可笑しな漫画家が異世界転生した模様。ーただの神様達と神獣や少女で漫画家を困らせるようです。ー

裏。ー影。ー

恭謙。ーあの御方。ー

……このままでは、私達が殺されてしまう。

期待に応えられない、と看做されたら彼ら彼女らが凄惨な、それはそれは美しくも凄惨な終わりを迎えるだろう。

彼女、いや。

リリスの名を貸与したモノ達の手により、リリスを周知しているモノ達の情により。

誘われて踊る、それは至福の時であろう。

すべからく、断る理由なぞあると思うだろうか。

否。

少なくとも、彼女等は。

閑話休題。

『灯篭』を知っているなら、話は早い。

ソレは彼処の地を、そしてこの地を、死地へと変えた『荒ぶる龍』なのだから。

これは噂でも讒言めいた諌言でもない、長く生きている魔物の一匹のみが見た出来事故に________……。

物の名と侮るなかれ。

ここからは、語り部かたぶく魔物の出番だろう。

『拙い語りだが、話半分に聞いておこうと思っていただけるなら嬉しく思う。』

『さて、拙がほんの少しだけ興を催そう。』

『どうぞ、よろしく頼む。』

『喧騒に誘われ、面白く思った妖が今宵の月といづるか。』

『はたまた、魑魅魍魎がいずり出ようか。』

『若しくは、我らの同胞を引摺り出そうか。』

曰く、『何処かの邸にて、狐の鳴き声が僅かに聞こえ、そして訪れたくゎーかくがいた。』

曰く、『その旅人くゎーかくが発するは、音に聞こえしつきの鳴き声ではないか。』

曰く、『さてさて、鬼が歌舞音曲を奏でながら見ていた、眉目秀麗であった。』

曰く、『その鬼は彷徨っている。』

曰く、『遠き所にいる拙にも伝聞しようしそれは実に鮮明に判ろう、くわばらくわばら。』

曰く、『幼子の魂を保護しそちに纏わるフクロウの形をした、化生識の神なぞもおる神を好む鬼が故に……。』

曰く、『そして、射干玉の夜に趣のある白雪が降りしきる。』

曰く、『つまり、如何なる天候であろうと、月がかたぶくまで雪月夜となる。』

曰く、『風光明媚で静寂な雪の降りる月夜の美しい場にて、敵対者に笑いかける。』

曰く、『まじろく時、泡が現にい出る。』

曰く、『途端に敵対者の魂魄、呑み不成。』

曰く、『漆身呑炭の如く、剣山がいづる。』

曰く、『而見事で敵対者の現身ごと、ものを言わぬ屍に成り果てるのみ。』

曰く、『然して、身体のみが赤に塗れはすれど純白の髪なぞ汚れなしで然もありなん。』

曰く、『朱に交われば赤くなる、と云々。』

曰く、『その一方的な慈愛に運がないモノが出遭ったとなったらば、不思議な感覚がするだろう。』

曰く、『遠い所にいる拙にも伝聞しようしそれは実に鮮明に判ろう、くわばらくわばら。』

曰く、『されど、あってはならない。』

曰く、『あれは鬼神の如き御力。』

曰く、『恐らく、鬼神に匹敵する鬼へ授けられた御力だろう。』

曰く、『そうさなぁ、白雪に化生している鬼だったろうか。』

曰く、『それが故に、いつしかその鬼を招喚する際『白雪』と呼ばれるようになった____________。』

曰く、『されど、あってはならない。』

曰く、『然しながら、人間を大層嫌っており尚且つ『人』を嗤うようで、拙が知る限り一度しか姿を現さず。』

曰く、『どの人間を嫌っているのか想像にも及ばない、浅学ですまない。』

曰く、『申し訳ないがその荒ぶる龍……そのお方は何方かは存じ上げない……』