101 / 109
第三章『悪魔と天使のはざま』
101 ジョエルの弱さ
しおりを挟む
ジョエル。可愛いジョエル。
母の声。抱かれている赤子だった自分。幸せだった。温かかった。母と二人っきりだった記憶に、もう一人。
優しい手。
母と幼いジョエルを守る、優しい誰か。
「え・・・?」
怒涛と流れ込んできた思い出の切れ端に、ジョエルは呆然とし目の前のやり取りがかすんだ。
「あなたは。どうして、お父様が二人いる?」
母と自分に接する態度が、そう思ってもおかしくない距離感だった。
「はっ」
オスカーが大声で笑った。
「ジョエルよ。お前に父と呼ばれるといつも不愉快だった。もはやこの状況で隠す必要もないな。お前と私にいっさいの血の繋がりはない」
「血が繋がっていない?」
ジョエルは情けない声を出す。
「私がお前の母を連れ帰った時にはすでに妊娠していたんだ。しかしそうかそうか、私に内緒で潜り込み密会を続けていたのか。これは傑作だな。して私をどうするつもりだ?」
オスカーの目がミリーを捉える。
「今まで隠れていた姿を表したということは、何かしらの理由があるのだろう? 恋人を奪った私を殺すか?」
「お望みならば」
ミリーが威圧しながら一歩前に出ると、オスカーは降伏する真似をして一歩下がる。
「くくく、・・・うおぅと」
ミリーは嘲笑的に喉を鳴らしたオスカーの胸ぐらを掴み上げた。
「貴殿の考える低俗な関係と一緒にするな」
払うようにして手を離すと、オスカーはバランスを崩して尻をつく。
「ソルト家は偉大な神に忠誠を尽くしている。好き嫌いというちんけな愛というものよりも優先せねばならないことがある」
「しっかり子どもを作っておいてか?」
「・・・・・・なんだと」
「言いわけできないだけ愛し合っておいて、好きなオメガを奪い返そうともしなかった。私を騙すだけあってどれほど切れる男かと思えば、なんだただの腰抜けだったんじゃないか」
オスカーは立ち上がり、帰るぞと、呆然としていたジョエルの頬を叩いた。
「っう」
「ぼうっとするな。過去がどうあれ、お前が私の唯一の汚点であることに変わりない。話すだけ時間の無駄だった」
「・・・ごめんなさい」
「さっさとついて来い」
「はい」
ジョエルはびくりと肩を震わせ、口答えできなくなる。
横暴な父のもとから救い出してくれるかと思ったのに、ミリーは追ってこなかった。
いったんは感じた希望は、瞬く間に消えてしまった。
寮から出ると口を利くことを許されず、馬車に揺られ、アルトリア家の屋敷に連れ戻されたジョエルは屋根裏部屋に入れられた。入学前まで使っていた部屋だが、片手で数えるほどしか掃除されていなかったのだろう、床全体が埃をかぶり、鼻がむずむずしてくる。ジョエルは急いで小さな窓を開けて空気を入れ替えた。
質素なベッドに腰掛け、そのまま薄っぺらなシーツの上に横たわった。
「これからどうしよう」
とは口に出してみたものの、自分の将来すら考える必要がなくなったのだ。
ジョエルは絶望感に苛まれる。あれこれと頭を悩ませていた騒動も、全部夢のような出来事に変わってしまった。
その時、出入り用の床の扉が浮いた。
「ジョエル・アルトリア様、黒兎でございます」
隙間から女性の声がする。
(・・・・・・!)
口を押さえ、ジョエルは喜びの声を我慢する。
黒兎は黒装束で隠されていない目元を細めて、微笑みかけてくれる。沈みかけていた心が明るくなり、どれほど安堵したことか。
「声を出さないで聞いていてくださいね。屋敷であなたの姿を見て驚きました。ハワード殿下とセス様に連絡させていただきましたからね」
シーレハウス学園の外に出されたことはある意味で幸運だったのかもしれない。
しかし、ミリーのことを思い出して首を横に振った。
声を極限まで絞り、忠告する。
「逃げてください。モーリッツと名乗る男がいましたよね。彼は貴女がたの侵入に気がついていたはずです。何か仕掛けてくるかも」
オスカーに伝えるという方法を取らずに、単独で動いてくるかもしれない。何を企んでいるのか想像もつかない男だが、ジョエルがハワードたちの仲間でいるのを望まなかった。
(そして僕の本当の父親かもしれないひとだ・・・・・・)
ジョエルに危害を加えなくても、必要と判断すれば他の人間には躊躇わず攻撃してくる。ギュンターの例があるので油断できない。
だが黒兎は逃げも隠れもせず、ジョエルに問う。
「ジョエル様はこの先もアルトリア家にいたいのですか?」
ジョエルは目を丸くして否定した。
「いたくないですよっ、僕はこんなところで暮らしたくないです。コタローにだって二度と会えなくなってしまう」
すると黒兎は頷いて言う。
「では、少し頑張れますか?」
「へ、何がでしょう」
「実はわたくしたちもジョエル様の出自について聞いておりました。告発するための証拠を探っているところなのです」
「告発って、そりゃ悪事には手を染めているでしょうけれど」
不審な顔をしたジョエルに黒兎は教える。
「あなたの母君は密入国されて来たのですよ。その証拠を探しているのです」
ジョエルは息が止まった。身内の自分が知らなかった父の秘密を見抜いたハワードたちの推察力と聡明さに感心し、同時に恥ずかしくなって俯いた。己れで考え行動し成し遂げる、不可能を可能に変えていく力があることが自分とは大きく違う点だ。
思えば救いの白翼でも自分はそうだった。
ジェイコブに尻を叩かれるまで、ミリーの操り人形から脱却することを諦めていたのだから。
父に意見する勇気も持てず、今も嫌だ嫌だと言いながらも大人しく閉じ込められている。
「僕なんかにできることがありますか」
卑屈な口ぶりで問うてしまってから、ジョエルは唇を噛んだ。
(黒兎たちは任務でたまたまここにいるだけなのに、僕の弱音を聞いたって困るよな)
「ごめんなさい、なんでもないですから」
正直もう帰ってほしくて、誰とも話したくない気分で、ジョエルは背を向けようとする。
「あなたが大切にしていることはなんですか」
黒兎の隠れた表情が見えるような穏やかで凪いだ声だった。
「・・・・・・大切」
「そうです。わたくしが屋根裏寝屋に来られる機会はもう巡ってこないでしょう」
よく考えてと言われ、ジョエルは諦めの悪い自分を見つめた。
お前の心の中にはコタローがいるんじゃないのか。
ジョエルが何度も忘れそうになって、でも忘れない、ジョエルを元気づけて生きる力になってくれるひとの存在だ。
「僕は何をすればいいんですか」
かすれた声が出てしまったが、ジョエルは心を決めた。
「はい、ジョエル様の母君が住まいとしていた別宅の在処を探しています。母君から遺されたもの、こと、なんでもいいのです。覚えていらっしゃいませんか?」
「わかりません。物心ついた頃には本邸に移されていたので・・・すみません。でも、僕は役に立てませんがモーリッツ・・・ミリー・ソルトが確実な場所を把握していると思います。僕が証言を頼みます」
それならできますと力強く言うと、黒兎はありがとうと目を細めてくれる。
「ジョエル様、最後に、覚悟はよろしいですか」
ジョエルは首を傾げた。
「オメガの密輸は重罪と聞いております。罪が明るみになった暁には、おそらく当主のフローレス侯オスカー様は投獄され、一家は財産を没収されます。侯爵婦人とご兄弟姉妹たちは路頭に迷う。当然、あなた自身も貴族ではなくなる」
「ああ。そのことですか。僕のことはどうでもいいんです。酷いと思われるでしょうがこの家の人間のことも、どうなろうと知りません。でも、コタローに会えなくなるのは何よりも嫌です」
「ならば、ご自分の想いのままに動かれるのが正解かと」
黒兎は滔々と答え、一礼すると、「今夜に迎えに来ます」と言い残して降りて行った。
母の声。抱かれている赤子だった自分。幸せだった。温かかった。母と二人っきりだった記憶に、もう一人。
優しい手。
母と幼いジョエルを守る、優しい誰か。
「え・・・?」
怒涛と流れ込んできた思い出の切れ端に、ジョエルは呆然とし目の前のやり取りがかすんだ。
「あなたは。どうして、お父様が二人いる?」
母と自分に接する態度が、そう思ってもおかしくない距離感だった。
「はっ」
オスカーが大声で笑った。
「ジョエルよ。お前に父と呼ばれるといつも不愉快だった。もはやこの状況で隠す必要もないな。お前と私にいっさいの血の繋がりはない」
「血が繋がっていない?」
ジョエルは情けない声を出す。
「私がお前の母を連れ帰った時にはすでに妊娠していたんだ。しかしそうかそうか、私に内緒で潜り込み密会を続けていたのか。これは傑作だな。して私をどうするつもりだ?」
オスカーの目がミリーを捉える。
「今まで隠れていた姿を表したということは、何かしらの理由があるのだろう? 恋人を奪った私を殺すか?」
「お望みならば」
ミリーが威圧しながら一歩前に出ると、オスカーは降伏する真似をして一歩下がる。
「くくく、・・・うおぅと」
ミリーは嘲笑的に喉を鳴らしたオスカーの胸ぐらを掴み上げた。
「貴殿の考える低俗な関係と一緒にするな」
払うようにして手を離すと、オスカーはバランスを崩して尻をつく。
「ソルト家は偉大な神に忠誠を尽くしている。好き嫌いというちんけな愛というものよりも優先せねばならないことがある」
「しっかり子どもを作っておいてか?」
「・・・・・・なんだと」
「言いわけできないだけ愛し合っておいて、好きなオメガを奪い返そうともしなかった。私を騙すだけあってどれほど切れる男かと思えば、なんだただの腰抜けだったんじゃないか」
オスカーは立ち上がり、帰るぞと、呆然としていたジョエルの頬を叩いた。
「っう」
「ぼうっとするな。過去がどうあれ、お前が私の唯一の汚点であることに変わりない。話すだけ時間の無駄だった」
「・・・ごめんなさい」
「さっさとついて来い」
「はい」
ジョエルはびくりと肩を震わせ、口答えできなくなる。
横暴な父のもとから救い出してくれるかと思ったのに、ミリーは追ってこなかった。
いったんは感じた希望は、瞬く間に消えてしまった。
寮から出ると口を利くことを許されず、馬車に揺られ、アルトリア家の屋敷に連れ戻されたジョエルは屋根裏部屋に入れられた。入学前まで使っていた部屋だが、片手で数えるほどしか掃除されていなかったのだろう、床全体が埃をかぶり、鼻がむずむずしてくる。ジョエルは急いで小さな窓を開けて空気を入れ替えた。
質素なベッドに腰掛け、そのまま薄っぺらなシーツの上に横たわった。
「これからどうしよう」
とは口に出してみたものの、自分の将来すら考える必要がなくなったのだ。
ジョエルは絶望感に苛まれる。あれこれと頭を悩ませていた騒動も、全部夢のような出来事に変わってしまった。
その時、出入り用の床の扉が浮いた。
「ジョエル・アルトリア様、黒兎でございます」
隙間から女性の声がする。
(・・・・・・!)
口を押さえ、ジョエルは喜びの声を我慢する。
黒兎は黒装束で隠されていない目元を細めて、微笑みかけてくれる。沈みかけていた心が明るくなり、どれほど安堵したことか。
「声を出さないで聞いていてくださいね。屋敷であなたの姿を見て驚きました。ハワード殿下とセス様に連絡させていただきましたからね」
シーレハウス学園の外に出されたことはある意味で幸運だったのかもしれない。
しかし、ミリーのことを思い出して首を横に振った。
声を極限まで絞り、忠告する。
「逃げてください。モーリッツと名乗る男がいましたよね。彼は貴女がたの侵入に気がついていたはずです。何か仕掛けてくるかも」
オスカーに伝えるという方法を取らずに、単独で動いてくるかもしれない。何を企んでいるのか想像もつかない男だが、ジョエルがハワードたちの仲間でいるのを望まなかった。
(そして僕の本当の父親かもしれないひとだ・・・・・・)
ジョエルに危害を加えなくても、必要と判断すれば他の人間には躊躇わず攻撃してくる。ギュンターの例があるので油断できない。
だが黒兎は逃げも隠れもせず、ジョエルに問う。
「ジョエル様はこの先もアルトリア家にいたいのですか?」
ジョエルは目を丸くして否定した。
「いたくないですよっ、僕はこんなところで暮らしたくないです。コタローにだって二度と会えなくなってしまう」
すると黒兎は頷いて言う。
「では、少し頑張れますか?」
「へ、何がでしょう」
「実はわたくしたちもジョエル様の出自について聞いておりました。告発するための証拠を探っているところなのです」
「告発って、そりゃ悪事には手を染めているでしょうけれど」
不審な顔をしたジョエルに黒兎は教える。
「あなたの母君は密入国されて来たのですよ。その証拠を探しているのです」
ジョエルは息が止まった。身内の自分が知らなかった父の秘密を見抜いたハワードたちの推察力と聡明さに感心し、同時に恥ずかしくなって俯いた。己れで考え行動し成し遂げる、不可能を可能に変えていく力があることが自分とは大きく違う点だ。
思えば救いの白翼でも自分はそうだった。
ジェイコブに尻を叩かれるまで、ミリーの操り人形から脱却することを諦めていたのだから。
父に意見する勇気も持てず、今も嫌だ嫌だと言いながらも大人しく閉じ込められている。
「僕なんかにできることがありますか」
卑屈な口ぶりで問うてしまってから、ジョエルは唇を噛んだ。
(黒兎たちは任務でたまたまここにいるだけなのに、僕の弱音を聞いたって困るよな)
「ごめんなさい、なんでもないですから」
正直もう帰ってほしくて、誰とも話したくない気分で、ジョエルは背を向けようとする。
「あなたが大切にしていることはなんですか」
黒兎の隠れた表情が見えるような穏やかで凪いだ声だった。
「・・・・・・大切」
「そうです。わたくしが屋根裏寝屋に来られる機会はもう巡ってこないでしょう」
よく考えてと言われ、ジョエルは諦めの悪い自分を見つめた。
お前の心の中にはコタローがいるんじゃないのか。
ジョエルが何度も忘れそうになって、でも忘れない、ジョエルを元気づけて生きる力になってくれるひとの存在だ。
「僕は何をすればいいんですか」
かすれた声が出てしまったが、ジョエルは心を決めた。
「はい、ジョエル様の母君が住まいとしていた別宅の在処を探しています。母君から遺されたもの、こと、なんでもいいのです。覚えていらっしゃいませんか?」
「わかりません。物心ついた頃には本邸に移されていたので・・・すみません。でも、僕は役に立てませんがモーリッツ・・・ミリー・ソルトが確実な場所を把握していると思います。僕が証言を頼みます」
それならできますと力強く言うと、黒兎はありがとうと目を細めてくれる。
「ジョエル様、最後に、覚悟はよろしいですか」
ジョエルは首を傾げた。
「オメガの密輸は重罪と聞いております。罪が明るみになった暁には、おそらく当主のフローレス侯オスカー様は投獄され、一家は財産を没収されます。侯爵婦人とご兄弟姉妹たちは路頭に迷う。当然、あなた自身も貴族ではなくなる」
「ああ。そのことですか。僕のことはどうでもいいんです。酷いと思われるでしょうがこの家の人間のことも、どうなろうと知りません。でも、コタローに会えなくなるのは何よりも嫌です」
「ならば、ご自分の想いのままに動かれるのが正解かと」
黒兎は滔々と答え、一礼すると、「今夜に迎えに来ます」と言い残して降りて行った。
5
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
運命なんて知らない[完結]
なかた
BL
Ω同士の双子のお話です。
双子という関係に悩みながら、それでも好きでいることを選んだ2人がどうなるか見届けて頂けると幸いです。
ずっと2人だった。
起きるところから寝るところまで、小学校から大学まで何をするのにも2人だった。好きなものや趣味は流石に同じではなかったけど、ずっと一緒にこれからも過ごしていくんだと当たり前のように思っていた。そう思い続けるほどに君の隣は心地よかったんだ。
成り行き番の溺愛生活
アオ
BL
タイトルそのままです
成り行きで番になってしまったら溺愛生活が待っていたというありきたりな話です
始めて投稿するので変なところが多々あると思いますがそこは勘弁してください
オメガバースで独自の設定があるかもです
27歳×16歳のカップルです
この小説の世界では法律上大丈夫です オメガバの世界だからね
それでもよければ読んでくださるとうれしいです
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
たとえ月しか見えなくても
ゆん
BL
留丸と透が付き合い始めて1年が経った。ひとつひとつ季節を重ねていくうちに、透と番になる日を夢見るようになった留丸だったが、透はまるでその気がないようで──
『笑顔の向こう側』のシーズン2。海で結ばれたふたりの恋の行方は?
※こちらは『黒十字』に出て来るサブカプのストーリー『笑顔の向こう側』の続きになります。
初めての方は『黒十字』と『笑顔の向こう側』を読んでからこちらを読まれることをおすすめします……が、『笑顔の向こう側』から読んでもなんとか分かる、はず。
運命の息吹
梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。
美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。
兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。
ルシアの運命のアルファとは……。
西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。
この噛み痕は、無効。
ことわ子
BL
執着強めのαで高校一年生の茜トキ×αアレルギーのβで高校三年生の品野千秋
α、β、Ωの三つの性が存在する現代で、品野千秋(しなのちあき)は一番人口が多いとされる平凡なβで、これまた平凡な高校三年生として暮らしていた。
いや、正しくは"平凡に暮らしたい"高校生として、自らを『αアレルギー』と自称するほど日々αを憎みながら生活していた。
千秋がαアレルギーになったのは幼少期のトラウマが原因だった。その時から千秋はαに対し強い拒否反応を示すようになり、わざわざαのいない高校へ進学するなど、徹底してαを避け続けた。
そんなある日、千秋は体育の授業中に熱中症で倒れてしまう。保健室で目を覚ますと、そこには親友の向田翔(むこうだかける)ともう一人、初めて見る下級生の男がいた。
その男と、トラウマの原因となった人物の顔が重なり千秋は混乱するが、男は千秋の混乱をよそに急に距離を詰めてくる。
「やっと見つけた」
男は誰もが見惚れる顔でそう言った。
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる