『お零れ話』

影狼

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番外編

男性の諦めー祓幽の神様と無関心ー

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『皆様方』、こんな辺鄙な『劇場』においでくださいましたことを感謝申し上げます。
「ありがとうございます!」
『劇場』の【案内人】を務めさせていただきます、『劇場のもの』でございます。
「同じく『劇場』の【案内人】を務めさせていただきます、『劇場のもの』でございます!
よろしくお願いします!」

さて、席にお座り下さいませ。
「今回も私たちが、ご案内しますね!
暗いので足元に、どうかご注意くださいますようお願い申し上げます。」

『皆様方』が席にお座りになられたのを、見届けまして彼が言いました。
「ご注意点を申し上げます。」
・全ての小説が二次創作対象になります。
・キャラ崩壊がある可能性がありますので、ご注意くださいますようお願い申し上げます。
・回想シーンが挿入されますので、事前にご案内致します。
・暴力シーン、暴言シーンがございますのでお嫌な方は『劇場』から速やかに、ご退場していただければ全額返却いたします。



「それでは一ベルを鳴らさせていただきます。」

リィイィイィィィイィイイイィン………。











それでは本ベルを鳴らさせていただきます。

リィィィィィイイィイイイィン…………。





「演目名を告げますね。」
『男性の諦めー祓幽の神様と無関心ー』でございます。
それではお待たせいたしました。
之より、始めますはある男性が祓幽の神様と出会う物語でございます。
お愉しみいただけることを、私達は願っております。
「愉しんできてくださいませー!」
どうかお愉しみ下さいませ。
演じ(始め)させていただきます。

「開幕致しますー、開幕致しますー。」

ーーー演目開始いたします。ーーー

…………何でこんな所に居るんだ?オレ。

あー、頭が痛え…。
アイツを水に沈めたあとの記憶がないぞ……。

…………だが、桜の花びらが咲いてもないのにオレたちのアパートに五枚程度ひらりと舞ってきたのには驚いたぞ。

…………「お前なんて、産まれてこなきゃ良かったのに。」……か。
…………。
さあ、この何もねぇ所からとっととおさらばするかな。

……………………んだ?この場所は。
桜の花びらが、あちこち舞ってるぞ。
桜の木もあるし……それにここは何だか暖かい。
……まあアイツを水に沈めて、殺したのはオレらだしな。
……………………「簡単に許されるようには絶対にしないし、させない。」

………………んだァ?鬼の面をつけている奴がいるな……。
……あんな奴いたか……?
遠くにいる奴の黒い着物が、とても綺麗に思えた。
……カランコロン、と下駄の音が鳴って近づいてくる。
…………オレ以外は誰もいなかったから当然といえば当然だが……。

「……初めまして、『鈬射梧值』(すずい きりね)サン。」
「…………お前は誰だ?」
オレは顔を顰めてそれに言った。
「ははっ、そうでしたね。
名乗るべきは私の方でしたね。
『鬼神鬼喜丸』と申します。
以後お見知りおきを、下劣な人間サン。」
最高に嬉しそうな声でそう言った、目の前にいるアタマのおかしい奴。
「…………は?
下劣…………?」
「ええ。」
「オレが……?」
「はい。」
「何故だ。
なぜお前もそう言う?」
「…………。」
確かに見つめられているのに、どこにも存在していないかのような冷たい視線で見つめられた。
「………………それは、ですね。」

「知ってました?
アパートの大家さん。
あれは私達の世界の神様で、私を呼んでくださったのですよ。
ずっとずっと前から貴方のことも、奥さんのことも、『ーーー』ちゃんのことも……いや『祈訵曦』ちゃんのことも私達は見ていました。」
続けて静かな口調で告げた、アタマのおかしい奴。
「私達は、その世界に色々あって普段は行けないのですが条件が合って今回は行けました。
………………覚えていらっしゃるでしょう?
“桜の花びら”を。」
は?こいつ何言っているんだ?
見ていた?神様がもう既にあそこにいた?条件?
俺たちのつけたはずの名前が変わってる?
しかもアパートの大家が?
「………………何、言ってんだ。」
「…………いいえ、これは紛れもない事実です。」
『…………なら、条件が合えば俺のことも救って貰えたのか?』
「………………はい。
…………申し訳ございませんでした。」
『…………ははっ、そうか。』
「お詫びと言ってはなんですが、館に招待しましょう。
貴方の娘さんに、貴方が会いたいでしょうし。」
招待すると言われ返答しようとしたら花びらが舞い散り、景色が見えなくなった。
目を閉じて開いたら、驚いた。
「周りにあるのは、桜の木と梅の花か。」
『……………。』
「ええ。」
そう言いながら会いたいかとオレの気持ちを見透かされ、会いたいとその言葉を呑み込んだ。

「…………貴方も、浄化しましょうか。」
「…………ですが、貴方に憑いてきているモノがありますね。
………………ちょうどいいですから、貴方には苦しんでもらいましょうか。
もちろんあの子にも。」
え?何を言っているんだ、こいつは。

「何を言っているんだ。
とでも言いたげな顔ですね、貴方。
無駄ですよ、貴方には苦しんでもらいます。」
「苦しんで、苦しんで消滅しましょう。」
なんだ、こいつ。
さっきまではいなかったじゃねぇか!
すると、ずるりと何かがオレの中に入ってくる。
気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い!!!!
痛い…………痛い痛い痛い痛い痛い痛い……痛い痛い……痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い…………。
それに耐えきれず、つい叫んでしまった。
「ああああああああぁぁぁ!何で何時もこうなるんだ!
アイツのせいだアイツのせいだアイツのせいだアイツのせいだアイツのせいだアイツのせいだアイツのせいだアイツのせいだアイツのせいだアイツの!!
ああああああああぁぁぁ!!
紳弓のせいだアイツのせいだアイツのせいだアイツのせいだアイツのせいだアイツのせいだアイツのせいだアイツのせいだアイツのせいだアイツのせいだアイツのせいだアイツのせいだアイツのせいだアイツのせいだ!!
アグゥゥゥゥ!
ああああああああぁぁぁ!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
身体が灼けるように痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!
どうして、何時もこうなるんだ。どうして、何時もこうなるんだ。どうして、何時もこうなるんだ。
どうして、何時も…………。
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして!
ああああああああぁぁぁ!!
アイツが憎いアイツが憎いアイツが憎いアイツが憎いアイツが憎いアイツが憎いアイツが憎いアイツが憎い……。
親父もクソッタレな母親も!!!
憎い憎い憎い憎い!!
アイツも!!!!
みんなみんなみんなみんなみんなみんな羨ましい。
みんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんなみんな羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい羨ましい…………!!!
『身体が灼けるように痛いが……!!』
「うあああ!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい痛い痛い痛い痛い……。
楽になりたい楽になりたい楽に楽になりたい楽になりたい楽になりたい楽になりたい楽になりたい楽になりたい楽になりたい楽になりたい楽になりたい楽になりたい楽になりたい楽になりたい楽になりたい楽になりたい楽になりたい楽になりたい楽になりたい楽になりたい楽になりたい楽になりたい……………………。」

「『貴方』が落ち着いているのにも拘わらず、「貴方」は忙しい方ですねぇ。」

ーーー男性の膿(ノイズ)到達。ーーー
ーーーこれより、回想シーンに参ります。ーーー

オレの家は、アル中の父親と男に何度も捨てられた母親がいた。
 
その最中で、出会ったのだとか。
まあそんなことはどうでもよかった。
『アンタさえ産まれてこなきゃ良かったのに。』
『お前なんて産まれてこなきゃ良かったのに。』
呼び方が違うだけで、同じことを何度も何度も何度も言われた。
母親にも父親にも、名前を呼んでもらったことなんて幼少期にしかなかった。
いつから、この家族は壊れてしまったのだろう。
『今日は焼くか。』
『いいねー!』
『おら、こっち来い。』
『だから、暴れるんじゃないよ!
ああ、ほら!傷を隠す手間が増えたじゃないか!』
『今日は水に沈めるか。
……おい、なんだその目は?』

怖くて、怖くて堪らなかった。
今日は何をされるだろうか、どう言われるだろうか。
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!
だからぶたないで。
いい子にしますいい子にしますいい子にしますいい子にしますいい子にしますいい子にします……だから、だからぶたないで。』
……そんな目で見ないでよ。
見捨てないで。
そんなふうに言わないで。
それが変わったのは、いつの事だっただろうか。
……ごめんなさい、生きてて。
息を吸っててごめんなさい。
存在していて、ごめんなさい。

それがいつの間にか反抗心へと変わって、ダチとつるむようになったのはいつのことだっただろうか。

『今日もドンパチやろうぜー。』
『『『『『『『『『『おー、いいね!そうしようぜ。』』』』』』』』』』
『バイク乗り回すのも、カツアゲすんのも賛成!』
『ギャハハ!そうだろー!?』

親父と母親が死んだのは、それから十数年後だった。
『ハッ、いい気味。』
そうして棺桶に入れられた死体の前で、嗤った。

『……さて、今日も働くか。』
それが起こる前からホストに身を沈めていた。
親父と母親のことを一刻も忘れたくて、女を抱きまくった。
時には酷く振ったこともある。
時には酒に溺れて狂った。
時には別の男がいるからと、酷く振られたこともある。
…………なんでオレ、生きてるんだっけ………………。
微睡みの中で、そう思ったこともある。

そうして出会ったのが紳弓。
オレの大切な女。

だが、ヤッて子が産まれた時は可愛いと純粋にそう思った。
「名前をつけよう、この子に。」
「ええ、どんな名前にしよう?」
「茉芸。」
「ええ?茉芸?」
「ははっ、いいだろ?お前の名前とオレの名前の頭文字をただ繋げただけさ。」
「それってとても素敵な名前。
ねえ、私たちの子には私たちのようにさせないようにしよう。」
「ああ、そうだな。」

ーーー男性の膿(ノイズ)のシーンを終了いたします。ーーー

「ああ、その男性はあなたのダチで親友であった『小間熾』(おまさか)でございましたね。」
「そいつは今どこにいるんだ?」
「それは、貴方に教えられませんよ。」
そう言って俺は嗤った。
(私達のところにいるけれど、神様になってもらってまずは付き人としてあちこちを渡り歩かせているので……まあ直ぐに死ぬことは確定でしょうね。)
「ちっ、役に立たねえ神だな。」
「ええ、そうですね。」
「さて。
あのお方の力で貴方に、苦しんでもらったことですし……そろそろ消滅しましょうか。」
そうして俺は言って微笑んだ。
そして返答する暇も与えさせないで、魂を四散させた。

「はっ、いい気味だ。」
そう言って俺は鬼の面を取った。

ーーー容姿説明に入ります。ーーー

白いと言っても過言ではない陶器のような綺麗な肌に、二本の太く長い赤い傷跡がありました。
そしてその傷跡は、今も蠢いています。

それに、まるで角がそこにあったように、額に跡だけ残して角がなくなっていました。

……まあ角を元に戻せるのですが「あれを」忘れぬ為に、敢えてこうしているそうですよ。

『彼』に少し前につけられた呪いで生々しくドロドロした傷でしたが、何とか封じ込めているので大人しくしているようです。
首筋に蒼い月のような、綺麗な痣がございます。
これは昔、ヤンチャしていた時についたそうなのですが『本当に』そうなのでしょうかね。
……『例えば』、『罪裁きの神様』が関わっていたモノだったり、とかですかね。
それとも『奥様』がつけた『綺麗な』鎖だったモノ、でしょうかね。
それとも『かの薬師』につけてもらったモノ、なのでしょうかね。
おっと、失礼いたしました。

ーーー閑話休題、でございます。ーーー。

黒い革の手袋をしており、寒色系でありながら渋い雰囲気の着物を着ております。
それとも彼が着ているから、渋くなるのでしょうか?
下駄を履いていて、足首に細いミサンガらしき蒼い紐をつけております。

どうやら、『奥様』に作ってもらったそうで……。
余程ミサンガを、『奥様』を大切にしてらっしゃるのですね。

ーーー容姿説明を終了いたします。ーーー
「じゃあな、鈬射。」
そう嗤って、面を付けた。
「お疲れ様だな、『サスィ・ロヒテ』。」
「お疲れ様です、『白龍様』。」
「あの子は…………?」
「問題ない、直ぐに祓った。」
「そうですか。」
「それにしても、あれに盗られたのが災難だったね。」
「ええ、俺の子は茉芸なんて名前では無いですから。」
「本当の名前は紗希ですよ。」
「うん。
俺が新しい名前をつけてあげたけれど、これで良かったのかい?」
「アレに名前をつけられるくらいなら
、俺と『アイツ』そして『白龍様』がつけたほうがいいでしょう。」
「ふふ、それならよかった。」
「ありがとうございます、『白龍様』。」
「んー?」
鬼の面をつけているお方に、改めてお礼を告げた。
「俺の娘を護ってくれて、名前を付けていただきありがとう存じます。」
「…………お礼には及ばないよ、『サスィ・ロヒテ』。」

ーーー演目終了いたします。ーーー

『皆様方』、お愉しみ頂けましたでしょうか。
「もしも愉しんで貰えたなら、私達にとって光栄です。」

『皆様方』、当劇場にご来場下さりありがとう存じます。
「またおいでくださいませー!」
(【案内人】がそう言いますと45度に腰を曲げてお辞儀いたします。
【もう一人の案内人】は元気にそう言って【案内人】に倣いまして、45度に腰を曲げてお辞儀いたします。)
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