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依頼人たちの調査対象、今回の目的地である遺跡内部に設営した拠点で、ミツルは膝を抱えて座っていた。
少し離れた場所には、トウコたちのチームが設営した拠点があり、そこには今トウコと金髪の男がおり、向こうのドライバーと荷物持ちの4人と楽しそうに談笑していた。
ここに来る道中、死の森の中で魔物に襲われ、デニスの仲間の1人が死んだ。
トウコたちのチームがいなければ全滅していただろう。
そしてトウコは強かった。
ミツルの記憶の中よりもはるかに。
デニスと残った仲間の2人が苦戦する中、そこに飛び込んできたトウコは魔物をあっさりと、文字通り粉砕した。
その時、少しだけトウコと話す機会があった。
目の前でデニスの仲間が死んだこと、危うく自分も死にそうだったことでへたり込んでしまっていたところに、トウコがやってきたのだ。
南門では少し距離があったために、気づかなかったのかもしれないと淡い期待をしたが、「大丈夫か」と手を差し伸べてきたトウコは、やはりミツルには気づかなかった。
ミツルの記憶の中よりも低い、感情の乗らない平坦な声と、全く心配などしていなさそうな声同様に感情の無い顔。
そんな顔と声で自分に話しかけてくるトウコが憎々しく、ミツルはその手を払い、忌み子と罵ったが、トウコは顔色一つ変えることなく、「悪かったね。もう近づかないよ」と言って去って行った。
視線の先のトウコは、笑みを浮かべて楽しそうにしている。
しかし、ずっとトウコの隣にいる金髪の男と2人でいる時の方が、トウコの肩の力が抜けているようにミツルには思えた。
ふとした時に、諦めのような色を湛える紫の瞳。
そんなトウコを見るのは嫌だった。
金髪の男と2人でいる時は、中庭の木の下にいるトウコのようだった。
そんなトウコを見るのも嫌だった。
「久しぶりだな、トウコ」
気付けば、トウコの前に立っていた。
金髪の男に見せる顔とは違う、明らかに自分に興味がないと分かる無機質なその顔を見ていると、言葉が止まらなかった。
「ああ、お前まさか、ミツルか?」
散々怒鳴って、ようやくトウコの口から出た己の名前。
「ミツル…。懐かしいな」
少し目を細めて本当に懐かしそうに微笑んだトウコを見て、ミツルは思い知った。
もうトウコにとってあの護衛団は過去なのだと。
それが信じられなかった。
今でも自分はあそこに囚われているというのに。
「あの人を殺しやがって!あの人は俺の、俺の父親だったんだ…!お前だってそうだろう!どうしてあの人が殺されなきゃいけなかったんだ!」
ずっと拾ってくれた団長を父親だと思っていた。
でもいつからか、クリフを父親のように思うようになっていた。
頭を撫でてくれる無骨な手。
魔力がほとんどない自分を見捨てずに教え導いてくれた、強面の優しい男。
トウコは何も悪くない。
クリフが殺されたのはトウコのせいではない。
クリフを殺したのはトウコではない。
完全な八つ当たりなのは分かっていたが止められなかった。
「私も父親だと思っていたさ。…恩人だと思っていた。あの時までは」
トウコの言葉にミツルはハッとした。
父親と言った時の、少し痛みを含んだ声。
恩人と言った時の、昏い声。
そして、父親と言った時にほんの僅かに見せた、何かをこらえている顔。
そのままトウコは団長を殺した時のことを淡々と話し始めたが、その言葉をミツルはほとんど聞いていなかった。
クリフが殺されたことを、トウコは知らないと思っていた。
八つ当たりで吐いた言葉だったが、ああ言えばトウコは団長のことだと勘違いすると思った。
トウコのせいじゃない、トウコが殺したんじゃない。
そう言いたかったが、言えなかった。
出てしまった言葉は、もう戻せない。
後悔したが遅かった。
その時、今まで黙っていた金髪の男が突然口を開いた。
―お前は色無しであるトウコを見下していた。
―色無しのトウコはどこにも行けないと思っていた。
―どこかに行っても生きていけるはずがないと思っていた。
―それなのに、自分を置いて消えてしまった。
―とっくの昔に死んでいると思っていた。
―それなのに、のうのうと生きていた。
―それがお前は許せない。
男の口から吐き出される辛辣な言葉に、ミツルは違うと言い返したかった。
しかし、何故か何も言葉が浮かばなかった。
最後に吐かれた男の言葉がミツルに突き刺さった。
「トウコ、お前は一度も卑屈には生きてこなかった。それなのに、卑屈に生きてきた人間に同族扱いされるのが、俺は心底気に食わない」
ミツルは嗚咽しかできなかった。
翌日、デニスから大人しくしておけと言われたミツルは、天幕の中で過ごしていた。
言われなくとも、もうトウコの前に行くつもりはなかった。行けるはずがなかった。
天幕の中で、膝を抱えて座ったまま、金髪の男から投げつけられた言葉をずっと反芻し続けた。
その日の夜、騒ぎがあった。
天幕の外から、デニスの仲間たちの依頼人の女を制止する声と、それに対して甲高い声で言い返す依頼人の声。
何事かとそっと天幕の外に顔を出すと、依頼人の女がトウコたちの拠点へ向かっているところだった。
トウコと金髪の男の前に立った依頼人の女が何かを話しているが、ミツルの場所からでは何を言っているか聞こえなかった。
しかし次の瞬間、金髪の男が激怒したのが分かった。
物凄い殺気に、依頼人の女があの男に殺されるとミツルが思った時、トウコが男の膝の上に跨って抱き付き、それを止めた。
トウコが男に跨ったまま振り返り、嘲笑う表情を浮かべて依頼人の女に何かを言っていた。
そこでようやくデニスがトウコたちの元へ駆け付け、蒼白になった依頼人の女が、引き摺られるようにミツルのいる拠点へと戻って来た。
そしてトウコもまた、明らかに未だに激怒している金髪の男に引き摺られて天幕の中へ消えた。
ミツルはそれをぼんやりと見ていた。
ほぼ眠れない夜を過ごしたその翌日、帰還する日の朝。
ミツルは拠点で、撤収準備を行っていた。
ちらりとトウコを窺うと、トウコは金髪の男と向こうの護衛対象である依頼人の男の3人で、神殿奥の祭壇へ向かっているところだった。
トウコを窺ったことを目ざとく見つけたデニスから「いい加減にしとけよ。昨夜のことで、あの男はまだ人殺しそうな目してたからな」と言われ、ミツルは分かっていると口の中で呟くように答えた。
金髪の男に吐かれた言葉がぐるぐると頭の中を回り続け、鬱々とした気持ちで撤収作業を続けている時、微かに地面が振動したように感じた。
不思議に思って顔を上げた時、デニスが神殿奥の祭壇を見ながら「なんだありゃあ!?」と愕然とした表情で叫び、そちらの視線を向けたミツルもまた愕然とした。
祭壇で女神像を守るように立っていた大きな2体の銅像が動き出していたのだ。
そして、護衛対象の男を抱えたトウコと金髪の男が、こちらへ向かって必死の形相で走っていた。
「ありゃ無理だ!荷物は捨てて出口に向かって逃げろ!」
そう言ったデニスが仲間たちと共に走り出し、ミツルもその後を追った。
何とか神殿の出口を潜り抜け荒い息を吐いていると、トウコの仲間の大男が、向こうの護衛対象―トウコが抱えていたはずの男を小脇に抱えて走り込んできた。
その男を無造作に地面に放り投げると、大男は神殿の出口を出てすぐのところで神殿内部を睨み付けるようにして見始め、デニスもまた大男の横に立って同じように神殿内部を見始めた。
トウコと金髪の男が来ない事に気付き、まさかと思いながらミツルも恐る恐る大男とデニスの後ろから神殿内部を窺うと、予想通り2人が2体の銅像と戦っていた。
「おい、あの2人は大丈夫なのかよ」
「大丈夫なわけないでしょう。私たちの逃げる時間を稼ぐだけだから、もう撤退していいんだけど…トウコ!」
障壁が砕け、青い光の欠片と鮮血がトウコの周りに舞った。
金髪の男がトウコを助けようとする中、銅像の攻撃で破壊された床の破片がトウコの頭に当たり、トウコが倒れた。
「…あいつまだ障壁張り忘れて!」
咄嗟にミツルがそう叫んだ時、金髪の男も叫んだ。
そして、その言葉を聞いたトウコが楽しそうに、本当に楽しそうな顔をして笑い声を上げた。
少し離れた場所には、トウコたちのチームが設営した拠点があり、そこには今トウコと金髪の男がおり、向こうのドライバーと荷物持ちの4人と楽しそうに談笑していた。
ここに来る道中、死の森の中で魔物に襲われ、デニスの仲間の1人が死んだ。
トウコたちのチームがいなければ全滅していただろう。
そしてトウコは強かった。
ミツルの記憶の中よりもはるかに。
デニスと残った仲間の2人が苦戦する中、そこに飛び込んできたトウコは魔物をあっさりと、文字通り粉砕した。
その時、少しだけトウコと話す機会があった。
目の前でデニスの仲間が死んだこと、危うく自分も死にそうだったことでへたり込んでしまっていたところに、トウコがやってきたのだ。
南門では少し距離があったために、気づかなかったのかもしれないと淡い期待をしたが、「大丈夫か」と手を差し伸べてきたトウコは、やはりミツルには気づかなかった。
ミツルの記憶の中よりも低い、感情の乗らない平坦な声と、全く心配などしていなさそうな声同様に感情の無い顔。
そんな顔と声で自分に話しかけてくるトウコが憎々しく、ミツルはその手を払い、忌み子と罵ったが、トウコは顔色一つ変えることなく、「悪かったね。もう近づかないよ」と言って去って行った。
視線の先のトウコは、笑みを浮かべて楽しそうにしている。
しかし、ずっとトウコの隣にいる金髪の男と2人でいる時の方が、トウコの肩の力が抜けているようにミツルには思えた。
ふとした時に、諦めのような色を湛える紫の瞳。
そんなトウコを見るのは嫌だった。
金髪の男と2人でいる時は、中庭の木の下にいるトウコのようだった。
そんなトウコを見るのも嫌だった。
「久しぶりだな、トウコ」
気付けば、トウコの前に立っていた。
金髪の男に見せる顔とは違う、明らかに自分に興味がないと分かる無機質なその顔を見ていると、言葉が止まらなかった。
「ああ、お前まさか、ミツルか?」
散々怒鳴って、ようやくトウコの口から出た己の名前。
「ミツル…。懐かしいな」
少し目を細めて本当に懐かしそうに微笑んだトウコを見て、ミツルは思い知った。
もうトウコにとってあの護衛団は過去なのだと。
それが信じられなかった。
今でも自分はあそこに囚われているというのに。
「あの人を殺しやがって!あの人は俺の、俺の父親だったんだ…!お前だってそうだろう!どうしてあの人が殺されなきゃいけなかったんだ!」
ずっと拾ってくれた団長を父親だと思っていた。
でもいつからか、クリフを父親のように思うようになっていた。
頭を撫でてくれる無骨な手。
魔力がほとんどない自分を見捨てずに教え導いてくれた、強面の優しい男。
トウコは何も悪くない。
クリフが殺されたのはトウコのせいではない。
クリフを殺したのはトウコではない。
完全な八つ当たりなのは分かっていたが止められなかった。
「私も父親だと思っていたさ。…恩人だと思っていた。あの時までは」
トウコの言葉にミツルはハッとした。
父親と言った時の、少し痛みを含んだ声。
恩人と言った時の、昏い声。
そして、父親と言った時にほんの僅かに見せた、何かをこらえている顔。
そのままトウコは団長を殺した時のことを淡々と話し始めたが、その言葉をミツルはほとんど聞いていなかった。
クリフが殺されたことを、トウコは知らないと思っていた。
八つ当たりで吐いた言葉だったが、ああ言えばトウコは団長のことだと勘違いすると思った。
トウコのせいじゃない、トウコが殺したんじゃない。
そう言いたかったが、言えなかった。
出てしまった言葉は、もう戻せない。
後悔したが遅かった。
その時、今まで黙っていた金髪の男が突然口を開いた。
―お前は色無しであるトウコを見下していた。
―色無しのトウコはどこにも行けないと思っていた。
―どこかに行っても生きていけるはずがないと思っていた。
―それなのに、自分を置いて消えてしまった。
―とっくの昔に死んでいると思っていた。
―それなのに、のうのうと生きていた。
―それがお前は許せない。
男の口から吐き出される辛辣な言葉に、ミツルは違うと言い返したかった。
しかし、何故か何も言葉が浮かばなかった。
最後に吐かれた男の言葉がミツルに突き刺さった。
「トウコ、お前は一度も卑屈には生きてこなかった。それなのに、卑屈に生きてきた人間に同族扱いされるのが、俺は心底気に食わない」
ミツルは嗚咽しかできなかった。
翌日、デニスから大人しくしておけと言われたミツルは、天幕の中で過ごしていた。
言われなくとも、もうトウコの前に行くつもりはなかった。行けるはずがなかった。
天幕の中で、膝を抱えて座ったまま、金髪の男から投げつけられた言葉をずっと反芻し続けた。
その日の夜、騒ぎがあった。
天幕の外から、デニスの仲間たちの依頼人の女を制止する声と、それに対して甲高い声で言い返す依頼人の声。
何事かとそっと天幕の外に顔を出すと、依頼人の女がトウコたちの拠点へ向かっているところだった。
トウコと金髪の男の前に立った依頼人の女が何かを話しているが、ミツルの場所からでは何を言っているか聞こえなかった。
しかし次の瞬間、金髪の男が激怒したのが分かった。
物凄い殺気に、依頼人の女があの男に殺されるとミツルが思った時、トウコが男の膝の上に跨って抱き付き、それを止めた。
トウコが男に跨ったまま振り返り、嘲笑う表情を浮かべて依頼人の女に何かを言っていた。
そこでようやくデニスがトウコたちの元へ駆け付け、蒼白になった依頼人の女が、引き摺られるようにミツルのいる拠点へと戻って来た。
そしてトウコもまた、明らかに未だに激怒している金髪の男に引き摺られて天幕の中へ消えた。
ミツルはそれをぼんやりと見ていた。
ほぼ眠れない夜を過ごしたその翌日、帰還する日の朝。
ミツルは拠点で、撤収準備を行っていた。
ちらりとトウコを窺うと、トウコは金髪の男と向こうの護衛対象である依頼人の男の3人で、神殿奥の祭壇へ向かっているところだった。
トウコを窺ったことを目ざとく見つけたデニスから「いい加減にしとけよ。昨夜のことで、あの男はまだ人殺しそうな目してたからな」と言われ、ミツルは分かっていると口の中で呟くように答えた。
金髪の男に吐かれた言葉がぐるぐると頭の中を回り続け、鬱々とした気持ちで撤収作業を続けている時、微かに地面が振動したように感じた。
不思議に思って顔を上げた時、デニスが神殿奥の祭壇を見ながら「なんだありゃあ!?」と愕然とした表情で叫び、そちらの視線を向けたミツルもまた愕然とした。
祭壇で女神像を守るように立っていた大きな2体の銅像が動き出していたのだ。
そして、護衛対象の男を抱えたトウコと金髪の男が、こちらへ向かって必死の形相で走っていた。
「ありゃ無理だ!荷物は捨てて出口に向かって逃げろ!」
そう言ったデニスが仲間たちと共に走り出し、ミツルもその後を追った。
何とか神殿の出口を潜り抜け荒い息を吐いていると、トウコの仲間の大男が、向こうの護衛対象―トウコが抱えていたはずの男を小脇に抱えて走り込んできた。
その男を無造作に地面に放り投げると、大男は神殿の出口を出てすぐのところで神殿内部を睨み付けるようにして見始め、デニスもまた大男の横に立って同じように神殿内部を見始めた。
トウコと金髪の男が来ない事に気付き、まさかと思いながらミツルも恐る恐る大男とデニスの後ろから神殿内部を窺うと、予想通り2人が2体の銅像と戦っていた。
「おい、あの2人は大丈夫なのかよ」
「大丈夫なわけないでしょう。私たちの逃げる時間を稼ぐだけだから、もう撤退していいんだけど…トウコ!」
障壁が砕け、青い光の欠片と鮮血がトウコの周りに舞った。
金髪の男がトウコを助けようとする中、銅像の攻撃で破壊された床の破片がトウコの頭に当たり、トウコが倒れた。
「…あいつまだ障壁張り忘れて!」
咄嗟にミツルがそう叫んだ時、金髪の男も叫んだ。
そして、その言葉を聞いたトウコが楽しそうに、本当に楽しそうな顔をして笑い声を上げた。
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