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絡まる
story.24 恋人(鬼崎)
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———けれど俺は戒めを破った。蓮太郎が、というのは言いわけに過ぎない。最終的に受け入れたのは自分だから。
「んぐく・・・ううう・・・」
「いいよ、蓮太郎。気持ちいい」
ぽろぽろと涙を流す蓮太郎の目尻を拭う。そのまま後頭部に手を回して固定した。
次にされることを察したように、潤んだ瞳が上に向く。
「吐いたら、お仕置きするよ」
命令を伝えると、わざと吐き気を催すように喉を突いてやる。喉奥に異物が混入すれば、吐き出そうとするのが人体の正常な反応。
蓮太郎はえずき音を押し殺して耐えているが、口の端には泡になった涎と吐瀉物が溜まっている。
俺はたまらずに可哀そうな蓮太郎の髪を撫でた。ゾクゾクと背筋が粟立つのが止まらない。今のところは殴る蹴るなどの暴力は抑えられている。その代わりに蓮太郎が苦痛を感じるであろう行為を繰り返していた。
羞恥や屈辱に歪む顔には酷く興奮させられるのだ。
「いい子だ、出してあげるから全て飲みなさい」
たっぷりと口腔内に白濁を放ってから、ペニスを引き抜く。完全に飲み込めるまで、蓮太郎はほとんど声を漏らさず頑張っていた。
「お尻を向けて尻尾を見せて」
続けて告げた。
「・・・・・・ん、ぐ、わ、わん」
まだ苦しそうな声。それでも許可しているのは、「わん」の返事のみ。こんな俺に好かれるために従順なペットを懸命に演じる蓮太郎。なんて愚かで可愛い恋人。
「逃げてもいいんだぞ?」
「ん、ん・・・」
意地悪く、俺はセックスのたびに何度もこれを訊ねる。蓮太郎は首を振って否定し、裸に剥かれ首輪一つにされた身体で四つん這いの姿勢を取った。
命令どおりに尻を向けた蓮太郎は、アナルに挿さった尻尾を揺らすように尻を振る。
———嬉しいか。
可哀そうに。
健気にご機嫌を取ろうとする蓮太郎を、俺は痛めつけてやりたいと思っている。それを知ったらどう感じるだろう。今の率直な思いだと教えてやったら、どんな顔をするだろうか。
「あうっ」
玩具を乱暴に引き抜いたせいで蓮太郎の腰が反る。
電動式バイブにふさふさの尻尾のイミテーションがくっついた代物。
俺は玩具を放り、赤みを帯びてぽってりと腫れてしまった窄まりに指を滑り込ませ、具合をかき混ぜながらローションを追加で注ぎ入れた。蓮太郎は冷たかったのか、「んくっ」と喉を鳴らし、粘膜を擦られて捏ねられる快感に震えていた。
そうなると、自然と頭を下げて前傾姿勢になるのが癖で、腰を高く上げて尻を突き出した格好になる。
「はしたないポーズだね蓮太郎。俺だったら恥ずかしくて死んでもしたくないね。でも下品な犬は嫌いじゃないよ」
快感に耐えている蓮太郎の頬が真っ赤に染まった。
———すごくいい。汚い欲望が満たされる。すぐに指を抜き、ドロドロに解れたそこに悦びに勃起したペニスを押し込む。
この日も俺は蓮太郎を犯した。
合意の上だが、その表現がぴったりだった。
「ごめんな、蓮太郎」
声をかけても返答がない。見たとおり、肉体と心の両方が疲弊しているのだろう。俺は目を閉じたままでいる蓮太郎の身体を丁寧にぬぐう。行為が終わってからの、根深い罪悪感に包まれるまでが一連のセットだ。
性癖を受け入れてもらって楽になったのかと、己れの胸に問いかけても、いったいこれのどこが正しいのかわからない。
普通でありたい。
ただ、街中に溢れる恋人どうしのように普通で・・・。
何をどこからやり直せば、元に戻れるだろうか。
生まれ落ちる場所を子どもは選べないから、サンディを拾って飼いたいと言わなければよかったのか? だが、サンディと出逢わない人生は考えられないし、出逢ってしまったのなら拾わないという選択肢はあり得なかった。
そうしたなら、俺は絶対にあの日も散歩に行った。
サンディを連れて、母親と義弟と遭遇する道を歩むだろう。
確実に、不可避な未来。しかしだからこそ、その先に待っている蓮太郎と人生が交わった。
手に入れた幸せを自分で汚し傷つけながら、俺は生きていくしかないのだ。
それが俺なりの愛し方であると認めずしてなんと呼ぶ?
たとえ間違っていても愛だと言ってやらなければ、あまりにも俺が惨めで、可哀想そうだ。
蓮太郎が憐れで・・・可哀想だ・・・・・・。
最低な俺を曝け出して蓮太郎が幸せになれるなら。
「鬼崎さん、大丈夫? すごくしんどそうに見えるけど、今日は疲れてた?」
気づくと、ベッドに横になっていた蓮太郎が不安そうに俺の顔を見つめていた。
「いや、平気だよ」
俺は蓮太郎の髪にキスを落として抱き寄せ、頭の下の枕と自分の腕を入れ替える。
「もう寝よう、おやすみ蓮太郎」
「うん、おやすみ」
酷使された自分の身体よりも、俺の心配をする蓮太郎。
一途で、愚かで、可愛い恋人。
こんな飾りのような首輪ではなく、いっそ全身に鎖を繋いで、腕の中に閉じ込めて、永遠に俺だけの世界から出られないようにしてやりたい。
俺だけしかいない世界で、死ぬまで俺だけを愛してくれるように。
「んぐく・・・ううう・・・」
「いいよ、蓮太郎。気持ちいい」
ぽろぽろと涙を流す蓮太郎の目尻を拭う。そのまま後頭部に手を回して固定した。
次にされることを察したように、潤んだ瞳が上に向く。
「吐いたら、お仕置きするよ」
命令を伝えると、わざと吐き気を催すように喉を突いてやる。喉奥に異物が混入すれば、吐き出そうとするのが人体の正常な反応。
蓮太郎はえずき音を押し殺して耐えているが、口の端には泡になった涎と吐瀉物が溜まっている。
俺はたまらずに可哀そうな蓮太郎の髪を撫でた。ゾクゾクと背筋が粟立つのが止まらない。今のところは殴る蹴るなどの暴力は抑えられている。その代わりに蓮太郎が苦痛を感じるであろう行為を繰り返していた。
羞恥や屈辱に歪む顔には酷く興奮させられるのだ。
「いい子だ、出してあげるから全て飲みなさい」
たっぷりと口腔内に白濁を放ってから、ペニスを引き抜く。完全に飲み込めるまで、蓮太郎はほとんど声を漏らさず頑張っていた。
「お尻を向けて尻尾を見せて」
続けて告げた。
「・・・・・・ん、ぐ、わ、わん」
まだ苦しそうな声。それでも許可しているのは、「わん」の返事のみ。こんな俺に好かれるために従順なペットを懸命に演じる蓮太郎。なんて愚かで可愛い恋人。
「逃げてもいいんだぞ?」
「ん、ん・・・」
意地悪く、俺はセックスのたびに何度もこれを訊ねる。蓮太郎は首を振って否定し、裸に剥かれ首輪一つにされた身体で四つん這いの姿勢を取った。
命令どおりに尻を向けた蓮太郎は、アナルに挿さった尻尾を揺らすように尻を振る。
———嬉しいか。
可哀そうに。
健気にご機嫌を取ろうとする蓮太郎を、俺は痛めつけてやりたいと思っている。それを知ったらどう感じるだろう。今の率直な思いだと教えてやったら、どんな顔をするだろうか。
「あうっ」
玩具を乱暴に引き抜いたせいで蓮太郎の腰が反る。
電動式バイブにふさふさの尻尾のイミテーションがくっついた代物。
俺は玩具を放り、赤みを帯びてぽってりと腫れてしまった窄まりに指を滑り込ませ、具合をかき混ぜながらローションを追加で注ぎ入れた。蓮太郎は冷たかったのか、「んくっ」と喉を鳴らし、粘膜を擦られて捏ねられる快感に震えていた。
そうなると、自然と頭を下げて前傾姿勢になるのが癖で、腰を高く上げて尻を突き出した格好になる。
「はしたないポーズだね蓮太郎。俺だったら恥ずかしくて死んでもしたくないね。でも下品な犬は嫌いじゃないよ」
快感に耐えている蓮太郎の頬が真っ赤に染まった。
———すごくいい。汚い欲望が満たされる。すぐに指を抜き、ドロドロに解れたそこに悦びに勃起したペニスを押し込む。
この日も俺は蓮太郎を犯した。
合意の上だが、その表現がぴったりだった。
「ごめんな、蓮太郎」
声をかけても返答がない。見たとおり、肉体と心の両方が疲弊しているのだろう。俺は目を閉じたままでいる蓮太郎の身体を丁寧にぬぐう。行為が終わってからの、根深い罪悪感に包まれるまでが一連のセットだ。
性癖を受け入れてもらって楽になったのかと、己れの胸に問いかけても、いったいこれのどこが正しいのかわからない。
普通でありたい。
ただ、街中に溢れる恋人どうしのように普通で・・・。
何をどこからやり直せば、元に戻れるだろうか。
生まれ落ちる場所を子どもは選べないから、サンディを拾って飼いたいと言わなければよかったのか? だが、サンディと出逢わない人生は考えられないし、出逢ってしまったのなら拾わないという選択肢はあり得なかった。
そうしたなら、俺は絶対にあの日も散歩に行った。
サンディを連れて、母親と義弟と遭遇する道を歩むだろう。
確実に、不可避な未来。しかしだからこそ、その先に待っている蓮太郎と人生が交わった。
手に入れた幸せを自分で汚し傷つけながら、俺は生きていくしかないのだ。
それが俺なりの愛し方であると認めずしてなんと呼ぶ?
たとえ間違っていても愛だと言ってやらなければ、あまりにも俺が惨めで、可哀想そうだ。
蓮太郎が憐れで・・・可哀想だ・・・・・・。
最低な俺を曝け出して蓮太郎が幸せになれるなら。
「鬼崎さん、大丈夫? すごくしんどそうに見えるけど、今日は疲れてた?」
気づくと、ベッドに横になっていた蓮太郎が不安そうに俺の顔を見つめていた。
「いや、平気だよ」
俺は蓮太郎の髪にキスを落として抱き寄せ、頭の下の枕と自分の腕を入れ替える。
「もう寝よう、おやすみ蓮太郎」
「うん、おやすみ」
酷使された自分の身体よりも、俺の心配をする蓮太郎。
一途で、愚かで、可愛い恋人。
こんな飾りのような首輪ではなく、いっそ全身に鎖を繋いで、腕の中に閉じ込めて、永遠に俺だけの世界から出られないようにしてやりたい。
俺だけしかいない世界で、死ぬまで俺だけを愛してくれるように。
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