ラブドール

倉藤

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軟禁調教生活のはじまり

23 楽しい時間の後には

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 その夜。
 譲はヴィクトルと夕食を取り、入浴をした。

「おいで」

 と、湯船の中で後ろ抱きに座らされる。立ち上がれず拒否権がないために、されるがままになった。

「大丈夫、譲が抵抗しなければ怖いことは起きない。私に触れられる感覚に慣れなさい。犬が好きな人間に頭を撫でられて、心地よさに目を細めるのと同じ。私に触られたら気持ち良い。覚えるんだ譲。悪いことじゃない」

 譲はガチガチと歯を鳴らしながら、じっと耐える。
 ヴィクトルの口調は優しいが、痛みを与えられるよりもずっと怖い。強引だ。

「ゆっくり慣らしてあげよう」
「怒ってるのか?」
「妬いている。今日はとても楽しそうだったね」
「犬だぞ?」
「譲も似たようなものだろう。譲は私のお人形だ。私以外と遊んで喜んでいる姿を見ると胸が痛む。掻きむしりたくなる。壊してしまいたくなるよ」

 後ろから抱き締めているヴィクトルの右手と左手が、喉笛と鳩尾の位置にあった。
 壊すつもりで力を込めて掴まれたら、譲の身体はひとたまりもない。
 うなじに当たるのは唇の感触。

「ひっ」
「譲は覚えないといけない。どうか私を悲しませないでおくれ」

 ヴィクトルの生温かい舌が背中を滑った。
 喉元にあった指は譲の唇を割り、口の中に入り込んでくる。ぐっと押さえつけられた腰には、男である象徴が固くなって触れていて、ヴィクトルがその気になれば、いつでも譲を犯せるんだということを示されているようだった。

「ン、んあ」

 譲は口蓋をくすぐられて喘いだ。口の中がむず痒い。指は上顎の裏を撫でながら柔らかい喉奥に進む。喉から嗚咽が漏れ、強張って締まった。何度も繰り返されると、涙が溢れて意識が遠のいてくる。

「ぅ、く、苦しい・・・・・・」

 ヴィクトルはうなじを甘噛みしながら、指を引き抜いた。

「ならば私の指をしゃぶりなさい」

 責苦から解放された譲は言う通りにする。指先に吸いつき、頭の中でキャディバーに見立てて舌を絡めた。
 酸欠の頭で無心に想像していると、甘い味がしてくるような錯覚がする。

「美味しいかい?」

 ヴィクトルの声が上機嫌になる。

「は、い、あまい」
「そうか。それは良かった。少しだけ譲の身体に触ってもいいかな?」
「・・・はい」

 今更な質問だが譲は頷いた。とっくに頭は回っていなかった。

「うん。良い子だ。その調子だよ。ご褒美に触って欲しそうだった胸を触ってあげようね」

 ヴィクトルは譲の乳首を乳暈ごと摘んだ。

「ひあっ」
「ほら怖くない」

 くびり出すようにぐりぐりと捏ねられ、乳頭が尖り始める。

「それからこっちも」

 ヴィクトルの手が腰の下に伸びた。

「手当ての時に薬を塗ってやった時は、まだ硬い蕾のようだったのに、乱暴に玩具をねじ込まれて可哀想だったね。痛かっただろう」
「っ、あ、言うな・・・っ、やめろ」

 譲は猪羽教授にされた陵辱行為を思い出してしまった。
 股を閉じて身体を丸めようとすると、譲の背中をヴィクトルが宥めさすった。

「けれど、私を受け入れるのに大事な器官だ。痛くないように柔らかくして慣らしてあげないとね」
「ぅ・・・っう、う」

 乳首を転がされながら尻たぶを揉まれる。
 与えられた刺激が全て気持ち良いわけではないが、むず痒さの中に一掬いの快感があった。まだ曖昧で、その一瞬だけ腰が痺れる程度だ。
 しかし感じてしまうと追い求めたくなる。快感を掴もうとして気持ち良さを手繰ってしまう。 
 はしたないと思いながら、惨めに思いながら、譲が情けなさに目を瞑ると、ヴィクトルの指先が閉じた後孔を突いた。

「は、そこは・・・・・・」

 さすがに息を呑んだ。
 ヴィクトルは窄まりのひだのところを、指先で弄る。だがそれだけで、くるくる、すりすりと穴の周りだけを撫でている。
 中へは侵入してこずに、譲の後孔を揉みほぐす指。
 焦ったくて、譲は懸命に堪えたが、ついに腰が浮いた。

「んっ、ん、っ、ん、んううう~~っっ」

 悲鳴のように悶える声を両手で押さえる。
 どうされるべきなのか、どうして欲しいのかわからない。
 この拷問じみた焦ったさを解消するのに、何が必要であるのか、譲は知らなかった。

「助けて、頼む・・・、やだ、もう嫌だっ」
「何がどう嫌なんだい? 泣きじゃくっているだけじゃ伝わらないよ」
「知らないっ・・・でもつらい、ここがつらい」

 譲はヴィクトルに膨らんだペニスを掴んで見せた。

「出したいんだ」
「ペニスが触っていないのに勃起しているね。気持ち良かったのかな?」
「気持ち良かったのかも・・・しれない」

 認めたくなくても認めるしかなくて、か細い声で答える譲にヴィクトルは嬉しそうに目を細める。

「擦っていいよ。見ててあげるから射精しなさい」

 顔から火が出るほど恥ずかしい。
 湯に揺れているペニスはガチガチで、興奮して密かに先走りが滲み出ていた。
 ペニスをしごくと、熱が溜まる感覚がする。
 ヴィクトルに股を押さえつけられているので、舐める視線が降り注ぎ、譲の高ぶりをさらに煽った。
 やがて熱が狭い空洞を上がってこようとする。

「ぅうっ、はぁ・・・っ、ぁああ!」

 譲は腰を痙攣させ、湯船に白濁を放った。
 吐精のたびに跳ねる腰を抱き、ヴィクトルが譲の頭を撫でる。

「可愛い譲。私が見ていない時に自慰をしては駄目だよ。もしも命令を破ったらペニスの穴に器具を挿れる。わかったね?」
「・・・・・・っ、はい、わかりました」

 近いうちにきっとヴィクトルのもので貫かれる日がくるんじゃないか。
 男に暴かれたくない柔らかい内側まで明け渡してしまった気持ちになった。
 呼吸を弾ませたまま、譲は両手で顔を覆った。
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