・・・・。

 田舎の母さんへ———。

 あなたの息子のムスコはムクムクと今日も元気です。

 いやらしく淫らな春太郎の姿をめくるめく頭に思い浮かべ、俺はお手洗いに席を立った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】国に売られた僕は変態皇帝に育てられ寵妃になった

cyan
BL
陛下が町娘に手を出して生まれたのが僕。後宮で虐げられて生活していた僕は、とうとう他国に売られることになった。 一途なシオンと、皇帝のお話。 ※どんどん変態度が増すので苦手な方はお気を付けください。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

年下くんに堕とされて。

bara
BL
イケメン後輩に堕とされるお話。 3話で本編完結です

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

処理中です...