ラブドール

倉藤

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別れを告げたあとに見た世界

75 夢のなかだけは(2)

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(公爵・・・・・・、公爵の・・・もう挿れて・・・お願い・・・・・・)

『これのことかい?』

 ヴィクトルがようやく口を離し、身体を起こすと、譲の双丘の狭間に肉棒をずしんと乗せる。ぬるりぬるりと擦りつけられ、ヴィクトルの雄蕊も先走りでいたく濡れているとわかり、鼓動が早まった。

(欲しい、はやく)

 熱く太いもので貫いて欲しい。
 指よりも舌よりも、いっぱいにして埋めて欲しい。

(お願い・・・・・・)

 譲は待ちきれずに自分で腰を揺すり、燃えるようなそれを己れの入り口まで誘った。
 ヴィクトルはうっとりとその様子を眺めると面白がり、『自分で挿れてごらん』と譲に許した。
 譲は頷き、再び窄まりのフチに指をかけ、ヴィクトルの雁首をパクりと咥えさせる。

(んぅ)

 ゆっくり指を引き抜くと、入り口の襞はヴィクトルに吸いつき、まとわりつくように蠕動し始めた。
 
『ぁあ・・・気持ち良いよ、譲』

 ヴィクトルが嘆息する。

(ん・・・ンっ・・・良かった、俺もイイよぉ)

 譲は少しずつ全部を呑み込み、小刻みに震える腹を手で押さえた。
 腹の上から臍のあたりに触れてみると、ジワッと快感を感じる箇所がある。
 軽く押さえつけ、「あうっ」と嬌声を漏らす。
 ここまでヴィクトルが来ている。
 だが今ならもっと奥まで行けそうな気がして、息を詰めながら、先端の位置を上に押し込んでみた。

(ぅンン?!)

 瞬間、譲はカッと熱が上がったようになり身体の力が抜ける。

『ここに挿れたいの?』

 一部始終を見ていたヴィクトルが体重を乗せてくる。

(あっ)

 これは駄目なやつだと思った時には、先端が奥を通過していた。

(ああっ?!)

 脳裏で火花が散り、視界が定まらなくなる。
 腹の上から触れるヴィクトルの先端が臍の真裏をゆうに越えてしまった。
 ゆすゆすと揺さぶられると、上下の歯が勝手にガチガチと鳴る。

(やば・・・変なとこはいって・・・・・・)

 生命の危険を感じる程の快感の波が押し寄せる。
 夢の中で分泌される体液のおかげで出し挿れはスムーズに行われ、腹の奥の奥でペニスが嵌め込まれる音が聞こえるたび、ありえない場所で粘液が泡立つ。

(ヒイィぃっっ、死ぬ・・・公爵・・・これ死んじゃうよっ)

 譲は死んじゃいそうだと悲鳴を上げるが、ヴィクトルは譲の背中に覆い被さり耳朶を喰んだ。そして囁く。

『本当に嫌? 私のことが嫌いになった?』

 何故いま、そんなことを訊くのか。
 譲は訳がわからなくなった。
 今の言葉はヴィクトルとのセックスが気持ち良すぎて壊れそうだから言ったのだ。本気の「死んじゃう」じゃないのに。

『ねぇ、譲。譲はどうして行ってしまった?』

 ヴィクトルが荒々しく譲の中を突き上げながら、耳元で問う。

(———そんなことを訊かれても・・・考えられない・・・・・・)

 譲は激しい快感に揉まれていたが、ヴィクトルの体温が段々と背中から失われていくのを感じ、慌てて後ろを振り返った。

(待って)

 譲は薄れゆくヴィクトルの残像に叫んだが、ハッとした。

(待ってって・・・それはおかしいな)

 出て行ったのは譲自身の方なのだから。
 幸せな夢が終わりを告げ、暗い水の中が静寂に包まれた。
 譲は肩と背中に手を回してみる。現実ではない世界では、人の体温は残らないらしい。
 あの発言は自身への自戒なのだろうか。
 理由が理由であろうとも、自分はなんて身勝手なんだろう。
 夢の中のヴィクトルであれば、一つのしがらみも無く愛せた。
 こうして夢の中のヴィクトルと永遠に過ごしていたかった。
 誰もいなくなった暗闇から意識が浮上する。目覚めた譲は、頬を涙で濡らしている。唇を噛んでそれを拭う。
 未だ気持ちの整理はつけられずにいる。ヴィクトルを許せない。ヴィクトルがなんの疑問も持たずに譲の家族を死に追いやったことを受け入れられない。
 でも夢の中で強く求めてしまう程、自分はヴィクトルへの想いを大いに引き摺り続けている。何をしても何があっても消せない気持ち。好きだという想い。そのことだけは明白になった。理屈で片付けられるような感情じゃないと認める。

「公爵・・・お願いだからセレモニー会場に来ちゃ駄目だ。俺のことはもう忘れてくれていいから・・・・・・」

 危険を犯すような選択をヴィクトルはしない。
 だが彼の考えていることは世界の誰にもわからない。
 革命軍に包囲された会場に姿を見せれば流石のヴィクトルも生きて帰れる保証はないだろう。もしも姿を見せたなら、ヴィクトルを革命軍の強襲から守る為に、自分には何ができるだろうか。
 浅はかに外へ飛び出してしまった譲には、ヴィクトルを死地に立たせた責任の一端がある。
 別れを選ぶにしても、ヴィクトルの無事を見届けるまでは、彼のいるロイシアから遠くには離れられない。
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