『お零れ話』

影狼

文字の大きさ
上 下
4 / 26
番外編

吸血鬼に取り憑かれた『獣』は何処の『花』を摘み取るー高貴な者の抗いを観て笑う悪魔は何を馳せるかー

しおりを挟む





当劇場にご来場頂き、誠にありがとう存じます。
【案内人】を務めさせていただく者でございます故、ご容赦くださいますようお願い申し上げます。

さて、今回の概要をお話させて頂いてよろしいでしょうか。

感謝します。

僭越ながら申し上げます。

これは『お零れ話』の一つで『番外編』でもあります、『吸血鬼に取り憑かれた『獣』は何処の『花』を摘み取るー高貴な者の抗いを観て笑う悪魔は何を馳せるかー』という、演劇のおはなしになります。

次に当劇場にお越しいただいた、皆様方のご注意点に参ります。

・全ての小説は、二次創作対象になります。
・そしてオリジナルキャラが出演致します。
・その際、キャラ崩壊がある可能性がございます。

・また、吸血シーンがございますが少々作者が、こういうのに疎い場合もあります故、拙い文章になる可能性がございます。

……さて、劇場の方々にご注意点をお伝えしましたので、ご安心くださいませ。

弟君と『かの悪魔の神』が語るシーンと視点がございます。
ごゆるりとお寛ぎ下さいませ。
さすれば『貴方様』の要望通りに、演じて魅せましょう。

僭越ながら演目名を申し上げます。

『吸血鬼に取り憑かれた『獣』は何処の『花』を摘み取るー高貴な者の抗いを観て笑う悪魔は何を馳せるか。ー』でございます。

遅くなりましたが、一ベルを鳴らしますね。

リィィイィイィィイィイィイイィン……。










高いベルの音がした。
澄んだ音な為、この劇場に響くが五月蝿くはないように布か何かを被せて、配慮がなされている。

この劇場の【案内人】には感服した。

それでは本ベルを、鳴らします。

リィィイイィイイイィィイィィイィィイィイイィン…………。





開幕致します~、開幕致します~。
それでは演じ(始め)させていただきます。




                        ー演目開始ー




ここに……、この部屋に兄貴がいるのか……。

俺は、兄貴の部屋に入ることはなかったが、夜中に起きたら『かの獣人さん』がいないことに気づいたため、館中探した。

だが館中を探しても居なかったため、兄貴の部屋にいると踏んだ俺は『頭では理解していても』、ダメ元で部屋の扉を開けようとした。
そう、開けようとしたのだ。

だが、もう既に扉は開いていた。

……兄貴の気配察知能力はそこら辺の神には到底到れない、まさに『敵に回したら一番危険な神』である。

なので、罠を仕掛けた後に気配遮断魔法、心を見られないように隠蔽魔法や消音魔法と防御魔法の併用及び、空間断絶魔法の発動と共に隠密魔法と同じような魔法を、発動した。

先程寝室から射していた月の光は柔らかな青い光だった。

これはあちらの世界で言う、『極めて稀な月』だったか……。

まあこちらは『月の色で効果が変わるから対して不思議』ではないが……。

さて、集中しなければ兄貴に殺されるだろうし……、『慎重にやらなくてはいけない』だろう。

そう決意して、部屋を覗き込んだ。

……それがいけなかったのかもしれない。
『今日は、厄日かもしれんな……。』

直感でそう思った。

何故って、部屋の中が異様に暗かったからだ。

電気が付いてないだとか、窓を締め切っているだとか。

そんな理由では、断じてない。
そんな理由だと決して、片付けてはならない。
そんな理由で思考放棄する、言い訳を本能にさせてはいけない。
そんな理由をつけて尻尾を巻いて、逃げる訳には行かない。

天井に立っている、兄貴がいた。

兄貴は、部屋全体を見ているようだ。

…………『眼が赤くなきゃ』、何時もの兄貴だと安堵しただろう。

『瞳孔が猫のように』細くなっていって、苦しそうに喘ぎ声を抑えつつも、隅で喉を掻いている兄貴の姿がなきゃ平穏な夜になったろう。

爪が鋭くなったり、元に戻ったりするのを五~六回繰り返しその度に、眼の光が濃く深くなり眼光が鋭くなって行き眼のハイライトを、失くした兄貴を見なければ安寧が訪れていただろう。

いまの兄貴は、まるで『自我を失くした哀れな獣人で、逆鱗に触れられた龍が戦闘態勢に陥る格好』をしているような気がするが……果てさて、真意はわからんな。

隅にいる兄貴の眼に、俺が映ったような気がした。

映る筈じゃないのに、映った……?
何故。
そう頭の中でひとつの単語が巡り、延々と考えていた。

兄貴の虚ろな目が興味もなさげに、冷たく光る。

そして『入れ』と、部屋に誘うように、俺の周りから一陣の風が吹いた。

……そんなわけで、意を決して部屋に入った。

予備動作もなく、扉が閉まった。

その際に大きな音を出して閉まったため、黒髪の可愛らしい雰囲気を持つ『シスターさん』が驚いたように振り向いてくるものだから俺も驚いてしまった。

                          ー始めー

何を?というより今の声は……?

そうして首を傾げた。
兄貴が隅から天井の真ん中に移動し、本棚にあった本の表紙を眺めている『かの獣人』の後ろへと静かに素早く降り立った。

『可愛らしくその割には花のように脆くも、優美で聖域にいらっしゃるシスターのようなそんな雰囲気を持つ、お嬢さんを傷つけるなら攻に転じよう。

お嬢さんを喰らい、尚その血の味をも貪欲に求める『虚』になったなら守に転じるとしよう。

まだお嬢さんを傷つけていないならば、思想になれば影から護ろう。』

『アランダ。』

そう詠唱して『かの獣人さん』を、守護するバリアを貼った。

1度だけ攻撃を、防ぐことができるバリアだ。

ちなみにこれは魔法ではなく、ただの呪文なため相当脆い。

『エキュリファイ・クレアイ』が本当の守護するバリアなのだが、今回は口上重視のために『アランダ』を詠唱した。

『かの獣人でシスターさん』に腕を振りかぶり攻撃をしようとするものだから、セーフかアウトか……。

……『ちょっと待て』、先程までは普通に眼見えてたよな?
驚いた、とても。
間違いなく、赤くなる眼を見ていた。
なのに、今は黒い布を付けて灰色の髪のはずな『黒髪』の隙間から見える白い包帯も付けていた。

バリアを一瞬で破壊し距離を取って、術者である者に威嚇をした兄貴。
『ヴヴヴ……。』
……壊された、か。

あれを壊す威力も状況判断能力も、桁違いってところか。

それを見て『かの獣人でシスターさん』にしか興味が、行かないのだと理解した。
『かのシスターさん』に行き着くためなら、目の前に広がる敵も選ばず攻撃をしようとする『もの』だから。

『…………ああ、今日は厄日かもしれんな……。』

困りつつも言った本日二回目の言葉であるが……まあもう『虚』になったんだ、覚悟を決めるか……。

『さあ、赤い月に狂い咲け。
我らの彷徨に堪えよ、波紋を何重にも繋ぎ累わす追には罰を。

神々も魑魅魍魎も同胞と共に狂う、忌々しき夜の罰に値する宝の如き幸に浸る意味もないと、思わせるほどの苦痛と共に踊り尽くそうぞ。


夜のような髪色を模し兄の形をした異形よ、我と共に暗い暗い水の底に沈みたもう。
醜き獣同士、踊り尽くした後暗い暗い水の底へと沈もうぞ。
栄光など必要ないのだから、構わないだろう?』

まずは『かの獣人さん』から、興味を逸らそう。
名もない武器の名を告げて、攻撃をしようと思い至った。

『名も無き武器の名をあえて言わせてもらおう、『イレェウ・サンヴァハカメソス』。』

それは銀の装飾を施した、トラビッチェトパーズのような輝きを持つナイフだったか。

『ほれ、醜き獣同士で飽きるまで狂い踊ろうぞ。』
二度使うとお駄賃にもならぬ、安い言の葉で挑発しながら下段から切りつけると、ニタア……と醜悪な笑顔を浮かべた異形は、片手で受け止めながら咆哮した。

『ウオオオォオオオォオオオオオン!』





                      ー戦闘開始ー

うるさい獣だ……と思いながら攻撃したが受け止められた。

だからこの声は何なんだよ?!

『ああ、忘れていたよ……さあ踊り尽くそうぞ。』

下段、上段、斜め切りを三回か、四回に分けてフェイント込みの攻撃をランダムに織り交ぜながら、異形に向かって切り込む。





『躱しもしないで向かって来る姿はまさに狂いに狂い、堕ちた醜き龍よな。

だがあれには、程遠きものぞ。
それだけではつまらぬか、それならば『毒』もプレゼントしてやろう。
悦べ、悦べ、『醜き龍』よ。
存分に毒を喰らえ。
毒に染まれ、『イレェウ』。』
笑いながらそう言った。
翠色に染まったナイフは、兄貴には程遠い姿をした異形の攻撃を弾いた。

そしてそのまま、頭を貫いた。

俺はそれを見て微笑むと頭に刺さった、
ナイフを下半身に滑り込ませ切る手を止めない。

下半身までと言ったって太ももまで切り裂くと、槍に変更して腕と腰を貫いた。

『まだ動くんだろう?『毒』を喰らって尚、『かの獣人でシスターさん』の血を求めて。
さ、大いなる聖域にいるようなシスターそのものの雰囲気を持つお嬢さんを傷つけ、その血の味をも占めたなら守に転じるとしよう。
大いなる吸血龍よ、貴方の大切なモノは何方ですかな?
愚かなる傀儡に溺れた聯怪蔡幣吸欺龍めに、教えてやって下さいな。』

俺の口が回る。
作者か、余計なことを。
踊り尽くしている最中だと言うのに、意地悪なことを言うのか。
それにしても、異形は何故こうして動くのか。
かなり興味がある。
『さて、貴方の『本体』は何処にあるのでしょうな。
ねぇ、大いなる吸血龍さん。』

天井にいるは、『堕ちた醜き獣』。
かと思えば天井から地を蹴って離れ、虚空に踵落としをした後指を鳴らした。

いや違う、俺がいる所のバリアを壊したか。

異形は異形の、許に戻る。

そして、消音魔法や気配遮断魔法、隠蔽魔法、防御魔法、空間断絶魔法と共にあった隠密魔法と同等の魔法が切れた。

それはまだいい、またかけ直せばいいからな。

だが『かの獣人でシスターさん』にそれが移っているのは何故だろうか。
とても嫌な予感がする。
異形が笑っている。

『そのものの眼に映るは束縛魔法で、術者が解かない限り思考も勿論、自らの意思で動くことも叶わない。
逃げることは追従の結びにより戦くも攻より守をも許さない。
この者より主を優先すことを誓え。
かのものの為に、傀儡となれ。』

はい、わかりました。
主様、これより、契約は私の意志により交わされましょう。
ご安心ください。
貴方様にご命令されない限り何も申し上げません。
『これより契約は成された。』
…………。

『かの悪魔よ』、観測を頼む。

二重契約をした『かの狂い堕ちた龍』は兄について行っているが、それは地下室に繋がる鉄製のドアを易々と開けてみせた。

四十段はある階段が見えた。

降りていっているのでついて行くとするが、またドアがあった。

ドアの真ん中に銀色の花を縛るような黒い鎖、もしくは囲んでいるような紋章が嵌め込んである。

ドアの取っ手を掴み、兄に先を譲り進んだのを見届けて入ったようだ。

ドアは閉められているが、構わない。

霧になって空気に紛れ込んだ。
部屋の中に侵入成功したようだ。

……『そこは、まだいけないんじゃあないかい?』

『我慢しな、主。』

それに『かの狂った龍』もお嬢さんを喰らっている途中だ、お愉しみは取っておくべきだと思うが、な?

ほら、太ももに赤い花が。
ああ、どんどん綺麗な花が色づいてゆく。
首筋も勿論、腕と、そのお綺麗な顔にも、手先や、指、手の甲に、肩にも、脹脛と足の甲にも噛み付いて血を吸っていくね。

くすくす、本当に綺麗な『花』だこと。
なあ、主。
おやおや、『かの隸餌となったモノ』の為にそれを使うのかい?
なあ?『戦闘に飢えた舞台の監督』さん。
今や、彼女は『かの隷餌となったモノ』は『かの醜き獣』に花を与えられてる。

それを邪魔することは『かの醜き獣』の逆鱗に触れることと同義。

それにかの狂龍もお嬢さんを狙ってる。
そう、これは『貴女』の為。

そう、これは『獣』が何処の『花』を摘み取るかのお話。
そして『貴女』は傍観者。

大人しく観ていたらどうかな?

ねえ?【狂龍】さん。

『グルルッ……。』

ふふ、そうかい……。
なら、【貴女も】喰らって魅せよう。

『さて、獣よ。
【餌】は如何かな?弟を操っておいて、ご褒美もなしに待てさせるとは中々お人の悪いご主人様だ。』
『グルルルル……。』
『黙れ、口を開くな』?
確か、【餌】はーーー。
ふー、危ない危ない。
くくっ。
まさか俺に爪を向けてくるとはね、【かの醜き獣】さん。

だけれど、効かないよ。
さあ、どうするのかな?
俺としては、弟にご褒美をやればいいと思うのだけれど、まあそこはお任せするよ。

                       ー戦闘終了ー

さて、まだまだ踊り尽くしたいところだがそろそろ時間だ。

『主』が怒るだろうからな。

                        ー演目終了ー




皆様方、ここまで【ご覧に】なって頂き感謝します。

さて、演目も終了しましたので……『かの方』からスイーツのお届け物がありますが、如何でしょうか?

「食べたいですー」
「是非!」
「『かの方』からのお届け物……いいっ!妄想が捗るわぁ……ハァハァ……ハァハァハア……ジュルリ。
ゴクリ……ハァハァ……イタダキマース、とか言って『かの方』がこの人にケーキを擦り付けて身体ごと頂くんじゃないかしら!ハァハァ……。」
「それにしても……『貴方』も狡いお人ですのね……。
まさか、『主』にあんなことを言うとは思いもしませんでしたわ。」

いいえ、主とマスターは別物ですからね。
『そうかの?』
……ええ。
『ふふ、貴女が喋るとは珍しきものですね。』
ふふ、確かにそうでございますね。

『こら、あまり年寄りを揶揄うでない……。』





そんなこんなで劇場にご来場頂いた『皆様方』に、『かの方』から頂いた『スイーツ』をご馳走致しましたが……好評でしたね。
今度は私も作ってみましょうかね……。

そこで見ている皆様方、お愉しみいただけたでしょうか。
皆様にお愉しみいただけたのならば、『私達』は嬉しいのです。
さて、ご来場頂きありがとう存じます。
またのご来場をお待ちしております。
(もう1人の『かの劇場のモノ』がいつもの柔らかい声音とは違い、怪しく微笑んで直角45度のお辞儀を致します。)
しおりを挟む

処理中です...