英国からやってきた運命の番に愛され導かれてΩは幸せになる

倉藤

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英国編

幸せのため息

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「んあっ、エリオット様・・・これ以上は」
「悪いが聞けない頼みだ」
「お食事を・・・遅れてしまいますっ」

 起床してすぐ寝室から出て行くところを、成彦はエリオットに捕まった。壁に押しつけられた成彦のペニスはエリオットの口に含まれ、うまそうにしゃぶられている。
 
「一食くらい取らなくても人間は死なない」
「う、ンン、ですが、ぅ・・・はううっ」
 
 濡れそぼったペニスの先を起点にして腰が反る。達してしまった成彦は脱力し、背中をずるずると壁に滑らせた。しかし座りこむ前に腰を支えられ、エリオットの胸に抱きかかえられると、今度は悪戯な指が後ろの窄まりを弄る感覚に震えた。
 
「期待してるね、成彦」
「ひどいです。今さっき起きたばかりなのにエリオット様が触るから」
「それはすまなかった。我慢できなかったんだ」
 
 こんな時だけエリオットはずるい顔をする。従順なふりをして、固く張り詰めた下半身を擦りつけてくる。
 欲しくならないわけない。
 成彦はぬぷんと侵入してきた指を締めつける。
 
「・・・まだ柔らかいでしょエリオット様?」
「ん?」
 
 疑問符で返事をするエリオットのシャープな顎のラインを手のひらで包み、成彦は唇を近づけた。
 
「早く欲しいです」
 
 エリオットの唇から吐息がこぼれると、成彦と重なる。
 舌の出入りと後孔の指が一致するように動き、くねり、粘膜をくすぐられるたびに成彦は悶えた。
 
「ん、ふ、んんぅ」
 
 指が抜かれると、片足を持ち上げられ、窄まりがぐぐっと広がった。噛みつくようなキスは続けたままで、エリオットは腰を打ちつけ、成彦の狭い入り口に自身の屹立を押しこむ。
 
「ぁ・・・ああっ、あふ、ぁ」
 
 ズブズブと侵食されて、成彦のそこはとろりと蜜を溢れさせた。
 
「エリオット様・・・これだと足が」
 
 下から穿たれているせいで成彦の体は浮いている。足はだらんと垂れ、つま先が床を擦っている状態だった。
 
「私に掴まりなさい」
「ぁああっ、ゃ、ぁ、これじゃ・・・不安定、で、怖いですっ」
 
 降ろしてほしいと成彦はふるふると首を横に振ったが、聞き入れてもらえない願いらしい。
 ゆっくりした律動で腰を揺らし、エリオットは低く囁いた。
 
「だからいいんじゃないか。私に身体を預けてごらん?」
 
 汗に混じり、愛してやまない番のフェロモンが甘く香ると、耳が溶けたみたいに熱くなり頭がぼうっとする。
 成彦はエリオットの首に腕を回し、抱きしめる姿勢で全身を明け渡した。
 
「いい子だね」

 自重のせいで繋がりが二度と解けなくなるほどに深くなる。合わさった下半身の皮膚と皮膚は敏感になり、串刺しのそこが擦れ合い快楽を呼び起こす。どれもが成彦を甘やかし虜にしてやまず、いつのまにか片足のみならず両足を床から遠く離しエリオットの腰に巻きつけていた。
 成彦はエリオットの唇を吸った。

「好き・・・あなたを愛してる」

 不意打ちにエリオットは唸ると、深く挿した成彦のなかに熱い飛沫を注いだ。
 
「出て・・・んぁっ、あっつい」

 この瞬間には成彦はいつも涙する。奥をひらかれ、粘膜いっぱいにエリオットのぜんぶを感じると、歓びを享受して流れる涙が止まらなくなる。

(どくどくしてる。嬉しい・・・・・・)

 不自由のない生活。愛するエリオット。優しくしてくれるドミニクと新しく移ってきたノースヨークシャーの屋敷にいる使用人のみんな。

(こんなに幸せじゃ、いつかバチが当たるかも)
 
 あたたかい腕の中で、成彦は幸せすぎる今が少しだけ怖かった。



 × × ×



 ロンドン近郊のサテンスキー家本邸を出て、ノースヨークシャー州の美しい港町に越してきたのが一週間前になる。エリオットが手がけている新事業の造船ビジネスに本腰を入れたいという理由で工場の近くに屋敷を買った。
 落ち着いた広さの新居を切り盛りしてくれる使用人たちも雇いなおし、家令のドミニクだけがエリオットの補佐としてついてきていた。
 二階の寝室からダイニングに降りると、今朝も隙のない装いのドミニクが成彦たちの足音に気がついた。もしや彼は眠る時もコートを着ているんじゃないかと思うほど整った身なりだ。
 
「おはようございます。エリオット様、成彦様」
 
 ドミニクが一礼する。
 
「おはようドミニク」
 
 成彦は用意された朝食の席にありがたく座り、手を合わせた。
 
「いただきます」
「では私も」
 
 エリオットが真似をして手を合わせる。成彦はその光景が好きだ。食卓は日本人の成彦の舌に合うように新鮮な野菜と卵を使い、塩味や甘味が細やかに調節されている。
 こちらの国に渡ってきて数日はなかなか食が進まず、痩せてしまったが、今ではその心配もない。
 食事があらかた済んだ頃合いをみて食器が片付けられると、食後の紅茶が運ばれる。実は珈琲は苦くて苦手な成彦だが、淹れたての紅茶はホッとする味。こうして色んな文化が身体に馴染んでいき、エリオットの生まれ育った国の伝統を感じることができるのが嬉しい。
 その時、玄関先でワンワンと犬が鳴いた。空き家だった頃に棲みついていた野良犬を、人懐っこく人間に慣れており、そのまま飼うことにしたのである。黒い雑種なので名前はゴマダンゴ。皆には「ゴマ」と呼ばれている。エリオットの発音は見事だが、使用人たちが話すカタコトの「ゴマ~」を聞くと心が和む。今では良い番犬で、ほとんどの時間をお気に入りの玄関アプローチの芝生の上で寝て過ごしていた。
 そしてこの時間にゴマダンゴが鳴いたということは、手紙の配達だろう。郵便は規則正しく決まった時刻に届けられる。
 ドミニクが玄関を見に行き戻ってくる。手元の手紙の束を見て、エリオットが重苦しい顔つきになる。
 
「またか。全て叔父さんか?」
「いえ一通はニッポンから成彦様宛です」
 
 ありがとうございますと、成彦は手紙を受け取る。
 
「じゃ残りは全部ってことだな」
 
 エリオットはむっすりと不機嫌になった。
 
「そろそろお逃げにならず叔父のクリストファー様とお話をされては?」
「ドミニク。せっかくの朝食時に聞きたくない名前を出さないでくれ」
「しかし成彦様もご存じでいらっしゃいますよ。新事業に集中したいからと言っていますが、住居を移された本当の理由が結婚を反対されたからだということをです」

 主人だからといって忖度しない有能な家令は厳しい口調で言い放った。
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