雨の日に再会した歳下わんこ若頭と恋に落ちるマゾヒズム

倉藤

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第一章

セーフワードは言えない

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「あ、うっ」

 伊津は畳にしかと額を打ちつけた。四つん這いの形とはいえ、手が後ろに回っているため、畳に顔が擦れる。例えるなら土下座に近い。首も痛い。

「油断しないでよ伊津さん、俺も無知じゃない」

 一瞬で自由を奪われ、支配された。
 冷や汗と共に這い上がってくる興奮。期待以上だ。

「ふ、いいよ・・・・・・もっとやれよ」
「煽ったことを後悔させてあげようか。ああ、いいな、じゃあセーフワードは『本堂さん大好き、ごめんなさい』にしよう」
「言ってろ、ガキンチョ。なげぇわ!」
「ほんと口が悪いよ。最高」

 着流しの尻を捲り上げられ、下着を下ろし、生身になった肌に手始めの一発。乾いた音を立てて本堂が尻を叩く。

「ぅあっ」
「いい尻だ。その辺の若い女よりもそそる」
「そうかよ・・・ゲテモノ好きだな」
「素直じゃないのは結構だが、口はつぐんでおいた方がいい。今は、ご主人様は俺だ。口に出していいのはセーフワードか、喘ぎ声だけにしろ。命令だ」

 趣味でもないくせに、ご主人様だなんてどこで覚えてきたんだと呆れる。命令ならば背けない。従ってやる。
 伊津はむしろ手ほどきしてあげるつもりで口を閉じたが、不意打ちでペニスの先端の丸みを撫でられ、仔犬の鳴き声のような声がこぼれた。
 恥ずかしいやつだ。

「ひゃ、ん!!」

 何すんだとばかりに仰ぎ見れば、本堂は冷静に口元だけを引き上げた。

「反抗的だな。だが伊津さんのここはまるで正反対の反応だなぁ?」
「・・・・・・っ!」

 本堂は背中から覆い被さって、伊津の耳元に口を近づける。
 にゅちにゅちと先走りに濡れた先端をしごかれ、隠しきれていない己れの貪欲さに気づかされた。
 突き放した言い方をせずに、濁さず素直に、本堂に身を委ねて快感を貪りたい。
 こいつになら自分の尊厳を奪わせてもいい。
 屈服してからは早かった。伊津の心は溶かされて崩された。暴言を吐くうるさい唇は閉口した。
 居間に響くのは命令する本堂の声とみだらに鳴く伊津の声だけ。

「あ、ぅ、んんう」

 本堂は執拗に背中へ口づけを落としている。
 何ヶ所もきつく吸い上げて痕を残され、俺の背中には啜りたくなるほど美味い果実でもついているのかと訊いてやりたくなる。
 その間もペニスを握る手は休まず働き、敏感に膨らんだ亀頭を親指でぐりぐりといじった。

「・・・ひ、ひあっ」

 雫の滲んだところに指を食いこませて擦られるたび、伊津は射精感をこらえて頭を振った。

「こらっ」

 本堂はペニスの根本を掴み、逃げた腰を咎める。

「動くな」

 大きな手は幹だけでなく、しごくのに合わせてボールが入った袋まで器用に握りこみ揉みしだいだ。

「あっ、ああっ」

 ごりごりと二つのボールが擦れ合い、本堂の手の中で可哀想に形を変える。
 手つきは繊細で優しいのに、急所を握られていることに変わりはない。その絶妙なバランスが伊津をさらに駆り立てた。

「ここ、うっかり潰しちゃいそう」

 握った手に力を込められ、本能が危機を感じて暴れる。

「はぁぁ・・・・・・うっ!!」

 ぎちぎちと痛みが増して限界を焼き切り、伊津のペニスは精液を漏らしていた。
 吐精した伊津は反射的に青ざめた。
 組長・・の許可なく射精してしまった。
 息を詰めたまま動かなくなった伊津に、本堂は安心させるように囁く。

「俺はこういうのもあっていいと思うが?」

 髪をすいた穏やかな手つきに肩の力が抜ける。
 たまっていた涙がこぼれたのと同時に、呼吸が戻った。
 ———こいつは竜善組長じゃない。
 息を吸い込んだ喉をひと撫でされ、本堂がその流れのまま顎を持ち上げた。

「伊津さんの泣いた顔は結構くる。泣いて、泣いて、伊津さんがもういいイきたくないってセーフワードを言うまで犯し続けてやるから。望みどおりにな」
「・・・・・・ん」

 本堂は再びのしかかってきた。
 尻の割れ目に猛った雄の象徴が当たる。張り出した瘤のような頑強な剛直。
 窄まった後孔にじわじわと圧をかけられ、はっ、はっ、と伊津の呼吸が上がった。
 本物の男を受け入れるのは数年ぶり。慣らさなずに突っ込まれたら間違いなく内臓が裂けるだろう。
 入り口がわずかに広がる。ぎゅっと孔を締めてみても、重たい肉塊にみしみしと拓かれていく。
 しかし痛みを覚えたところで圧が和らいだ。

「このまま突き破ってほしいか?」
「あ・・・・・・ぃや・・・」
「嘘をつかない。伊津さんのちんこがもう半勃ちしてる」

 本堂が伊津のペニスを握り、ぐちゃぐちゃと容赦なくしごく。

「ンっんんぅう! 出る、ああっ、出る出る出るっっ!」

 ぼたぼたと畳の上が汚れる。
 放出感でぶるりと震えた伊津のそこは、休む間もなく続いた責め苦にむせび泣かされた。
 後ろでは本堂が窄まりの入り口を慣らすように腰を前後させ、時折り押し込んでは、頭がめり込むぎりぎりで腰を引く。

「アっ、あっ、あ、あ、止め、や、ぐあああっ」
「セーフワード以外は聞かない」
「ひ、ひぃ・・・・・・ぅあっ」

 次から次にやってくる快感の連鎖。
 後孔は本堂の我慢汁でびしょびしょにされてぬかるんでいる。
 このまま一気に性器を押し込んで本堂のモノで壊してほしい。壊れてもいい。
 想像すると、幸福感で脳裏が点滅した。
 精液を出しきった伊津のペニスが、勢いよくぷしゃりと潮を撒き散らす。

「あ、あああ・・・・・・ぅ、う、ううう」

 止まらない。腹の底から迫り上がってきたマグマみたいな熱い飛沫が、尿道を拡げ押し出される。
 痙攣する伊津は息を吸うのに精一杯で、喘ぎながら脱力する。
 この日は最後までセーフワードは口にできなかった。
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