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第三章
きっと幸せなエピローグ
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「おいっ、これは一体どういうことだよ!」
季節が巡り春うららかな晴れ空に、伊津の金切り声がこだまする。
「そう怒らないでくださいよ~姐さん」
「うるせぇっ、丹野、いっぺん死ぬか?」
「あひいっ、いてててっ」
「やめなって向葵ちゃん。すっごく似合ってるよ、その白無垢」
丹野の首にヘッドロックをキメていた伊津は唸りながら振り向いた。白粉をはたかれ紅をつけられた顔が、闘犬のごとき荒々しい形相になっている。
「ああ? 綾都、てめぇの仕業だったのか」
「んなわけないでしょ。それはそれで面白そうだけど。本堂くんが今日のためにわざわざ仕立ててくれたんだよ」
「な、嘘だろおい、本堂が?」
「あっれれぇ、怒らないのかなぁ?」
谷渕がニヤニヤする。伊津は眉をひくつかせて睨んだ。
「あいつが来たら悪ふざけにも程があるって言ってやるさっ」
「ほほう、楽しみだなぁ」
「ちっ」
解散に追い込まれた竜善組。新しく立ち上げられた本堂組。組長に就任した本堂は騒動に伴ったゴタゴタを収める責務があり、全てがようやく片付いたと、連絡と共に丹野を寄越してきたのが昨日のこと。
晴れやかな今日の日に、本堂は伊津を迎えにきてくれるという。
その時、ふと、窓の外を流れるように落ちていく影を目に捉えた。
「天気雨?」
伊津は外を覗く。
「桜っすよ。今日はちょっと風が強いっすから、近くの木から飛ばされてきたんだと思います。桜、折角咲いたばかりなのに、あっという間に散っちゃいますかねぇ・・・。儚いっすねぇ」
「ポンコツのくせして、わかったようにしみじみしてんじゃねぇよっ」
伊津は笑いながら丹野を肘でどついた。
「いてっ、本当に酷いっす!」
「まぁ、まぁ、そんなに暴れたら本堂くんに見せる前に白無垢が台無しになっちゃうんじゃない?」
「それでいいんだよっ」
そう言い返して頬を染めたが、本堂の名前を出されると握った拳が出しにくくなる。
谷渕のしたり顔がムカつく。
「あっ、姐さん! 組長が到着しましたっすー!」
「ウルセェ! こんな田舎で組長とか言ってんなっ、噂になるだろうがっ」
伊津が大慌てで声を張り上げると、黒塗りの車が道路脇に止まった。
三つ揃えの高級スーツに身を包んだ本堂が降りてきて、肩についた桜の花びらを指で優しく摘んだ。黒ずくめのパーカー姿とは打って変わって見違える。それから伊津の白無垢姿に気がつき、花びらをそっと風に飛ばした。
「お待たせ伊津さん。やっぱり思った以上に似合う。俺の嫁さんは世界一綺麗だな」
「お前・・・おう」
好きな男に褒められたら反撃できない。
伊津はたじたじになり、眩しい男の姿に目を細めた。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
季節が巡り春うららかな晴れ空に、伊津の金切り声がこだまする。
「そう怒らないでくださいよ~姐さん」
「うるせぇっ、丹野、いっぺん死ぬか?」
「あひいっ、いてててっ」
「やめなって向葵ちゃん。すっごく似合ってるよ、その白無垢」
丹野の首にヘッドロックをキメていた伊津は唸りながら振り向いた。白粉をはたかれ紅をつけられた顔が、闘犬のごとき荒々しい形相になっている。
「ああ? 綾都、てめぇの仕業だったのか」
「んなわけないでしょ。それはそれで面白そうだけど。本堂くんが今日のためにわざわざ仕立ててくれたんだよ」
「な、嘘だろおい、本堂が?」
「あっれれぇ、怒らないのかなぁ?」
谷渕がニヤニヤする。伊津は眉をひくつかせて睨んだ。
「あいつが来たら悪ふざけにも程があるって言ってやるさっ」
「ほほう、楽しみだなぁ」
「ちっ」
解散に追い込まれた竜善組。新しく立ち上げられた本堂組。組長に就任した本堂は騒動に伴ったゴタゴタを収める責務があり、全てがようやく片付いたと、連絡と共に丹野を寄越してきたのが昨日のこと。
晴れやかな今日の日に、本堂は伊津を迎えにきてくれるという。
その時、ふと、窓の外を流れるように落ちていく影を目に捉えた。
「天気雨?」
伊津は外を覗く。
「桜っすよ。今日はちょっと風が強いっすから、近くの木から飛ばされてきたんだと思います。桜、折角咲いたばかりなのに、あっという間に散っちゃいますかねぇ・・・。儚いっすねぇ」
「ポンコツのくせして、わかったようにしみじみしてんじゃねぇよっ」
伊津は笑いながら丹野を肘でどついた。
「いてっ、本当に酷いっす!」
「まぁ、まぁ、そんなに暴れたら本堂くんに見せる前に白無垢が台無しになっちゃうんじゃない?」
「それでいいんだよっ」
そう言い返して頬を染めたが、本堂の名前を出されると握った拳が出しにくくなる。
谷渕のしたり顔がムカつく。
「あっ、姐さん! 組長が到着しましたっすー!」
「ウルセェ! こんな田舎で組長とか言ってんなっ、噂になるだろうがっ」
伊津が大慌てで声を張り上げると、黒塗りの車が道路脇に止まった。
三つ揃えの高級スーツに身を包んだ本堂が降りてきて、肩についた桜の花びらを指で優しく摘んだ。黒ずくめのパーカー姿とは打って変わって見違える。それから伊津の白無垢姿に気がつき、花びらをそっと風に飛ばした。
「お待たせ伊津さん。やっぱり思った以上に似合う。俺の嫁さんは世界一綺麗だな」
「お前・・・おう」
好きな男に褒められたら反撃できない。
伊津はたじたじになり、眩しい男の姿に目を細めた。
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最後までお読みいただきありがとうございました。
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すごく好きですこのお話
思わず感想を送ってしまいたくなるほどに
あすか様
感想ありがとうございます。好きだと言っていただけてめちゃくちゃ嬉しいです。励みになります!
公開してからしばらく経ちますが読んでくれる方がいることに感謝です!