『お零れ話』

影狼

文字の大きさ
上 下
17 / 26
番外編

もう一人の女性の諦めー祓幽の神様と憤怒ー

しおりを挟む




『皆様方』、こんな辺鄙な『劇場』においで下さりありがとう存じます。
「ありがとうございます!」

この『劇場』の【案内人】を務めさせていただきます、『劇場のもの』でございます。
「同じく『劇場』の【案内人】を務めさせていただきます、『劇場のもの』でございます!
よろしくお願いします!」
それでは、席にお座り下さいませ。
「今回も私たちがご案内しますね!
暗いので足元に、ご注意くださいますようお願い申し上げます!」

そして『皆様方』が席にお座りになられたのを、見届けまして彼が言いました。
「それではご注意点を申し上げます。」
・全ての小説は二次創作対象になります。
・オリジナルキャラが出演いたします。
・キャラ崩壊がある可能性がありますのでご注意くださいますよう、お願いいたします。
・回想シーンが挿入されるので私たちが、事前にご案内致します。
・暴力シーンがございますのでお嫌な方は『劇場』から速やかに、ご退場していただければ全額返却いたします。

それでは一ベルを、鳴らさせていただきます。

リィイイイイイィイイイイィィン……。











それでは本ベルを、鳴らさせていただきます。

リィイイイイイィィイイイィィン……。





「演目名を告げさせていただきます。」
『もう一人の女性の諦めー祓幽の神様と憤怒ー』でございます。

之より、始めますはある女性が祓幽の神様と出会いとある男性に、憤怒する物語になります。

それでは演じ(始め)させていただきます。
「開幕致しますー、開幕致しますー。」

ーーー演目開始いたします。ーーー

ん……気持ちいい、……お日様のような匂い……。
ずっとここに居たいーーー。

「こらこら、怠けてはいないですか?
アパートの大家サン。
いや、『堺 雪衣』サン。」
「あはは、怠けてはいないですよー。。
『白龍様』、困らないでくださいよーー!?」
「あはは、冗談だよー?
それで『かの雪嗣』サン、『あの子は』?」
「『かの狐様』と『かの巫女』様が『屋敷』にご招待しましたー。
それは貴方がやってくれたのでしょうが、まだ『祓いきれてない』みたいですー。
「そっかー。
まだまだだなぁ、俺らも。」
「仕方ないですよー、『力』を取り戻しきれてないのですし『少しの本気』をも出せないのもそうですし出さないのですよねー?」
「そうだねー、『あれ』は『あの子』が乗り切らなきゃ『試練』にならないしねー。」
「穢れた親は消したのですがねー。
後で『かの老放をなさる方』と『かの黒いものを操る方』にお礼を告げなければなりませんねー?」
「ああ……耳が痛いよ。
穢れた親は『あれ』が消してくれたしねー?」
「そうですよー。」
「そうだよねー。」
にこやかそうに笑う彼女は『堺 雪衣』サン。

ーーー容姿説明に参ります。ーーー

青と水の入り交じった寒色系の着物を着ているお方で、鬼の面を付けていますので顔は分かりません。
黒いピンを、二本サイドにつけております。
緩く縛ってありますが腰までありますので、あまり意味はありません。
ですが手に持つのは、華やかながらどこか侘しい模様の扇子でございます。

ーーー容姿説明を終了いたします。ーーー

そこにどろり、と溢れ出てくるは『鈬居梧值』だったもので形を保っていない【黒いもの】でございますが。
「おーやおーや。」
「おーやおーや。」
彼らは笑いながら、リズム良く言いました。
それは嘲けりを出さず、わざと隠すための笑みでしょうか。
それは怒りを出さず、わざと隠すための笑みでしょうか。
それは悲しみを出さず、わざと隠すための笑みでしょうか。
それは楽しんでいるのを出さず、わざと隠すための笑みでしょうか。
それはどろどろしたものを出さず、隠すための笑みでしょうか。

「穢ーれたー親がー鬼となってー【黒いもの】と化けーてー我ーらのー処にー出てーくるーはー『愚かー』なーりー。」
俺たちは詠った。
「さあさー、鬼さんーは手の鳴るほうへー穢ーれたー親はー鬼となってー【黒いもの】と化けてー我ーらーの処にー出てーくるーはー『愚かー』なーりー。」
「「さあさ、鬼さんは手の鳴るほうへー。」」
俺達は右足と左足を出し、リズム良く踊りながら手を叩いて呼び寄せた。
どろり、びちゃ、ぴちゃぴちゃ……ペたり、ひたひた。
「「そーれが【ヒト】の形ーを作り始めたけれど、おっ構いーなーしー。」」

「「さてーさーてー、ー詠もー終ー盤。」」

「ああああああああああぁぁぁ……ぐちっ。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!」
ぐちっぐちょぐちょ。
ぐちょぐちょ。
ずるり。
ずるずる。
ずるり。
ずっずず。
『かの黒いものを操る方』が妨害してくれているようだねー。
「「さーてさーて。
殺されて覚めてー鬼となってーそれから己の子をー殺っすはー愚の骨頂ー。
さてさてー其方にお似合いなるはー『そっのままー狂っい堕ちっることー』。
彼の方に願うはー理性がなくなりー欲望も肥大化し、ーかの七つの大罪のー『グラ』ーに成り果てることをー我らは、ー願っいますー。」」

「ああ、ああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁああああああああぁぁぁ!!!
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!」
「髪ーをー振り乱しーてー発狂するーはー【ヒト】のーすーることぞー。」
「抗ったってー無ー駄ー。」

ぬるり。
ぐちっ。
ぐちょぐちょ。
ぬるり。
ずる。
ずるずる。
ずるり。
ぐちっ。
ボコッ。
ボコボコッ。
ぐちっ。
ぐちっ。
ボコボコッ。
ボコボコボコボコッ、ボコボコボコボコッ。
そんな風に詠うと『かの黒いものに憑かれたモノ』の身体が肥大化していって、最終的には角の生えた腹筋のある『七つの大罪』である『グラ』に変貌した。
そんな訳で、『鈬居梧值』だったものは『訳もわからず』まま自らの滾る欲望のままにお腹に穴がぽっこりと空いたような感覚のままそれらに抗おうと思えず、飢餓感に勝てぬままに周りにあるものを貪るように喰らい始めた。
それはまるで餓鬼のようで、とても愉快で滑稽に思えた。
けれど少しは、理性が残っているようでさあさ、残念残念。
そういう輩は放っといて、『奥様』を呼ぶことに俺たちは専念した。
「「「「「さーて、さーて、『おいでくださいませぃ!』
『かの小間熾様の『奥様』』ーのおーなーりーぃーぃーぃー……。」」」」」
そうして、俺たちは詠った。
シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、シャン、……シャシャンッ…………。
清らかな鈴の音が、桜の降りしきるこの空間に響いた。
躍り出るは、橙色の着物を着ている女性。
「「「「「ようこそ、おいでくださいました。
『小間鎮音』様。」」」」」
次の瞬間には太鼓の音、尺八の音、笛の音、詠う声、琴の音が一回ずつ聞こえた。
それらの音を、嫌っている様子の『鈬居梧值』。
角の生えた頭を振り乱して、刀を手に持ち『かの奥様』に斬り掛かったのだけれども、ひらりと躱された。
それを、何度も繰り返した。
躱しながら『かの奥様』が持っている鈴を一回鳴らすと、『かの奥様』の服装が変わった。
青と紫の花の模様が鏤められている、着物に変わった。
鈴の他に、腰の帯に扇子が差し込まれていた。
それをするりと右手に持って鈴をしまうと、横に持ち音を出して開いた。

それから、右足をすっと前に出し、左足もすっと前に出した。
それから一回転し、未だに軽やかながら躱しつつ『果春』と俺の顎に扇子をするりと撫でるように触れた。
それは『共に踊って欲しい』とのサインのように思えた。

俺と『果春』は同時に扇子を取り出し、『かの韴音を奏でる恐ろしき神様』の顎に向けて扇子をするりと撫でるように、先程やってくださったような動きで触れた。
『かの韴音を奏でる恐ろしき神様』は口紅か何かを塗っているのか紅い唇で微笑んだ。
俺と『果春』は何故かそれを見ると、背筋が寒くなった。
そして『かの韴音を奏でる恐ろしき神様』は『かの黒いものに憑かれたモノ』の、後ろに回り込んで鮮やかに躱した。

そうすると、『かの黒いものに憑かれたモノ』の刀が丁度俺たちの目の前で止まる訳でそれを面白く思いながら見つめていた。
そして『かの韴音を奏でる恐ろしき神様』を『かの黒いものに憑かれたモノ
それから、三人で踊った。
ただ、一匹追いかけていたが。
三味線の音がした後、踊りが終盤だとわかった。
『かの韴音を奏でる恐ろしき神様』が音を出して、閉じた扇子は名もなき刀に変わった。

その名もなき刀の銘と、名を恐れながらも告げるのならば。
「それでは『樟朙冥性溺咲乱白華ー麗ー』と恐れながら申し上げさせていただきます。」

その刀の鞘は、宵のように冥かった。
それともまるで真夜中のように、救いのない宵の中に蠢くなにかの気配を私達は刀の中から感じたけれど無視した。
それから。
『まだ足りない』と言うように、脈打つような感覚を覚えた。
それを、救いのない宵の中に蠢くものの姿を現していいものか、と悩んだ。
『早、く出せ。』
「まだですよー。」
『幽世の魂、を悉く性に溺れ、させてやるから。』
「疼かないで下さーい、『かの救いのない宵の中に蠢く性を求める神様』ー。」
『それと、もおまえの性を溺れさ、せてやろう、か?』
「無視しないでくださいよー。
それはお断りですー、私には大切なものがございますので~。」
『そう、か。
では黒き艶、を持つ角のあ、る若造、に憑く、とする、か。
『楽しみだ』、な。』
「それをした結果あれの、外見ががらっと変わるでしょうね~。」
『ああ、そうだ、な。』
「それをすると、二体神様が憑くってことになると思うのですがー。」
『俺は、知らんぞ、あれに言っ、てみなければ、な。』
「あれもかなり神格が高いですから、大丈夫だとは思うのですがねー。」
『あれは、惹か、れ、る。
引、き摺り、込ま、れる、今もそれが欲し、いと思っ、ている。
ああ、だ、から俺が、憑き、たいと、思った、のだ。』
「ハー、さすが『かの鬼共に魅入られ魅せられたモノ』で、ございますなぁ。
それほどの魅力があるとは、私は思わなんだ。」
囁き声と共に喋りながら、私は鞘から静かに刀を抜いた。

冥い冥い、刀身が脈打つごとに、徐々に刀身が変わっていった。

『初、代頭、領の、赦しで、し、か、須らく、刀身を、現す、は辞さず。
さあ、幽世の魂、を悉く性に溺れ、させて、やる。
とくと、毒に塗れ、てい、ると、いい。
我、らが更な、る毒を、孕むのも時間、の問、題だろ、う、から、な。』
囁き声がゆっくりと、普通の大きさの声になった。
ハスキーボイスなのは、相変わらずだが。
それの声に合わせて刀身はどろどろとした白い液体を出しながら、脈打つ。
声に合わせて赫い刀身になります。
それと、相変わらず脈打つように動くのですから語っている私の身にもなってみせてくださいよね。
『あー、あー、感謝、してる、よ。』
どろどろとした白い液体が異臭を放ちながら、徐々に黒い液体に変わるでしょう。
「感情が籠っていないんですよねー。
それと脈打つ音が、いちいち五月蝿いんですよ。
『かの性に溺れた女狂い』が。」
軽く罵りながらそれをゆるりと、『鈬居梧值』だった『かの七つの大罪であるグラへと変貌した黒いモノ』で『黒いものに憑かれたモノ』の胸に突きつけると、こう優しく申し上げた。


「御身の罪を御身で解っているのであれば何もしないのですけれど、解っていないのならば。」
そして言葉を一旦切って言った。
「お解りで?」
「………………ぐちっ…………。」
「………………解っていないのならば、結構ですよ?」
…………そうやって口を動かしている『グラへと変貌した黒いモノ』ににっこりと微笑んで、蠢いている『黒いモノ』ごと斬った。
そして胸を裂いた。
「されて覚めてー鬼となってーそれから己の子をー殺っすはー愚の骨頂ーさてさて、ー其方にお似合いなるはー『そっのまま狂っい堕ちっることー』。
さあさー、鬼さんーは手の鳴るほうへー穢ーれたー親はー鬼となってー【黒いもの】と化けて、ー我ーらーの処にー出てーくるーはー『愚かー』なーりー。
さあさー、ー鬼さんはー手の鳴るほうへー。」
そう詠って挑発した『かの韴音を奏でる恐ろしき神様』に合わせるように、別の声が聞こえた。
『さあさー地ー獄へっー行ってらっしゃーい。』
「『かの深淵の神様』、あとは頼みましたー。」
『はーいわかりましたー。』

黒い何かがどろりと『グラへと変貌した黒いモノ』を呑み込むように出現したので、これで安心だと思いたい。
「『あれ』が不安になるかー。」
「ええ、『白龍様』。」
「なら、見てみるかい?」
「ええ!是非とも!」

ーーー演目終了いたします。ーーー

『皆様方』、お愉しみ頂けたなら私達はとても光栄です。
「楽しまれたなら私達は光栄です!」
それでは、当『劇場』にご来場下さりありがとう存じます。
「ありがとうございます!」
またおいで下さると私達は光栄です。
「またおいでくださいませ!」
(【案内人】がそう言いますと45度に腰を曲げてお辞儀いたします。
【もう一人の案内人】が元気な笑顔でそう言いますと【案内人】に倣いまして、45度に腰を曲げてお辞儀いたします。)
しおりを挟む

処理中です...