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軟禁調教生活のはじまり
20 悪夢
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譲は目覚めると、自分の顔を両手で覆っていた。
大量に汗をかいている。
寝起き特有の気だるさが残るが、意識ははっきりと覚醒していた。
どれだけ眠ってたのか。目を閉じてすぐだったようにも思う。
「夢?」
譲は呟いた。
よく見ると拘束が解かれている。
「夢じゃないよ。おはよう、譲、調子はどうだい? 熱を測ってみようか」
「公爵・・・っ?!」
顔を上げると、ヴィクトルが硝子の体温計を手に取っている場面が目に映った。
「悪夢を見たのかい?」
あれが現実なら悪夢だった方がマシだった。
否定と肯定のどちらの意味にも取れるように、譲は曖昧に顎を引いた。
「怖い夢を見たのは熱の影響かもしれない。さて、熱を測るには先にシャツを脱がないとだね」
ヴィクトルが気に留めずに話を続けてくれ、ホッとする。
譲はシャツのボタンを外しにかかり、ふと手を止めた。
ヴィクトルにやって貰うのが正解なのではと思ったのだ。
「どうしたの?」
「い・・・いえ、ごめんなさい」
杞憂だった。
首を傾げられ、急いでボタンを外してゆく。
指先が自分のものではない顔をして、スムーズに動いてくれない。シャツの前をはだけるだけで、もたもたと苦戦する譲を見兼ね、上から大きな手が添えられた。
「やってあげよう」
「あ・・・」
ヴィクトルは小さな子ども相手に看病をするみたいに、譲に安心させるような微笑みを向ける。
「ありがとう、ございます」
譲は頼りない声で礼を言う。
「いいんだよ。私は譲のことなら何でもしてあげたいと思っているんだから」
なんて返事をしたらいいのか、言葉が出てこない。したくないんじゃなく、正しい答えを導き出せない。
目を伏せて俯いていると、ヴィクトルはあっという間にボタンを外して脇の下にひんやりした硝子棒を挟んだ。
「ぅあっ」
「冷たかっただろう。少しだけ我慢してくれ」
「別に何でもない、びっくりしただけ」
脇に挟んだ体温計は譲の体温と同化し、ぬるくなり始めていた。
先ほど驚いて胸を騒がせてしまったせいで、いつも以上に過敏になっているのかもしれなかった。
測定が終わるのを待つ間、腕と体温計を押さえるヴィクトルの手。近い距離でじっとしていられると、出なくてもいい反応が浮きぼりになり、顕著になってくる。
「寒いかな?」
ヴィクトルは鳥肌が立った二の腕をさすった。
神経の末端だけを撫でて行くような、あまりにも優しい手つきで、毛穴が逆立つ。ぞわぞわと感じるのが気持ち悪さじゃないことに、譲は唇を噛んだ。
「平気だから」
「そうかい? もういいかな?」
ヴィクトルは体温計をくるりと回し、目盛りを覗き込む。
「・・・ひ、ぅっ」
体温のある人の手が脇に触れている。親指が乳頭を掠める。
熱を測るだけの行為なのに、自分は何を見苦しく悶えているんだろう。
土の下に埋まった木の根っこみたいに、生皮一枚の下で伝え広がってゆく熱っぽい痺れ。
こうなっていることをヴィクトルに知られてはいけない。嫌だ怖いと反抗的な感情を抱いておいて、とんだ恥晒しだ。
けれど尖ってしまった乳首は隠しようがなかった。
「譲はとても敏感だね。気持ちいいなら触ってあげようか?」
屈辱感で心が捻り潰される。
消えてしまいたい。今すぐに透明人間にでもなって、ヴィクトルの視界から消えたい。
「違う・・・やめてくれ」
譲が腕で胸を庇うと、ヴィクトルは手首を掴んで胸から剥がし、万歳の姿勢になった譲を見下ろした。
ぽとりと、体温計がシーツの上に落下する。
ヴィクトルはチラリと視線を下げ、目盛りを見て発熱の有無を確認した。
「熱は下がっているね」
「良かったです・・・」
「なら、少し遊んでも構わないかな?」
「え?」
大量に汗をかいている。
寝起き特有の気だるさが残るが、意識ははっきりと覚醒していた。
どれだけ眠ってたのか。目を閉じてすぐだったようにも思う。
「夢?」
譲は呟いた。
よく見ると拘束が解かれている。
「夢じゃないよ。おはよう、譲、調子はどうだい? 熱を測ってみようか」
「公爵・・・っ?!」
顔を上げると、ヴィクトルが硝子の体温計を手に取っている場面が目に映った。
「悪夢を見たのかい?」
あれが現実なら悪夢だった方がマシだった。
否定と肯定のどちらの意味にも取れるように、譲は曖昧に顎を引いた。
「怖い夢を見たのは熱の影響かもしれない。さて、熱を測るには先にシャツを脱がないとだね」
ヴィクトルが気に留めずに話を続けてくれ、ホッとする。
譲はシャツのボタンを外しにかかり、ふと手を止めた。
ヴィクトルにやって貰うのが正解なのではと思ったのだ。
「どうしたの?」
「い・・・いえ、ごめんなさい」
杞憂だった。
首を傾げられ、急いでボタンを外してゆく。
指先が自分のものではない顔をして、スムーズに動いてくれない。シャツの前をはだけるだけで、もたもたと苦戦する譲を見兼ね、上から大きな手が添えられた。
「やってあげよう」
「あ・・・」
ヴィクトルは小さな子ども相手に看病をするみたいに、譲に安心させるような微笑みを向ける。
「ありがとう、ございます」
譲は頼りない声で礼を言う。
「いいんだよ。私は譲のことなら何でもしてあげたいと思っているんだから」
なんて返事をしたらいいのか、言葉が出てこない。したくないんじゃなく、正しい答えを導き出せない。
目を伏せて俯いていると、ヴィクトルはあっという間にボタンを外して脇の下にひんやりした硝子棒を挟んだ。
「ぅあっ」
「冷たかっただろう。少しだけ我慢してくれ」
「別に何でもない、びっくりしただけ」
脇に挟んだ体温計は譲の体温と同化し、ぬるくなり始めていた。
先ほど驚いて胸を騒がせてしまったせいで、いつも以上に過敏になっているのかもしれなかった。
測定が終わるのを待つ間、腕と体温計を押さえるヴィクトルの手。近い距離でじっとしていられると、出なくてもいい反応が浮きぼりになり、顕著になってくる。
「寒いかな?」
ヴィクトルは鳥肌が立った二の腕をさすった。
神経の末端だけを撫でて行くような、あまりにも優しい手つきで、毛穴が逆立つ。ぞわぞわと感じるのが気持ち悪さじゃないことに、譲は唇を噛んだ。
「平気だから」
「そうかい? もういいかな?」
ヴィクトルは体温計をくるりと回し、目盛りを覗き込む。
「・・・ひ、ぅっ」
体温のある人の手が脇に触れている。親指が乳頭を掠める。
熱を測るだけの行為なのに、自分は何を見苦しく悶えているんだろう。
土の下に埋まった木の根っこみたいに、生皮一枚の下で伝え広がってゆく熱っぽい痺れ。
こうなっていることをヴィクトルに知られてはいけない。嫌だ怖いと反抗的な感情を抱いておいて、とんだ恥晒しだ。
けれど尖ってしまった乳首は隠しようがなかった。
「譲はとても敏感だね。気持ちいいなら触ってあげようか?」
屈辱感で心が捻り潰される。
消えてしまいたい。今すぐに透明人間にでもなって、ヴィクトルの視界から消えたい。
「違う・・・やめてくれ」
譲が腕で胸を庇うと、ヴィクトルは手首を掴んで胸から剥がし、万歳の姿勢になった譲を見下ろした。
ぽとりと、体温計がシーツの上に落下する。
ヴィクトルはチラリと視線を下げ、目盛りを見て発熱の有無を確認した。
「熱は下がっているね」
「良かったです・・・」
「なら、少し遊んでも構わないかな?」
「え?」
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