ラブドール

倉藤

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軟禁調教生活のはじまり

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 曖昧な言い方では信じられない。
 ヴィクトルは譲の太腿のきわどいところを撫で、「どうする?」と視線を寄越した。

(言ったら終わる。言わなくても終わる)

 この状況が物語っている。
 昨晩出してしまった精液は、パンツの中でカサついている。ヴィクトルの手のひらがその場所を撫でたら、わずかな感触の違いに、布ごしでも気づいてしまうかもしれない。

「ごめんなさい。あれは嫌だ・・・・・・っ」

 譲はひっくと嗚咽を上げた。

「ん? わからないよ」
「あ・・・えと・・・・・・」

 声が上手く出ない。言葉にできない。
 自慰をする前に考えた言い訳を、口にすればいいだけなのに。

「譲」

 ヴィクトルは穏やかな口調で名前を呼んだ。

「譲は強情なところが玉に瑕だね。直さないといけないね」
「直す?」
「うん、手荒になるけれど我慢しようね」

 そう言うと、ヴィクトルは譲の手脚の鎖を短く調節した。
 譲の身体はピンと張った糸のように三方向から引き延ばされて磔になる。

「これで更に動けなくなったね。可哀想に。でも怖がらなくていい。たくさん経験すればわかるようになるはずだ」
「何を?」

 恐怖が口から溢れた。
 股間を隠したい。それをされると決まったわけじゃないのに、鈴口に異物が刺さる痛みがフラッシュバックする。
 罰だとかなんだとか言って、何度も口にするこの男のせいで、忘れることができないのだ。
 譲の質問にヴィクトルは口元に笑みを作った。
 ヴィクトルの手で股間の形を辿られ、腰が魚みたいに弓なりに跳ねる。

「っ、ひいっ」
「暴れなくていい。大丈夫。今は痛くしない。私の手で高められる快感を譲にわかって欲しいんだよ。きっと入浴時の一回だけじゃ足りなかったんだよね。気づいてあげられなくてすまなかった。そういう時は遠慮なく私に言うといい」

 譲はこれからされることを本能的に察した。
 ヴィクトルは布ごしに縮こまったペニスを揉み込む。ゾクゾクする。でもこれは恐ろしさからくるもので、快感じゃない。

「譲、キスをしようか」

 引き攣った譲の頬に手が添えられる。
 譲はきゅっと唇を引き結んだまま、ヴィクトルを見つめた。
 頷かなくても拒否権は無いのだ。
 噛み締められ震える唇に、ヴィクトルの柔らかな唇が重なる。
 顎を支える手は綿を掴むように優しい。唇を数回啄まれると舌で舐められ、歯列を軽くノックされる。
 譲は催促に従い、ヴィクトルの舌を受け入れた。そうするしかなかったからなのだが、湿った舌で口腔内を探られるとぞくりとして腰が浮いた。
 
(どうして、気持ちいい・・・・・・)

 その証拠に、項垂れていたペニスがやんわりと下着を押し上げ始めたのが自分でわかる。

「窮屈そうだから出してあげよう」

 ヴィクトルは変化に気がつき、ゆるく勃起した譲のそれを取り出して握り込んだ。

「ぅあっ!」

 全身が強張る。急所をゆるゆると扱かれ、ハッハッと息が上がった。けれど譲の男の部分は正直に反応して、とろとろと先走りを溢した。

「いいよ。我慢しなくていい」
「んっ、ンン」

 顎を抑えられ、ちゅると舌を吸い上げられると、全身に痺れが走る。

「ふ、あ、あ、出るっ」

 鈴口を親指で抉られ、一気に高みに押し上げられた。
 噴き出した精液が股を濡らし、泣きたいような気持ちになる。

「良い子だね。この前は私の前で譲に自慰をさせたけれど約束を変えよう。譲は私以外の愛撫で達してはならない。それは無論、譲自身で触ってもいけない」
「わかった・・・もうわかりましたからっ、ごめんなさいっ」
「うん。譲はお利口だから理解してくれただろう。でも私が不安なんだ。心配性の私を許しておくれ」

 ヴィクトルは手を上半身に這わせる。腹を直に撫でられたかと思うと、着衣にナイフを入れられ、譲は目を剥いた。

「なっ、いやだっ」
「ごめんね。怪我をするから暴れない方がいい。脱がした後に拘束すれば良かったんだけど、私がうっかりしていた」
「ひ・・・っ・・・・・・」
「下もね。動かないで、大事なところを切ってしまったら大変だ」

 これらの言葉に他意はない、ヴィクトルはザクザクと上下の服に切り目を入れて行く。
 けれど手元が狂えば・・・・・・、簡単に譲へ苦痛を与えられる。
 譲は息を止めて、全身に汗を滲ませた。
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