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第三章
お前のことが大好きだ
しおりを挟む「っ!!??」
無意識に呟いてしまった声が静先輩に聞こえたのか、思い切り肩を掴まれてベッドに押し倒された。
「弥桜っ、自分が何言ってるかわかってるのか‼︎ 本気でそんなこと思ってるなら、絶対に許さない」
静先輩の吐き出すような言葉と共に、ぎりぎりと掴まれた肩の力が強くなっていく。
「絶対・・・絶対にだ・・・・・・」
僕を凝視する目が、いつもの優しい静先輩じゃなかった。
何かにすごく怯えたような、今まで見たことない静先輩の気迫に何も言葉を返せない。
「いいか、お前が勝手に死ぬことは俺が許さない」
肩を掴んでいた静先輩の手が、首に移動してきてゆっくり力を込めた。
「・・・ぅぁ、かはっ・・・・・・」
「もう二度と勝手に死ぬなんて言うんじゃないぞ」
番避けの上から首を絞められて、どんどん息が苦しくなってくる。
今、まさに静先輩に僕の生死を握られてる。
もう僕の命は僕のものじゃないんだ。
完全に静先輩の手の中で、今このまま静先輩の気持ち一つで僕を殺せる。
不思議とその感覚に恐怖はなかった。
それくらい今の僕は静先輩に溺れきっていた。
もう息が出来ないくらい苦しくて返事をする余裕なんかない。
何だか意識もぼんやりしてきた。
本当にこのまま殺されるかもしれない。
そう思ったところで、完全に意識は途切れた。
次に気がついた時、部屋に静先輩の姿はなく発情期もまだ全然収まってなかった。
陽の光で明け方だと言うことはわかったけど、あれから何日経ったのかも、発情がどうしてこんな中途半端な状態なのかも、どうして静先輩がいないのかも何もわからない。
自宅だとしてもこんな薄暗い部屋に一人で、何より静先輩がいないことが徐々に意識を乱していく。
「静、先輩・・・・・・?」
発した声も部屋に反響して響くだけで、何の返事もない。
「静先輩・・・ぃやだ・・・・・・」
今度こそ本当に捨てられたかもしれない。
一度思い至るとどんどんその思考に支配されてきて怖くなる。
そんなことはないと思いたくて、震える手で急いで電話をかけた。
「・・・・・・弥桜? おはよう、気がついたか」
ワンコールで出てくれた静先輩の声は最後の記憶より落ち着いてて、いつもの静先輩だった。
その声を聞くだけでうるさいほど鳴っていた心臓の音が少し音無しくなる。
「静先輩、今どこにいるの・・・・・・?」
「今は家にいるよ。流石にあの状態で弥桜を抱くわけにはいかないから、特効薬と抑制剤使った。俺も頭冷やしたかったし、そこにいても二人とも辛いだけだから、それで一回帰ってきたんだ。弥桜が起きる前に戻るつもりだったんだよ」
静先輩の話しにようやく今の状況が理解できた。
発情期の状態も久しぶりの薬で感覚を忘れてたけど、今までは一週間かけてゆっくり落ち着かせていたんだった。
「今から行くから、もう一度薬飲んでおけ」
「早く来て」
静先輩には黙ってるけど、もう既に身体の嫌悪感がじわじわ襲ってきてて、薬を飲みに行ったり静先輩と話したりすることでそれをなんとか紛らわせようとしていた。
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