英国からやってきた運命の番に愛され導かれてΩは幸せになる

豆ぱんダ

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助っ人

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 成彦、景彦、エリオットの三人は馬車を駆けさせ、父と母が別々に囚われているであろう牢獄に急いだ。
 疲労した馬を変える為に立ち寄った場所場所にエリオットの知り合いがいて、水や食料を分けてくれる。思えば彼のツテというのも、助け合いの輪によるものなのかもしれないと感じた。

「しかしいったいどうする。両親のしたことは日本ではれっきとした罪だ」

 景彦は未だにエリオットを信用していない。まるで親の仇のように眉間に険しい皺を刻んで睨む。

「日本人にとってはそうだろう」

 答えに成彦は首を傾げる。

「エリオット様?」
「父親の経歴にちょっとした偽造をさせてもらった」

 すかさずこれみよがしに反論する声が飛んでくる。

「偽造? それで釈放されるってのか? 政府に嘘ついたって、詳しく調べればバレるに決まってる」
「だろうが、父と母を連れて調べがつく前に国を出てしまえばいい。景彦、君はどうしたい。我々と共にイギリスに来るか?」

 景彦は「俺は」と下を向いた。

「自分がどうしたいのかわからない。俺は今までそうするしかなかった・・・・・・・・・・ことばかりだったから、自分のしたいように決めたことがない」
「あまり時間は与えてやれぬが、船に乗るまで考えるといい。もしも十松家に残るにせよ、満義氏が抜かりなく手を回すだろう。心配することはない」

 エリオットが同意を求めるように成彦に目配せする。
 成彦はこくんと頷き返す。

「うん、いいと思う。大事なのは自分で決めること。Ωの僕らにはすごく大きくて意味のある行為でしょ?」
「・・・・・・わかったよ」

 つっけんどんな景彦の声が可愛い。拗ねた子どもみたいだ。成彦は双子の弟ににっこりと笑った。

「問題は、母親の救出だな」

 エリオットが腕を組む。

「既に死亡している人間には改ざんできるところがない。逆にこちらの手の内に入れてしまえば、政府も手をこまねくしかなくなるが、途中で見つかると少々厄介だ。私はともかく君たち双子は囚えられて母親共々後宮行きにされる」

 それから全員で母を助け出す方法を考え込んだ。静まり返った時、キャビンが小さく揺れ、馬車が停車した。

「私がおりますよエリオット様」

 扉が開き、ドミニクの姿が。

「ドミニクさん!」

 歓声を上げた成彦にドミニクが微笑んでくれる。

「それと彼も」
「秀彦兄さん?!」

 思わず声に出した成彦だけでなく一同が驚愕した。

「これはまた上手くやったなドミニク」

 言葉巧みに落としたのだろうとエリオットが仕草で伝えると、ドミニクは肩をすくめ、「ノー」と首を横に振った。
 助っ人二人を乗せて、馬車が走りを再開すると、秀彦が口を開く。

「宮家と繋がりのある家を知ってる」

 成彦はハッとした。

「僕の婚約者候補の・・・・・・」
「そうだ。一条公爵家には俺の顔が効く。成彦と婚約させる予定だった次男は俺の同級生なんだ。後宮といっても、隣国や過去に存在していた後宮のように豪華な御殿が建てられているのではないと聞く。オメガの住まいは皇居ではなく一条家に管理されているらしい。それが何処なのかを俺が聞き出してやる」

 長兄の意気込みを聞き、景彦が嘲笑するよう鼻を鳴らす。

「十松家の跡継ぎが十松家に逆らっていいのかな?」

 秀彦が「そうだな」と苦しげに眉を下げる。

「だが俺だって母さんを死なせたくないさ。兄弟皆が同じ思いだ。ここに来られなかった弟らの分の気持ちも俺は背負ってる。俺が一番の兄さんだからな」
「素晴らしい兄弟愛でございますね。その調子で参りましょう、お兄様。気持ちが揃ったところで一条公爵家に着きます」

 ドミニクの声で皆が小窓の外を見た。

「ここでまた二組に別れます。私ドミニクと秀彦氏がここで降り、お母様を救い出します。エリオット様と成彦様、景彦氏はお父様を」
「了解だ。港で会おう。待ち合わせ場所はわかるな?」

 ドミニクはエリオットに頷き返す。
 成彦は頑張れ兄さん僕も頑張るからと声に出さずに伝えた。長兄率いる——といってもドミニクと二人だが——別行動の組が降りて行くと、馬車の扉がゆっくり閉まった。

「じゃあ、次の話だが」

 馬車が動き出した途端にエリオットが深刻な顔になる。

「父親の勾留場所に着いたら私一人で行く。できれば待っていてもらいたいんだが」
「嫌です」
「俺もだよ」
「そうだな。わかってた。確認したんだよ。睨まないでくれ。私の言う通りに動いてくれよ?」

 やれやれと苦笑いするエリオットに、双子の兄弟は初めて意気投合し「「任せて」」と同時に声を出した。
 その後エリオットは内務省警視局庁舎前で馬車を停めた。

「では打ち合わせ通りに」

 目を合わせて意思疎通し、成彦と景彦もエリオットに続いて馬車を降りる。
 馬車の中で三人は用意した別の服に着替えていた。
 普段エリオットが着用している三つ揃えのスーツ姿で門扉を叩いた。

「英国大使館の者だ。こちらに我が国の日系イギリス人が囚えられていると聞いたのだが、事実ならば直ちに引き渡してもらいたい」

 エリオットが守衛に堂々と告げる。
 守衛は当初渋っていたが、エリオットの合図で成彦が鞄から書面を取り出すと、慌てて庁舎内に駆け込んで行った。

「信じたようだな」

 景彦がコソッと耳打ちしてくる。
 するとエリオットが目をすがめて咎める。

「まだだ。あの守衛は外交に関しては何も知らない雇われのガードマン。本番はこれからだぞ」
「いちいち言われなくてもわかってる」
「まあまあ、あ、戻ってきたみたい」

 成彦がつんと拗ねてしまった景彦を宥めていると、守衛が人を連れてくるのが見えた。
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